東京コミュニティスクール-探究型学習が教育の特長-全日制オルタナティブスクール(小学1年生から6年生)

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2016年09月 アーカイブ

2016年09月01日

『おたがいさま』〜概要〜

タイトル:おたがいさま
探究領域:共存共生
セントラルアイディア: 生態系の中で生き物は互いに影響し合っている。

[1・2年生]

TCSの近くの公園に、アメリカザリガニがいる!

多摩川にはピラニアがいて、「タマゾン川」と呼ばれているらしい!

家の前の電線に、カラフルなインコが止まってるを見たことがある!

私たちの気付かないところで、もともとその地域にいなかった「外来種」がやってきて、もともとその場所にいた「在来種」の命の営みを脅かし、「絶滅危惧種」へと追いやっている現実があります。

こうして在来種が極端に減ってしまったり、外来種が増えている背景には、一つの原因ではなく、様々な原因が複雑に絡み合って存在しています。

ただ「外来種」が悪い。。「在来種」がかわいそう。。そんなことだけでは片付けられないほど、生き物は違いに影響しあいながら存在しています。

「在来種」と「外来種」の関係性はどんなものか?

生態系の中で、どんな要素や生物がどのような相互作用をつくっているのか?

また、生態系の中で人間はどのように影響をもたらしてきたか?

この3つが、今回のテーマ学習での探究課題です。

このテーマでは、まず、身近で増えている「在来種」の生態系に影響を及ぼす「外来種」について調べ、次に環境に適応していく「外来種」の生態を学び、そのうえで人や人のライフスタイルが生態系内のバランスの偏りに影響を及ぼしてきたかを理解して、そこから多様な生物が共存できる生態系を作っていく/守っていくためには、どんなことをわたしたちはしていくのかを考えていきます。



ES

TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

生態系の中の『おたがいさま』ってなに!?

タイトル:おたがいさま
探究領域:共存共生
セントラルアイディア:生態系の中で生き物は互いに影響し合っている。

[1・2年生]

『おたがいさま』
日々、遊びの中でのケンカなどで、こどもたちもよく使う言葉。
今回のテーマでは、そんな「おたがいさま」の概念を生き物の世界、生態系の中での相互関係、影響関係を通して学んでいきます。

「おたがいさまってなに?」
と子供たちに聞くと、
「ふたりとも、どっちもどっちって感じ!」とか
「ふたりとも同じくらい悪いことしたときに言うよね!」とか
「あ、そーか!二人の喧嘩を止める人が言う言葉だよね」
と、やはり、何かいざこざや争いごとのときによく彼らが使う言葉ということが手に取るようにわかりました。

すると、ある子が
「え、ちょっと待って!今回、生き物に関係するテーマでしょ?生き物の『おたがいさま』ってなに?」
「うーーーん、生き物だって戦ってるんだよ。ほら、なわばり争いとか、メスの取り合いとか、エサの取り合いとかさ。」
「つまり、お互いに悪いことしてるってこと!?」
「というより、食べ物がほしいとか、いのちが危ない!ってなって、攻撃するから、じぶんの身を守るし、そうやって、おたがいさまに悪いことをするんじゃないの?」

「それにさ、人間だって、動物に攻撃とかするじゃない?」
「待って、人間は動物じゃないよー。」
「いや、人間も生き物もお互いさまだよ。勝手に縄張り取ったりさ。みんなだって勝手にドアからじぶんの部屋に入ってきたら、嫌でしょ?」

などと、「おたがいさま」という言葉と「生き物」というキーワードで、ここまでメタメタに考え始めるこどもたち。

生態系の中には、様々な相互作用や相互依存の関係、別の言葉で言うと、「おたがいさま」な関係があるわけですが、今回のテーマでは、「在来種」「外来種」「絶滅危惧種」を切り口に、「外来種」が「在来種」の生態系のバランスを崩し、「絶滅危惧種」へと追いやっていくのか、ということから、探究を進めていきます。

「絶滅危惧種って何?」と聞くと、
「あ、雷鳥とか、オオサンショウウオのことでしょ?」
「仲間がいなくなっちゃいそうな生き物のこと?」
「地球が絶滅しちゃうってこと?」
「襲われて、食べられちゃうことでしょ?」
「うーーん、1165匹もともといたとしたら、3匹くらいしか残らないみたいな感じ?」
などなど、絶滅危惧種に対する既存知識や言葉の意味から広がる理解は様々。

第1週目最後のテーマの時間には、在来種のクワガタが外来種のクワガタに住処や餌を奪われ、絶滅のふちにおいやられていることが描かれた教育番組を全員で視聴し、少しずつ、外来種と在来種の関係性、そしてその結果としての絶滅ということを、実例を通して、ゆるやかに理解していきました。

いよいよ、来週からフィールドに出て、外来種と在来種の関係性やそれぞれの機能について具体的に知ることで探究していきます。


ES

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『日本のなかの世界』〜概要〜

タイトル:日本のなかの世界
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア: 私たちは多様性の中に生きている

[5・6年生]

最近、東京を訪れる外国人観光客が目立って多い気がします。2020年の東京オリンピックに向けてこの流れはさらに加速するでしょう。一方、中野のおとなりの新宿大久保では、コリアタウン、中国人の集まりだけでなく、イスラム系の人たちのストリートも目立ってきました。旅行ではなく日本に居住する人たちはどんな思いで日本にやってきているのでしょう。また、ヨーロッパでは、中東地域から流入する難民の対策に追われていますが、日本は相変わらず難民への門戸をほとんど開いていません。異文化問題は、もはや私たちの身のまわりの課題になってきているのです。

今回のテーマ学習では、文化の「多様性」が私たちにどんな化学反応を起こすのか追究していきます。そのために、実際に中野を訪れる外国人観光客や居住者にインタビューします。実際にフィールドワークし、生の体験と情報を手にして、多様な文化とどう折り合いをつけてゆくか考えてゆきます。

RI

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2016年09月02日

探検に挑戦!

タイトル:東京発見伝
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア:探検は歴史や価値観、存在意義の洞察につながる。

[3・4年生]

「『東京発見伝』って『ココドコ』と似てるの?」
「『ココドコ』って『中野発見伝』って感じなのかな?」
「まちとか歩いて何かあるか調べるのかな?」

テーマタイトルから、この6週間どんなことをしていくのかを思い巡らせています。
今回の『東京発見伝』は、時空因縁(私たちが生きている場所と時代の特徴と価値の探究)領域です。1年生の『紅葉山見っけ隊』、2年生の『ココドコ』に続くテーマ学習であります。どのテーマも外に出るフィールドワークですが、徐々にハードルが上がっていくことは、子どもたちも感じている様子。同じようだけど違う。では、いったい何が違うのでしょうか。

「東京」を「発見」して「伝える」。分解してみるとその名の通り。
最終的には、自分たちで発見してきたことをもとに、「東京」というまちを紹介することがミッションであることを伝えました。「見っけ隊」で繰り返してきた、発見・疑問の連続と「ココドコ」で身につけた「アリの目・トリの目」を活かして、今回は、「探検隊」になることが彼らの学びの軸となっていきます。「探検の型」に沿って、探検をしてみる。そして、自分なりに東京というまちを捉えていくという、なんともワクワクするテーマであります。

まずは、現時点で思っている「東京」というまちについて、
どんなところなのかを聞いてみました。

「うるさい。なんでもある。人が多い。」
「人だけじゃなく、車も電車もコンビニも事件も多い。」
「何でも多い。便利だけど。」
「夜は通らない方がいい道がある。」
「人が集まるところ。」
「東京ドームとか、国会議事堂とか。」
「阿部さんがいるところもある。」
「国の会議をするところでしょ。」
「空気汚い。落書き多い。」
「酔っ払いがいる。」

便利だと思っていても、いいイメージは持っていないようです。
みんな自分の住んでいるまちではありますが、、。
ただ、東京は都心だけが東京ではありません。
これまでにスクールのイベントで出かけた場所の写真をもとに、
東京か東京でないかを確認していきました。

2016_ODD_atsu_IMGP6745.jpg「ODDって行った光が丘公園!」「東京!」

2016_ODD_atsu_IMG_4483%20%281%29.jpg「雲取山。ここも東京だよ。」

2016_ODD_atsu_IMGP7915%20%281%29.jpg「ここは御殿場だから、静岡県だ!」

2016_ODD_atsu_IMG_0168%20%281%29.jpg「多摩川だ。奥多摩。」「ここも東京なんだ。」

自然の多い東京も知ってはいるものの、イメージとしては変わらない模様。
そのイメージがどう変わっていくかが今後楽しみです。

子どもたちから出てきたイメージの中でも、大きく分けると「人・もの・場所」になっています。この「人・もの・場所」の3つを見ていくことで、まちの特徴が見えてきそうです。見るものは3つ。いよいよ、探検入門に入っていきます。

まずは、準備。どこを歩くのか、凸凹地図で確認していきます。
初回は探検練習として、スクール周辺を歩くことにしました。
スクールから南東に向かって、中野坂上を目指します。
「中野坂上って坂の上?」
「この辺は小さい子どもを連れた人、親子が多いのかな。」
「近くに保育園があるし。」

地図を見ながら、「人・もの・場所」についての仮説を立てていきます。 場所に関しては、坂道、低地、台地など、地形にかんすることになるため、言葉を「地形」に改めることに。

「川が流れているところは低くなってる。」
河川のできかたについて調べてみると、確かに川は地面を削って坂ができていることがわかります。川と坂道の関係。実際に歩いて確かめてみたくなってきます。

歩くときには見るだけでなく、「話す」こと、「記録する」ことも探検には必要な要素です。まちゆく人と話をすることで見ただけではわからない部分も見えてくるかもしれません。そして、忘れる前に記録も大切。今回は、iPadを使って写真を撮っていきます。歩く中で、「人・もの・地形」を「見る・話す・記録する」ことになります。

いよいよ、スクールの周辺を歩いてみます。チームに分かれて出発です。

2016_8_31_atsu_1%E9%80%B1%E7%9B%AE.jpgいつも通っている通学路ですが、
ここから南側、北側を眺めると下り坂になっています。
「ここは山の天辺?」
地形を見て、記録しています。




2016_8_31_atsu_1%E9%80%B1%E7%9B%AEIMG_0014.jpg谷戸運動場に行く途中に通るお米やさん、
思い切って質問をしてみます。
「ここは何年前からお店をしているのですか。」
「60年前くらい。」
「ありがとうございます」
声をかけることができたことはnice challengeではあります。けれど、質問するだけで終わってしまったのはもったいない。 は聞きだせることがなくなってしまう。「聞く」ではなく、「話す」ができるようになると、もっと聞きだせるはず。


どんなふうに考えていいかわからなくなってきたときの「型」はkey-concepts。
ここでは以下の6つに着目することに。
form,function,causation,change,connection,perspective
知ってはいるものの、いざ使うとなると難しいものです。
例えば、changeを使って「60年間お店を続けてきて変わったと思うことはありますか?」と聞いてみるのもひとつです。

ほかの班はみんな「話す」をしている。と焦り出したチームもいました。自分たちのチームも誰かに話をしてみよう!と思ったときには人がいない、、、。やっと会えたのは工事現場で警備をしている人でした。
「ここは外国人が多いと思いますか?」
中野には外国人は少ないと仮説を立てての質問をしてみます。
「ここに住んでいないからわからないなぁ。」との返事。
「ありがとうございます」では終わってしまう。
「ここを通る人で外国の人はいますか?」と見方を変えてみます。
この質問をしたのはインターンで協力してくれている大学生。
さすがだなぁ。と子どもたちの励みになっています。
何度もチャレンジすることで「話す」型を磨いていきたいところです。

スクールから中野坂上まで行く予定でしたが、半分も進まずに時間がきてしまいました。
「探検って面白いね。」
でも、これで終わったわけではありません。
歩いたあとには、振り返りをしていきます。
撮ってきたものの整理や、わかったことの共有、読んでみてわかったことや、
調べたいことを出し合い、新たなる調査へと続いていきます。

AN

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日本のなかの異文化

タイトル:日本のなかの世界
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア: 私たちは多様性の中で生きている

[5・6年生]

TCSのある場所は中野。中野駅の辺りには外国人観光客とおぼしき方たちがたくさん歩いています。中野と言えばブロードウェイ。ブロードウェイと言えば秋葉原よりもマニアックで本格的なサブカルの聖地として世界的に知れ渡っています。

世界の人たちとアクセスするために、わざわざ外国に行かなくても、ネットに頼らなくても、自分の身のまわりを歩けばよい。そうすればリアルな生きた声を知ることができるのです。そこで今回のテーマ学習では、街にどんどん飛び出していって、実際にインタビューし、異文化を実感し、また、異文化を鏡とした自文化について知ります。

いきなり「異文化」と強調しましたが、セントラルアイデアは「多様性」です。「多様性」と「異文化」がどうつながっているか……それを知るために、まず、子どもたちに

多様性

からイメージすることを挙げてもらいました。

探究領域は「時空因縁」なので、私たちの歴史や場地理的場所と「多様性」とのつながりだとすぐに子どもたちはピンと来たようでした。それに今まで「共存共生」では、在来種に外来種という「異文化」が入ってきて、強い外来種が多様な在来種を蹴散らしてしまうことがあるということを学びました。そして「社会寄与」では、民主主義や人権の学びにおいて個人の意見・考えが認められることを学びました。それとは異なる「多様性」と言えば「場所による文化の違い」ということがすぐに出てきます。

「異なる文化があるということは、その前提にまず自分たちの文化というものがあるんだよね」

とたずねます。すると……

「やっぱ寿司は日本。でもステーキは違うね」
「折り紙は日本文化だよ」「筆は日本で、ペンは外国から入ってきたものだよな」

ぽんぽん出てきます。しかし……

「筆って中国から来たんじゃないの」

とある子が疑念を抱きます。

「寿司は日本かもしれないけど、稲作は弥生時代に海外からきたって社会で習ったよ」

今は「自文化」に見えるものも、もともとは「異文化」からの渡来品。しかし、いまやすっかりなじんでしまった。

「漢字ってさ、中国の字なのに当たり前に日本語になっている」

まったくその通り。こう考えてくると、これは異なる文化のもの、これは自文化のものという風に、簡単に線は引けそうにないことがわかりました。そう分けるよりも「日本になじんで日本らしくなったもの」と考えた方がよさそうだなということが見えてきたのです。

「ラーメンは、もともとは辛い麺って意味だったのに、今のようなラーメンになっていったんだよね。だから中国には『日本ラーメン』っていうのがある」

お父さんが仕事で中国に赴任しているので、実際に中国に行ったことがある子が答えます。自文化とは言っても、狭くは「自分の家庭」から始まって、地域・学校・会社・地方と言ったように範囲がさまざまです。「日本文化」と言っても実は「多様」なバリーエーションがあります。言葉なら「方言」。料理の味付けも、形もさまざま。純粋な血統を守っているなどというものは実はほとんどないことに気づきました。

「外国から文化が入ってきても自分なりに変えてしまうんだね」

特に日本はもしかしたら異なる文化を自分なりにアレンジしてしまうことこそが特徴なのかもしれない……ということが早くも見えてみました。

「あんこ」は「和菓子」。なのに「パン」という「洋風」の食べ物と出会って「あんぱん」ができあがってしまう。

でも、これは「モノ」の話。異なる文化は、態度や考え方、マナーなども含みます。

「ぼくたちからしてみるとケンカしてるように見えてもそれが普通のしゃべり方だったりするよね」
「みんなと合わせた方がいいって考えるのは日本っぽいかもね」
「そのおかげでみんな一緒に協力して何かをつくるのに強いんじゃない?」
「ただ、自分ひとりでも何かしようとしないんじゃない?」

頭の中が相当ぐるぐるしてきました。モノはいろいろとりこむのは得意そうなんだけど、考えをとりこむのはそこまで単純じゃないかも……

仮説めいたものも浮かび上がります。

多様なものとの出会いが自文化を豊かにする……でも、自分たちの考えを乱すから入ってきてほしくない……この2つのせめぎあいの中で、今の今、やはり中野のなかの世界は動いています。その実情を明らかにするために次週より外へ飛び出します!

RI

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2016年09月09日

トウキョウダルマガエルから見る「おたがいさま」

タイトル:おたがいさま
探究領域:共存共生
セントラルアイディア:生態系の中で生き物は互いに影響し合っている。

[1・2年生]

部屋の中で「絶滅危惧種」、「外来種」について話しているだけでは、実際の「生態系」で起きている相互作用や『おたがいさま』の関係性について体感を持って面白さを感じることはできない!

ということで、今週はフィールドワーク!
ちょうど、井の頭自然文化園にある水生物館で行なわれている『現代 トウキョウダルマガエル事情』という特設展示に行ってきました。

トウキョウダルマガエルとは、50年ほど前は東京の田んぼならどこにでもいたカエルで、今は様々な影響を受けて、絶滅に瀕しているカエルです。
今回の展示では、どんな要因が彼らを絶滅に追いやることになってしまったのか、とてもわかりやすい絵や写真、そして実際の生物を展示することで、とても詳細に説明されていました。

IMG_1766.JPG
そこには衝撃の事実がたくさん。
・2014年現在、50年前に比べトウキョウダルマガエルの数は、10分の1以下になっている
・それと同様に、トウキョウダルマガエルの住処である、田んぼの数も、10分の1以下になっている
・それ加え、ナマズやアライグマなど、ダルマガエルを襲い、食べてしまう外来種が劇的に増えた
・水路がコンクリートになってしまったため、手に吸盤のないダルマガエルは、一度水路に落ちてしまうと這い上がれなくなってしまう
などなど、複数の要因が複雑に絡み合って存在することに、気づきはじめたこどもたち。

IMG_1769.JPG
「え、じゃあ、なんで田んぼは減ってしまったの?」
「あ、東京に人が増えて、家がたりなくなってしまったって、ここに書いてあるよ!」
「う〜〜〜ん、じゃあなんでわざわざ田んぼをつぶしちゃったわけ?生き物たくさんいるのに。」
「あ、家が足りなくなっちゃって大変で、ダルマガエルとか田んぼに住んでる生き物が生きられなくなっちゃうって、知らなかったんじゃない?」
「たしかに〜!」
「じゃあさ、また田んぼ増やせばいいじゃない!」
「でも、どうやって?」
「今街になってる部分につくればいいんじゃないの?ビルとか壊して。」
「うーん、でも人がいっぱいいて、場所がないから田んぼをつぶして、お家を建てたのに、そんなのできっこないんじゃない?」

という子供たちの会話から、「人」が生態系に大きな影響を与えていることに気がつき始じめ、様々な問題には原因があり、直線的にそれらがつながっているわけではないということにも気づき始めたことがわかります。

IMG_1817.JPG
また、水生物園の展示の中には、井の頭池の今と昔を比較するものがあり、なんと今の池には、日本にはもともといなかった「外来種」のオオクチバス、ブルーギル、カミツキガメがいることを知りました。
なんで、こんなところにアマゾン川にいるような大きくて、獰猛な生き物がいるのか?
という疑問が、当然のようにこどもたちからの湧いてきます。

「誰かが飼えなくなったから、池に捨ててしまったって、ここに書いてあるよ〜!」
と展示の端に書かれた説明書きを読んでくれたこどもがいました。
「最初は小さくて、かわいかったけど、水槽も彼らにとっては小さすぎるものになってしまうくらい、どんどん成長しちゃって、飼うのが大変になって、飼えなくなっちゃったんじゃない?」

それを聞いていた子の中には
「それを買ったところに返せばいいのに!」
「いや、そんな危ない外来種は、外国に持ってっちゃえばいいんだ!」
「え、でもそんなことしたら、その外国の在来種も喰われちゃうんじゃない?」
「じゃあ、その外来種の仲間たちがいるところに話せばいいんだよ〜!」

と話していていて、外来種は見方によっては在来種になりえること、また外来種はただの悪いやつ!という概念から離れ、一体どんなものなのかわからなくなってきたという『認識のゆらぎ』が怒っていることが、手に取るようにわかりました。

今週は、全体で「トウキョウダルマガエル」を題材に、生態系の中の相互作用関係について見てきたわけですが、来週からは、いよいよ個人でじぶんが「面白い!」と思った外来種についてフィールドワークを行い、調べた上で、その外来種をとりまく生態系内の「おたがいさまの関係」を見ていきます。

ES

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振り返り探検

タイトル:東京発見伝
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア:探検は歴史や価値観、存在意義の洞察につながる。

[3・4年生]

スクールから谷戸小学校までを歩いた中で発見したことを振り返ります。 外に行かなくても、「探検中」であります。 準備し、歩いて、振り返る。今回の探検はこの3つをセットにすることにしました。 どんなことを考えながら歩いてきたのか共有していきます。

「人が少なかった。」

人・もの・地形のうちの「人」に関することから話は始まりました。
東京は人が多いまちとイメージしていたため、少ないというのは予想外だったのかもしれません。その中でも、子どもたちはどんな人がいたのかを「見て」「話して」「記録して」いました。

「工事の人にあった。」
「人通りの少ない道だけど、外国の人が7〜8人通ったって言ってたから、
外国の人が多いって言えるんじゃないのかな。」
「その工事の人、この辺は大きい公園も多いけど、
ビルも多いから空からみたらビルばかりになるねとも言ってた。」

大きい公園が多いってどうして知ってるのかな?
「あ。聞いてみればよかった。」

話が止まってしまったり、何を話していいかわからなくなってしまったとき、
思い出したいのが「key-concepts」です。
functionなら「今している仕事はどんな仕事?」だったり、
causationなら「なぜ工事をしているの?」だったりと、
key-conceptsで考えると、もっといろいろなことが聞き出せたことに気付いてきます。

「ベビーカーに子どもを乗せて歩いてるお母さんと話をしたよ。」
「化粧が濃かったな。」formを見ていたのですね、、。

この辺は子ども連れの家族が多いのかを聞いてみたところ、「23区では少ない方で、埼玉の方にはもっといっぱいいる」という返事をもらったとのこと。「その人はなぜそんなことを知っているのかな。」「どうして中野は少ない方なのか。」これも後々考えてみると気になるところです。ただ、他の区と中野を比べてみるという見方は、この方と話をしたことで得た収穫であります。人口を比較してみるのもいいかもしれません。調べたいことへと繋がっていきます。

「お米やさんは、60年間お店をしていて、昔のときの方が近所の人たちとの交流があってみんな知り合いだったけど、今では、住む人が変わって知らない人が増えたって言ってた。」
米屋もこの辺はここだけになったといいます。昔から住む人が少なくなり、なおかつ、近所同士があまり関わらなくなったということでしょうか。ほかの人にも同じことを聞いてみるのもよさそうです。

「お店が少なく、家が多かった。」という「もの」についての発見もありました。
「谷戸小学校は88周年って書いてあった。」
「城山公園にこんな看板を見つけたよ。」
どんな「もの」を「見た」のかがあがっていきます。

2016_9_11_atsu_IMG_0020.jpg読んでみると、
このあたりが「城山町」という名前だったこと、
中野村であったこと、
谷戸運動場はひとつのお屋敷だったことなど、
1576年の記録に城山と記されていることや、
戦国末期は堀江氏の土豪屋敷だったことといった、
昔、この場所に何があったのかが書かれています。

読むことで新たな発見や疑問が出てきます。
振り返りの「型」として、「読む」ことは必須となってきます。
「大きなお家があったんだね。」「トイレいくつあったのかな?」
「城山町っていうことは、お城もあったのかな?」
「ここは谷になっているのに、城山なの?」

2016_9_11_atsu_IMG_0024.jpg 「城山公園にも看板があったよ。」
「東京府立 農事試験場の跡」という題が付いています。
江戸末期から大正12年まで、
この土地が農業発展の発信地であったといいます。
都市化の波に押されて立川へ移転されたと書かれています。


61EHF7%2Bh37L._SX335_BO1%2C204%2C203%2C200_.jpg また、今回の資料として使っている本によると、
川が地面を削って凸凹の地形をつくっていることがわかり、
実際に地図をみると、川に沿って谷ができています。
「桃園川は神田川とぶつかってる!」
「桃園川って緑道になってるよ。」
「今でも流れてるの?」

インターネットで検索してみると、桃園川に限らず、東京都市部は戦後宅地化が進み暗渠化された川は多く、下水道へと変わっていったことにたどり着きました。


「都市化で立川に農事試験場が移る前は、桃園川もあったから、野菜が育てやすかったのかな。」
「醤油、味噌、そば粉もここで作られて運ばれたって本に書いてある。」
製粉にするための石臼が残されている場所が中野坂上にあるとも記されていたため、
実際に見にいってみました。

2016_9_7_atsu_2%E9%80%B1%E7%9B%AE_001%20%281%29.jpg
宝仙寺にある石臼塚。
「使っていた人たちが見たら、こんなふうに積み上げられてて、
水まで溜まっていてビックリするだろうね。」





2016_9_7_atsu_2%E9%80%B1%E7%9B%AE__006%20%281%29.jpg桃園川緑道。
川の形が道となって残っています。
「昔は川の水を使って、味噌とか野菜とかつくってたのに、
今は人が増えて、川に蓋をしちゃったり、神田川も汚れちゃったりして
川の水を使えなくしちゃったんだね。」


それって、昔の人はどういう人たちが多くて、今の人たちはどう変わったって いえるのかな?と聞いてみると、

「昔の人は、どんなものでも使い道がある、工夫しようって思ってる。」
「今の人間は、贅沢ばかり望んでるんじゃない?自分たちも含めて。」

見てきたこと、話したこと、記録したきたことをもとに、それらを整理し、わかったことを共有し、調べたいことを確認し、確かめたいことを見にいきました。地形を利用した人々の暮らしがあった過去や、人の暮らしに合わせて地形が変えられた経緯を知り、そこから見えてくる人々の価値観にも迫っていきたいところです。この周辺が清らかな水の恵みで栄え、農事の発信地であり、物資の行き交う場所としての存在していたという歴史は見えてきたものの、今の特徴はまだ見えてきません。「中野がなくても困らないんじゃない?」そんな発言すら出てきています。中野を出て、ほかのまちとの比較をすることで見えてくるかもしれません。彼らの大きな目的は東京というまちを捉えること。来週は、いよいよ中野から範囲を広げていきます。

AN

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突撃街頭インタビュー!

タイトル:日本のなかの世界
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア: 私たちは多様性の中で生きている

[5・6年生]

早速、中野駅北口で外国人にインタビューを試みることに。10人が3チームに分かれ、一人はインタビュー。一人は録音、もう一人は周囲を見渡して邪魔になっていないか気を配ります。

インタビュー場所は、中野駅北口の広場。ここだと多くの歩行者の邪魔にならずにインタビューできるスペースがあります。ちなみに、いまや秋葉原以上に外国人に人気のブロードウェイはやサンロードは、インタビュー禁止になっています。いかがわしい勧誘やらなんやらでお店の人の商売を邪魔する事態があったのでしょう。ということで、ブロードウェイを見たり、買い物したりした人が中野駅に向かうサンロードの出口で1チームは見張ります。

すると、あっという間に外国人と思しき人が通りかかります。

「Excuse me ……」

3人の子どもたちがあわてて駆け寄って取り囲みますが、当然のことながら、うさんくさそうな目で眺められ、インタビューは拒否されます。

他のチームも、改札口から出てきた人や、セントラルパークからやってくる人々が降りてくる階段したで、次々に外国人と思しき人に声をかけますが、無視、拒否。たくさん通過するのに、インタビューはなかなかできないという状況に直面しました。

「失礼にならないように練習してきたのになあ……」

子どもたちは事前に英語ネイティヴの先生にも協力してもらって、Excuse me. Do you have some time now. We are doing some school project about diversity. と、丁寧にお願いするフレーズも頭に入れてきました。また、自分たちの知りたいことに直結する Question も決めてきました。準備万端に臨んだつもりでしたが、やはり現実は厳しい。

しかし、5分ほどすると……1つのチームがインタビューに答えてくれる人を見事につかまえました。

IMGP0992.JPG  IMGP0983.JPG

さらに他のチームも、またもうひとつのチームも続けて、インタビューに応じてくれる外国人を見つけます。

「Where are you from ?」
「Germany.」
『Why did you come to Japan?」
「Holiday.」
「What's impressed about Japan?」
「Culture is so different.」

紙に書いておいた文を見ながら必至に尋ねます。本当は、紙はいざというときに見るためのカンペだったのですが、緊張して文が出てこなくなり、どうしても下を向いてしまいます。
surprised の発音がよくできなくて、なかなか通じないと、インタビュー相手が紙をのぞきこみ、ああサプライズね!と、助けてくれました。

インタビューを終わると、お礼のためのスモールプレゼントの折り紙を手渡します。すると「Amazing !」と喜んでくれます。

IMGP0982.JPG  IMGP0980.JPG

「日本のどこに驚いた?っていうのはいい質問だねって言われたよ」
「日本人は多様な人たちと知り合って仲良くするためにも、君たちみたいにこういうことから始めてみるのはとても大事だと励まされた」

不慣れな「英語」を用いて、初めて外国人に対し街頭でインタビューするという課題を10人みんながクリア。時間にして45分ほどでした。

スクールに戻り、ボイスレコーダーに録音したインタビューを聞き直して、Good & Better をふりかえります。

「ちゃんと英語覚えて、伝わるように発音しないとな」
「せっかく文化が違うって答えてくれてるのに、どんなふうに違いますか?ということを聞かなかったのはもったいないな」

インタビューの仕方、進め方への反省が飛び出します。

「フランスとかアメリカ、オーストラリアとかの人はインタビューできたけど、中東の人やアジア、黒人の人とはインタビューできなかった」
「日本人と見分けがつかない人はどうしよう?」

インタビュー対象へのふりかえりが出ました。

「やっぱり日本って人がたくさんいて、せまいってイメージなんだね」
「日本人は礼儀正しいのはいいけど、硬いんだね」

外国人から見た「生の」日本 or 日本人への印象を知ったことへの感想出ました。

いずれにしても、初回のインタビューよくやりました。と同時に、まだまだ改善点満載。もっとインタビュースキルを上げて、よりうまく、より価値ある情報を得るために、再びチャレンジ!という気持ち満々の子どもたち。来週も街に繰り出して、突撃インタビューが続きます。

RI

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2016年09月16日

大森を探検

タイトル:東京発見伝
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア:探検は歴史や価値観、存在意義の洞察につながる。

[3・4年生]

先週は、スクールから南東に向かって歩き、坂が多いことを実感してきました。 資料をもとに周辺の地形を調べてみると、川があったことで谷戸ができたこと、 今では都市化が進んだことで川が暗渠化され、坂がそのまま残されている状態であることが見えてきました。自然の力で地形がゆっくりと動き、変化してきたことがわかります。

「谷戸小の子たちは中野の昔のことって知ってるのかな。」
「友達いるから聞いてみようかな。」

「中野の昔」という言葉から、中野の歴史に関して何かわかることはないかインターネットで 検索してみると、中野区のホームページに、歴史に関して中野区立歴史民俗資料館長が語っているページがありました。

「今から約7~10万年前の東京は、西は青梅、南は現在の多摩川の辺りまで一面が海でした。その後、世界的な大氷河期が訪れて、海面が後退していき、12000年前頃、現在の形になったと考えられています。この動きとほぼ同じ時代、関東周辺では富士山・箱根山が盛んに噴火を続けて、大量の火山弾や灰を噴き出していました。噴煙は偏西風に乗って東側に流れて、細かな火山灰(関東ローム層)がはらはらと降下していました。この噴火は、約12000年前まで数万年間続いていました。1週間1か月の単位ではありません、毎日毎日火山灰は降下を続けていますので少しずつ積っていき、そして現在のように台地が出来上がったのです。」と書いてあります。

また、この時代から中野には人が住んでいたというから驚きです。
「火山灰が降っているところに人は住んでないよ。」という意見が
ほとんどだっただけに、旧石器時代の人たちがどんな気持ちで暮らしていたかは
想像しがたいところであります。
人が住んでいた証拠となる石器の発見により、過酷な自然環境の中で暮らしていたことが見えてきたわけです。セントラルアイディアの中にある「歴史」という言葉を「昔のことが残っていることかな。」と解釈した子がいました。確かに、昔のことが残っていると、そこからその時代の様子が紐解かれていきます。

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今週は、武蔵野台地の東の端まで探検に出かけました。
行き先は「大森」。京浜東北線を通ることで武蔵野台地の端沿いを進みます。
海だった「昔」、地形を活かした「昔」が残されている場所を探しに行きました。



20160910124457571.jpgまずは、凸凹地図で歩く場所を確認します。
台地の境になっているところはどのくらい急な道なのか楽しみです。
少し凹んでいる地帯、凸凹道、海岸沿いだった場所を訪れます。
後半は、町工場としての顔にも触れていきます。
東京商業会議所大田支部の発行している「モノづくりのまち 大田マップ」によると、大田区は日本を代表する小さな町工場を中心とした産業のまちとあります。実際にどんなものをつくっているのか、工場の今・昔を尋ねてみたいところです。

2016_9_16_atsu_IMG_1121.jpgさぁ、盛りだくさんの1日探検のスタートです!
「人・もの・地形」を「見る・話す・記録する」の「型」を
意識して歩いていきます。
大森駅の東口は海側、西口は台地側になります。
西口を降りると目の前が神社になっているのですが、そこには急な階段が。
「本当にボコってなってる。」
「神社がなぜ高いところにあるのかな。」
「景色がいいから?」
「津波がこないから?」
実際に見て、歩いてみたことで、疑問も浮かびあがってきます。
あとで凸凹地図で確認してみると、崖の場所に作られている神社がほかにもあることに気づきます。

地図上では四角く凹んだ場所。
以前は「大森射的場」という射撃場があったといわれているところに行ってみます。今はテニスコートになっていることが地図上でわかります。実際にこの場所で働いている人に話をしてみることに。「聞いてみたいことがある!」と直進していった数人がいました。
直接話をした子が以下のようにまとめています。

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見たこと、話したこと、記録したことをもとに、後日、整理する「型」として今回はブログにまとめるという作業を入れています。調べたらわかる内容も含まれているものの、読むにはまだ難しい部分も多々あります。実際に話をしたり聞いたりする中での方が強く頭の中に残り、数日後でも覚えている内容を綴っていきます。

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「本当に凸凹だ!」
「この坂きついなー。」
「富士山に比べたら楽だよ。」
今月始めに富士登山を経験しているため、上り下りはなんのその。
向かうは大森貝塚です。




海だった場所。貝殻が残っているところがはっきりとわかります。
「貝を食べて、貝殻をまとめて捨ててたんだ。」「ここはゴミ捨て場所だった?」

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午後は大森西1丁目に移動。
事前の調べでは、町工場は蒲田付近では残っているところは多くありますが、この地域では少なくなっている様子です。5・6年生も現在テーマ学習の中でインタビューをしている真っ最中。断られることも多いとのこと。それを聞いて、仕事中にお邪魔することの状況を理解し覚悟の上で臨みます。

「なんか忙しそうで話しかけられないから他のところに行こう。」
「ちょっと怖そうだな、、、。」
「あ、たばこ吸ってるから休憩中かな。」
数人のグループに分かれての突撃取材です。
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ほかの会社から頼まれた部品を作っている工場。どんな部品か聞いてみると、色を見分ける機械だといいます。「小学3・4年生かぁ。難しいかもなぁ。」と言いつつも時間をかけてゆっくり説明をしてくださいました。また、別のグループが訪ねた工場でも、「冷暖房の空気を通す箱型の管を作っているけど、実際に作るところ見た方がいいよね。」と言って、明日平塚に持っていくという部品をその場で作ってみせてくださいました。

どちらの工場も5・60年くらい続いていて今は2代目とのこと。
昔と変わったことを聞いてみると、こちらも共通していることが多く、道具・材料がよくなっていることが変わったことであり、住宅地が多くなったことで工場がだいぶ減ってきたものの、残っている工場同士での付き合いは昔と変わらず密接であり、試作品をお互いに渡しあっているそうです。

機械の性能がよくなり、ロボットでもできることが増えたけれど、ここでは手作りでやっている。それを誇りに思っているというのが子どもたちが得た印象でした。
「ロボットの方がいいとは思っていないみたいだった。」
「人によってコツが違うんだって。」
「すごいトンカチが上手な人がいた!」
「いい仕事してますね!だ」

そういった方たちと接する中で、それぞれ多くの人と話したわけではありませんが、情報を共有することで見えてくる共通項がありました。
「大田区の人は優しい。」

以前、3年生はテーマ学習『ココドコ』のプレゼンで中野区の人は優しい人が多いと発言していました。同じ「優しい」なのか聞いてみると、ちょっと違うといいます。

大田区の人は、こっちから話したら仲良くなれる。
中野区の人は、勝手に話しかけてくれる。

事前に計画し、実際に歩いて「見る・話す・記録する」を繰り返し、事後に振り返りをする。中でも「話す」という行為は偶然性や未知の部分が多く、思わぬ発見へとつながっていきます。積極的に話せる子もいれば、そうでない子もいます。また、話しかけることはできても話をつなげられない場合もあり、「「話す」は面白いけど難しい」ということを実感しつつ、「次はもっとこうしてみよう」とそれぞれの「話し型」を磨いていきます。

AN

TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

外国人居住者にインタビュー

タイトル:日本のなかの世界
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア: 私たちは多様性の中で生きている

[5・6年生]

中野駅北口にあるケンタッキーフライドチキンに、なんと外国人ツーリストはパスポートを提示すると10%オフと書いてあるポスター発見!

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「いいなあ!」

「食い気」で色めく子どもたち。

「やっぱり中野に来る外国人観光客は多いんだね」

多くの外国人ツーリストが中野を訪れているとこのポスターが証明しています。

先週は、中野を訪れるツーリストを中心に街頭突撃インタビューをしました。今週は、中野に在住または勤務している外国人の方へのインタビューを試みます。

サンモールやブロードウェイの東側。中野5丁目には、多くの飲食店街が集まっています。その中には外国人が経営していたり、働いている店がたくさんあります。そんなお店を訪れてじっくりインタビューです。

インタビューに先だって、インタビューを受けてくれるか、受けてくれる場合、いつうかがえばよいかアポイントをとらないといけません。そこからスタートです。

各自担当する店を決め、アポとりです。最初のグループは、中野に一店舗だけの HARAL FOOD を扱うグロッサリーを訪れます。

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HARAL FOOD とは、イスラム法上で食べることが許されている食材や料理を指します。このお店は、在住するムスリム向けの食材店です。店内には所狭しと商品が並んでいます。

アポをとろうとすると、今、構わないよとおっしゃって下さったので、早速インタビュー開始です。

「14年前日本に来て、日本語学校通って、ちょっと働いて、今の店を開いたよ」

バングラデシュから来日した店主さんは、ちょっと発音が聞きずらいものの、日本語でしっかり受け答えしてくれます。このお店の経営以外に日本の中古車をバングラデシュへ輸出するビジネスも並行してやっているといるそうです。

「ムスリムの人だけでなく、中野五丁目のお店の人も買いに来てくれる」

ということで商売は好調のようです。

日本への印象を子どもたちが尋ねると真っ先に

「安全!」

という言葉が返ってきました。ものを壊されたり、盗まれたりすることが極端に少ないことが日本で暮らしていてよいことだそうです。

反対に、ここは日本でくらしていて大変だと思うことは、子どもの教育のことだと言う。子どもには世界中どこでもたくましく暮らしてゆけるように英語も日本語も学んでほしいと思っているのだが、今、通わせている日本の公立学校はそこが弱いというのです。

日本は「ぬるい国」「危機感の薄い国」、反面、「のんびり暮らせるよいところ」というのが世界的な目で見たときのひとつの評価なのだということが明らかになってきました。

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ベトナム料理の店で働くベトナム人の方は、やはり「安全」を日本のよいところの一番にあげ、ただ人が忙しく働き過ぎるのではないかとおっしゃっていました。

「ベトナムはバイクのラッシュだけど日本の電車の混雑も大変だね」

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サンモールと早稲田通り沿いに2店舗を展開するネパール人の方は、日本人のカレーと本場のカレーをなんとか融合できないか考えて開店したそうです。日本の人は礼儀正しかったけど、最近はそうでもないような気がする。暴力的だったり、いたずら書きをしたりする人が増えたような気がする……その割には、硬くてフレンドリーじゃない……

耳が痛い指摘です。

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薬師通りにある南インドカレーのお店では、店長さんがインドの地図を使って熱心に説明してくれます。なんとこの方の5家族はすべて日本に移住したそうです。

「最初ね、みんな私の顔を見て怖がったよ」

確かにコワモテの顔で、肌の色も異なります。日本人の中に入ってゆくのはなかなか大変だったようです。

インドでは学校をやっていたこともあるそうで、インドの学校では5歳からテストがあり日本の学校よりずっと厳しいとのこと。日本でいくつもの資格をとってこのお店を開いたそうです。お店の中には中野区からの表彰状が飾られ、グルメランキングでも高い順位の有名店になりました。

「こうして話を聞きにきてくれるのはうれしいよ」

率直な思いを語る機会のなかなかない中で、子どもたちの訪問はうれしかったとおっしゃってくださいました。

想像以上に私たちの身のまわりは「多様性」に満ちた社会になっていることを実感します。来週は、インタビューで得た貴重な情報を整理し、まとめ、考えを深めるフェイズに移ってゆきます。

RI

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2016年09月23日

人が多いまち、東京。

タイトル:東京発見伝
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア:探検は歴史や価値観、存在意義の洞察につながる。

[3・4年生]

先週は、大森のほかにも、出かけた場所がありました。
皇居周辺です。
日本橋からスタートしました。

「この前、タクシーの運転手さんに日本橋のことを聞いてみたんだ。」
「橋の真ん中に道路のスタート地点があるって。」
やはり、探検には「話す」が欠かせません。

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「あれがスタート地点なんだ。」
「よく見えないけど、撮っておこう。」
日本国道路元標がよく見えるところにいってみると、
私たちのほかにも、まち探検をしている人たちがいて、
ガイドさんの話を一緒に聞くこともできました。


ここからは、2チームに分かれて行動です。
一方は日本橋を渡りきり進み出し、もう一方は渡った場所に戻り進んで行きました。
デパートに行けば、たくさんお店がある。お店の人になら何か話が聞けるかもしれない。そう思いたって入ってみたのは、三越。建物の上もほかと違って何か発見がありそうです。屋上に行ってみて、花屋さんと話をすることができました。帰ってきてから作ったブログの一部です。

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東京初のディズニーランドがあったとは。
そのほか、「ファッションのお店が多かった。」と書いた子は、ここが昔は着物屋だということを聞いていちばん驚いたといいます。今も昔もファッションにこだわる人の多いまちということでしょうか。

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別のチームの目に止まったのは、パソナビル。
「ビルの中に田んぼ?!」「本物?」
中に入ってみると、畑もあり、トウモロコシなど多数の野菜が育てられていました。社員の方々が「社会化見学ですか?」とにこやかに声をかけてきてくれます。

2チームが待ち合わせしていた場所は、大手門。
そこから皇居内を歩きます。
歩いている人の様子、広い敷地、江戸時代から残されている建物。
ここでも、人・地形・ものに着目していきます。

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日本水準原点。
「富士山の高さはどうやって測ったの?」
算数で長さの学習をしているときに出てきた疑問がありました。
先月登ってきた富士山が3776mであることも、
ここが基準となって測られていることになります。




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国会議事堂周辺は、これまでよりも人は少なくなりますが、警察官があちらこちらにいることに気がつきます。ほぼ全員の子が警官の人と話をしていました。
「ここだけにたくさんいるわけじゃないんだって。」
「ほかの場所では、警察の中に入っていることが多いけど、この辺は守らないといけない場所が多いから、外に警官がたくさん出てるんだって。」
翌日、地図で確かめてみると、国会議事堂や首相官邸のほか、〜省、〜庁など、官公署の地図記号のついているところがたくさんあることに気づきます。

%E6%BA%9C%E6%B1%A0%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB_008.jpg「溜池に行きたい!」とブログに書いている子もいた、溜池に到着。
江戸時代、この一帯が池となって、外堀兼用 の上水源とされていました。石碑には、徳川家光が遊泳していたとも書かれています。
「ここで泳いでたんだー。」


これまでに、中野、大森、日本橋とまちを探検してきました。探検前は、東京は騒がしくて自然が少なくていいイメージはあまりないなと思っていた子どもたちでしたが、心境の変化が見えてきました。

「東京って便利なところにどんどん作り変えているのかと思ったら、昔のものを残そうとか伝えようとしている人たちもいるんだね。」
「大森には駅前にも駅のホームにも土器の置物飾ってあったし。」
「昔の場所には、看板とか石碑もある。」
「日本橋にはガイドさんがいた。」
「東京は、古いものと新しいものが交ざっているところが面白い。」

住宅街を歩けば古い家もあれば新しい家もある。皇居は昔のお城であり、後ろを向けばビルが立ち並んでいる。新しく変わるものもあれば、残そう守られているものもある。どのまちにも共通していえることだと子どもたちはいいます。

「大阪はたこ焼きとかお好み焼きって名物があるけど、東京名物は何かなってiPadで調べてみたんだけど。」
「いっぱい出てきて、これってものがないんだよね。どれもどこにでもあるようなお菓子だったり。」
「もんじゃが名物っていうけど、もんじゃって何?」
東京育ちの子どもたち11人が、口を揃えて、もんじゃを食べたことがないといいます。いつも食べているもの、身近な食べ物でなければ、名物ではないというのも一理あります。

「東京は、いろんなものが食べ放題だと思う。」
「確かに!東京にお好み焼き屋はあるけど、大阪でもんじゃ屋は見たことない。」
日本橋には「長崎館」があったり、中野で北海道のソフトクリームが食べられたり。便利が好きなまちでなんでもあって、ひとつの名物はなくても「いろいろ」が名物なのではという見方ができてきました。

「人はまぁまぁ好きかな。」と探検後に思うようになったという子もいました。
どのまちでも無視されることなく、話ができたことがよかったといいます。
子どもたちの「人」を「見た」印象として、次のような話が出てきました。

大森(町工場)の人
ひとつ聞くといろんなことを教えてくれる。一緒におしゃべりした感じ。 話していて楽しい。仕事、休憩でメリハリが両方見える。

日本橋の会社、お店、デパートの人
質問したことに答えてくれる。ニコッとしているけど、メリハリのお勉強モードって感じ。てきぱきしすぎている。でも、それは悪いわけじゃなくて、人が多いから忙しそうでそうなっているんだと思う。

中野の人
むこうから話しかけてくれて自然体な感じ。嫌われている感じがしない。自分からでなくてもなかよくなれる。人が多くても自由な感じ。

東京は、そこのいる人と話をすると面白いところ。場所によって感じは違っていて、それぞれのよさがあるといいます。 日本橋は聞きたいことに答えてもらいたいときにはいい。 大森はひとつのことから話が膨らんでいくのを楽しみたいときにはいい。 中野はなかよくなりたいときにはいい。

東京を紹介できる素材が集まりつつあります。歩いて得てきたものを整理、解釈、読解、再調査していくことで、まだまだ発掘できるものがありそうです。

AN

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インタビューをまとめる

タイトル:日本のなかの世界
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア: 私たちは多様性の中で生きている

[5・6年生]

今週は、中野区国際交流協会の方々のご厚意で、日本語講座に通っている外国人居住者の方がTCSを訪問してくださいました。お店に訪問したときは男性の方ばかりでしたが、今回は女性の方ばかりです。

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まずは粗茶でおもてなし。しかし、どうもみなさまのお口にはあまりあわなかった様子。まさに「ほろ苦い」スタートになりました。

しかし、子どもたちは、インタビューの雰囲気をつくるのがとても上手になっています。笑顔で、相手の顔を見て、失礼にならないように気をつけながら問いかけます。小学生からのインタビューということで2〜3問たずねられて終わりかなと思っていたら、子どもたちは、質問をきっかけにさらに話を広げようとするし、真剣に聞きとろうとする姿勢にとても好感を持ってくれたようです。

インタビューがうまくいくかどうかは、インタビューされる側が、インタビュアーに好感を持つかどうかにかかっています。子どもたちを気にいってくれた方たちは、次第にプライベートに関することも話してくださいます。

中国、韓国、フィリピンをそれぞれお母国とする方達。3つの国と日本との間には歴史的にも、現在の状況においてもさまざまな葛藤があります。

「日本に連れて来られた私のおじいさんたちは、韓国に戻るときにもし別の船に乗っていたら爆弾に当たって沈没して死んでいたのよ」

太平洋戦争のさなか強制労働させるために日本に連れて来られた韓国人の子孫だと明かされます。インタビューしている子どもたちに直接責任はないのは明らかでも、なんとなく気まずい感じがします。ではどうして韓国に戻ったのに再び日本に来ることになるのか……それは、日本の敗戦後わずか5年後、同じ民族どうしでの戦いが勃発してしまいました。朝鮮戦争です。なんとなく社会で聞いたことのある知識が、現実の重みをもって迫ってきます。

「韓国は軍事政権で自由が限られていたからということと、戦後も日本に帰らなかった李方子さんという、日本の皇族から朝鮮王朝に嫁いだお姫様にあこがれていたことがあって日本に来て、日本に住んでいた在日韓国人の人と結婚したよ」

子どもたちは話にどんどん引き込まれてゆきました。

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たくさんのお話をうかがい、無事、インタビューは終わりました。でも、本番はこれからです。インタビューした内容をしっかりふりかえり、どんなことがわかったのか、どんなことがまだわからないのか、そして、さらにどんな疑問がわいてきたのか、明らかにする必要があります。

そのためにまずボイスレコーダーに録音したことを聞き直します。

話してくれた事実を「メモ」しながら聞いていきますが……そうしながらも、あれ?いったいどういうことだろう?という新たな「疑問」がわいてきます。

「フィリピンの言葉ってタガログ語だと言っていたけど、どんな言葉なんだろう?」
「中国と言っても香港なんだよね。香港は昔イギリスだったって言われたんだけど……」

インタビューして聞いた事実からわいた疑問を調べる必要が出てきました。

「もしかして日本に住みたいと思っているけど、日本が『いい』というより『まし』ってことなのかな……」
「なんとなく感じたんだけど、日本に来た人の方が、いる人よりがんばっている気がする」

さらに知りたくて、調べたい疑問とともに、インタビューの結果、「もしかしたら……かも」というひらめきも生まれてきました。単に「知った」ではなく、そこをスタートにしてさらに「気づく」。これが探究です。

インタビューした相手のことをとことん魅力的に語ってみよう。そしてそこから見えてくる相手の国と日本との違いを明らかにしてみよう。さらには、異なるバックグラウンドを持つものどうしが同じ場所に暮らすことの意味を考えてみよう。

いよいよセントラルアイデアの理解の核心に迫る内容について考えるフェイズに入りました。

RI

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2016年09月30日

時代の移り変わりを知る

タイトル:東京発見伝
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア:探検は歴史や価値観、存在意義の洞察につながる。

[3・4年生]

これまで中野周辺、大森周辺、皇居周辺と東京のまちを探検してきました。 外を出歩くだけが探検ではありません。 事前に計画を立てることから探検は始まっていて、戻ってきてからは見たこと、話したこと、撮影したことを整理していくことも探検になります。ブログを使って、自分の記憶を整理していきます。

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江戸時代は火事が多く、特に明暦の大火では江戸の大半が焼失してしまったことは、 事前に本で読んでいました。戦災で残った鯱に「明暦」の文字が刻まれていたことから、明暦の大火を経て大手門の屋根の鯱が再建されたことが案内文からも読み取れます。しかし、門の大きさを実感して出てきた素朴な疑問が綴られています。

「こんなに広いなら燃え移らないのでは?」

また、こんな疑問も。
「江戸城がここにあったことはわかるけど、なんで今は皇居なの?」

江戸のまちは大きなお屋敷ばかりだったのか、どういう経緯で江戸城から皇居になったのか、本で調べることもできますが、東京には、江戸時代を視覚的に体験できる場所もあります。
テーマ学習5週目。最後の外出で向かった先は、江戸東京博物館。そして、博物館の近くにある東京慰霊堂にも足を運びました。

今回は、墨田区探検というよりは、これまでの探検による再調査となります。降りた駅は両国駅。
「駅によって雰囲気が違う。」
ホームや改札を歩いていく中で、これまで巡ってきた駅と比較しています。
駅はそのまちを紹介している役割も担っていることが窺えます。

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「人が少ないなぁ」
「ここには、お相撲が見られる国技館があるってことを伝えてるんだね。」

駅から少し歩いたところにある都立横網町公園。
公園にも行く先々で訪れてきました。 今回やってきた公園は、元陸軍被服廠跡地。公園への造り替えが進んでいる最中に関東大震災が発生し、避難場所となるも火事により多数の焼死者が出たといいます。また、東京大空襲によっても多くの人が亡くなった場所でもあります。園内には遭難者の霊を供養した慰霊堂が建てられています。

%E6%85%B0%E9%9C%8A%E5%A0%82%E6%AD%A3%E9%9D%A2CIMG1447%20%281%29.jpg 戦時中、疎開していた子どもたちも3月の卒業式に合わせて一時東京に戻ってきていたことや、遺体が積み重なった無残な光景を写真に記録したものをアメリカ兵に没収されそうになったがなんとか隠せたことなど、慰霊堂を管理している方からお話を伺うことができました。しかも、「テーマ学習ですか?」とむこうから声をかけてくださり、公開はしていない骨を納めている場所まで案内していただきました。

2チームに分かれて行動していたため、行かなかったチームに情報を共有していきます。
「頭の骨が埋められているんだって。」
「頭だけなの?」
「それって、頭だけじゃないよ。ノウコツって言ってたのは、脳の骨じゃなくて、納骨のことだよ。」
「なるほどね。」

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公園だけど、楽しむための場所ではない。
「名前がわからなくなってしまった人たちの骨が埋められていて、その人たちを慰める場所。」 でも、この公園には遊具もあって遊べる場所でもある。 自分たちは楽しめるけど、火事で熱い思いや死にたくないって思って死んでしまった子どもたちもいたことも事実であります。

時代はさらに遡り、江戸東京博物館に入ります。
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まち全体が見渡せる模型や実寸大の模型を見ることで江戸時代のまちの様子が伝わってきます。
町人のまちと江戸城とその周辺の武家屋敷の違いも一目瞭然。
「トイレいくつあるのかな?」
「町人のまちには外にトイレがある。」
「家と家がくっついてるね。」
「道が広くて、フェスタみたい。」

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ものを運び集まってくる人でにぎわっているものの、車や機械で運んでいるわけではありません。
「重くて持てない。」
人力で運んでいた時代では、力仕事が要求されます。


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日本橋三越でインタビューしたときに、昔は着物屋さんだったことを聞いてはいたものの、これがその着物屋さんだとは一見気づかず。「三井越後屋呉服店」の文字を読んでみて、ようやくピンときたようです。その後、ブログには、暖簾のことが書かれていました。着物屋から百貨店になったことでなく、新たな違いに着目して記録しているのは、足を運んでその場を歩いたからこそできる着眼点なのかなと思いました。

今回の再調査により、歴史的背景をよりイメージできるようになってきました。江戸に幕府が開かれて以降、人・ものが集められ、国の中心となっていった東京というまちの変化を知り得たことで、来週のプレゼンにむけて、その価値観や存在意義にも触れていきたいところです。

AN

TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

多様性を活かす社会とは

タイトル:日本のなかの世界
探究領域:時空因縁
セントラルアイディア: 私たちは多様性の中で生きている

[5・6年生]

インタビューした内容をまとめて、インタビューさせてもらったお礼として届けます。Keynote のスライドに聞いたことをまとめ、そこから疑問に思ったことをまとめ、さらに調べてみたことも加えます。

ハラルフードのお店をインタビューした子は、店主のバングラデシュ人の方が

「日本に働きに来て大変なことはないね」

淡々と言われたことをスライドにまとめました。

と同時に、日本はこのままでいい、つらいことはない……という言葉に「違和感」を抱きました。

「なんで日本はいいところとしか言わないのかなあ」

不満や嫌なところを率直に言ってもらって改善点を探ろうとしていたので完全に肩すかしです。どうして日本の悪口を言わないのだろう……働くのは大変なはずなのに、全然平気!というのはどうしてなのだろう。

「ぼくたちが子どもだから日本のこと悪く言うとかわいそうだと思って手加減しているのかも」

その子がつぶやきました。

すると、ベトナム人にインタビューした子が突然

「おっちゃん、ベトナムの平均年収って30万円だって」

国際機関のまとめた統計データを調べていた子が言いました。そのデータによると、日本の平均年収は約400万円。なんと約13倍!

近くのコンビニ時給 1000円と書いてありました。1日10時間働いて10000円。30日=1ヶ月働けば年収分を稼げてしまう計算になります。

これなら日本に働きにくるよなあ……みな納得です。アジアの国の中でとにかく豊か。そのうえ、安全で、人はまあまあ優しい。キレイ。病気になりにくい。となれば、自分の国と比べて、日本が「夢の国」に見えても仕方がないなと子どもたちは思い始めました。

「わあこりゃあ差があり過ぎだ……」

ベトナムの平均年収に触発されて、バングラデシュの平均年収を調べようとしても出てきません。しかし、業種別にどれぐらいの賃金をもらっているかをJETRO がまとめたデータを見つけたようです。それによると、工場で働いている人(正社員)の平均月収は、日本が約 30万円なのに対し、バングラデシュはなんと約5000円だったのです。賃金が低いだけでなく、工場の環境も劣悪だということも見えてきました。作動している機械の振動が原因で、工場が壊れ、瓦礫の下敷きになって多数の労働者が亡くなったという記事を見つけたのです。その工場は繊維工場。つまり、洋服を作っている工場でした。安い労働力で作った製品が流れ込んでいるのは……欧米や中国、日本など、先進国です。お金がある国が、お金のない国に仕事を与えるという「名目」で、実は過酷な労働を強いている現実。自分の着ている服もこのような人々の犠牲の上につくられたものなのだと気づきました。

「バングラデシュって洋服だけでなくエビの輸出国なんだって」

ブラックタイガーと呼ばれる海老を海外に輸出することでGDPの5%も稼いでいることも調べました。本来だったら、カワウソ漁と言って、まるで鵜飼のように、カワウソに海老を追い込ませて、人が捕獲するという伝統漁法によって現地の人の口に入るものでした。しかし、その海老を海外資本の入った会社が独占し、先進国の「グルメ」を支える食物として横取りされつつあるのです。

調べていけばいくほど、アジアの国と日本とのいびつな関係が見えてきました。とはいえ、今、食べている天ぷらそばの海老が、着ているTシャツが、そのいびつな関係の「賜物」で、見事に自分たちものそのサイクルの中に組み込まれているのです。

にもかかわらず、現地から飛び出して、日本にたどり着き、今、中野で暮らす人たちは、口々に

「日本はいい国だね」
「今のまま変わる必要はないよ」

と言うのです。

そりゃあそうでしょう。母国の過酷な現実に比べればはるかにハッピー。なにもかも恵まれている。まあ人が多くて電車が混んでいるのを我慢すればいいぐらいかな。そんな感想しか出てこないのは、本心なのです。

脱出した人はいいけど、そうでない人はどうなってるんだろう……「恵まれている」と見られている私たちに、いったいどんなことができるのだろう。一方で、日本にハングリー精神たっぷりで移民してくる人たちは、ぜいたく慣れして、ぐだぐだの日本人よりよほど優れているのではないか。私たちの仕事をどんどん奪っていく存在なのではないか。

どんどん思いがわいてきます。

反面、自分たちのやれることとなると何を言っても「こうしたらいい」「こうなったらいい」という他人事・きれいごとです。はたしてどんな提案ができるのか……深く考えざるを得なくなりました。

RI

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