東京コミュニティスクール-探究型学習が教育の特長-全日制オルタナティブスクール(小学1年生から6年生)

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2014年02月 アーカイブ

2014年02月07日

自然災害って何?

[1・2年生]

「表裏一体って何?」
まずは、聞き慣れないテーマタイトルから「?」が浮かんできます。
一文字ずつ、訓読みしてみると、
「表と裏が一番ってこと?」
「表と裏がひとつのかたまりってことかな。」
「トランプは表と裏があって、合体してひとつになってる。」
言葉のイメージができてきたところで、後々つながっていくことを期待しつつ、
話題を「自然災害」に切り替えました。

今日から新しいテーマが始まるということで、朝の会でそれぞれのテーマについて
少しだけ話が出てきていました。
そのときの「1・2年生は自然災害だね。」という言葉をもとに
「自然災害」と聞いて思いつくことをどんどん出していきます。

「自然って何?」「地球のこと?」
「災害って何?」「壊すこと?」
「地球は生きているから、動いていて、揺れたりすると爆発したり・・・」
「火山だってそうだよ。」
「マグマとか溶岩とか。名前は知っているけど、よくわからない。」
「テレビで街に川が流れてきて天井くらいの水になっているのを見た。」
「東日本大震災で木とか倒れたり、山の石がおっこってきたり、」
「福島で津波が起きて、家とか倒れて人間がつぶされて、車が水に浸かっちゃった。」
「テレビで高波注意報って見たことある。地震が起きなくても津波は起こるんだよ。」
「津波って地球が暴れてるってことでしょ。」
「自然は動かすことはできないよ。できるのは、かみさま?」
「ナマズが暴れて地震が起きる。」
「地震は石と石がぶつかって起きるんじゃない?」
「太陽が地球を吸い込んで、地球がいやだーって戻ろうとして、
その振動で地震が起きるって聞いたことがあるよ。」

意見を出している最中、ふと、外を見ると雪がちらほら。
「あっ!雪だー!」
「自然が動いてる。」「地球が動いてる!」と大興奮。

どんな話が出てきたか、確認していくと、
「あのさー、災害ってやっぱり意味がわからない。」
そこで、自然が怖いと思った経験から、災害につながっていくのではと思い、
「自然の怖さって聞くとどんなことが思いつく?」と問いを変えてみると、
「虫を食べちゃう葉っぱ」
「花カマキリって、相手を騙して食べちゃう。」
「おばけのおうちが大阪にあって、逃げられなくなるんだって。」
子どもたちにとって、自然の怖さというのは、災害とは別のイメージを
持っていることがわかり、改めて「災」と「害」について
漢字成り立ち辞典で調べてみることに。

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辞典を読んでから、自分たちの言葉で置き換えてみると、
次のようになりました。
災:不幸なできごと、嫌なこと
害:邪魔すること、動きを止めること

子どもたちのprior knowledge がメタメタマップ1枚分になったところで、
「これまで出てきた自然災害で気になることはある?」と、次の段階に進みました。

「溶岩と火山は違うの?」
「大きい津波のことが気になる。」
「マグマってどういうもの?」
「高波ってどういうもの?」
「なんで自然は動くの?」
「隕石が落ちたらどこに非難すればいい?」
「雷ってどういう形?」「雷のピカピカって見たことない。」
「竜巻ってどうしてあんなにグルグルしてるの?」
「竜巻って人間が砂山を作って起きるから自然じゃないと思う。」
「風が大きくなって竜巻が起こるから自然だと思う。」

今回のテーマでは、参考図書として、『ビジュアル 地球大図鑑』を主に使用していきます。
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図鑑やそのほかの資料を読み解きながら、
Knowledgeableな人(いろいろなことをたくさん見たり、覚えたり、興味を持ったりする人)、
Thinkersな人(なんか変なものを見つけて考えて、いつかは絶対にひらめく人)、
Balancedな人(片方に偏らないで両方のことを認める人)を
目指していきます。

子どもたちは、すでに図鑑に目を通していて、伝えたいことが盛りだくさん。
来週からは、資料を一緒に読み込んでいくことで、知識をどんどん更新していきます。


AN

TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

学び続ける人としてはばたくために

[6年生]

今年も6年生は、エキシビションに挑戦です。エキシビションとは、

自分が強く関心を抱き、熱意を持って追究したいと思うテーマを子ども自身が選び、これまで培ってきた学びの方法論と経験を総動員して取り組む卒業研究

のことです。これを卒業式の日に発表し、みんなで celebrate & encourageするというのがTCS流です。

今年は年度当初からエキシビションを意識し、テーマを何にして、どう追究するかについて子どもたちと考えてきました。テーマ学習の時間をフルに使って取り組むのは、2月から。卒業式の3月22日までの約2ヶ月、スクールでのほぼすべての時間を使って没頭します。

これまで行ってきたテーマ学習は、 教師が与えた「取り組む意義のあるミッション」を追究するものでした。しかし、エキシビションは
自らテーマを選びとるところからスタートし、自律的に追究を進めてゆかなければなりません。これまでは一緒に空を飛んできましたが、いよいよ単独飛行への挑戦です。したがって、途中、いろいろな困難に出くわし、安定飛行も、きれいな着陸も難しいでしょう。だからといって、私たちが手を差し伸べ過ぎたならば、結局、彼ら自身の学び続ける力を養い、発揮する機会を奪ってしまいます。私たち周囲の大人ができることは原則としてほとんどありません。子どもに任せないといけないのです。

テーマ選び、セントラルアイデアの決定、追究プランの立案、リサーチの遂行、そして最後にまとめて発表準備をする。
このすべてのプロセスを、すべて子ども主導で行わなくてはなりません。

では探究教師の役割は、ただ黙って見ているだけか?というとそんなことはありません。子どもたちが探究できるようにジェネレイトするという大事な役割を担っています。

まず、意義のあるテーマにたどりつくように子どもたちの思考に寄り添うことが求められます。エキシビションで絶対に避けなければならないのは、ただの調べ学習になってしまうことです。テーマを決めることだけに引っ張られると調べ学習の罠にはまります。そうならないためには、セントラルアイデアを明確にし、自分がやりたいと考えているテーマとつなげて、「仮説」を導きます。

次に、これまでテーマ学習でどんな学び方をしたか「ともにふりかえり」、これまで自分たちがさまざまな学び方を既に経験し、身につけていることを掘りおこします。ネット情報は、最初の手がかりにはなるが、それだけに依存してはダメ。インタビュー、調査、実験といった「1次情報」を大事にすること。得た情報・データをもとにさらに「問い」を見出してゆくこと……といったことを一つひとつ確認し、これから行う追究に活かしてゆくように伝えるのです。

最後に、子どもたちの進捗状況をつかみ、フィードバックを返すことです。どう進めてよいかわからず滞ってしまったとき、ただやり方を教えてしまうのではなく、どこに問題があるのか一緒に考え、どう打開していったらよいか協議します。こうして少しずつ自信を高め、自らしぶとく「仮説」を確かめようとする力を育ててゆくのです。

ここまで、教師のジェネレイトについて述べましたが、エキシビション では親の「サポート」も不可欠です。実は、これがとても難しい……なぜなら、「サポート」ではなく「チェック&叱責」になってしまいがちだからです。

「まだ、こんなことやっているの?」
「こんなこと調べて何の役に立つの?」
「もっと他のデータに当たりなさい」
「これじゃあ間に合わないでしょ」

どうしてもこんな言葉を発してしまうのではないでしょうか。これでは encourage どころか discourage です。親も子どもとともに「探究」するのを「楽しむ」という姿勢がなにより重要です。どんなことに関心があるのか、とにかく「聴き」、役立ちそうな知識・資料を探し、提供する。そして、「1次情報」を得るために、現地に出向いたり、現人との出会いをセッティングしたりする。そのことに徹し、子どもが自律的に学ぼうとしている姿勢をとにかくencourage する。

それが親として探究する学習者を育てる上での最大の「サポート」となることを胸に刻んでおく必要があります。

RI

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イノベーションってなんだろう?

タイトル:ロストエナジー
探究領域:共存共生

[5年生]

東日本大震災と福島第一原発事故の発生からもうすぐ3年を迎えま
すが、いまだ解決の方向性は見えません。
事故の直後は声高に叫ばれていた節電や省エネについても、国民の
関心が少しずつ薄れつつあるのを感じます。
週末の都知事選の争点として、各候補者の原発・エネルギー政策が
メディアを賑わす中、今年度最後のテーマ学習が幕を開けました。

まずは子ども達のエネルギー問題に対する既有知識を探ります。

「都知事選は誰が選ばれるかでエネルギー政策が変わるので重要だ
と思う。けど、当選した途端に意見が変わることが多いから、あん
まり信用できないんだよな・・・」
「ニュースで放射性廃棄物のことをやってたけど、正直あまり興味
ないんだよね。知ってた方がいいとは思うんだけど・・・」

初っ端に出て来た正直な感想を聞くと、大人の勝手で無責任な言動
が子ども達の物の見方に大きく影響を与えていると改めて感じます。

「取っ手をぐるぐる回して使える懐中電灯をみたことがある!あれ、
どんな仕組みなんだろう?」
「水力発電や風力発電は聞いたことがあるよ。」
「地熱発電ってのもあるよね。けど、なんで発電につながるのかさ
っぱりわからない。」
「地球温暖化で北極の氷が溶けているらしいよ。」

メタメタマップを書いていると、日常生活の中で子ども達が多くの
情報に触れていることを実感します。
ただ、それは「知っている」の域を出ず、まだ使える知識ではない
ようで。

「エネルギーって車のガソリンみたいなもんでしょ?人間にとって
のエネルギーは食べ物だと思う。」
「そうしたら、水も人間や魚にとってのエネルギーかも。」

(ふむふむ、まだエネルギーの概念は曖昧のようだな。)

5年生2人という少人数のクラスですが、たった1コマ(45分)
で2枚の模造紙が埋め尽くされていきます。

子ども達の現状の認識を探ったところで、今回のテーマのミッション
を提示することに。

『「消費電力50%減で豊かに暮らす社会」を実現するイノベーション
を提案せよ!』

聞き慣れない言葉に頭に?マークが浮かぶ様子が伺えます。
そこで、さらに追い打ちをかけるように2枚の写真を見せると・・・

「誰、この人???」

とますます混乱する子ども達。

写真に写っていたのは、イノベーションの祖シュンペーターとイノ
ベーションという言葉を世に知らしめたドラッカーの2人の知の巨
人だったのです。

写真に添えられていた「イノベーションとは創造的破壊である」の
言葉が気になって仕方がない子ども達に私なりの解釈を伝えると・・・

「あ、それって「読む」の授業で読んだ「おじいさんのランプ」の
話に似ているかも。電気が登場して、ランプが全く売れなくなって
しまったんだよね。」

と早速男の子が反応します。

「おお、まさにそれはイノベーションの一例だよ!」

他の教科で学んだこととつなげて理解を深めるとは素晴らしい!

イノベーションの根底にあるのは、人の価値観に変化を与えるとい
うこと。
ただの思いつきのアイデアではそれを実現することはできません。

そこで、まずはエネルギー問題の背景から探っていくことにしました。

HY

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2014年02月17日

判断基準ってなんだろう?

[3・4年生]

私たちは日々何らかの意思決定をして過ごしています。ですから人生は”意思決定の連続”と言うこともできるのではないでしょうか。
このテーマ学習ではいくつかの選択肢を意識しながら、責任の伴う 意思決定をどう行ったらよいか様々な方法で探究していきます。


テーマ1週目はまず意思決定とはなんだろう?ということについて考えることからスタートしました。

「意思って辞書で調べると”思っていること”や”考え”って書いてあるから、覚悟を示すみたいな意味じゃないかな?」
とある子が発言しました。

「じゃ決意するみたいな意味かもね。」とまた別の子が言います。
「ただ決めるのと決意って違うよね。決意ってなんか少し難しいけどがんばって達成する目標みたいな感じがする。決意って言うからには口だけじゃダメだよね。」
だんだん議論が面白くなり、核心を突いてきます。
「意思が弱いとか言うじゃん。この言葉って自分が決心したことをやり遂げない時に使うよね。三日坊主みたいにさ。」

そこで私から「みんなが最近した意思決定をそれぞれ聞かせてくれるかな?」と問いかけました。

「うーーーん。意思決定ってほどの決意はしたことがないかもしんないなー。」と悩み始める子どもたち。
「たしかにー。そこまですごい決断はしたことないな。」
「意思決定って”ぼくはこれからずっと友達の悪口を言わないことにします”とかやることを決めて宣言するようなことだよね?」
どうやら子どもたちは重要な意思決定のみを意思決定というと思い込んでいるようです。
そこで、「じゃあ外へ出掛ける時にもう一枚上着を着ていくことにした。とか、缶ジュースを選ぶ時にこのジュースに決める。とか、お小遣いで買うものを自分で決めたりすることはどうかな?それも意思決定じゃないの?」と言うと
「あ!そっか!それも意思決定と言えば意思決定なんだ。じゃ毎日行動するたびに意思決定をしてるってことになるのかな?」

そこで日常的に行なっている意思決定についてどんなことをしているか聞いてみることにしました。すると•••
・ブックオフにこの前古本を売った。
・10時間でマリオを十個クリアした。
・松岡修造の本を予定通り読んだ。
・リニアモーターカーに乗った。
・野球の試合でヒットを打つために毎日素振り練習をすることに決めて、ヒットを打つことが出来た。
・筆箱を開けた。
・恥ずかしいけど発言した。
など毎日行なっている行動も意思決定があって選ばれていることを少し意識することが出来たようです。

翌日は普段自分が行なっている意思決定の判断基準はいったい何なのか、ふりかえって考えてみることに。
それぞれに自己分析をしながら自分にはどんな判断基準を選ぶ傾向があるか話し合います。

「ぼくは“面白い”かどうかで決めることが多いかな。ゲームやマンガもそうだし。」
「見た目だけじゃなくて中身も考えて決めるってぼくも同じ!見あたわざれば即ちなんとかの中身知らずって孔子先生の言葉にもあるよね。」とKくん。
「“損得”ってのもあるな。」
「“欲望”もある!」
「“気分”で決めちゃうこともある。」
「おれは優先席には空いてても疲れてても座らないよ。」
「それは”男の生き方”っていう判断基準だ!」
「えーー、けどそれってやせ我慢じゃないの?やせ我慢は身体に良くないんだよ。」
「Tくんは“現実的”だねー。“現実的”に決めるって判断基準じゃないの?」
「じゃあさあその逆に”理想的”かどうかで決めることもあるよね。」
「あと本当はこっちがいいけど、まあこっちでいいやって決めることもある。」
「あ!それって“妥協”ってことか。なるほどなるほど。それもあるね。」
とみんなでひらめきをシェアしているうちにどんどん自分たちの判断基準が浮かび上がってきました。

来週はそれらの判断基準を意識してケーススタディを行ないます。
2週目もはりきっていこう!

YI

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2014年02月21日

自分の言葉に置き換える

[1・2年生]

子どもたちにとって、自然災害とは、地球が暴れること。
地球が暴れるというイメージからは、まず火山が思い浮かぶようです。
マグマって、どういうもの?
溶岩と火山は違うの?
地球大図鑑をめくりながら、火山のページを開きます。

目次を見ると、火山は「生きている地球」という
タイトルの中に掲載されています。
「生きている地球だって」と、すばやい反応。
なぜなら、先週、自然災害についての話し合いの中で、
同じ言葉が出てきていたからです。
「自然は地球のこと、地球は生きているから、暴れたとき災害になる。」
この発言が模造紙のメタメタマップの中に残っていることから、
「そこに書いてあることと同じだ!」「本当だ!」と
うれしそうに、自分たちの知識とのつながりを考えていきます。

火山の様子が鮮明な絵で飛び込んでくるため、
気になった絵を見て、解説を読んでいきました。


%E7%81%AB%E5%B1%B1IMGP3063.jpg マグマとはきわめて高温の液体状の岩石のことで、
マグマだまりとは 地球の上部マントルから上昇してきた
マグマが蓄えられた所をいう。
地表に達したときの温度は、
通常約1200℃にもなり、赤く輝いて見える。

溶岩に含まれる火山ガスは、溶岩が冷めるとともに気泡になって抜けていく。


いろいろ難しい言葉も出てきていますが、わからない言葉が理解できると、
「それじゃあ、マグマだまりはマグマのお風呂だね。」
「え、もっと熱いから、マグマの温泉だよ。」
「入れるかな。」「1200℃って温泉より熱いよ!倍の倍の倍の・・・くらい熱いよ!」
「入ったら、溶けちゃうよ。」
「ガスが抜けるって、おならのこと?」
「そうだ、おならってガスでしょ。」「火山ガスは溶岩のおなら。」といった感じに
自分の言葉に置き換えて、理解を確かめていきます。

その後、
「マグマが光って見えるから、溶岩はキラキラ宝石ならいいのにな。予想だけど。」
という発言から、
「宝石のページもあったよ。」となり、
火山から鉱物のページにシフトしてしまいました。
一見、関係ないように思えても、ページをめくっているうちに、
火山のような絵を見つけ出しました。解説を読んでみると、
マグマの中に、ダイヤモンドがあり、爆発的な火山噴火によって地表に現れることが
わかり、宝石ならいいのになという予想が当たって、本人はびっくり。

また、この図鑑のホームページには、自然災害の動画解説もあることから、
火山の映像を見ることで、わかったことを話し合っていきました。

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映像の中に、「恩恵」という言葉が出てきていて、
「おんけい?」とひっかかっている子が何人かいました。
そう、今回のテーマのkey wordです。

そこで、わかったことを確認したあと、
もう一度「怖さ」という言葉で問いかけてみました。
火山の怖さって何だろう?
「近くにあったら怖い。」
「溶岩を触ったら、溶けちゃう。」
「どんどん攻めて来て、逃げる場所なくなる。」
「ポンペイの街は飲み込まれたよ。灰で埋められた。」
「人間が死んじゃう。」

次に恩恵の話題に切り替えました。
「恩」は、ご恩の恩、恩返しの恩。
「このご恩は一生忘れませんってやつ?」「おかげさまに似てる。」との声。
「恵」の訓読みで、恵む、恵みと読むよ。
「いいこと?」「もらえるとうれしいものってこと?」

なんとなく意味がつかめてきたところで、次の問いかけ。
火山の恩恵って何だろう?
「火山で温泉たまごができるって知ってる。」
「火山の熱が移って温かくなる。」「温泉ができる。」
「火山で国立公園ができたって言ってた。」
「畑ができて地下水が生活を支えてくれるって言ってた。」
「ダイヤモンドも恩恵だね。」

図鑑や映像からわかることや思ったことを話し合い、
自分たちの言葉で置き換えていく中で、
災害は怖いけど、それだけではなく、恩恵があることに気がついていきました。
今後も、他の自然災害について、その怖さと恩恵に迫っていきます。


AN

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セントラルアイデアが決まらない……

[6年生]

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[6年生]

エキシビションとは、子どもたちがこれまで学んできた内容、方法を総動員して、興味・関心のあることを追究し、その成果を様々なメディアを活用して発表します。子どもたちが「自律的」に学ぶ力をどれだけ育んできたかを「評価」するのです。したがって、探究教師の役目は、子どもたちの追究のペースメーカーとなり、応援するだけ。いわゆる「指導」は一切しません。見守り、激励し、応援することが役目……というとかっこいいですが、結局、子どもたちが自ら探究しようという力をどれだけ培う機会を与えてきたか、探究教師としての力量を問われるわけです。

そのときの最大の難関がセントラルアイデアを子ども自ら決めるということです。これまでは、セントラルアイデアは、先生から与えられるものでした。子どもたちは、与えられたセントラルアイデアを基にして、実際に行う「プロジェクト」を「ミッション」化しました。しかし、エキシビションでは、自らセントラルアイデアをを決めるところからスタートです。

春から、やりたいテーマが見つかっていたし、夏休みのプロジェクトもそのテーマについて調べました。本も積極的に読んでいるし、ネットの情報も探している。この結果、知識量はそれなりのものになりました。しかし、いつまでたっても肝心要のセントラルアイデアが固まりません。

「神道の大らかさということを伝えたいということはよくわかるんだけど、それはなんのため?」
「イオンを超えた街っていうけど、なんでそんな街が必要なの?」

と問いかけ、語り合っても、沈黙……まとまらないまま、時だけが過ぎてゆきます。

ドキドキなのは、子どもたち以上に、これまで彼らの学びに付き添ってきた私の方です。

もし、しょぼいものになってしまったら……なんだテーマ学習を長年積み重ねてきてもこの程度かと思われてしまう……そうならないように介入しようか……

妙な「下心」が生まれますが、じっと我慢です。リソースを探したり、現人との出会いを助けたりというような「リサーチ」するうえでの下働きや、プランを立ててしっかり学びを進めているか確認するといった最低限のサポートに専念する!まさに「かわいい子には旅をさせよ」です。

TCSのテーマ学習は、ミッションにもとづいてプロジェクトに取り組みます。ミッションは天から降ってくるもの。子どもたちが選んだわけではない課題に取り組み、やらねばならぬことの中にある価値を見出してゆく学びです。そこで出てくる疑念は、所詮、与えられた課題にしか対処できなくしているのでは?つまり、自らミッションを見出すことはできないのではないかということです。この疑念を晴らすには、子どもたちが、これまでの学びの蓄積を通じて身につけた学習スタイルを駆使して、意義のあるセントラルアイデアをつくれないといけません。

社会とのつながり、そして自分とのつながりを明らかにするコンセプト。ただやりたいからやるのではなく、みんなと幸せに生きてゆくためにはこんなアイデアが必要だ……それがセントラルアイデアです。

そこで、セントラルアイデアと自らやりたい課題とをつなぐ「コンセプト」を投げかけます。

「エキシビション全体を貫くテーマは conflict 葛藤なんだよね。葛藤を解決するためにどんなことができるかっていう観点で考えてみるとどうだろう?」

それでもなかなかアイデアが出てきません。まあ、ここで妙にあせっても仕方ありません。どうせ一日中、エキシビションに没頭できるんだからのんびりいきましょうと腹をくくります。すると

「一神教の神様を信じることと、人が仲良くできないのは別だと思うんだよね」

おお、これはいいところに気がついた。その調子で考えを進めてみよう!と促すと

「神を尊重することと、人が仲良くすることを両立できるんじゃないかと思うんだよね」

それだ!それがセントラルアイデアだ!それぞれの宗教の神様のよいところはある。それを認めつつ、人々が仲良くする道を模索する。そのときに神道の大らかさが役立つのではないか。これはオモシロイ。ということで、彼女のエキシビションのセントラルアイデアは、「神と神は共存できないが、人と人は共存できる」となりました。

セントラルアイデアが固まれば、あとはキーコンセプトに基づいて「仮説」となる問いを挙げてゆく段階に入ります。そのあたりのところは次のお楽しみ!

RI

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オイルショックって知ってる?

タイトル:ロストエナジー
探究領域:共存共生

[5年生]

スキー合宿をはさんで迎えた第二週目。

第一週目に理科実験を担当してくださっているボランティアスタッ
フの方にそもそもエネルギーとは何か、またどんな種類があるのか
についてレクチャして頂きました。

エネルギー は別のエネルギーに変換されるが、決してなくなること
はないという「エネルギー保存の法則」を学んだ子ども達。
今週は資源エネルギー庁が発行しているエネルギー白書を読み解き
ながら、エネルギーの生産と利用がどのように変化してきたのかを
学んでいきます。

「今から紹介する3枚の写真は人類とエネルギーの関わりの中で転
機となった出来事を表しているよ。知ってるかな?」

まず最初に見せたのは、オイルショック当時のあるスーパーでの一
コマ。

20140221_3.JPG

「これ、スーパーだよね。」
「うわっ、このおじさん、店員や警備員を押しのけて、トイレット
ペーパーの棚に向かってるよ。」
「ほんとだ、後ろにもすごい行列できてる。何の騒ぎだろう。。」

オイルショックという言葉は初耳だったようですが、ただ事ではな
い様子は伝わってきたようです。

「けど、トイレットペーパーの買い占めとエネルギー問題にどんな
関係があるんだろう?」

モヤモヤを残したまま、2枚目の写真(&絵)に移ります。

20140221_1.JPG

「あっ、この絵、橋本鋳造所みたい!」

製鉄所の工場の中の様子を表した絵から、昨年度に私と一緒に取り
組んだテーマ学習「詩人の旅」を思い出したようです。

「下に蒸気機関車の写真があるので、石炭に関係するんじゃない?」

「あれっ、機関車の燃料が石炭って知ってるんだね。」と思わず
反応すると、
「当たり前でしょ。機関士が一所懸命に石炭をくべる様子を本か何
かでみたことあるもん。」
と男の子。

ただ、「じゃあ、そもそも石炭って何か知ってる?」と切り返すと、
「うーーーん。。。」と黙り込みます。

3枚目の米国オクラホマ州の油井やぐらになると、全く予想がつか
ない様子が伺えます。

20140221_2.JPG

子ども達に配ったA4一枚のプリントには、「文明とエネルギー」
という見出しがつけられ、私たちのくらしや社会に不可欠なエネル
ギーと人類や文明との関わりの変遷が端的にまとめられていました。

火の利用は、人類が文明を発展させる出発点となったこと
蒸気機関の発明とその燃料となる石炭が産業革命を支えたこと
石油の登場により、エネルギーの主役が石炭から石油に移行したこと
二度のオイルショックが各国のエネルギー政策を転換させたこと
・・・

さきほどの写真もまじえながら、資料を読み込むなかで、なぜ日本
が原子力発電に頼るようになったのか、また世界的に自然エネルギー
への移行が声高に叫ばれるようになったのかを学んでいきました。

「そっか、今の生活を続けている限りは、単純に脱原発とは言えな
いよね・・・」

一筋縄ではいかないエネルギー問題。
便利さと快適さを追究した生活そのものを見直す必要があるのでは、
その意識が少し芽生えてきたようです。

しかし、一体そのためにはどうすればよいか。
そのヒントをもらうべく、来週は那須塩原の非電化工房にでかける
ことにしました。

HY

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2014年02月25日

ケーススタディ

[3・4年生]

今週はまず先週子どもたちから上がってきた判断基準について整理することころから初めていきました。
先週の子どもたちの発言を記録したメタメタマップを見てみると、自分以外の判断基準もあることがよく分かります。
特に子どもたちの場合は両親やスクールまたは友人など称して”他人”という判断基準の影響が大きいようです。
もちろん”買い食いをしない”、”公共の場だから静かにする”というような法律/ルール、そしてマナーという判断基準もあります。
それから一般的/常識という基準もあります。
これには「普通はこうするでしょ!とか常識で考えなさい!とか言われるとムカつくー。けどたまに親に言われるよ。」という声が上がります。
するとその発言に反応して別の子が「でも普通ってなんなの?普通っておれが思う普通とみんなが思う普通って違くない?」
「たしかに!」
「常識もちょっとは人によって違いそうだよね。」
「うんうん。」と納得の子どもたちと私。みんなさすがにいいところに気付きます!

そして自分が行なう意思決定の判断基準としては様々な種類があることに気が付きました。
挙げてみると、気分・欲望・面白さ・楽かどうか・男の生き方・現実的(科学的)・理想的(夢)・妥協(まあいいや、しょうがねえななど)・情け(他の人や未来の世の中のため)など。こういった判断基準の傾向が自分たちにあることを掘り下げ、気付くことが出来ただけできっと今後の意思決定が少し変わってくるのではないでしょうか?

そして翌日はケーススタディとして「お金(100円)を拾ったら警察の届けるか?届けないか?」について届けるか・届けないかとその理由をそれぞれに発表し、ディスカッションを行ないました。
教室掲示した議論のルール(1.発言をさえぎらない2.だらだらしゃべらない3.分からないことはそのままにせず質問する4.どのような意見も間違いと決めつけない5.最後まで話を聞く)をもう一度確認してから一人ずつ考えをシェアしていきました。

「ぼくは落ちているお金が自分のものにならなくても大丈夫だから拾わないで届ける。落とした人が困ってるかもしれないし。」
「ぼくは届けない。届けるのが面倒くさいし、しかも小遣いが増える!だからまあ判断基準は”欲望”かな。」
「おれも”欲望”で届けないな。落とした人が悪いでしょ。」
「ぼくも届けない。しかもさ、交番に行って”あのおれが落とした平成26年の100円玉届いてませんか?”って言う人いないと思うんだ。しかも拾えば100円という大金がもうかる!この条件で拾わないバカはいないでしょ。」
「たしかに、100円玉を届け出る人はいなさそう!”現実的”な判断基準だねー。」

みんなの考えをシェアし合った後、では条件が変化しても意思決定は変わらないのかどうか更なる条件をいくつか提示して再度考えを聞いてみました。
「じゃあもし落ちていたのが10000円札だったとしたらどうかな?周りに人がいたらどうする?」
この質問を問いかけてみるとみんな悩み始め、何人かは最初の意見とは変わっていきました。 意思決定をする際は”1週目に予想した通り、自分たちも”状況”や”重要度”によっても判断が変わってくることを実感した子どもたち。

しかし、こういった客観的なケーススタディではどんなに頑張って話し合っても自分ごとになりにくいのが人というもの。
自分のこととしてより真剣に想像し分析して考えていってもらうために、次は実際にスクールで起きた問題を取り扱ってケーススタディを行ないました。
自分たちが実際に判断ミスをして失敗し、大きく反省したスクールでの出来事についてその時の自分の判断基準を分析し、その判断がどういうことを引き起こしたのかみんなで議論していきました。
そうした形でいくつかのケースについて話し合ってみて見えてきたのはそれらの判断ミスが共通して信用を失ってしまう問題だったということです。

「うそとか言い訳とかバレなきゃいいやって判断基準で行動してさ、それでバレたりするとその人は信じられなくなるってことだよね。」 とある子が発言しました。
「自分で言ったことをいつまでも何回もやらない場合も信用ロスにつながるよ。」
「おれの失敗はさ、新年にはThinkersとKnowledgeableなところをもっと伸ばしたいって言ったのに全然Thinkersが足りなかったんだと思う。”こうなったらこうしよう”とか”こうならないためにこうしよう”っていう”先読み”が全くできてなかった。それにどう考えても不注意だった。。。もし同じ場面が来たら絶対同じ行動は取らないんだけどな。」
「あと重要度も大事だね。命の危険につながるような場合は慎重に動かないと。交通安全とか火の使い方とか。」

やはり自分たちの体験について振り返ってみることでそこから本気の判断基準分析や次にどう活かすかという視点が見えてきます。
悔いの無い意思決定をし続けていくための階段を一つ一つ上がっているようです。
来週は課題図書である「半パンデイズ」を読み込みながら登場人物たちの判断基準や価値観を探っていきます。



YI

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2014年02月28日

悲しい雪と嬉しい雪

[1・2年生]

これまでに、火山、雪崩、雪、津波、洪水、台風、雷について、
どうして起きるのか、どうすると起きるのか、起きたあとはどうなるのか、
図鑑や動画を通して、みていきました。

特に、雪に関しての話題は事欠かない状態でした。
あの大雪に見舞われた日、私たちはスキー合宿の最終日で
長野から新宿に向けて帰路につくところでした。
雪がどんどん降ってきて、東京に近づいてきても
周りは変わらず雪景色。

交通が麻痺したり、その後のニュースやスーパーから品物が消えたなど
目の当たりにしたことを次々に語り出します。
「雪は降りすぎると、車の中に閉じ込められる。」
「トンネルの中で、4日間動けなくて、水もなくなったって、テレビで見た。」
「雪のおかげで家族に会えない人もいた。」
「雪のおかげ?」
「雪のせいだよ。」
「雪のせいで、橋が凍って、横断歩道もツルツルで、バスが転んだ。」

雪のおかげで だと、どんなことが言える?と聞くと、

「雪のおかげで、スキーができる。」
「雪合戦は楽しい。」
「スケートもできる。」
同じ雪なのに、おかげって言われたり、せいだって言われたりするんだね。
「雪のせいっていうときは、悲しい雪。」
「スキーのときは、嬉しい雪。」

海の災害について話し合ったときも同じように、
悲しい海と嬉しい海の話になりました。
この「嬉しい、楽しい」という発想から、もう一歩踏み込みたくて、
災害が起きるところに、どうして住んでいる人がいるんだろう?と問いかけました。

「福島で津波が起きたあと、もう津波がこないように壁を作る計画を
立てたけど、海が見えなくなるのが嫌だって住んでいる人の反対があって、
壁は作らなかったって話を聞いたことがある。」
「まちづくりは住む人の幸せを考えるんだって。」
「その場所に生まれて、ずっと住んでいると、そこが好きになって、
離れらないって、さっき見たやつ(動画)で言ってた。私も引っ越すのは嫌だな。」
「みんなを守るために研究したり、自分でも面白いと思って研究してる人は、
近くに住んでると思う。」
「魚をとったり、船に乗ったりする仕事をしている人は、海の近くに住まないと。」
「雪国に住んでいる人は、アリとキリギリスのアリみたいに、食料をためておくから
外に行けなくなっても大丈夫。」
動画の中で流れていた語りを思い出したり、知っていることが言葉で出てくると、
災害が起こりやすい場所に住む人たちにとっては「楽しい」だけではないことが
見えてきました。

また、子どもたちにとっては、あまり身近ではない洪水に関しては
次のような意見も出てきました。
「こんなこと言っちゃいけないのかもしれないけど、
Risk-takerの意味で、洪水を体験してみたい。
どのくらい怖いのか知ってみたい。見ただけじゃよくわからないから、
洪水でサーフィンできそう。」
その場所に住んでいる人にしかわからない思いがあることを感じとったのかも
しれません。

今週で3週目が終わり、次週から後半戦です。
今回のテーマでのアウトプットは、一人ずつが学んだことを作文にしてまとめます。
普段、行事作文で書いているように、ひとつの事柄にしぼって書いていきます。
まだ、これから調べていく災害も残っている中で、
どう作文を書いていけばいいかを並行して考えていきます。

そこで、今週末は、今の時点で、わかったこと、疑問に思うこと、伝えたいことなどを
作文に書いてくるホームワークを出しました。

来週からは発表のことも視野に入れ、いい作文に仕上げるためにはどうすればいいか、
子どもたちが書いてきた作文をもとに追究していきます。
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「半パンデイズ」

[3・4年生]

今までケーススタディや実際にスクールで起きた出来事を題材に客観と主観を行き来しながら自分たちの判断基準の特性を分析してきました。
そしてテーマ3週目となる今週は自分たちの判断基準からは一度離れ、他者の判断から 学んでみることにしました。

題材としたのは、重松清の『半パンデイズ』 です。
この作品は、中学入試にも多く出題されますが、 子どもから大人へと成長してゆく過程で繰り広げられる微妙な人間関係 が見事に描かれています。
コンテクストがしっかりとした物語を客観的かつ登場人物たちに感情移入して”自分ごと”として読み込むのに最適と言えるでしょう。

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読み始める前に子どもたちとは主人公や登場人物の判断基準や主人公の行動とその理由や気持ちとその変化を意識して読むことをシェアしました。

「ねえ、ぼく思うんだけど主人公のヒロシは東京から引っ越して最初はずっと東京に戻りたがってたけど、”アホ”っていう広島弁が好きになり始めた所からこの町にも慣れてきたんじゃないかな?」
「ヒロシはさ、ヤスおじさんもあまり好きじゃなかったけどなんかだんだん慣れてきてるよね。」
「なんでそう思ったの?」
「最初はヤスおじさんを威張ってる強引なお父さんのお兄さんと思ってたみたいだけど、なんかさ、頼りになるおじさんだなって思い始めてる気がするんだよね。」
「なろほど〜。そうかー。微妙なヒロシの気持ちの変化を感じながら読んでるね。」
「なんかぼくもさ、最初はヤスおじさんを好きじゃなかったけどだんだん好きになってきた。」
「お、それは何で?」
「やっぱり頼りになりそうだし。」
言葉では表現されていない登場人物の心境の微妙な変化に敏感に気づいて物語に入り込んでいる子どもたち。

出会ったばかりの6年生の少年はヒロシとは逆にお父さんの仕事の関係で東京へ引っ越すらしい。彼は出会ったばかりのヒロシを海に案内し、この町について沢山のことを一気に伝えた。 「この6年生のヨウイチくんは東京から来たヒロシに自分が引っ越す前に色々と教えてあげたかったんじゃないかな。」
「ぼくが思うのは、きっと自分は今夜東京に引っ越すっていうことと、ヒロシは東京からこの町に来たばかりっていうのがさ、状況が近いから親近感になってるんじゃないかな?」
「引っ越すのはぼくもしたことあるけど、新しい所にいく楽しみもあるけど不安もあるじゃん。それと地元にいたいって気持ちもあると思うんだ。ぼくは引っ越し前は引っ越ししたくなかった。だから好きな地元のことを思っていっぱい話してるんじゃないの?」
「じゃあたくさんのことを伝えていたのは自分のためってこと?」
「それもあると思う。」
「うーん。それもあるかも」

身近にありそうな小学生たちの物語に気が付けば感情移入し、自分だったらどう思うか、自分だったらきっとこうすると考えながら読み進み始めた第3週。

来週はすっかりこの町にも慣れて広島弁を話すようになったヒロシの周りで起きる様々な事件について読み進め語り合っていきます。

YI

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キーコンセプトで分解だ!

[6年生]

「セントラルアイデア」に導かれたテーマを追究することでエキシビションが単なる調べ学習にならず、自律的かつ意義のある探究になります。しかし、これまで自分でセントラルアイデアをつくったことのない子どもたちにとって、これはとても難関でした。なんとか「セントラルアイデア」が決まった子どもたち。次のポイントは、「キーコンセプト」を用いて「セントラルアイデア」を分解することです。

大手流通企業の大規模ショッピングセンターにはまっている!という漠然とした興味が、conflict という「コンセプト」によって見つめなおすことで

「買い物を楽しむ」いう「消費前提の暮らし」と従来の生き方・働き方を乗り越えた「循環し型のゆるやかな暮らし」とのconflict という社会的に意義のあるテーマに“進化”しました。次は、このテーマをどんな「仮説」で追究するか考えることです。

「仮説」というと難しく聞こえますが、要は、「どうやって conflict をなくすか? 何か提案できないか?」ということです。具体的に言えば……働く時間も通勤する時間も大幅に減らし、自然の中で時間に余裕のある暮らしをしたい……この結果、現金収入は減るかもしれないが、現金になるべく頼らず、だからといって貧しい感じではなく暮らす方法は模索できるはず……そんな頭の使い方をするということです。

ここで大いに役立つのが8つの「キーコンセプト」(form / function / causation / change / connection / perspective / reflective / responsibility) です。

「まちづくりによって生き方と働き方が変わる」

というセントラルアイデアを「キーコンセプト」で分解してゆきます。

form……それはどんな街なんだろう?……自然にあふれている街。働くことと住むことが一体となっている街。

では続いて function……そんな街の機能って何なのかなと考えてみると……自然にあふれているということは、畑や牧場などで食べ物を自給自足できる。ということはお金があまりなくても、そこで循環することを目指せば、豊かな気持ちで暮らせる。ということは、私たちが実は求めている生き方や働き方を変える機能を「まち」が持っているんじゃないかという「仮説」が生まれる。

では生き方・働き方を変えるためにはどうしたらいいのかというと「サイズは小さく、その中で循環する」ことを目指すという側面が浮かび上がってくる。自分たちでつくって、自分たちで使って、自分たちで育ててゆくためには、みんなの顔が見えるまちのサイズじゃないとダメだ。なぜ小さいまちを目指すのかという causation という切り口での問いが立ちました。

もともとは大手流通企業のショッピングモールに魅せられて探究を始めました。その企業も、単に物を売ればよいと考えず、モールに来ることが楽しく、いきいきした気持ちにすることを目指しています。ところが、今、自分が「キーコンセプト」によって分解しながら見えてきた街は、自分が当初あこがれていた街とずいぶん様子が違ってきました。いったいどこが違うのか?ものの売り方が違うのか?まったくやり方が異なるわけではなく、参考にした部分はどこなのか?その結果、自分はどう変えたのか?……こうして connection / perspective / change という切り口によって「まち」の具体的な姿がより鮮明になってきました。

いよいよ「キーコンセプト」によって分解されたと問いに基づいて、リサーチし、自分なりのアイデアを考え出す流れができました。まったく何の仮説も立てず、漠然と資料を集めてしまう「調べ学習」を乗り越えられそうになってきましたね。これでこそエキシビションに値する探究です。とはいえ、自律的に追究できるかどうかは、本人の「意志」にかかっているので、後は子ども次第。どこまでやれるか、子どもを信じるしかありません。いったいどうなるか……

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非電化工房訪問

タイトル:ロストエナジー
探究領域:共存共生

[5年生]

『イノベーションは葛藤をこえて生まれる』をcentral ideaに
掲げた今回の「ロストエナジー」。
「脱原発 vs 原発推進」といった単なる二項対立に留まらず、自分
たちの価値観を見直し、電力に依存しない生き方をどう実現してい
けばよいか。
そのヒントを得るために、栃木の那須塩原にある「発明家」藤村靖
之博士の非電化工房を見学させていただきました。

片道3時間の電車ぶらり旅。
車窓から見えるのどかな風景を楽しみながら、目的地に向かいます。
最寄り駅まで息子さんが車で迎えに来てくださり、駅から約20分
かけて、やっと那須のアトリエに到着。

先週の大雪がまだまだ残っていたアトリエにて、藤村さんは満面の
笑顔で私たちを迎えてくださいました。

簡単な自己紹介の後、早速、敷地内にある建物を一つずつ見て回る
ことに。

まずは、ムーミンハウスと名付けられた非電化ノンケミカルのガー
デンハウスへ。

「おお、中は意外に広いなあ。」

この六角形の木のお家はムーミンの故郷フィンランドからの輸入品
で、子どもなら20人程度は入れる広さです。

キット価格130万円というリーズナブルさと大人3人で2〜3日
で組み立てられる手軽さに、思わず子ども達から
「スクールの屋上に建てて、教室替わりにしようよ!」
「近所の公園にこっそり建てられないかなあ。」
なんて感想も。

中央にはグリルが据え付けられ、それを取り囲むベンチにはトナカ
イの毛皮が敷かれたこの居心地が良い空間を子ども達もすっかり気
にいったようです。

次に訪れたのは木製の鶏小屋。
よく見ると、この小屋、三角形の変わったつくりをしてますが、な
んと二階建て!
温かい空気が上にのぼる性質をいかして、鶏の寝床を2階に設けて
いるのです。


「ほんとだ、2階は空気が少し温かいよ。あっ、卵がある!」

朝に産みつけていた卵をお土産として頂いた5年生の男の子。
慎重に卵を運びながらも、表情は嬉しそうです。

見学の途中で昼食を挟み、午後は目下建設中の非電化カフェや非電
化製品の工房も見学させてもらいました。

敷地内の建物を一通り見終えたので、母屋へ戻り、薪ストーブの前
で藤村さんを囲みます。

電気との向き合い方を考え続けてきた発明家を目の前に、ただお話
を聞くだけではもったいないということで、無理を言って、今回の
テーマで現時点で自分たちが考えるアイデアをぶつけてみることに。

子ども達のアイデアを穏やかな表情で聞き入りながら、メモを書き
進める藤村さん。
すぐにフィードバックを返すのではなく、なぜ「非電化」という発
想に至ったのか、その思いを語ってくださいました。

「非電化は電気を全く使わない生活を目指してる訳じゃないんだよ。
選択肢を増やして、電気を使うのと使わないとどちらか愉しい方を
選べばよいと思ってるんだ。」
「僕は自分で豆を炒って、お気に入りのコーヒーミルで豆を挽く時
間が好きなんだ。手間をかけてつくったコーヒーは格別だよ。これ
は豊かな時間と言えるよね。」
「掃除機は確かに便利だけど、僕はほうきを選ぶね。手作りの質の
良いほうきを使い続けていると愛着が出てくるからね。」

子ども達も藤村さんの話に真剣に耳を傾けます。

「アフリカやモンゴルといった途上国を訪れることが多いんだけど、
彼らの抱えている問題を発明という形で解決すると、ものすごく喜
ばれるんだ。」
「僕たち先進国の人間は電気に頼りすぎているけど、本当に必要か
どうかを考え直さないと、このままではまずいと思うだよね。知ら
ず知らずのうちに凝り固まってしまった人の「マインドセット」を
変えるために、僕は活動してるんだよ。」

穏やかな口調の裏にある熱い思いに触れ、子ども達も思うところが
あったよう。
名残惜しいですが、帰りの電車の時間が来てしまったので、最後に
やぎのペーターと写真を撮り、非電化工房を後にしました。

翌日のふりかえりで、印象に残ったことを質問すると、みるみる模
造紙が埋まっていきました。

特に、気候が暖かくて、バナナが豊富に実っている土地で楽しく暮
らしていたアフリカの人たちが、先進国の影響を受け、経済発展に
重きを置いた結果、精神的な豊かさを失ってしまったエピソードは
強烈に印象に残った様子。

「幸せって何だろうね・・・」

経済的に豊かになることにあまり疑問を感じていなかっただけに、
ショックを隠しきれません。

非電化の暮らしはできそうか問いかけると、

「うーーん、愉しそうだけど、ずっとは無理かな・・・」
「手動だと、面倒くさい事も多そうだし・・・」

と煮え切らない返事が。

藤村さんのおっしゃることは頭ではわかるんだけど、今の快適さと
便利さを手放すのは難しいのではないか。
現状では、そんなマインドセットに凝り固まっている様子が伺えま
す。

本当の豊かさとは何かを問い直す必要があるようです。

HY

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