東京コミュニティスクール-探究型学習が教育の特長-全日制オルタナティブスクール(小学1年生から6年生)

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2013年11月 アーカイブ

2013年11月01日

名のない葉っぱの正体は?

[1・2年生]

8人の編集者たちによる葉っぱ図鑑作りが始まりました。
蚕糸の森公園で、ほんの少しいただいてきた葉っぱを
観察して記録をしていきます。
木に名札がかかっているものは名前がはっきりしていますが、
そうでないものも多く、まずは、葉っぱの名前を知るため
図鑑を見ていきます。

「あった!この葉っぱだ!見て!」と言われ、開かれたページの
葉っぱの写真と見比べてみると・・・・
図鑑の葉っぱには鋸歯があるけど、この葉っぱのふちはギザギザがありません。
「あ、ほんとだ。」

「あった!」との声に誘われ、一緒に図鑑をのぞいてみると・・・
「枝に毛が生えてるのが特徴」って書いてあるけど、この枝には毛はないね。
「あ、そうだね。」

なかなか葉っぱの正体がつかめません。でも、図鑑に載っていることと
実物の葉っぱを観察していくことを繰り返していくうちに、
図鑑に出てくる、楕円、ひし形、鋸歯、主脈、葉柄など、
はじめのうちはわからなかった用語を理解して使えるようになっていきました。
同時に、葉っぱの裏おもて、葉脈をよく見たり、触ったりして、
確実に観察するポイントが見えてきた様子です。

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それでも、どうしても図鑑から探し出せなくて苦戦していた子が
放課後に蚕糸の森に行き、公園管理の人に
「この葉っぱの名前わかりますか?」と質問。
そのときには、わからないとの返事だったそうで、
家に図鑑を持ち帰り、引き続き名前調べを続けていました。
ホームワークした結果、「いちばん似てたのはこれかな?」と
2種類、見つけてきましたが、一緒に図鑑の説明を読むと
どうもしっくりきません。

数日経ったある日、スクールに葉っぱのついた枝が届いていました。
枝には紙のメモがついています。
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葉っぱも枝も、調べているものと同じもの。
でも、図鑑には、
キンモクセイの葉は鋸歯があり、つやもあります。
もっている葉っぱは鋸歯はなく、つやもありません。
公園事務所に行ってみると、いつもお世話になっている事務所の方が
わざわざスクールまで届けてくださったことがわかりました。
そして、キンモクセイのひこばえ(樹木の切り株や根元から生えてくる若芽のこと)だと
教えてくださいました。
大人の葉と孫の葉は違うってことがわかり、
図鑑で探しても見つからなかったことにも納得です。

見つけた場所に行ってみると、木が切られた痕跡が残っています。
見つけたときには気がつかなかったのに!
おかげさまで図鑑にも載っていない大発見ができました。

自分たちの作る図鑑には、蚕糸の森ならではの
とっておき情報を載せていこう!

AN

TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

もったいないの現状は……

[3・4年生]

ここは選りすぐりのドキュメンタリー映画を放映するので有名な渋谷の映画館。そんなハイブローな空間に現れた小学生たち。見にきた映画のタイトルは『もったいない』(原題・TASTE THE WASTE)。食品廃棄の現状を赤裸々に映し出した野心作です。

デパートやスーパー、コンビニ、そして飲食店としては、食品廃棄しているところは見せたくないので、取材を申し込んでも丁重に断られてしまいます。ゴミ箱にしても厳重に管理されています。このため食料廃棄がなされている現場に出向いて実態を目の当たりにすることはとても難しいのです。またまた食品偽装の問題が巷を賑わせていて、なおさら神経をぴりぴりさせている「現場」を小学生相手に見せようというところはありません。

だからといってただあきらめるわけにはいきません。「文章」や「数字」といった「情報」や「データ」だけでなく、現状を「目」で確かめたい……そんなときに、このテーマ学習のために公開してくれたのか!というぐらいドンピシャの映画に出会ったのです。

IMG_0119.JPG  ttw_artworkB_webtop.jpg

冒頭からスリリングな映像。ウィーンの街中にある業務用の巨大なゴミ箱にダイヴして、まだ食べられるのにスーパーが廃棄した食品をあさる若者二人の姿。捨てられたものであっても勝手に持って帰ると窃盗罪に問われます。そうなったらそうなったで自分たちの正当性を訴えるのみ!というポリシーと覚悟を持って臨んでいます。

無事、家に戻り、「戦利品」を食卓に並べてみると、野菜に肉、魚、乳製品の山ができました。全然不潔な感じがしないどころか、腐ったり、悪くなったりしている形跡すらありません。それもそのはず。表面がちょっとしおれているとか、あと数時間で消費期限が切れるとかの理由で、品質になんら問題がないのに廃棄されてしまっているからです。彼らはこうやって食品を手に入れているので月の食費は15ユーロしかかからない……いきなり「飽食」の「矛盾」を目の当たりにしました。

いつでも焼きたてのパンを店頭に並べておくために、冷えたパンはどんどん廃棄されます。こうしてダンプカーに山盛りに積まれたパンが巨大ゴミ倉庫に集められます。画面に向かって流れ落ちてくるパンの滝の迫力がショッキングです。

消費期限をちょっとでも過ぎた総菜やお弁当も大量にポリバケツに捨てられてゆきます。ちょっと前までは、とてもおいしそうにパックされていた食べ物が、ポリバケツの中で無惨な姿をさらしている……形がちょっと曲がっていたり、色がちょっと規定と外れているだけで捨てられてしまう野菜や果物の山……市場で買われることなく無造作に発砲スチロール容器に放置される魚……映画館の巨大スクリーンに淡々と次から次へと映し出される食品廃棄の現実を子どもたちは食い入るように見つめていました。

IMG_0182.JPG  IMG_0186.JPG

まだ食べられるのに捨てることがわたしたちの日常に組みこまれている……なんてひどいんだと思いつつも、自分たちがそこに加担していることにも気づいてしまった……子どもたちの中に強い葛藤が生じました。

まず自分の身のまわりからということで、給食の残飯調査をしよう!と子どもたちが言い出しました。もともとプランしていてやらせようと思っていたことでしたが、映画を見終わってスクールに戻ってきた途端、子どもたちの方から言い出し、学びの時間以外に勝手にやり出しました。

この日のメニューは豚キムチ。子どもたちに人気のあるメニューです。にもかかわらず、たった20名のスクールでありながら、残飯の重さを量ってみると約1kg。1人分の重さも量っておいたので割り算してみると……4人分!なんと5分の1も食べ残していることがわかってしまいました。

IMG_0187.JPG  IMG_0192.JPG

「今日は少ないと思ったのになあ……」

嫌いなメニューでもないのに現状はこのありさま。これが積み重なればいったいどんなことになるのかという「想像」が子どもたちの頭の中をグルグルしています。

目の前に出現した「事実」を通じて、その背後に広がる「全体像」や「本質」を「想像」できることがとても大事なことです。これこそ「認識」をゆさぶり、変え続ける探究する学びによって育まれる力です。食品廃棄に対してどうアクションするか子どもたちは歩み始めました。

RI

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問いを立てて学ぶ

[5・6年生]

テーマ学習で最も大事になるのはセントラルアイディアです。
これは子ども達が探究を通して理解する重要な概念を表したものと
思って頂いてよいでしょう。
今テーマのセントラルアイディアは「遺伝や進化によって私たちの
今があり、さらに変わることができる」。
そこには、決定論に陥ることなく、自分の意志や行動で自分の人生
を切り開く事ができるはずだという我々の思いが込められています。

「何を変えられるのか、何を変えたいのか、何を変えなくてよいか」

それらを考えていくためには、そもそも私たちは生物学的にどんな
性質を受け継いできたのか、また変わってきたのかについて科学的
知識を押さえておくことが重要になってきます。

では、皆さんはあるテーマについて新たに学んで行く際にどのよう
な方法で知識を獲得していきますか。

手当たり次第に関連書籍を読みあさる?
辞典をひっくり返して、網羅的に読み込んでいく?
それとも・・・

どれも断片的な知識ばかりがどんどん増えていくだけで、結局のと
ころ、その本質は何なのかをつかみ取ることは難しいでしょう。

「不思議だなあ」「なぜなんだろう」という素朴な疑問を出発点に、
問いを深めていくために重要なのはその観点です。

今回、進化や遺伝に関する科学的知識を押さえるためにテキストを
作成したのですが、問いを立てる上でIBのKey Conceptsが活躍
しました。
テキストの章立ては以下の通りです。

form:DNAの構造について理解する
function:DNAのはたらきについて理解する
causation:DNAが必要な理由を理解する
change:DNAの変化について理解する
connection:DNAが他に及ぼす影響について理解する
perspective:DNAを別の視点から理解する

具体的にはformにおいて、
・私たちのからだのどこにDNAはある?
・DNAの中に書かれている情報は?
・DNAはどんな形をしてる?
という問いを立てました。

ある観点を持って深めていった事柄が、ふとした瞬間につながり、
知識の基盤がどんどん膨らんで豊かになっていく。
今回のテーマを通じて、子ども達にそれを実感してもらいたいと
考えています。


ちなみにこの自作テキストは先輩達も使用したのですが、今回はそ
こに新しい要素を加えることにしました。
それはテキストを電子化するという試みです。

使用したのは、AppleのiBooks Authorというアプリ。
美しい画像も、音声も、動画もミックスして、簡単に教科書を自
作できるというすぐれものです。
これを使わない手はないということで、科学雑誌や本から必要な
部分を抜粋したものをカラースキャンし、章立てごとに並び替え
ることで、見事オリジナルの遺伝の電子テキストができあがりま
した!

早速、授業中に子ども達に一台一台iPadを手渡し、自作テキス
トを見てもらいます。

photo-20131101.JPG

科学雑誌の色鮮やかな画像が見事に再現されているのを見て、

「すげーーーっ!」
「俺も自分で教科書を作ってみたい!!」

と思わず歓声があがります。

電子テキストを自由に触る中で、メモ書きやハイライト機能を発
見する子ども達の姿を見て、重い教科書を持ち運び、机の上に教
科書を広げて、黒板に向かって先生の話に耳を傾けるという学習
スタイルは、やがて過去のものとなっていくんだろうなあと感じ
ざるを得ませんでした。

今回のテーマの前半では、この電子テキストとNHKスペシャルや
映画などの映像作品を活用し、遺伝や進化に関する科学的知識を
学んでいきます。

HY

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2013年11月08日

葉っぱは何色?

[1・2年生]

今週も、葉っぱの観察記録をつけていきました。
大きさは、図鑑に習って、小さい葉と大きい葉の長さと幅を
ものさしで測ります。算数で「長さ」を学習した2年生が
1年生の測定を手伝います。

色は何色だろう?
・・・みどり
どの子も色はみどりと書いています。
でも、みんな同じ緑ではありません。
そこで、絵の具ではどんな色を使うと、葉っぱの緑に近づくのか
色作りをすることにしました。

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絵の具の緑をパレットに入れてみると、
どの葉っぱも「緑」ではありません。
黒や茶色を混ぜてみたり、少し金色を入れてみたり、
そうこうしているうちに、色が、近くなってきたり、離れてしまったり。
%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%AFIMGP2214.jpg試行錯誤を重ねて行きます。

また、色に着目することで、葉の縁が濃くて、中央が薄いことや
1枚の葉が一色ではなく、まだらであることに気がつくことができました。

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一つの枝に色々な色の葉っぱがついているのを見つけ、
取ってきた子もいます。
ピンクっぽい色のは、べたべたしてるから、
「べたべたピンクだ!」
色を作る前に色の名前ができました。


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モミジを観察中の子は、
日に当たるモミジの色が出したいとのこと。
聞くと、「夕日に当たるモミジがきれい」というのが
その子の見つけたとっておき情報でした。


「どんなふうにきれいなの?」 きれいの中身を聞いていくと、
絵に描いて説明しようとしましたが、言葉が見つかりません。
それを見て、ほかの子も一緒にどんな説明がいいか考えていきました。
「太陽の光が跳ね返るってこと?」「跳ね返るのとは違うかな。」
「じゃあ、葉っぱが透き通るってこと?」「そう!それで線が見える。」
「葉脈が見えるってこと?」「うん、そうだね。」
会話の中で、モミジが日に当たると透き通って葉脈が見えるところがきれいと
言っていることがわかってきました。

色作りをしていく中で、とっておき情報として載せる言葉も
見つけることができました。

とっておき情報が見つからないときは、
図鑑から情報をもらう方法も使っていきました。
説明を一緒に読み、心に残ったり、「へぇー」と思ったりしたことを
記録していきました。

「ヒメはちいさいといういみで、ユズリハの中ではちいさい。
ユズリハはしたのほうに はえているのがおちると
あたらしい葉っぱがはえてきます。」

ユズリハというのは、
新しい葉が生えてくると、古い葉が世代をゆずるかのように
落ちていくことから名付けられていることを知り、自分の言葉で
記録をしていました。

そろそろ、図鑑の1ページ目が完成しそうです。

AN

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フードロスの現実をデータで理解

[3・4年生]

「おっちゃん!規格外みかんを持ってきたよ!」

ある子がキズのついたミカンを持ってきました。形が一定の大きさを超えていたり、見栄えのあまりよくない果物や野菜は、味や品質になんの問題もないのに捨てられてしまうことに衝撃を受けた子どもたち。そんな規格外品が、「ワケあり」と称して安く売られていることを知った子が、家で購入した規格外みかんの味をみんなで確かめるためにスクールに持ってきました。

確かに表面にキズみたいなものがついていますし、色もまだらになっていて美しくありません。ところが皮をむいてみると、まったく問題のない中味があらわれました。みんなに一房ずつ分けて食べてみると「うめえ〜」「甘〜い」どうしてこれが廃棄されてしまうのかわからないほど美味でした。

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映画を通じて、世界&日本のフードロスと食料廃棄の実態について強烈な「イメージ」を目に焼きつけました。そして、自分たちの給食の食べ残しを調べ、近所のスーパーやコンビニでも食料廃棄が行われていることを知り、自分たちが知らず知らず関与している重大問題なのだ!という「意識」が高まりました。

次の段階は、「イメージ」や「意識」を「データ」で裏づけることです。今年になって政府を始め、フードロスへの意識を高めようという動きが活発化しています。大手広告代理店の主導でフードロスチャレンジプロジェクトが立ち上がり、いろいろなイベントが開催されています。農林水産省や食糧庁のウェブページでは、フードロスと食品廃棄についてのデータと対策についての資料がたくさん公開されています。その資料をしっかり読み解くことに取り組みました。

「もったいない」の映画を見て、日本の食品廃棄が約1700万トンだという数字が子どもたちの頭の中に刷り込まれたのですが、いったいこの数字の意味するところは?とちょっとつきつめてみると……???

農林水産省の作成した資料には、「食品由来の廃棄物約1700万トン、うち可食部分は500〜800万トン」と図示されています。

「そうか食べられないゴミと食べられるのに捨ててゴミにしちゃってる場合があるんだね」

おお鋭い子が現れましたぞ。とはいえ、500〜800万トンとは言ってもその数字がどのぐらいスゴイのかピンと来ません。そんなときにはこのような資料では必ず何かと比較してイメージしやすくする工夫をしています。すると「> 世界全体の食料援助量 400万トン」」と書いてあるじゃあないですか。これはどういうことなのか……

「>って開いている方が大きいって意味だよ!算数で習った」

つまり、日本において食べられるのに捨てている量は、世界全体に対してなされている食料援助量よりずっと多いぞ!ということを示しているわけです。

「2倍も多いじゃん」
「わけわかんない!」

アフリカなど貧しい国で飢餓にあえぐ人たちを救おうというキャンペーンCMやポスターをよく目にするわけで、だったらフードロスの分を全部寄付すればいいじゃないか!と子どもたちは思ったのです。いやあ本当にその通り。しかし、世の中はそんな矛盾を放置したままでなんとも奇妙な状況にあります。

事業系と家庭系……そうか事業って会社。ということは食品会社やスーパー、コンビニ、レストランとかで出るフードロスってことだな。事業系の場合、規格外品だけじゃなくて「返品・売れ残り」もある……返品?売れ残り?……あっそうか、お店で売れそうもないからメーカーに戻ってきたやつだな……それって捨てられちゃうんだ……えっ?まだ賞味期限が2ヶ月も残っているのに、そういう製品は買われないから「返品」されて後はゴミ箱行き……オー・マイ・ゴッド!1

A41枚の資料に山盛りのデータと情報を読み解いてゆくことに子どもたちは没頭していきます。あっという間に90分の学びの時間は過ぎ去り、いつもながらみんなびっくり。

「どうしていつもテーマの時間はこんなに速く過ぎるんだろう……」

問題の実態を強烈にイメージできた後だからこそ、裏付けとなるデータを知る作業に没入できるのです。知識を教えて、考えるのではなく、まず、問題意識を持ち、追究する。当たり前と言えば当たり前ですが、教えたいペースにはめこむのではなく、子どもの探究の道筋に沿って学びをデザインしてゆけば、どんどん子どもが動いてゆく学びが発展してゆくのです。

「こんなにフードロスのデータが頭に入っている小学3年生はいないよね!」

いやいや小学3年生どころか大人だってそうそういませんよ。食品廃棄&フードロス探究へのドライブはいよいよ増すばかりです。

RI

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生と死と

タイトル:似て非なるもの
探究領域:自主自律

[5・6年生]

遺伝と進化に関する科学的知識を学ぶ教材として、電子テキストを
中心に活用してきた私たち。

しかし、テキストの読み込み以外にも、知識を獲得する上で有効な
手段があります。
そう、それは良質な映像作品に触れることです!
一般視聴者向けに端的でわかりやすくまとめられた内容のナレーシ
ョンと映像の視覚のインパクトの組み合わせは知識の理解を大きく
助けてくれます。
これを活用しない手はないということで、今回はNHKスペシャルの
遺伝子・DNAに関する特集の中で「老化と死の設計図」と題した回
を観ることにしました。

この番組を通じて、遺伝子研究により早老症や長寿老人の遺伝子の
特徴や活性酸素が老化を起こすことが明らかになってきたことがわ
かったのですが、その中でも子ども達の興味を最もひきつけたのは
以下のナレーションでした。

それは、
『大腸菌の生き方は、親とまったく同じ人生を歩むこと。人間は酵
母菌の生き方を選びました。親とは違う新たな人生を生きる生き方
です。』
というもの。

大腸菌は永遠に自分にコピーを作り続けることができるのだそうで
す。DNAがリング状になっていて、命の長さの終わりがありませ
ん。

それと比べて、人間のDNAはニッパーみたいなカタチをしていて、
リング状ではないため、端が存在します。
その端にあるのが命の長さを決めるテロメアという部分。
リング状じゃないからこそ、一部をほどいて、異なる二つを絡み合
わせて、それまでになかった新しい配列のDNAをつくれるように
なったのです。

新しいものをつくりだすというメカニズムを手に入れた一方で、そ
れと同時に抱えた時限爆弾。
それが、個体の「死」なのです。

子ども達はDNAがタンパク質をつくりだす設計情報を有している
ことは今回のテーマで学びましたが、実は「死」をも司る存在だっ
たことに驚きを隠せません。

ふりかえりの中でも、
「不老不死に興味はあるけど、自分がなるとなると、ちょっと・・・」
とある男の子。

「なぜそう思うの?」と返すと、

「なぜって、生き続けていたら、人生にあきそうだもん。」
「歳を取らないのは嫌だなあ。歳を重ねることでいろいろ気付くこ
とがあるし。歳を取ることは何も悪いことばかりではないと思うん
だよね。」
「人生は期限があるからこそ、有意義になるんじゃないかな。」
と次々に子ども達から意見が出てきます。

「遺伝子が違うからこそ、個性につながるとと思うんだよね。大腸
菌のように、みんな同じじゃつまんないよ。」

不老不死に興味があると言った男の子のつぶやきです。

どうして同じ人間なのに、一人一人異なる遺伝子を持つのだろう?
どうして遺伝子を全く同じようにコピーせず、わざわざ微妙に変え
るんだろう?

今回観た作品は、これらのメカニズムがいったい我々に何をもたら
すのか(どんな意味があるのか)について考え直す機会を与えてく
れました。

今週でテーマの前半が修了。
遺伝と進化に関する科学的知識を学ぶフェーズも終わり、いよいよ
来週から替え歌づくりに着手します。

どんな歌ができるか、ハラハラドキドキの後半戦です。

HY

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2013年11月15日

テーマ学習発表会11/29

TCSテーマ学習発表会のご案内


東京コミュニティスクール(TCS)のテーマ学習では、1年間に6つの探究領域を学びます。ひとつの探究領域のもとでクラス毎にテーマが設定され、約6週間単位で活動を行っていきます。
※テーマごとの6週間の学びの様子は、探究テーマ一覧表よりご覧ください。

活動の成果を発表するテーマ発表会では、保護者だけでなく、一般の方々にも参加していただける機会になっています。

子どもたちは、どのようなプロセスで、どのようなことを学んでいるのか・・・。ぜひ、直接子どもたちの様子を見に来てください。
※見学をご希望の方は、下記要領にてお申込みください。

               記

【日時】 2013年11月29日(金) 9:30~11:30

【場所】 セシオン杉並 2階 視聴覚室
     (東京都杉並区和泉4丁目42番5号)地図
     ※東京メトロ丸の内線「東高円寺駅」より徒歩5分     

【お申込み・お問合せ】
 東京コミュニティスクール事務局
 TEL:  03-3313-8717
 e-mail: school#tokyocs.org
 ※メールアドレスは「#」を「@」に変更してから送信してください。

  お申込みの際は、件名を「テーマ学習発表会参加希望」とし、
   以下の事項をお知らせください。
     1.参加希望日
     2.参加希望者氏名(すべて記入ください)
     3.お子さんの現学年(保護者の方)
     4.e-mailアドレス
     5.電話番号(日中最も連絡のとりやすい番号)
     6.TCSを知った経緯(知人、ネット検索、新聞名・雑誌名など)
     7.質問事項等(あれば)

試作ができた!

[1・2年生]

「この形は何に似てるかな?」
「楕円かな?」
「でも尖っているところもあるから、楕円の横を尖らせた形かな。」
図鑑を見ていくうちに、覚えた言葉を使ってみたり、
「目を縦にした形」
「ワイングラス形」と
自分が知っているものの中から似ているもので表現したりしています。

「匂いを嗅ぐと、鼻がすーっとする。」
「水が腐った匂いがする。」
葉をちぎって匂いを嗅ぐことで、名前がわかる場合も
あると、図鑑に載っていたことから
匂いかぎが始まりました。
確かに、そのままだと匂いはしないのに、ちぎることで 匂いが出てきます。
ここでも、何の匂いに似ているか、どんな感じになるかを
言葉にして記録していきました。

記録が集まったところで、1枚の用紙にまとめていきます。
形、色、大きさ、におい、手ざわり
ほかの葉っぱのはない特徴、
とっておき情報、注目してほしいところ
を記載した試作ができあがりました。
中央には、観察した葉っぱを押し葉にして貼付けました。

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2枚目に取りかかるために、蚕糸の森へ!
今度は、どんな葉っぱを図鑑に載せようかな。
1枚目と似ている葉っぱを選ぶ子、形も手触りも違うものを選ぶ子、
同じ場所に生えているものを選ぶ子など、選ぶ視点は様々です。

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前回の採集から3週間が絶っていたため、蚕糸の森の葉っぱの様子に変化が出ています。
落ち葉も多く、色の種類も増えています。
採集を済ませて、スクールに戻る途中、
「あ!葉っぱの絨毯だ。」
「ふあふあ?」「ふかふか?」「すわってみたい!」
「それじゃあ、ここに集めようよ。」
ちょっと寄り道することに。

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「これやるの、好き!」といって、
%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AF%E3%83%BCIMGP2252.jpg 葉っぱシャワーを浴びています。
%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AF%E3%83%BCIMGP2255.jpg しばし、静かなともだちとの遊びを楽しみました。

2回目の観察は、始めから細かいところまで目が向いている様子。
中には、ルーペを使って見ている子もいます。
葉の細かいところを見る一方で、
枝が広がって伸びていることを発見し、
とっておき情報として記録する子もいます。
詳細を見る視点、そして、木全体の観察も
大切な視点だということを共有していきたいところです。

何ページの図鑑になるか、これからが勝負です。

AN

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知ったことをまとめる

[3・4年生]

今回の学びでは、なんとなく知った・わかったで流さず、 自分たちの知ったこと、調べたことをしっかり「学びのポートフォリオ」にまとめるということも大きな目標のひとつです。どこかにフィールドワークに行く……となれば遠足気分でワクワク。でも、資料とにらめっこでデスクワークとなったら、子どもたちのやらされ感はさぞや高まっているだろうとお思いの方もいるかもしれませんが……

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これらの写真を見れば一目瞭然でしょうが、知ったことを咀嚼・理解しつつ、みんな一心不乱に没入して仕事に取り組んでいるではありませんか。

「このレイアウトだと見にくいなあ。文頭はそろえた方がきれいだろ。なんでこういう表でまとめようとしているかもう一度よく考えてみて」

学びの generator としてどうまとめると見た目も美しく、わかりやすくなるか、子ども扱いせず、真剣に指導します。3年生ということを考えれば、ワークシートに当てはめてきれいに書ければ合格なのかもしれませんが、最低限の vidual organaizer (単にマトリクスに分けるだけ)を効果的に用いて考えを整理し、まとめてゆく作業に挑んでもらいました。

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「これがフードロスの教科書になって、読んだ人がなるほどこんな問題があるんだ!と心動かされるようなまとめ方をしないとね」

この一言が、なぜ自分たちが今この作業をしているのかという目的意識を呼び覚まします。食品廃棄とフードロスの現状を知ってもらうには、「わあ、こんなことが起きてるんだ!」という現状を的確に読み手に伝える資料が必要です。そういう資料をつくることも、自分たちにできるフードロスを減らすための寄与のひとつだということを子どもたちは理解しました。

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そんな強い responsibility がふつふつとわいているからこそ、ここまで熱心かつ主体的にまとめる作業に集中できるのでしょう。

完全にフードロスを減らすプロジェクトチームの「仕事」になっていて、学校で何かを教わる学びという雰囲気は微塵もありません。

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「う〜ん、これだと読みにくいかな」
「メタメタマップにはどう書いてあったっけ?」
「なるほど、この数字の意味ってそういうことだったのか」

一回「知ったこと」を改めてまとめると「理解」が進み、気づいていなかったことに気づかされる……そんなことをみんなで確かめながら進めてゆくと、意外な発見にぶつかりったり、知らない事柄に出くわしたりする。

こうしてわからない言葉や概念がでてきたら、誰かが i-pad で調べ説明してくれます。また、何か気になることが出てくると、勝手に自主ホームワークを行い、調べたり、近所のスーパーや八百屋でインタビューしたりしてきて、そこで得た情報をみんなにシェアしてくれる。

student initiated action が見事に起きています。

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「おっちゃん、もうどんどん頭に入っちゃってるよ」

数字も、そしてフードロスがどうして起こるかのメカニズムも、改めてテーマ発表会のために覚えるなんて必要はありません。テストのための学び、発表をうまくさせることを目指し、「目的」の定まらない学びでは、こうして知識がつながり、構築されてゆくことはないでしょう。

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3・4年生の学びの「熱気」はスクール全体に波及し、11月14日(木)の会食は、なんと「残飯パーフェクトゼロ」達成!決して無理強いではなく、食への意識の変化がスクールで巻き起こってくるなんて、スバラシイじゃあありませんか。

さあ、残りはあと2週間。次週は、「知ったこと・理解したこと」をふまえつつ、じゃあ「自分たちなりにどうフードロスに立ち向かってゆくのか」という重大トピックについて再びみんなで議論しつつアイデアを generate してゆきます。

RI

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変えられること、変えたいこと、変えなくてよいこと

タイトル:似て非なるもの
探究領域:自主自律

[5・6年生]

今回のテーマも中間地点を折り返し、いよいよ後半戦に突入です。

「遺伝や進化によって私たちの今があり、さらに変わることができる」

以前にもご紹介した「似て非なるもの」のセントラルアイデアです。
これまでの3週間は「遺伝や進化によって私たちの今があるという
こと」、つまり好むと好まざるとにかかわらず、引き受けなければ
いけない遺伝として受け継いだ性質について学んできました。
これからの3週間は「いかに変わることができるのか」を追究して
いくことになります。

とは言え、いきなり「私たちはどう変わればよいか」を考えようと
しても、なかなか考えが深まらないのは目に見えています。
そこで、まずはそもそも「何を変えられるのか」「何を変えたいの
か」「何を変えなくてよいのか」という観点で意見を出し合うこと
にしました。

「人為的に変えられることって何があるだろう?」

子ども達にこう問いかけると、
「カツラや植毛で毛の量を増やせるよ!」
という意見が早速飛び出します。

「視力もメガネやコンタクトレンズだけでなく、レーザー治療で回
復することができるよ。」
「整形で口や鼻や胸や目をいじるなんて、まさにそうだよね」
「臓器移植もこれに当てはまるんじゃない?」
「アスリートがドーピングで失格になったという話をよく聞くなあ。
遺伝子ドーピングというのもあるらしいよ!」
「遺伝子操作で病気の発生確率を下げるなんて時代ももうすぐかも。」

出るわ出るわで、模造紙2枚分があっという間に埋まりました。
挙がった意見を大まかに分類してみると、外見に関することが大半
を占める結果に。

じゃあ、「変えられること=変えたいことなの?」と尋ねると、
「それは違う」との返事が。

「変えたいこと」として子ども達が挙げたのは、歯並びやアトピー、
多汗症といった体質など、生活していて実際に不便だと思うことば
かり。

「本当に?整形で人生が変わるかもよ。」と考えを揺さぶってみま
したが、

「確かににそうだけど、一時の思いつきでおこなっても、いつか後
悔して元に戻したくなる時が来ると思うんだよね。」
「ある部分をいじっても、今度は別の部分が気になってという風に
中毒みたいになっちゃって、きりがなくなるじゃないかな。それは
怖いし。」
「外見なんて所詮は形にすぎないでしょ。中身が変わらないと意味
がないよ!」
「なんでも簡単に変えてしまったら、性格まで変わってしまいそう
で。努力とかしなくなるんじゃないかな。」
「やっぱり親からもらったものだしね。」
と、病気やケガの場合は別にして、基本的には人為的に外見を変え
ることに関してあまり執着がない様子。

こうした議論を通じて、自分たちが大切にしている考えや価値観が
次第に浮き彫りになってきます。

最後に、変わるためにどう行動すればよいかを考える中で、出てき
た意見としては、
・努力する 努力しないと始まらない
・目標を持つ
・ネガティブをポジティブに変換する
・まずは今の自分をうけいれる
・すぐにあきらめない
・外見が変わるだけでは自信にはつながらない。やはり中身が変わ
 らないと。
などなど。

「なんでもかんでも変えればいいってもんじゃないと思うんだ。」
「そうそう、そもそも変わらなくていいこともある。」
「さっき出た意見の今の自分を受け入れるということにもつながる
んじゃない?」
「それって、見方が変わるとも言えるね。」

具体的に何かを変えることだけでなく、別のperspectiveを持つ
ことも「変わること」であることに気づくとは素晴らしい!

模造紙にたくさん書き込まれた言葉の数々。
これらをいかに替え歌の歌詞に盛り込んでいくか。
子ども達も替え歌づくりを楽しみにしているようです。

HY

TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

2013年11月22日

どう改善していく?

[1・2年生]

5週目に入り、図鑑に載せるページを増やしていきたいところです。
全員が1枚目の試作品を作ってからは、要領を得て、
作業もペースアップしてきました。
2年生の中には、4枚目に入った子もいます。

違う葉を観察することで、共通点を見つけたり、
ほんの小さな違いに気づいたりすることも
増えてきました。
「この葉っぱは、途中から鋸歯がなくなってる。」
「先端に黒い点がついてる!」
「よく見ると、毛が生えてるよ。」
拡大してみたくて、ルーペで見たり、
i-padで撮影して画面を広げてみたり、
工夫をこらして、よく見ようとしています。

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見学者の方が仕上がったページを眺めていると、
「今、私たちは、葉っぱ図鑑を作っていて、、、」
気がつくと、進んで説明をしてます。
「何か質問はありますか?」と子どもたちが聞くと、

「うーん、ちょっと見づらいかなぁ。
どこを見ていいか、わかりにくいかも。」

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なんともありがたいご意見をいただきました。
自分たちは作るのに精一杯になりがち。
そんなとき、外からのお客さまが、ぱっと見て率直に思うことを
口にしてくれることは、perspectiveが広がり
図鑑をもっとよくするチャンスです。
どこを変えていけばいいのか、どう変えようか、みんなで考えます。

「どこを見ていいかわからないってことは、
どこから見ていくかわかればいいのかな。」
「矢印をつけるのは、どうかな。」
「番号をつけるのは?」
どこから読んでいけば、読みやすいかを示すために、
番号をつけることになりました。

見学者の方からの質問はもうひとつありました。
「この図鑑はどういう目的で作っているの?」
「・・・テーマで発表するため。」
「・・・みんなに見せるため。」
あれ?子どもたちは、この質問にちょっと戸惑いが見られる様子。
もう一度、改めて確認することも見えてきました。
そこから何か改善の道が見えてくるかもしれません。

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制作に追われる一方、
「目次も作りたい。」
「表紙も作りたいよ。」と、
やりたいことがまだまだ残っています。

テーマ学習も大詰め。
来週末は、もう発表会です。


AN

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意味のある停滞

[3・4年生]

2週間連続で週に1度の全員会食で「残飯ゼロ」を達成!フードロスについて追究している3・4年生だけでなく、1年生から上級生までみんなに意識が行き渡っているのがスバラシイ。

メインディッシュのチーズハンバーグは、みんな大好きなので廃棄は出ないと予想していましたが、付け合わせのインゲンとトマト・キュウリ・セロリのマリネは、野菜嫌いもいるし、かなり残るのではないかと懸念していました。なんといっても飲食店の食べ残しワースト1は「野菜」というデータがありますからねえ。それを裏打ちする結果になるのではないかと思っていたのに、そんな悪い予感を見事にくつがえす結果となってみな満足です。

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食べる量が少ない子は、育ち盛りでもっと食べたい!食べられる!という子に食べてもらいます。どうしても苦手なものがある子は、「いらないから食べて!」ではなく、本当は自分が食べなくてはいけないのに申し訳ないなという気持ちを抱いて、無理に押しつけるのではなく、好んで食べたいと思う子に手をつける前に譲ります。

誰かに食べてもらったり、食べ残しが出たら別のモノに作りかえて後で食べれば済むという安易な発想になっていない。食べ物への「感謝」がちょっとだけ芽生えたのかなという感じです。

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先週、先々週と日本のフードロスの現状について理解してきた子どもたちに、さらに視野を広げるために、今回の探究で理解を深める key concept "connection" に基づく「本質に迫る問い」を投げかけます。

「connection ってつながりでしょ。海外の畑でつくったものを日本が輸入して、その国の人はその畑を使えなくて食べ物がないっていうようなことだよ」

あれこれ見て、知って、やってみて、考えて、話しあってきたうえで key concept という認識のメガネが入るからいろいろ見えてきてしまいます。最初から「本質に迫る問い」によってしぼりこまずに、課題にどっぷりつかって、あれこれ知って、やってみて思い切り広げてから「整理する」ために key concept を用いることが大事なのだと改めて実感しました。もはや教えずとも、子どもたちが学びを通じて広げ深めてきた「知識」と「発見」をどんどん「発言」してもらうと、あっという間に「つながり」と「影響」を明らかにする「メタメタマップ」ができあがりました。

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さあ、ここからが「メタメタマップ」の本領発揮です。key concept に触発されて掘り起こすという「メタ」な作業に続いて、掘り起こされたマップを見てどんな「つながり」があるか「整理」してゆく「メタ」な分析を行います。掘り起こす「メタ」と俯瞰する「メタ」。それを「図=マップ」にしてゆくから「メタ メタ マップ」というわけです。

こうして整理してゆくと、いかに「日本のフードロス」が、特に途上国の貧困や飢餓に直接的影響を与えているかが明らかになります。マップが豊かになってくると、背後にあるさらに重大な問題とのつながりまで見えてきます。

「食べ物だけでなくて、その食べ物を作るためのエネルギーもむだになってるような気がする」

なんてシャープな気づきでしょう。こんな気づきがタイミングよく生まれる展開に一役買っているのが、以前行ったテーマ学習です。終わったはずのテーマが新たな学びにつながり、発展してゆく。これが探究する学びの積み重ねの妙です。

「水問題」について扱った No Water No Life というテーマで「仮想水」という問題が出てきたことをある子が思い出しました。 海外から「肉」を輸入するということは、家畜の飼料を育てるために使われたものも含め、大量の「水」を輸入していることと同じだというのが「仮想水」の問題です。せっかく食べ物を輸入してもムダに捨ててしまうならば大量の「水」を廃棄していることと同じだと気づいたのです。

「水だけじゃなくてそこで働いている人のエネルギーもムダになるってことでしょ」

子どもたちの考えを connection という認識のメガネでつむいでゆくことでこんなにも豊かな知識図ができあがりました。

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こうして知識は整理され、理解は深まりましたが、「で、どうしたらいいの?」という私たちが共存共生というテーマで考えなければならない responsibility についてはまだ手つかずです。

「キレイゴトを言うだけになっちゃうしな……」

たたみ部屋に掲示してある論語カードをある子が教室に持ってきて

「やれてないのに説得力ないよ……」

とため息をつきます。

先ず行う。その言はしかる後にこれに従う。

確かにその通りです……

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これは難しい……どんなことを提案すればいいんだ……悩みは深まる一方です。もはや「知らぬが仏」ではいられません。より深く知ったからこそうかつなことを言えなくなっています。でもこれこそが、学びの深まりにより生まれる「意味のある停滞」です。

子どもだけじゃなく、教師の立場からしても、来週には発表会があり、なんとかまとめに入りたいと気があせります。しかしここで安易にまとめず、じっくり考えを深めようと腹をくくり、子どもとともに唸りながら考え続けようとする。そんな状況にダイブできる教師こそ「探究教師」であり、共に解をつくりこんでゆく generator と言えましょう。

次週は最終週。「意味のある停滞」を乗り越えて、発表するアイデアを形にします。よりよいものをつくりこむための胸突き八丁。もうひとふんばりです。

RI

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替え歌が完成したぞ!

タイトル:似て非なるもの
探究領域:自主自律

[5・6年生]

テーマ発表会も残すところ2週間。
これまで学んできたことをふまえながら、いよいよ替え歌づくりに
本格的に着手します。

今回のテーマのアウトプットが替え歌であることを聞いて、不思議
に思われる方がいらっしゃるかもしれません。

「遺伝や進化によって私たちの今があり、さらに変わることができ
る。」

このセントラルアイデアを学ぶためにテーマの前半ではオリジナル
の電子テキストや遺伝をテーマにしたテレビ番組・映画を教材とし
て科学的知識の理解を深め、今の自分たちが存在するのは遺伝や進
化のおかげであることを実感しました。

しかし、我々がそれよりも大切に考えているのは、遺伝で引き継い
だものをベースにしながら自分の意志や行動で自分の未来を切り開
いていくこと。その思いを「替え歌」という手法を使って表現する
ことにしたのです。
それは「宣言」と言い換えてもよいのかもしれません。

今回の替え歌の元うたとして私が選んだのは国民的名曲と言っても
過言ではない、SMAPの"世界に一つだけの花"。
前回の先輩達の"We Are The World"の替え歌がセンセーショナ
ルだっただけに、あの曲を超えたいと子ども達も気合い十分です。

ソロパートは個人個人で考えてくるとして、まずはサビの全体パー
トを全員で検討していくことにしました。

「じゃあ・・・」
私が話を切り出そうとすると、
「この歌を通じて、伝えたいメッセージを決めないとね!」
と5年生の女の子。

5・6年生とは今春に宇宙紙芝居のテーマを一緒に取り組んだので
すが、そこでの保護者からのフィードバックで「伝えたいメッセー
ジがわかりづらい」という意見が多く、それが反省点として強く印
象に残っていたのです。なんとも頼もしいかぎり!

今回の歌に込めたい想いについて、それぞれ意見を出し合い、それ
を模造紙に書き出していくと、あるキーワードが浮かび上がってき
ました。それは「自信」です。

遺伝子がすべてを決めてしまう訳ではない。あきらめずに、自分か
ら行動を起こし、変わり続けていけばよいし、変わることができる
はず。
細かな表現内容は違えど、子ども達が伝えたい想いは共通していま
した。

そして、以前の議論で、「外見が変わることにはあまり意味がない。
大切なのは『心』が変わることだ。」という意見が出たことをみな
で思い返します。

夢や目標に向かって、自分の足で進んでいき、変わり続ける自分を
実感することでしか自信は生まれない。
つまり、それは、自分の未来は「自」分でつくっていけると「信」
じること、と言えるのでは。
私も含めた6人の想いが一つのメッセージになった瞬間でした。

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肝心の伝えたいメッセージが決まれば、歌詞はすぐに作れるんじゃ
ないの?
もしかしたら、そう思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、
そう簡単にはいきません。

短いフレーズの中にどう自分の思いを込めるのか。
ホワイトボードに歌詞に使えそうなフレーズの案を書き出していき、
しっくりする表現が見つかるまで、何度も何度も文言を見直します。

全員が当事者として、より良いフレーズをつくるために意見を出し
あう姿をみて、まさにこれぞ "idea discussion" です!

各自がホームワークで考えてきたソロパートについても同じように
推敲し、歌詞をどういう順番にするか検討し、最後に全体を見て不
自然な部分がないか(同じ文言が多用されていないか、など)をチ
ェックし、ついに替え歌が完成。

「できたーーーーっ!!」

5日間かけてやっと出来上がった替え歌。
やりきったという思いが子ども達の表情に表れます。

その勢いのまま、その場で替え歌の歌詞シートを作成し、そこに集
合写真を入れようとおばかに盛り上がる私たち。
「SMAP(スマップ)」ならぬ「SNPs(スニップ)」のメンバーと
してCDジャケット風に写真をパチリ。

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テーマ発表会がまさに「SNPs(スニップ)」の最初で最後の舞台。
悔いのないよう、来週の歌練習に臨みます。

HY

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2013年11月29日

掲載順番を決める

[1・2年生]

今週末は、いよいよ発表会。
それまでに、できるだけ図鑑の枚数は増やしたい。
まだまだ観察が続きます。

「このブツブツなんだろう?」
ヤブツバキの葉の裏を観察していた子が、
今まで観察してきた葉っぱにはなかったものを発見し、
もっとよく見てみたいと言ってきました。
ルーペで見ても、調べてみても、よくわからず。
そこで、理科スタッフの協力を得て、
電子顕微鏡で見てみることに。

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ブツブツのひとつが茶色く見えます。
よく見ると、緑色の気孔も見えています。 %E3%83%A4%E3%83%96%E3%83%84%E3%83%90%E3%82%AD%202013.11%20-%20%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%202.jpg

みんなが気孔を確認でき、
葉っぱには、気孔という口がいくつかあって、
土から吸いとった水を息を吐くみたいに吐いていることを
本から知ることができました。
ブツブツは、理科スタッフから、シュウ酸カルシウムだと
教えてもらいました。

「この葉っぱの裏にも何かある。」
サンゴジュの裏には、ダニ部屋と呼ばれている
茶色いものが着いていると、図鑑に書いてありました。
「えー。ダニがいるのー。やだー。」
調べていた子はパニックに。
ほかの子が、サンゴジュの葉っぱを持って、
顕微鏡で見てみました。
%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%82%B8%E3%83%A5%202013.11.jpgダニと言われたらダニのような・・。
ヤブツバキのブツブツよりも小さくて、よくわかりません。
サンゴジュのページには、
「虫嫌いな人は注意して」と、とっておき情報に、
記していました。
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今、取りかかっているものは、なんとしても完成させなくては。
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この図鑑は、TCSキッズに使ってもらうことが目的で作っています。
蚕糸の森で見つけた葉っぱを調べたり、
図鑑を見て、実際に葉っぱを見たいと思ったりしてもらいたい。
また、次回に「静かなともだち」を取り組む子たちに
続きを作りたいと思ってほしい。
そういった想いが込められています。
だからこそ、見たときに、面白いと思うものにしたい。
仕上げのもうひと工夫として、イラストを添えることにしました。
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しずくの形にはしずくの絵。  怪獣の口の形に見えた絵。

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サンゴジュのダニ部屋情報のとなりには、ダニ注意のイラストが載せてあります。

仕上げは、ページの順番を決めていきます。
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「似た形は近くがいいと思う。」
この意見から、グループ分けが始まりました。
ひこうきグループ・・葉っぱを折ると飛行機の羽形にみえる
きょしグループ・・鋸歯があるもの
ほそがたグループ・・形が細長い
ハートグループ・・葉脈がハートの形
へんな形グループ・・モミジとイチョウ

でも、鋸歯があって、葉脈がハート形に見えるものや
葉っぱの先端がハート形になっているもの
「ひこうき」と「ほそがた」が似ていることから、
どっちのグループに入れたらいいかわからないものが
出てきてしまいました。

「うーん。」「どうしよう。」

こんなときは、視点を変えてみては?
ほかの分け方はないか促してみると、
高い木と低い木に分ける
葉っぱが大きい順に並べる
あいうえお順に並べる
などの意見が出てきました。

ページの中央に実物の押し葉を貼っていることから
見た目の葉の大きさで、
ミニグループとビッググループに分けることになりました。
グループ内は、名前のあいうえお順で並べていくことになり、
順番が整いました。

次は、発表練習です。
今回は、ひとりひとつの葉っぱについて語る、
「葉っぱ語るべぇ」を発表します。
図鑑に書いたことをただ読むのではなく、
語ることを目指していきました。

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聞き取りやすい声の大きさで話せているか、
蚕糸の森公園の滝の前で練習です。
遠くの人まで聞こえてるかな?
お互いチェックをし合っています。

観察したことをわかりやすく伝えるために、
何度も言葉を直してきただけあって、発表内容は
練習前から、ほぼ覚えている様子でした。
あとは堂々と聴衆の前で発表できるかです。


AN

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吾唯足るを知る生き方

[3・4年生]

フードロスの現状を明らかにし、どう立ち向かってゆくかということについて、A3用紙1枚で簡潔にインパクトある形でまとめることにしました。今回の学びの集大成です。

知ったこと、みんなで議論したことを丁寧にまとめることをここまで何度も繰り返してきたので、どんなレイアウトで、どんな内容をピックアップしてまとめるか意識しつつ、なかなかの出来のものをサクサクつくりあげてゆきました。

成長したじゃないか君たち!と目を細め、ただ見守るだけのおっちゃんであります。

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これだけアウトプットをつくりこんでいると、学んだ内容について「何を」発表するかは、自ずと頭の中にしっかり構築されています。ということで、あとは「どう」発表するかを決めるだけ。ただ事項を羅列するのではなく、どんな「ストーリー」で語ると自分たちの主張が聴衆に伝わるかを吟味します。

発表者6人。ということは6つのことしか語れない。その6つをどう選ぶ?その順番はどうだと効果的?

「おっちゃんおれに言わせて!」

アイデアが生まれた子どもが前に出てきて実際に語ってみます。するとそれが見事に思考の呼び水となり……

「ああそれいいかも!」
「ちょっと待ってこうした方がもっといいよ」
「ひらめいたぞ」

入れかわり立ちかわり子どもたちが思いつきを語り合ってゆくと、「面白いストーリー」が生成されてきました。

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フードロスについて学んできたことを主張する部分はすぐにできあがりましたが、問題は、この学びを経て自分たちがどんな意識を持ち、行動してゆくか1分間で語る部分です。先週、「意味のある停滞」をした部分がそこでした。

欲望を抑えるのではなく、技術の力でなんとかする(飼料にしたり、燃料にする)というやり方もあることも知っているし、フードバンクという活動があり、余剰食料を援助する仕組みがあることも知っている。でもそれよりもフードロスという現実を生み出してしまう根本にある先進国の消費者である私たちの「生き方」にフォーカスを当てたい。とはいえ、それって自分たちがまだ行っていないことを口にするからキレイゴトになってしまう……先週もこの点で悩みが頂点に達したのでした。

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「吾唯足るを知るっていうことがいちばん大事だと感じたんだからそのことをストレートにぶつけようよ」

フードロス「を」どうするかではなく、フードロス「も」含め、共存共生する上で私たちに必要とされているライフスタイルを大事にしよう!と訴えかけようではないかとふんぎりをつける子が現れました。

どんなことを語ろうともキレイゴトになる……しかし、キレイゴトを語ること、そして自分からスタートする小さなことを続けて、広げてゆくしかない……それしかない……子どもたちの「決意」は固まりました。

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方向性が決まると、どう語るかにひたすら没頭します。まだダメ、もっと別の言い方はないか、う〜ん気に入らない。

草稿をまとめ、何度も語ってみて、また草稿を直す。このフェーズでは、私も generator として真剣にダメ出しをします。それは子どもへのダメ出しではありません。創造の神様・語りの神様から見て恥ずかしくない、質の高いものに近づくための通過儀礼です。だからみんな必死になってへこたれずに、つくりこみ続けます。なんというスバラシイ集中力と粘りでありましょうか。

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発表前日の最終下校時刻16:30まで頑張った子どもたちが去った後の教室には、この6週間の学びの足跡があふれていました。今回も話して、話して、話しつくして、考え続け、つくり続けたなあ。「つら楽しい」プロセスにひと段落つきました。

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今週の全員会食でも、ほんのわずかブリが残っただけ(皮とそれにくっついたわずかな身だけ)でほぼ完食を達成。食べ残さなかったからエライではなく、食べ残しの向こう、フードロスの向こうに見える過ぎたるはなお及ばざるがごとしという生き方に近づこうという意識の芽生えが共有されつつあるのうれしいなあとおっちゃんは思うのでした。

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RI

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自ら問いを追究する

タイトル:似て非なるもの
探究領域:自主自律

[5・6年生]

今回のテーマの成果物は替え歌だけではありません。

発表会の前半では今回のテーマで学んだことをダイジェストで発表
することに。
ただバラバラに知識を披露しても面白くないので、5つのKeyConcepts
(form/function/causation/change/connection)を用
いて、自ら問いを立ててみることにしました。
その問いを追究し、自分なりの解を導きだし、それを発表すること
にしたのです。

発表でformを担当したいと立候補した男の子は『DNAはどんな形を
しているの?』を立てたようです。

「DNAがなぜ二重らせん構造をしているのかすごい不思議なんだよねー。」

「なるほど。なぜ一本だとダメなんだろうね?」と尋ねてみると・・・
「引き寄せ合う塩基のペアが決まっているとテキストに書いてあっ
たよ。ということは、片方が何かの原因で壊れても、修復すること
ができるじゃん。一本だと元々そこにどの塩基があったかわからな
いし。」との答えが。

(ふむ、以前に学んだことがきちんと頭に入ってるみたいだな。)

「じゃあ、なぜねじれてる必要があると思う?二本であることが大
事なんだったら、はしご状でもいいよね。」とさらに質問を続ける
と・・・
「確かに。なぜだろう、うーん・・・」と困った様子。

このようになぜなぜを繰り返していくことが物事の本質に迫ること
につながります。
与えられた情報を何も疑問を抱かずにただ受け取っているだけでは
知ったつもりやわかったつもりを脱することはできず、使える知識
にはなりません。

また、今回の発表の前半部分は合計10分の予定で考えていたので、
1人が話せるのは2分程度。
疑問の追究に加え、そこで理解したことを限られた時間の中で端的
かつわかりやすく説明できるようまとめる必要があります。

説明の際、何を入れて、何を削るのか。
子ども達は頭を悩ませつつも、発表用の原稿をまとめていきます。

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あと、この作業に並行して、替え歌の練習にも取り組みます。

前回(一昨年)のメンバーが9人での合唱だったことを考えると、
今回の人数は約半分。
一人一人が同じ程度の音量で歌っていたら、迫力は全然かないません。

教室内だと反響して、自分が大きな声で歌えていると勘違いして
しまいそうなのと、他の学年に聞かれるのを気にして思いっきり
歌えなさそうということで、屋上で練習することにしました。

「スカイツリーに向かって、発声練習しよう!」
「あーーー、いーーー、うーーー、えーーー、おーーー。」

発声練習では大きな声が出るものの、肝心の歌の方はまだまだ改
善の余地あり。

今の自分を受け入れつつ、どう前向きに変わっていくことができ
るか、まさに宣言とも言えるこの替え歌。
自信がなさそうに歌っていると、歌の内容そのものに説得力が欠
けてしまいます。

毎日、屋上練習を重ねることで、子ども達は次第に安定して大き
な声が出せるようになってきました。
実は発表会前日の歌練習の声はなんと蚕糸の森公園にまで届いて
いた模様。
1・2年生のテーマを担当するスタッフが、子ども達と公園にで
かけていた際にスクールから声が聞こえてくるのがわかったと報
告してくれたのです!

あとはこれが本番で発揮できるかどうか。
緊張の発表会当日を迎えます。

HY

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2013年11月30日

「静かなともだち」~ふりかえり~

[1・2年生]

「家で葉っぱの説明をしたら、鋸歯とか、葉柄とかが何かわからないって言われた」
この発言から、 「自分たちも最初はわかなかった言葉は、意味を伝えた方がいい。」
ということになり、
図鑑の最初のページに言葉の説明を加え、
それを発表会では口頭で伝えていきました。

葉脈、側脈、葉柄、葉身、ひし形、くさび形、二等辺三角形などなど。

子どもたちの中からも、今回のテーマをふりかえって、
今まで聞いたことはあっても、意味がわからなかった言葉がわかるようになったという
声が多くありました。
発表会での質問タイムでは、聴衆の一人のセーターを触って、
その手触りを言葉で伝えてほしいという要望がでました。
子どもたちから出た言葉は、「ざらざら」と「ぶつぶつ」。
付け加えて「線に沿わないと、ざらざら。線に沿うと、つるつる。」との意見。
葉っぱを葉脈に沿って触ったときは、つるつるでも、葉脈に沿わないと
でこぼこになっていたことが、思い出されます。
葉っぱをよく触っていたからこそ、出てきた発言でした。

相手にわかりやすく言葉で伝える

特徴を見つけても、言葉で表現しようとしたとき、
どの言葉が当てはまるかを考え、再度、葉に目を向け、観察し直す。
今回のテーマはその繰り返しでした。
観察と表現するための言葉選びを行き来することで、注意深く観察するように
なっていました。
また、葉の細かい特徴だけでなく、葉のつき方、
全体の幅の長さ、木の高さなど、木全体にも目を向けたことで、
それが、「とっておき情報」や「見てほしいところ」に
つながっていたと思います。

これからも
特徴を捉える視点がいろいろな場面で活かされることを願っています。

AN

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「似て非なるもの」~ふりかえり~

[5・6年生]

「歌はすっごい下手。けど、不思議と感動したんですよね。」

テーマ発表会での校長の総評です。

音程を外していたかもしれない。
リズムもずれていたかもしれない。
ハモるなんて、とんでもない。

けど、子ども達の力強い歌声には、自らの意志で変わり続けていこ
うという決意が感じ取れました。

短所ばかりに目を向けて、自分をむやみに卑下するのではなく、ま
ずはありのままの自分を素直に受け入れる。
その上で、大切なのは「やる(=変わる)」と覚悟を決めること。
今何かができているかどうかなんていうことは大した問題ではあり
ません。

この替え歌はまさに彼ら彼女らの宣言と言ってよいでしょう。
自分の力で変われるはずだと信じ抜くこと、それがまさに「自信」
につながるのです。

今後の人生において、困難なことにぶつかってしまった時に、この
歌の歌詞が子ども達の行動の指針になってくれるのでは。
そう思わずにはいられません。

子ども達から勇気をもらったテーマ学習となりました。


最後に替え歌の歌詞を載せたいと思います。


「世界に一つだけのゲノム」

みんな同じじゃつまらない
なのに人は比べたがる
それぞれの特徴をいかして
自分の道を歩めばいい

好きで楽しいことだけを
やるだけじゃその次がない
新しいことに挑戦して
やってみることが大事だね

「棚からぼたもち」期待して
待っているだけじゃ意味がない
夢に向かって頑張って
チャンスをつかみとろう!

さあ みんなで
自分の未来をひらいていこう
一人一人可能性を持つから
遺伝で人生決まる訳じゃない
自信を持てば変われるんだ

固まっていてもしょうがない
意見を言わないと始まらない
自ら変わろうと思わなきゃ
自分の殻を破れない

苦手なことや難しいこと
たしかに避けたくなるけど
物事を面白くとらえて
粘り強く取り組もう

短所ばかりを取り上げて
すぐ遺伝子のせいにする
でも良いところもあるんだよ
見方を変えられるね

さあ みんなで
自分の未来をひらいていこう
一人一人可能性を持つから
遺伝で人生決まる訳じゃない
自信を持てば変われるんだ

遺伝と進化で生まれた個性
DNAはみんな違うから
No.1にならなくてもいい
もともと特別な Only one


HY

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