東京コミュニティスクール-探究型学習が教育の特長-全日制オルタナティブスクール(小学1年生から6年生)

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2016年07月 アーカイブ

2016年07月01日

両親から見たSpecial

タイトル:I am Special, You are Special
探究領域:自主自律
セントラルアイディア:私たちはかけがえのない存在である。

[1年生]



先週の最後のテーマの時間に、宿題が課されました。
それは、「みんなの生まれてから物語」というテーマで、インタビューシートを用いて、お父さんお母さんにインタビューをしてくること。

今週は、書いてもらったインタビューシートをもとに、「自分のSpecial」を探究していきました。

インタビューシートには、以下の質問項目があります:
「生まれた時間・身長・体重」「お腹のなかにいるときの様子・印象的なエピソード」「生まれたときのこと(どんな様子・状況で生まれた?どんな気持ちになった?)」「名前の由来」「生まれてから今まで一番成長したと思うこと」「子供のいいと思うところ」

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テーマの時間には、この貴重な手紙を、一人ずつ丁寧に時間をかけ一緒に読み解き、その話を聞いた感想・気持ちを共有していきました。
「Mさんのいいと思うところは、可愛いもの、きれいなものへの意識が高いところって、お母さんが言ってくれてるけれど、たとえばどんなもの?」
「うーん、まず綺麗好きだし、お洋服とかアクセサリーとかのこだわりもあるよ」

「(Kくん)僕ね、生まれた時、1週間目が開かなかったんだって。」
「え、それは大変だったね!その時、お父さんお母さんはどんな気持ちだったんだろ?」
「すごい心配な気持ちだったんだって。」
「でね、僕なんとなく、お母さんのお腹にいた時のの覚えてて、心の目で見てたんだよ。お母さんが働いている時には、じっとしてたけれど、お家に帰ってくるといっぱいお話ししたんだよ」
などなど、全く私たちも、子供達も知らなかった神秘的なエピソードがたくさん…!
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特に話が盛り上がったには、今までで一番成長したと思うところについて。
「Rくんのお母さんは、自分の意見をきちんとお父さんお母さんに言うようになったこと。自分の考えをきちんと伝えられるようになったって言ってるよ。」
「(Mさん)え、でもさ、それってワガママなだけな可能性もあるよ。。。!お母さんの言ってること聞かないみたいな。」
「(スタッフ)でも、成長したって思うことに書いてくれてるってことは、いいところって捉えてるからだと思うし、この文脈では、きちんとおかしいな?と思ったことを言えるようになったってことじゃない?」
「(Mさん)なるほど。」
「(スタッフ)みんなは、自分で、自分が成長したな〜と思うことって、どんなこと?お父さんお母さんが思ってることと違ったりするの?」
「(Tくん)うーん、僕は、いろんなもので遊んでると、他の遊びも自分で発見したり、発明したりできるようになったところ!」
「(Rくん)僕は、自分でLegoだったり、巻物だったり、作ってみたいと思ったものは、作れるようになったところかな〜」
などなど。

最初の週ではなかなか見られなかった、自分を客観的に見る視点が育ってきたことを実感。
こうして、自分から見た自分のSpecial、友達から見た自分のSpecial、両親から見た自分のSpecialという多様な視点を通して、様々な自分の側面に気づき、理解してきている1年生。

さて、来週はどんな視点でSpecialを探究するのでしょうか?


YI&ES

TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

「構造」を際立たせる設計図

タイトル:築きに気づく
探究領域:万象究理
セントラルアイディア:『構造よく力を制す』

[2年生]

先週「構造」について改めて学んだキッズはこれからその「構造」の強さを実験によって示してゆこうとしています。
では、「構造」をもつ橋を作るにはどんなステップが必要なのでしょうか?
【ステップ1】どんな構造を活用するか決める
先週学んだ構造のうち、どの構造を利用するかを決めます。
色々な構造の強さを試したいので、うまく分担してそれぞれが作成する構造を考えてゆきます。

【ステップ2】橋の形を決める
可能な限りシンプルに、構造を利用して、構造がない場合に比べて
構造がある場合はどの程度強いのかを比較できるように、橋の形を考えてゆきます。

【ステップ3】設計図を描く
設計図が橋作りの「肝」です。
まっすぐな線と曲がったアーチを描く線、ストローを何センチメートル使うのかも考慮しつつ、
具体的にどんな形にするのか、「原寸大」の橋の設計図を作成してゆきます。
合計で何センチメートルの材料を使うのかも、細かく計算し、ストロー何本分になるのかを考えてゆきます。

【ステップ4】部材を作る
「設計図」を参考にしながら、橋を切ったり繋げたり、正確に何センチメートル使うのかを測りながら、設計図通りの橋のための材料を作ってゆきます。

【ステップ5】組み立てる
斜めの部分の接着方法では、うまくカットしたり、
長いけたを作る場合にはストロー二本をつないだり、
色々な工夫をしながら、最終的に橋を組み上げてゆきます。

この五つのステップを経て、実験のための橋を製作してゆきます。
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特に難しいのが「まっすぐな線を引く」こと。
何度もなんども書き直して、橋づくりの命である「設計図」を仕上げてゆきます。
「シンプルに」かつ「丁寧に」これが一番難しくもあります。
淡々と書いていき、橋の作成に着手できるキッズもいれば、
「アーチ」の曲線に苦戦するキッズも。
設計図を書いてゆく中で、実際に手を動かしてみると、また新たな発見があったり、難しさがあります。
多くのストローを必要とする橋もあれば、あまり必要としない橋もあります。

さらに、作るフェーズに入っても、25cmのスパンを渡す細かい橋なので、繊細な手作業が必要とされます。
材料を切るときにはしっかり長さ通りに切らなければなりません。
また、接合部は「セロハンテープ」をうまく活用して接合しなければいけないので、つけすぎず強くするために工夫が必要となります。

さて、来週はついに今週作成した「構造を持つ」橋の強さを確かめます。
世の中にかかる橋の多くは「構造」を持っていますが、その「構造」の効果はどの程度のものなのでしょうか?
それぞれの「構造」の強さを比較しながら、確かめてまいります。

TY

TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

うまくいかない原因を探る

タイトル:いい仕事してますね
探究領域:社会寄与
セントラルアイディア:質の高いものづくりが喜びを生み出す。

[3・4年生]

依頼された椅子の数は13。一人ひとつの割り当てです。
ひとつの椅子に必要な部品は脚と支えと天板。
脚と支えはそれぞれ4本ずつ、計12本必要です。
設計図を見ながら、寸法通りに切り続けます。

たくさん切らないと!という焦りもあってか、
また、ギコギコ切りたいイメージも強く、
どうしてものこぎりを速く動かしたくなってしまいがち。
それでは、先週と同じく、木を切ることはできても、まっすぐ直角には切れません。
そして、こんな失敗も。
「指、切っちゃった。」

切った本人も、ペアになっていた子も、お互い負い目を感じているよう。
その日の日誌には、
「力が入ったときに指を切っちゃった。」
「ゆっくりって声をかけなかったから。」
「のこぎりは、ゆっくりやさしく。」と書かれていました。
ほかのチームでも同じようなことが・・・。
「のこぎりが指に当たって、軍手が切れた。
でも、指は切れなかった。」
「軍手が守ってくれたんだ。」

慣れてきた頃が危険。今一度、作業で忘れてはいけないことを確認します。
「ホースキャンプと同じだ。慣れてきたときに事故が起きやすいって。」
「初心に返るだね」

「安全第一・合図確認・椅子を愛す」

清水建設の木工場に書いてあった「安全第一・合図確認」に加えて
自分たちで考えた「椅子を愛す」を合言葉に。
軍手が必須であることも実感が出てきます。

どうすれば、まっすぐ直角に切れるのだろう。
失敗した切り口を見て、何がいけなかったのかを探ります。
「線に沿って切れてるのに、斜めになってる。」
もともとの線が斜めになっていたことが伺えます。
さしがねの直角の部分をうまく使いこなそうと意識が変わってきます。

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「途中から斜めになってる」
ずっと同じ方向で切っていると斜めになることが多いのは、
どのチームにも共通しています。
「のこぎりはくぎなんだ。」
「だって、途中から斜めになっていくから。」
ということは、くぎが曲がる理由とのこぎりが曲がる理由は一緒かもしれません。
「体が曲がっているから?」
別の方向からも切った方が斜めを防止できるかも。
そのために、線は全部の面に書く必要があります。

最初が肝心。線がまっすぐ引けていないとまっすぐには切れない。
書いたあとに確かめる。鳥の目、アリの目で確かめます。
さしがねをもつ人、線を引く人に分けて2人でやり始めるペアも出てきました。

線を正確に書けても、次なる問題が。
最初に入れた切り込みが線の通りにいかない。
「最初が難しい。」
それなら、切り込みを入れてみては?
普段使い慣れたダンボールカッターで試してみることに。

2016_4wk_atsu_IMGP8094.jpg 「ダンカタいいかも。」

「のこぎりが鏡になって、線と合っているかずれるかすぐわかる。」
斜めになりそうになったら、ストップ。切る面を変えてみる。
「ダンボールカッターは指を上に当てた方がうまく切れたよ。」
「のこぎりを持つとき、人差し指をのこぎりの上に置いて、その指を目で追っていくと
まっすぐ切れた。」

ゆっくりの方がすぐに動きを止められるため、勢いが余ることがなく、
斜めに進みそうになったときに修正が効くことも、見えてきました。
「ゆっくりやさしくがコツなんだ。」
よりうまく切るために、工夫を考え出していき、それをシェアしていきます。

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工夫次第で、切ったあとの切り口がどんどん変化していきます。
「うまくできた!」「まっすぐできた!」
できるようになってくると、楽しくなってきます。
仕事の楽しさが味わえるようになってきた様子です。
安全第一、初心忘れずに、
切りたい木材はまだまだあります。



AN

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25年後にタイムスリップ

タイトル:個の尊厳
探究領域:自主自律
セントラルアイディア: 私たちは私たちのために生きている

[5・6年生]

何度も書き直して、いろいろなパターンの「人生楽ありゃ苦もあるさ年表」ができあがりました。これをもとに、早速、25年後の自分になりきっての「即興劇」を開始します。

私の葬儀の後、相模湾への「散骨」を済ませ、仲間の一人の経営する店に集まるというシチュエーション。私のつくった「年表」と「遺言」と、子どものつくった「年表」とを合わせて、自然にできあがりました。

まず、店に集まっているのは、実際に海に出て散骨してきたメンバー。そこへ続々、海外から帰ってきたメンバーが加わります。

「やあ、久しぶり!今どうしているの?」
「うん、ちょっと海外でスポーツ用品のビジネスやってるんだ」

シナリオがないのに、淀みなく話し始めます。

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いきなり完全に25年後の自分になりきるなんて当然できません。まずは、自分の年表で描かれた「自分」の近況報告からスタートします。劇としての演出は無視。ひとりひとりがみんなの前で、どんなふうに人生を歩んできて、今、どんなことをしているか語ります。

「私は洋服のデザイナーからスタートして今は、自分のブランドをつくって売ってるの?」
「なんていうブランド?」
「◯◯」
「ああ聞いたことあるよ。それに女優もやってるんでしょ。あのドラマ見たよ」

というような感じで、絶妙に合いの手が入りながら、それぞれが「25年後の自分」を語ってゆきます。

みんな語り終わると、次の話題に移らなければなりませんが、近況報告の後も、だらだらとした話し合いが続いてしまいます。これはまずいなあと子どもたちも気づき始めます。「劇」として面白くまとめるには「観客」にどんな「自分たち」を見せたいか考えなければなりません。こういう気持ちに自然にさせてしまうのが、即興劇の特徴です。「だらだら」しているのは「話題」にリアリティがない証拠。それを演じている側がすぐ気づけるのです。

私は将来こんな人になりたいです!とただ「夢」を語るだけでなく、本気で目指し、実現するのだ!という「思い」を観客と共有したい。それは大声で感情的に叫んだり、連呼することとは違う。即興劇でのふるまいにリアリティがあり、「ああ、確かにこうなっていそうだね」という感じを出さないといけないのです。

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なんとなくしまりがない……リアリティがない……それは「語っている内容」が浅いから……では、どんなことを語るか……

いったん劇を中止して、作戦会議です。

黒板に劇をふくらませるために必要な要素を書き出してゆきます。

昔の思い出……今の社会状況……これからどうしたいか……これまで苦労したこと……

すぐに大事な要素が出てきます。

「この劇がおふざけで終わってしまうか、それとも感動を呼ぶかの境目は、ひたすらリアリティにある。ただそのリアリティは、ああこのくらいだったら実現するよね!というような無難なリアリティじゃない。そこに理想と夢があるんだ!」

なんとなくお楽しみで劇をやっていた子どもたちがぴりっとします。おふざけの面白さから真剣勝負の面白さに子どものスイッチをチェンジさせるのが Generator の腕の見せどころであり、存在理由です。

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ただ「たなからぼたもち」で待っていれば自動的に実現しちゃう!とか、あまりにも荒唐無稽だったりとかすると、ああおふざけね!となってしまう。大胆に夢を語るのはいいが、そこに到達するまでのプロセスで出会う困難を予想し、それをいかに乗り越えたか、そのために自分の『弱さ』とどう立ち向かってきたか、そこが共感を呼ぶポイントなのです。

個の尊厳とは、自分のよいところもわるいところも丸ごと受け止めながら、逃げずに、どう生きてゆくか真面目に考え続けることです。改めて「To Be or Not To Be」で行った「宣言」や、「My Hero Story」で語った人の生き方を思い起こしてみます。

「おっちゃん、ちょっとひらめいた!」

年表に書いた事実の背後に起こったであろう「プロセス」について思いつくことがあったようです。

「劇」で演じつつ「リアリティ」と「理想」を行ったりきたりすると「ファンタジー」が生まれます。「ファンタジー」とはただのウソではありません。こうなりたいという「もうひとつ」のリアルです。そういう像を持たずして、個の尊厳を存分に発揮した人生など歩めないでしょう。まさにこれからの世の光は彼らにあり。現状に甘んじることなく、未来をたくましく切りひらいてゆくマインドの基盤がこうして耕されてゆくのです。

RI

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2016年07月08日

様々な側面から見たSpecial

タイトル:I am Special, You are Special
探究領域:自主自律
セントラルアイディア:私たちはかけがえのない存在である。

[1年生]



今週でいよいよ5週目。
プレゼンテーションが迫ってきました。
今週は主に、プレゼンで使う『成果物』の作り込みを行いました。

当日、発見したSpecialをただ口頭で発表するだけでは物足りないので、
自分の特徴を捉えた等身大自画像とともに、内面的なスペシャルについて発表していく予定です。
テーマの時間とは別に、アートの時間でも、
「見て、見て、描く!」をコンセプトに、ひたすら鏡で自分の姿を見ては、
紙の上で表現するということを行ってきました。

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まずは、自画像。
「本当に、君の鼻こんな形してる?」
「まつげ、もっと長いよね〜」
などなど、自分の特徴を発見しながら、作成を進めてきました。
よーしできた!1枚目が出来ても、そこで終わりません。
もちろん、絵を描くことの得手不得手はあるものの、
みんな1枚目では「見て、見て、描く」が足りないものです。

そこで、全員2枚目、3枚目も作成。
サイズ感や細かいシワや形など、1枚目では捉えきれてなかった特徴も
枚数が進むに従いれて、どんどん描かれる詳細が増えていきました。

次に、模造紙2枚程度の巨大な紙に、自分の体をトレースして、全身の自画像作成へ。
自分のお気に入りの服を着た姿のものを作ります。

鉛筆で全ての詳細を描き終えると、いよいよ絵の具を使って色塗り。
今学期の始めに、3原色から自分の作りたい色を作ることを学んだ彼らが、
「自分の肌色」を作ることに挑戦。

最初は、オレンジすぎる肌色や、白すぎる肌色など。
何度もなんども、作り、ダメ出しをされ、また作り直す。
永遠にこの作業の繰り返しです。
この中で、徐々に自分の肌色を彼らは作り上げていきました。

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この、突き返され、作り直すことで洗練させていく作業は、
自画像作りだけにとどまりません。

この自画像に貼る、自分のSpecialを書き表したシートも、
「大きくはっきり書く」ということを、
何度もなんどもダメだしされながら続けていきます。

「え〜〜〜、また!????」
「なんで〜〜〜?もうできない〜」
と口では言いながらも、もっといいものを見せられたり、
よくするためのやり方がわかると、また黙々と作業に戻っていきます。

こうやってフィジカルに、探究における鍛錬や洗練させる泥臭い作業やメンタリティを
学んでいくのかもしれません。

来週は、いよいよ最終週。
プレゼンテーションに向けて、どんどん発表の練習を進めていきます。
もう既に、今週からSpecialを書き表したシートを清書する前に、
推敲するという意味でも、他の生徒の前で大きな声で読むということをしました。

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前回の発表では、一言も喋ることができなかった子や、
声が小さすぎて聞こえなかった子もいたので、
こうした本番を見据えた練習が、どう効いてくるのか、来週も正念場です!


YI&ES

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構造は橋を両端で支える

タイトル:築きに気づく
探究領域:万象究理
セントラルアイディア:『構造よく力を制す』

[2年生]

先週は「構造を持つ橋」の制作に取り組んだキッズ、
今週は「構造」を持つことによって本当に橋は強くなるのか、実験をしてまいります。

今回制作する橋は「20本のストロー」を材料として、
「セロハンテープ」で接合をしていきます。
まずは、「基準」になる橋、「20本のストローを材料に、平らに並べただけの橋」
の結果を元にして、「構造の強さ」を確かめていきます。
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ただの「平らな橋」は、897gの重さに耐えることができました。
では、構造を持つ橋はどうでしょうか。
今週実験をすることができたのは次の構造をもつ橋でした。

・「トラス橋」
大きな三角形が目を引く「トラス橋」、構造の部分に材料をたくさん使い、大きな三角形一面で全体を支える橋の作りになっています。
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全体が四角形で、内部に「トラス構造」を用いたトラス橋、細かい作りで外側に力を逃す構造になっています。飯田橋からフィールドワークした時にみた高架橋にそっくりの橋です。
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「トラス構造」の中に、縦線を入れた「トラス橋」縦線がどのように力を支えるのでしょうか。
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・「けた橋」
大きな×マークが二つ並ぶ「けた橋」、橋の両側面にそれぞれ配置した構造で、橋全体を支えます。「外側」に力を逃すために、×マークがどのように支えるのでしょうか。
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・「アーチ橋」
中央に二つのアーチ構造を持ち、外側へ力を引っ張り逃す、全体のアーチ構造も綺麗なアーチ橋です。
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では、897gを超えることを目指し、実験してゆきます。。。。

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結果は!
「大きな三角形のトラス橋」意外、すべての橋が、897gを超えることができました!
惜しくも「大きな三角形のトラス橋」は500g代で落ちてしまいました。。
1kgを超える重さに耐えたものは、意外にも「けた橋」と「アーチ橋」の二つでした。

橋の落ち方、壊れ方をよく観察して、なぜ1kgに行かなかったのか、振り返っていきます。
・落ちる時に、折りたたまれて落ちちゃっていたよね。
・上が三角形になっている橋はあまり折りたたまれなかったね!
・てことはバランスがいるのかな?
・そういえば、秋葉原で見た橋にも三角形があったよね!!!
・あったあった、この部分でしょ!?
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・あとはやっぱり、両端で力を支えているから、トラスとか、ばってんの形は強いんじゃないかな?

落ちた橋、落ちなかった橋を比べながら、振り返った結果、ポイントは三つあることに気づきました。

1「バランス」
まず第一に、大きな三角形のトラス橋は、大きな三角形を中央部にあしらった構造になっていますが、その三角形ははじめはうまく橋全体を支えていたものの、すぐに倒れて落橋してしまいました。
幅のある橋を支える時には、両端をバランスよく支えるための構造上の工夫が必要であるということが、わかりました。

2「天井面での支え」
つぎに、「天井面」での工夫も重要なことがわかりました。
天井面で支える棒を直線だけで支えているものは、落ちる時にかならず
橋全体が倒れるようになって落橋していました。
両端をバランスよく支えながらも、「四角形」の構造を維持するために、橋の天井面にも、三角形の構造を採用した「アーチ橋」はそうではない「けた橋」や「トラス橋」よりも多くのお守りに耐えることができたのでした。

*「倒れてしまっている」橋*
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*三角形で支える例*
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3「外側に力を伝える工夫」
「外側に力を伝える」ことは、「構造と力」についての資料を通して学んだことですが、
まさに、「荷重がかかる位置」を斜めのストローで支えて、両側に力を逃し支える構造とすることで、強い橋になることがわかりました。
これは、「けた構造」「トラス構造」「アーチ構造」の三つに共通することで、橋の両端で橋全体を支える工夫がなされており、その結果1kgを超える重さに耐えることができたのです。

実験の後、最も耐えた1.2kgに耐えた「アーチ橋」が支えていた重りを持ってみると・・・
片手で持つにもなかなか重さのあることにびっくり!
2016_T2_G2_structure_W5_11.jpg
さて、来週はついに最終週。
最後の実験とともに、今まで学んできたことのまとめをして、プレゼンに望みます!

TY

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請け負った仕事には責任を

タイトル:いい仕事してますね
探究領域:社会寄与
セントラルアイディア:質の高いものづくりが喜びを生み出す。

[3・4年生]

5週目に突入しました。
ということは、あと2週間で椅子の完成を目指します。
今週からは、切った材料を組み立てていきたいところです。
まだ切り終わっていないチームもいる中、
ここは、切り終わったチームが組み立て作業にいく前に、
のこぎり仕事を請け負うことに。

2016_5wk_atsu_IMGP8113.jpg
「これで、220(mm)を作ればいい?」
「お願い!」





切り終わったチームからしてみれば、
のこぎりを思うように使えるようになってきたところであり、
自信がついてきたところであります。
頼まれたら「喜んで!」といわんばかりの反応です。

しばらくすると、
「はい、できたよ。」
「ありがとう!」
いい仕事ができるようになると注文も多くなり、
予約待ちの状態になるチームまで出てきました。

「なんだか、“ありがとさん工房”いいチームワーク出てきたなぁ」と いう声も。
スクールから届いた発注書は“ありがとさん工房”宛てとなっています。
クラスで13脚の椅子を作ることを請け負ったわけであります。
7月16日の納期までに数を揃えて納品するために、
ここは、13こ分の材料を切ってしまうのが先決になってきました。

2016_5wk_atsu_IMGP8122.jpg角材で脚と支えの部分を作ったあとは、
天板の部分を切り取っておしまいです。
形が今までと違うものの、
のこぎりの扱いに慣れてきた分、
黙々と切っていっています。



2016_5wk_atsu_IMGP8127.jpg材料が揃ったかどうか確認です。
支えの部分が2種類4本ずつ。
380mmの脚が4本。
「あれ?1本足りない?」

自分の材料には名前やメモを書いて保管します。




さぁ、いよいよ組み立てです!
のこぎり作業が好調だったチームでも、くぎ打ちになると練習に苦戦。
なかなか、本番用の木材にくぎを入れる段階にいきません。
一方、のこぎり作業では手伝ってもらっていたチームが
くぎ打ちでは、まっすぐ思った場所に打ち込むことができ、
早くも本番に挑みます。
のこぎりで苦戦した分、丁寧かつ慎重にやることを徹底していることが
くぎ打ちにも効果を発揮しているようにも見えます。

使うくぎは、65mmと50mm。
どちらも長くて太いため、簡単には打ち込めません。
また、一旦、木材の中に入り途中で斜めになると、今度は抜くのに一苦労。

2016_5wk_atsu_IMGP8126.jpg まっすぐ入るように、合図確認。

大変なことはこれだけではありません。
くぎが木材の中でぶつからないよう計算して打ち込む位置を
決めなくてはなりません。
自分で組み立てのイメージができていないと、
どこにどのくぎを打てばいいのかがわからなくなってしまいます。

抜きにくいため、できれば一度で打ち込みたい。
本番用の木材にくぎが斜めに入ってしまっては、商品としての質は落ちてしまいます。
場合によっては、木材の切り直しの必要も出てくるかもしれません。

いいものを時間内に作り上げたい!
普段の授業は3時半まで。
そのあとは、下校する子もいれば1時間遊んで帰る子もいます。
最終下校の4時半まで、作業を続ける子たちが出てきました。
いわゆる「残業」です。

2016_5wk_atsu_IMGP8125.jpg
残すは、あと1週間。
ありがとさん工房、納期前につき、大忙しです。


AN

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私から私たちへの階段

タイトル:個の尊厳
探究領域:自主自律
セントラルアイディア: 私たちは私たちのために生きている

[5・6年生]

「おっちゃん、書きかえるからもう一枚年表ちょうだい」

これから25年をどう生きるかという「人生楽ありゃ苦もあるさ年表」を何度も書き直し、アップデートして、自分がどう生きたいかを真剣に考え続けている子どもたち。

ただなりたい、こうなったらいいな、という夢や願望のとどまらず、そこに立ちはだかる「自分の弱み」という最大の敵であり、同志である存在とどう共存してゆくかまで考えるようになってきました。

こうして25年を歩んだ自分になりきると、そこにシナリオがなくても自然に会話が生まれてしまいます。

「やあ久しぶり」
「おれ今、◯◯してるんだ」
「へえ、おれは△△だよ。でもねえ苦労してることもあってさあ」

なかなか面白い、リアリティのあるやりとりです。ただ、なんとなく物足りない。

「ここまで歩んできたプロセスが見えないんだよねえ」

子どもたちに「難題」をふっかけます。もちろん、困らせるためでも、自分の考えを押しつけるためでもありません。どうなったかの結果と、その途中に成功した、失敗したという事実の「点」は語れているだけで、その「点」にどのように至り、そして 25 年後の今から先、どう歩んでゆこうとするのかが浮かび上がってこないのがもったいないなと感じたのです。

そんなの子どもに要求するのは無理でしょ。そもそも大人だって、これから5年後の未来を想像してみよと言われて苦労するのに……と考えるかもしれません。

しかし、25年後の未来をああでもない、こうでもないと考えることに没入している彼らには、あともう一息の「挑発」が、さらに深く考えるきっかけとなるのです。

そこで、さらにブレークダウンした問いかけをします。

「自分の弱点を乗り越えるほどの情熱で続けられたのは、どんなプロセスがそこにあったからかな?」

すると、ちょっと困難にぶつかると逃げごしになりがちな男の子が

「やっぱりさあ、好奇心がスターなんだよね」

なるほど、まずは、とにもかくにも、面白そう!と飛びつく心がないと始まらないのは確かだ。でも、好奇心だけだと、飽きたり、つらくてやめたくなったりしないか……と問いかけると、別の男の子がぽつりと、

「欲望かな……」

「ぼくの場合は、やっぱりお金を稼ぎたいなという欲望が強いんだよね」

うん、素直でよろしい!お金のためなら続く……生活のためならやめられない……そういう側面はあるだろう。好奇心がスタートで、それが自分のなんらかの「欲望」とつながると続くというのですね。

「でも、それだと疲れちゃうんじゃないかな」

おお、別の子がカットインしてきました。

好奇心→欲望

だけだと「無理」が出てくるんじゃないかという至極真っ当な指摘。

では、疲れにつながらない「無理」ってあるかな?とさらに考えを進めてゆくと、

「もう面白くってたまらなくて、自分の人生のテーマになっているときだよ」

おお、面白いねえ。

「あのね、カレー食べたいなってつくってみるのが好奇心の段階。次に、いろんなカレーが食べたいってあれこれつくってみるのが欲望の段階。でね、カレー博士になってね、オリジナルレシピをつくらないといられないとなったら他者からみると無理に見えても、本人は全然大丈夫なんだよ」

カレーのたとえ話、うまいし、わかりやすいね。

そうか、プロセスを考えることってちょっとわかってきたかも……自分が25年後に実現している状態に至るまで、どこでどんな好奇心を抱き、どんな欲望を持ちながら、単なる欲望を超えて自分の人生の目標にしていったか、具体的にイメージすることなんだな。だったらアイデア浮かんできたぞ……

子どもたちの気づきスイッチONです。

そうなったところで、仕上げの問いかけをします。

「自分がしたいと心から思うことに没頭しているというのが最終段階かな?」

すると……

「だれかの為とか、よりよい社会をつくるとか、自分を超えたらさらにスゴイかも」

おお、さすが。「私」は「個の尊厳」の源だから大事。だけれど「個」は「私たち」のなかの「個」であり、「みんな」とつながってさらに輝きを増します。

「いきなり私たちのため、みんなのためと言ったって、個がしっかりしてないと、結局、きれいごと。一方で、自分のためにだけ生きていてもつまらない。好奇心と欲望からスタートし、自分はこれをせずにはいられないとなったことを世の中につなげて生きる。セントラルアイデア=わたしたちはわたしたちのために生きている という個の尊厳のあり方がクリアになってきました。

私から私たちへの階段。それは私たちから降りてくる階段でもあり、私から登ってゆく階段でもある。

残りはあと1週間のみ。フューチャーライフをシミュレーションする「劇」に没頭します。

RI

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2016年07月14日

2016年度夏休み課題

【課題図書】

<1年生>


<2年生>


<3・4年生>


<5・6年生>





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2016年07月15日

Are you special?

タイトル:I am Special, You are Special
探究領域:自主自律
セントラルアイディア:私たちはかけがえのない存在である。

[1年生]



今週末はいよいよプレゼンテーション。
このプレゼンテーションは、ただ何をやったかを羅列して語るというものではなく、6週間やってきたことを通して、学んだことはこれだ!ということを表現し、伝える場です。

1年生にとって2回目のプレゼンテーションなので、まだまだ緊張が残りますが、「声が小さかった」「たくさん言おうとして、羅列的になってしまったり、冗長的になってしまった」などなど前回の反省をしっかり振り返った上で、プレゼンテーションで何を話すか決めていきました。

発表に向けて、作成した等身大の自画像と、「みためのSpecial」「性格のSpecial」「親から聞いたSpecial」「友達から聞いたSpecial」「できるようになったこと」「できるようになりたいこと」という以上6つの側面から見たじぶんのスペシャルを記述したポスターを作成しました。 もちろん、ひとつの側面にいくつも書きたいことがあるのですが、2つまでと決めることにして、ゆるぎない自分のspecialを発見するという学びにつなげることに。

IMG_1463.jpg

発表では、このポスターを見せながら、これは!と思うスペシャルを2〜3つ選んで語るスタイルで行うことになり、子供たちはなにをしゃべるか考え始めたのですが。。。

ここでスタッフは疑問に思うことが。
「このテーマでまず押さえたいことは、『I am Special』であることに気づくことであって『I have specialities』ではない。このままでは、あれもこれもできてね。。ということを発表して終わってしまう。」

案の定、こどもたちも何を選んで喋ったらいいのやら分からず、なかなか練習が進んでいない。
そこで、ちょっと突拍子もないことに聞こえてしまうかもしれないけれど、一番大事な質問を一人一人にしてみることに。

IMG_1354.jpg
「ねぇねぇ、Tくん、プレゼンテーションでみんなに一番伝えたいこと、こんなこと学んだんだよ〜!ってことって何?」
「う〜〜〜〜ん、いっぱいあるよ…」
「じゃあさ、6週間いろんなことやりながら探究してきたけれど、Tくんってじぶんがspecialだと思いますか?」
「うん!」
「お!いいね!それって、どうしてそう思うの?」
「だってね、僕はこのテーマが始まってから頭がぐるぐるしちゃってさ、最初Specialの言葉の意味が分からなかったから、お家に帰ってママにすぐ聞いたし。そうやって、ぼくは不思議に思ったことをそのままにしておかずに、自分から調べられるんだ。」
「なるほどね!これ、本当に素敵なことだと思うよ!」
「そっか!これを僕話したい!あ、でもポスターに書き忘れてた。。。」
という会話を全員と丁寧にしていきました。
改めて「あなたはスペシャルな存在なの?」と聞かれると、ハッとしながらも、一番じぶんが大事に思っている核の部分がぽろっと出てくる。
このテーマの核に立ち返って、一番伝えたいことを選んで、プレゼンに向けて練習を行いました。
これを躍動感のある語りでお客さんに伝えられるように、あとは練習あるのみ。
前回は、一言も喋れなかったり、泣いてしまったりする子もいましたが、今回はどうなるのでしょうか?

YI&ES

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「比較」することで見えてくるもの

タイトル:築きに気づく
探究領域:万象究理
セントラルアイディア:『構造よく力を制す』

[2年生]

ついに6週目がやってまいりました、テーマ学習も大詰めです。
先週休んでいた子も復帰してきて、プレゼンテーションに向けて、
アイディアをまとめてまいります。

・「トラス構造」の力の伝わりかたはどういう風になっているんだろう?
「そういえば、この資料では真ん中にかかる荷重に対して、斜めの棒が引っ張ってくれるんだよね」

「え、じゃあこれって真ん中は意味があるんだけど、その周りは意味がないってことなのかな?」

じゃあ実験してみよう!

ということで、真ん中だけに三角形がある橋と、全体がトラス橋になっている橋を作って、比べてみます。
2016_T2_G2_structure_W6_08.jpg 2016_T2_G2_structure_W5_04_02.jpg

強度を比べてみると、重さへの強さは100gも違いました。
橋の形 耐えた重さ
全体がトラス構造 948g
真ん中だけがトラス構造 818g
真ん中だけのトラス橋:818g 全体がトラス構造のトラス橋:948g
さらに、落ち方も大きく異なりました。
全体がトラス構造になっているトラス橋は、上からの力に強く、橋が曲がる、というよりは「倒れて」落ちました。
2016_T2_G2_structure_W5_08.jpg
しかし、真ん中だけがトラス構造になっているトラス橋は、橋けたが大きく湾曲してしまい、その結果力を支えきれなくなって落ちてしまいました。
2016_T2_G2_structure_W6_11.jpg
つまり、トラス構造は、「荷重がかかることによって橋全体を曲げてしまう力」に耐えることができる「構造」であるということがわかるのです。
真ん中にかかる力が左右に引っ張られて支えられますが、その支える力は真ん中だけではなく、落ちそうになるところで持ちこたえてくれるのです。

さて、このことも踏まえてプレゼンテーションに向けて準備を進めていきます。
話すことをまず、リストアップしてそこからそれぞれの担当を決めて行きます。

・トラス構造の特徴
・トラス構造の実験結果
・トラス構造がなぜ強いのか、その仕組み
・アーチ構造の特徴
・アーチ構造の実験結果
・アーチ構造がなぜ強いのか、その仕組み
・全体のまとめ

この話のなかで、今まで実験したこと、その結果をプレゼンテーションします。
今回、プレゼンテーションには、「資料」を使います。
プレゼンテーション資料には、まず基本的には「写真」を載せます。
さらに、数値が必要なものについては数値を載せて強調することによって、
プレゼンテーションがわかりやすくなります。
ついに今週末、プレゼンテーションです!

TY

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決断するのは自分

タイトル:いい仕事してますね
探究領域:社会寄与
セントラルアイディア:質の高いものづくりが喜びを生み出す。

[3・4年生]

椅子に必要な木材の切り取りが終わり、いよいよ組み立てていきます。
のこぎりで切るのと同様、組み立てもチームワークを要します。

2016_8_4_atsu_IMGP8131.jpg  2016_8_4_atsu_IMGP8136.jpg

床に接する脚の側面をしっかりと揃えた状態で固定することがポイント。
ここがガタガタ椅子になってしまうかどうかの分かれ目です。
釘を打つ反動で木材がずれてしまったときには、ストップをかけ、
釘が曲がってしまったときも「曲がってるよ」と声をかけるなど、
押さえる側にも任された仕事があるわけです。

2016_8_4_atsu_IMGP8134.jpg
4本脚が揃い、椅子の形が見えてきました!
実際に平らなところにおいて、
浮いている脚がないか確認してみます。




「うーん、どうかな。」
天板を取り付ければ完成のところまできています。
ここは、一気に完成させたい。
でも、気になるところがあるならば、
もう一度、釘を抜いて取り付け直すことも必要です。
それがどれだけ大変なことかは、本人がいちばんよくわかっています。

2016_8_4_atsu_IMGP8145.jpg 「どうだろう。」
何を優先して判断するかが問われます。
人に聞いて、「いいと思うよ」と言われても、最終的に判断するのは自分です。
あとで、「誰々が言ってたからこうした。」というようになってしまっては、 自分の仕事に責任が伴っていないことにもなってしまいます。 自分のしてきたことに堂々と責任をもった、自信作にするために、 どこまでこだわりをもつかが、この6週目にきて、それぞれに突きつけられた課題となりました。

2016_8_4_atsu_IMGP8142.jpg組み立てては壊しを2回繰り返したけど、
どうしても1本の脚が浮いてしまう。
何が原因?
そもそも木材の側面が斜めすぎ?
「このパーツをもう一回作り直したい。」
周りで組み立て作業をしている中、のこぎり作業を始めた子がいます。

「押さえるの手伝うよ。」
一人ではやりにくく、また時間が足りないのも、明らか。
自然とサポートしようという雰囲気になっている様子です。
組み立てたものを外してやり直すことに、始めのうちは、ためらいや、ため息が
出ていましたが、それぞれの目指す道へ没頭するようになると、
「もう一回やってみよっと。」と言っては、
前向きに作業を進めていく姿へと変わり、週末には完成する!という気迫が
感じられるようになってきました。
のめり込む姿は、まさに「仕事人」です。

2016_8_4_atsu_IMGP8140.jpg
仕上げのニス塗り。
暑い中、椅子の側面にムラが出ないように塗っていきます。





ニスを塗ったあとは、半日乾かします。
その間も、仕事は続きます。
釘抜きをした分、曲がった釘が大量にできてしまいました。
釘不足を解消すべく、釘をまっすぐに金槌を使い整えていきます。

2016_8_4_atsu_IMGP8144.jpgそれぞれの直し方を見つけ出し、
釘直し職人のいる「釘工場」に。
はまってしまうとなんでも楽しめてしまいます。





2016_8_4_atsu_IMGP8132.jpg「清水建設の人の真似してみよう!」
端材を当てて、椅子に直接金槌が当たらないようにしています。 隙間を少しでも埋めて、丈夫な椅子を作ろうとしています。 どう作業していくか、どこで完成とするか、
他者のアドバイスを受けながらも、
自分の判断で決断することを促していきました。

週末は、自分が作った椅子を前に、作った思いをプレゼンします!


AN

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なりきることで見える「将来像」

タイトル:個の尊厳
探究領域:自主自律
セントラルアイディア: 私たちは私たちのために生きている

[5・6年生]

「いろいろあったねえ」
「この店をヒットさせるには、大変だった」
「おまえもか。おれも会社を経営するって言ったっておれみたいなやつにできることなんか限られているから、本当に大変だった」

劇の中で、夢の料理人になり、ようやくレストランの経営が軌道にのりつつある子と、祖父のあとを継ぎ、機械の制御システムを開発する会社の経営に日々苦闘している子が、劇中で交わす会話です。

ただこうなりたい!と夢を語るだけでも、5・6年生としては上出来なはず。しかし、なりたいだけでは済まさず、そこにいたるまでのプロセスで何が起きるかをリアルに「追体験」する。これが「即興劇」の本領だ。

なかなかヒットメニューが生まれない……自分の味にはこだわるが、そこにお客さんが食べたいという発想がなかった……

そもそも技術がない……従業員をどうまとめてゆくかも大変……

「もし〜だったら」という「架空」の話ではなく、実際に自分の人生を「追体験」しているのです。

未来の人生を「追体験」する

なんか不思議に思うかもしれません。既に経験したことを「追体験」するのではなく、まだ起こるかどうかわからないことをリアルに経験し、これからの経験に生かすなんてできるの?

それができるのです。これが本気の妄想力というか、なりきることのスゴさです。

「おれはね、困ったとき、小さなことでもとりあえず、書きとめておくことをしてた。その積み重ねがあったからここまできたかもな」
「自分だけのことだけじゃなくて、相手のことも考えていかないとね」

キャリアを築きあげてゆくときに、自分のことだけ考えていてはダメ。とはいえ、自分の「強み」は思いきり発揮しないといけない。と同時に「弱み」も認識していないといけない。「強み」を生かし「弱み」とうまくつきあってゆくには「努力」が必要。その「努力」を、自分の怠け心が妨げようとする。その葛藤の中で、あるときは負け、さんざんな目にあい、あるときはなんとか乗り越え、なんとかここまできた。理不尽な目に会うのは避けられないが、そのときに自分がどう立ち向かってゆくかは決められる。「結局、自分の目の前にはいっぱい選択肢があってさ、その選択肢自体は『偶然』眼の前に現れるし、運命かもしれない。でもね自分がどの選択肢を選ぶかは『意志』なんだよな」

この発言だけ聞くと、子どもがこんなこと言えるの?と思うかもしれません。しかし、この議論は1週目に、人は意志を持って生きることができるのか?偶然とどうつきあってゆくのか?という問いによって考えたことでした。それが伏流水となって、今、こうして「即興劇」を通じて人生をシミュレーションして浮かび上がってきたのでした。

前途に苦労があるのは当たり前。それを賢く乗り越えてゆくのも当たり前。うまくいくときもあれば、鳴かず飛ばずのときもある。しかし、あきらめずに取り組んでゆけば、それが当初の目標とは異なっても、いつか、自分が納得できる地点へ到達できる。そのカギは「個」の強みと弱みをしっかり知って歩むことです。

「お互い大変だったなあ。やっと人生の折り返し点だね。さあ、これから人生後半をしっかり生きていこうぜ」

と実感して、再び、12歳の自分の戻るのです。

ひたすら即興劇を繰り返し、未来と現在とを行き来する「時間旅行」。このゆさぶりを通じて、「やってみたいなあ」という漠然とした思いつきが、より詳細で、現実的なイメージへと変化します。「劇」のレベルがどんどん上がってゆくのはもちろんのこと、彼らのシミュレーションの質も高まっていきます。子どもたちは、もはや子どもたちと呼ぶのははばかられるほど大人びています。りっぱなアラフォーの「おっちゃん」「おばちゃん」になっているではありませんか。

生きてゆくのは大変……でも、生きてゆくのは面白い……どんなことがあってもたくましく、しなやかに生きてゆこうという気持ちがみなぎっています。

私にできることはもはやありません。そろそろ私は「天」に登る潮時を迎えたということですね。即興劇そしてその後の弔辞。彼らの堂々たる雄姿が目に浮かびます。

RI

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2016年07月22日

『築きに気づく』〜振り返り〜

タイトル:築きに気づく
探究領域:万象究理
セントラルアイディア:『構造よく力を制す』

[2年生]

二年生の万象究理では定番の「築きに気づく」
セントラルアイディア「構造よく力を制す」を中心に据えて学んでまいりました。
築きに気づくの学びを振り返ってみると、学びのポイントは三つありました。
1.実験結果を予想する
2.実験データの記録
3.実験結果を比較する

まずは、実験結果を予想しました。
「一本の橋」は「87g」
「二本の橋」は「176g」
じゃあ、三本は?
というふうに、一本、二本、と対応してどのように耐えられる荷重が増えていくかを考えました。
さらに、構造があることによって強くなるか、どのくらい強くなるかをそれぞれで予想しました。
初めは当てずっぽうでも、実験を繰り返していく中で「強そうか、弱そうか」を判断し、実験結果に近い値を導くことのできる人もいました。

さらに、意識して学んできたのは「実験データの記録」をすることで「比較」をして、構造の強さについて考えて続けることでした。
とにかく表をしっかりと作り、実験結果をまとめる。
一見地味なようで作り上げるとまた比較がしやすくなりどんな実験を次にしたいか、そんなことをみんなで考えていました。
その結果として、最後の最後ででてきた「真ん中だけにトラスがあったら強いのかな?」という疑問は、
・「全体にトラス構造がなくてもいいんじゃないか、真ん中だけを補強すれば強くなるんじゃないか?」
・「全体にトラス構造があれば強いはずだ、専門家もそう言っていた」
といういくつかの仮説を持った上で生まれてきた疑問でした。

また、途中で橋を作るところで休んでしまった子の橋をみんなで協力して作ろう!と一致団結しました。
全員が力を貸して橋を作り上げ、実験することができたのは、彼らにとって大きな学びになりました。

ただ、今回の学びの中でやはり振り返らなければならなかったのは「プレゼンテーション」でした。
「サイエンスプレゼンテーション形式」とは言っていたものの、声が小さくなってしまいました。
内容はしっかりと考え抜かれたことだったとしても、声が小さくなってしまっては伝わりません。
次の学びではぜひ元気なプレゼンテーションで自分たちのアイディアを聴衆のみなさんに伝えて欲しいです!

TY

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2016年07月25日

『I am Special,You are Special』〜ふりかえり〜

タイトル:I am Special, You are Special
探究領域:自主自律
セントラルアイディア:私たちはかけがえのない存在である。

[1年生]

プレゼンテーションでは生まれて初めて描いた等身大の自画像と共にこのテーマ学習で発見することができた自分のスペシャルについて一人ずつがスピーチを行いました。

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子どもたちにとって2度目となる今回のプレゼンはオーディエンスの数も増え、緊張の面持ちはありましたがどの子も自分のとっておきのスペシャルについて語ることができました。

前回は思ったように話をすることができずに固まってしまった子たちも今回はさらなる大きな一歩を踏み出せてとても嬉しそうです。

「負けず嫌いな自分」、「チャレンジを楽しめる自分」、「自然の中で遊びを自ら作り出す自分」、「正直な自分」、「遊びを盛り上げる自分」、「ふりかえることができる自分」、「手先が器用な自分」など”自分らしさ”溢れるスペシャルについて認識できたことはこれからの探究や学びにおける原動力となっていくことでしょう。

また一方でプレゼン後のリフレクションでは前回のプレゼンと自ら比較して自分のできたことと改善点についてそれぞれの子がスラスラと話し出したことが印象的でした。

この2回のテーマ学習の経験で彼らの着実な成長を感じることができました。

「前は大きな声が出せなかったけど今回は出せて良かった!でもだんだん声が小さくなっちゃったから大きいまま今度は話したい。」
「早口になっちゃったからゆっくり話したい。でも緊張はしなかったよ。」
「お腹を見せるのを忘れちゃった!もっと笑ってもらえたはずなんだけどなあ(笑)」
「Kくんは身振り手振りを使って話してたし、笑顔が良かったから面白かった!」
と他の子のプレゼンのいいところも観察し、自然にフィードバックしているところに感動(涙)

一点気になったのはQ&Aタイムで質問があった”隣の子のSPECIAL”について話す際に詰まってしまい、どんどん出てこなかったこと。

そういった意味では今後も友達や他の人のYou are Specialを認識して、尊重することができるようになっていくことはまだまだ私たちの課題のようです。

自主自律の学びの第一歩を踏み出した子どもたち。
これからも自分たちのSPECIALをひろげ、またお互いにどんどん発見していくことになるでしょう!

YI&ES

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『いい仕事してますね』~ふりかえり~

タイトル:いい仕事してますね
探究領域:社会寄与
セントラルアイディア:質の高いものづくりが喜びを生み出す。

[3・4年生]

プレゼンテーションデイは、スクールと約束をした納期でもあります。
自分の作った椅子を前に、
「釘で組み合わせたあとにできてしまった隙間を何度もトンカチで叩くことで埋めました。」
「設計図通りに作っています。」
「釘を多めに打つことでグラつきをなくしました。」
「座りやすさを考えて天板の置き方を考えています。」など、
椅子に込めてきた思いをそれぞれに語っていきました。

同じ設計図、材料も同じ、見た目はどれも同じ椅子が13個揃いました。
でも、作り手の思い入れがどこにあるのかは、みんな違っていました。
スクールの仲間や聴衆のみなさんに実際に座り心地を確認してもらいました。
「近くで見たり、座ったりすると、それぞれに性格が表れている感じがします。」
そういった声も聞こえてきました。

プレゼンの最後に「自分の椅子に値段をつけるといくら?」という質問が出されました。
材料費1500円を基準にどれだけの価値をつけるか、悩みながらも、
子どもたちの値段設定は1500円〜6500円というものでした。
プレゼンの中では紹介できませんでしたが、これには明細がありました。
自分が頑張った分は値段をあげたい。でも、椅子に傷をつけてしまったり、
釘を抜いて穴をあけてしまった分はマイナス。
職人の人に教えてもらったり、真似して盗んだりした技を使っている分はプラス。
自分で作った椅子は世界にひとつしかないという価値も値段に入れたい。
手伝ってもらった人への謝礼分を入れている子もいました。
中には、こんな設定をした子も。
難しかったけど楽しかったから0円にしたい。
でも、値段がつかないのは価値がないことにもなるから自分の仕事分は1000円。

のこぎりや金槌での椅子作り。なんだか楽しそう!という気持ちで始まったものの、 いざ使ってみると、思ったようにはいかず、苦労する時期に突入しました。その後、 ボランティアの方からのアドバイスや実際にプロの職人さんの仕事ぶりを目の当たりにして、 真似していくうちに、自分なりのコツをつかみ始めます。うまくできなかったことが、 できるようになると、楽しくなりもっとうまくなりたいという気持ちが技の向上を加速させていきました。 椅子のできあがりが近づくと、「できた」と思っても、「本当にできた?」と問うことで 自分のこだわりが浮き彫りになり、「まだよくできる」と質の高さを求めて作業にのめり込んで いったことが子どもたちの大きな変化だったように思います。短絡的な楽しさではなく、ものづくりの奥深さや楽しさを味わったことで、今後もこの「つら楽しさ」の醍醐味を追い求めていってほしいと思っています。

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AN

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『個の尊厳』〜ふりかえり〜

タイトル:個の尊厳
探究領域:自主自律
セントラルアイディア: 私たちは私たちのために生きている

[5・6年生]

先輩たちによって市川力の葬儀は終わり、相模湾への散骨、そして材木座の丘への納骨は終わった。その後、仲間たちの経営する逗子の中華レストランに集まって久々の「同窓会」となった。それぞれが近況を語り、これまでの人生を語る。見事に25年後にタイムスリップした世界が生まれた。

劇そして『お別れ会』での弔辞が終わり、オーディエンスはあまりのリアリティに驚愕しています。子どもをなめてはいけませんぞ!本気になった子どもはスゴイのです。

「有限の人生で何をなすべきか、私自身深く考えさせられた。」

「人の死を自分の活力に変えて生きてゆく力を感じました。」

「他者と関わり刺激を受け何かを感じることが生きることの素晴らしさな
のではないかと思いました。」

「ただ夢を描くのではなく、具体的に自分の夢を描写していく。そこに個の尊厳のテーマの価値があると思った。」

これらはフィードバック用紙に書かれた大人からの熱いメッセージのほんの一部に過ぎませんが、大人たちが魂をわしづかみにされ、子どもたちの学びの深さを実感したことがひしひしと伝わってきました。

リフレクションのとき、子どもたちひとりひとりの顔には、単なる満足感ではなく、一段上のステージに成長した実感をつかんだ自信があふれていたのが印象的でした。

リフレクションの最後に、これからの自分を支える漢字一文字を選ぶという課題を出しました。

「独」「創」「作」「続」「一」「柔」「生」「広」「笑」

いつも通り、テーマ学習は、終わりが始まり。「個の尊厳」を持って生きてゆく旅の始まりにふさわしい、お守りとなる「字」をみごとに子どもたちは選んでいました。

人生楽ありゃ苦もあるさ。思いっきり生き抜いていこう!

RI

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