東京コミュニティスクール-探究型学習が教育の特長-全日制オルタナティブスクール(小学1年生から6年生)

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2012年12月 アーカイブ

2012年12月01日

『心に響け』~ふりかえり~


[1・2年生]


自ら表現することで、より深い理解と他者の共感を得るために、今回挑戦した無声劇。
無声劇を作ることは簡単なことではありませんでした。


なぜならば、まず伝えることについての解釈が要となるからです。
しかも、伝えることは既に制約として決められており、「3つの約束(ひとを大切にする・自分を大切にする・ものを大切にする)」という、字面の意味は分かっても解釈するには抽象度の高いもの。
「人をなぐらない」「落としものをしない」というだけでは深い理解とまでは言えないでしょう。
「3つの約束を守ってるのってどんな時?」という話をし続けました。
テーマの時間以外にも「これって守れてるかな?」と考えながら。
そうして、みんなでアイデアを持ち合い、劇のテーマが決まりました。


無声劇を実際につくっていくことは、まさに産みの苦しみでした。
言葉で言えば一言で終わることをノンバーバルで伝えることの難しさ、反対に普段の無意識的な言動(時には人を傷つけることもありそうな)をしていることの意識化を感じたようです。
全員で表現するための協力も求められます。
その時に、鑑賞することで発見した表現の工夫や3つの約束の解釈が活かされたと思います。
「あの工夫を使ってみよう。」
「ひとを大切にするんだったら、ここでどう動けばいいんだろうか。」


産みの苦しみを楽しんでいたのか、スタッフの指摘をバンバン受けて大変なはずなのに何故か子どもたちは生き生きして見えました。
発表会本番前日、ある子が帰りがけに「明日の発表会頑張ろうな」と仲間に言っていたことが印象的です。


伝えたいことを解釈しそれを相手に伝わるように工夫して表現することは、今後も重要となる力。
今回のテーマをきっかけにして、更に伸ばしていって欲しいと思います。



EN

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

『からだに栄養・こころに栄養』~ふりかえり~

[3・4年生]

食べたものは体の中をどのように通って出て行くのか?という消化器官の学びから始まり、栄養素の種類とその働き、さらには健康的な生活を送るために必要な運動と休息のバランスについて探究していきました。

今まで栄養や健康について特に意識したことがなかったと言う子どもたちにとっては一つ一つの学びが驚きだったようです。

普段何気なく食べていた食べ物それぞれに様々な栄養素が含まれていて、それが体に対して色々な働きをしていることを知り、自分が食べている物やお母さんが作ってくれる料理がバランスを考慮してくれているものだということに気付くことができたようです。

野菜が苦手な子が野菜不足をなんとか克服するために野菜ジュースを毎日飲んだり、給食でも少しずつチャレンジしていました。
また日々の運動不足を補うためにサイクリングやダンスやランニングをすることにしたり、十分な睡眠をとるために昼寝の時間を作ってみたり。

そして”からだの栄養”だけではなく”こころの栄養”についても考えた結果、自分を励ます言葉を勇気宣言としてみんなの前で発表できたことも子どもたちにとって大きな一歩となったようです。

『限界をつきやぶれ!』
『何があっても諦めない。絶対やりとげる』
『超えればいい。限界なんぞ』

力強い自分に勇気を与える言葉ですね。素晴らしい勇気宣言でした。
君たちならば健康な体とたくましい心を育てながらどんどん色んなことにチャレンジしていけることでしょう。

YI

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『個の尊厳』~ふりかえり~

[5・6年生]

会場が暗転するとそれまでのざわついた雰囲気がさっと消えた。

市川力の死が告げられ、かつての教え子たちが、関係者控え室に集まり、
告別式直前のひとときを過ごしている場面であることがナレーション
される。再び部屋が明るくなると……

そこは30年後にタイムスリップした世界になっていた。

司会進行はスタッフに任せ、弔辞のときには部屋から立ち去った。この
ため、どんな雰囲気の中で、どんな弔辞が読まれたのか私は知る由もない。
しかし、小金井祭典の是枝さんの厳かなる司会によってリアリティは一層
増し、子どもたちは、30年後の世界に羽ばたき、またテーマ発表会のオー
ディエンスが、告別式の参列者へと姿を変えたであろうことは容易に想像
がついた。

今回の発表へのフィードバックとして、保護者を始めとする大人のオーデ
ィエンスに、未来へ「志」を持って生きようとする子ども達へのエールを
書いてもらった。

「有限の人生で何をなすべきか、私自身深く考えさせられた。」

「人の死を自分の活力に変えて生きてゆく力を感じました。」

「他者と関わり刺激を受け何かを感じることが生きることの素晴らしさな
のではないかと思いました。」

「ただ夢を描くのではなく、具体的に自分の夢を描写していく。そこに
個の尊厳のテーマの価値があると思った。」

これらはフィードバック用紙に書かれた大人からの熱いメッセージのほんの
一部に過ぎないが、大人たちが魂をわしづかみにされ、子どもたちの学びの
深さを実感したことがひしひしと伝わってくるだろう。特に保護者は、あた
かも自分自身の告別式でわが子の語る姿を見たような思いになったのだろう。
現実には、見ることも聞くこともできないわが子のフェアウェルメッセージ
に接し、立派に成長し、自らを乗り越えて生きてゆこうとするわが子の姿が
ありありと見えて、万感あふれるものがあったに違いない。

テーマリフレクションのとき、大人からのフィードバックをひとつずつ私が
読み上げてゆくときの子どもたちひとりひとりの顔には、単なる満足感では
なく、一段上のステージに成長した実感をつかんだ自信があふれていたのが
印象的だった。

リフレクションの最後に、今、心に去来することをなんでも書いてほしいと
紙を渡すと、どの子もバリバリと書き始めた。最初は10分ぐらいで終わろう
と思っていたのに、どの子も集中して書き続け、結局、30分ぐらいになって
しまったことには驚いた。そこには、当然ながら、学び開始期にマイニング
された思いとは異なる、死と生とのつながり、さらには自分と他者とのつな
がりがびっしり書き込まれていた。

さあ、いつもの通り、テーマ学習は、終わりが始まり。「個の尊厳」を持っ
て生きてゆく旅がいよいよ始まりました。人生楽ありゃ苦もあるさ。夜明け
の来ない夜はない。思いっきり生き抜いていこう!

RI

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2012年12月04日

ワークショップ(大阪)
『探究型』を探究する」(1)

探究型学習をデザインする指導者のためのワークショップ<大阪にて開催>
「探究型」を探究する (1)Learner Profile


 小学生を対象とした全日制スクールを運営する東京コミュニティスクール(TCS)は、20年後の社会を担う子どもたちに相応しい学校教育のイノベーションを実現することを目的に研究・実践・普及活動をしている特定非営利活動法人(NPO)です。
その中で、「探究型学習(inquiry-based learning)」を特長とし、世界中から新しい時代の教育として大いに注目されている国際バカロレア(IB)の初等教育プログラム(PYP: Primary Years Programme)から多くのことを学ぶとともに、それを基軸に、日本の子どものための「探究型学習」の研究・実践・普及活動を続けてきました。
既に東京で毎回キャンセル待ちが出るほどの好評を得ている『「探究型」を探究する』シリーズ初めての大阪開催となる今回は、明日の教室大阪分校との共催で、探究型学習を実践する上で最も重要な要素の1つとしてTCSやIBで謳われている「Learner Profile(学習者像)」を深く理解するとともに、具体的な活用方法とその意義について、体験を通じ、インタラクティブなスタイルで学んでいただきます。
 探究型学習がうまくいかなくて悩んでいる方、世界に通用するレベルの探究型学習をデザインしたい方、
探究という学び方に興味のある方など、現役の教員に限らず教育に興味関心のある方であれば、どなたでも参加できます。

【テーマ】 「探究型」を探究する (1)Learner Profile

【日 時】 2012年12月23日(日) 9時00分~17時00分

【会 場】 株式会社内田洋行 大阪支店 大阪ユビキタス協創広場 CANVAS

大阪市中央区和泉町2-2-2 ※会場へのアクセス

【WSリーダー】 久保 一之(くぼ かずゆき) 仲里 靖雄(なかざと やすお)
※プロファイルは、下記をご参照ください。

【対  象】 教育関係者、一般

【定  員】 25名(要申込) 定員になり次第、締め切ります。

【参加費】 9,000円(資料代、昼食代込み)

【申込み・支払い期限】 2012年12月13日(木)

※お申込みいただいた後、詳細のご案内メールをお送りいたします。

※キャンセルポリシーはこちら


※満席となりました。ご希望の方はキャンセル待ちにて承ります。

お問合せ・お申込みは、

 東京コミュニティスクール セミナー事務局 まで

TEL:03-3313-8717  FAX:03-3313-8790
e-mail: s12@tokyocs.org

※メールアドレスの「@」を半角に直してください

【お申込み方法】 件名を「参加希望ワークショップ1223」とし、
参加を希望するすべての方について、以下の事項をお知らせください。
    1.氏名(ふりがな)
    2.所属
    3.e-mailアドレス(できればPCアドレスをお願いします)
    4.日中の連絡先(緊急用)
    5.講座を知ったきっかけ(ホームページ、知人、新聞・雑誌名、SNS名等)

主催: 特定非営利活動法人東京コミュニティスクール明日の教室大阪分校
後援: 株式会社グローバルパートナーズ
協力: 株式会社内田洋行

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WSリーダー プロファイル

久保 一之(くぼ かずゆき)
KAZU_casual_small.bmpNPO法人東京コミュニティスクール創立者・理事長
小学生から大学・社会人までの教育に幅広く携わる中で、探究型の学びの研究開発・実践・普及活動、学校教育の国際化支援等に特に力を入れて活動。国際バカロレアの初等教育プログラム(IB-PYP)の研究を通じて日本の小学校教育の未来像を提案している。
株式会社グローバルパートナーズ代表取締役社長、株式会社ビジネス・ブレークスルー コンサルタント、ビジネス・ブレークスルー大学 准教授・同大学院 講師、株式会社知の探究社 取締役副社長。[ http://tokyocs.org ]



仲里 靖雄(なかざと やすお)
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大学を卒業後、帝塚山学院小学校、その後、公立小学校で14年間実践を積む。そして、立命館小学校開講より4年間、主に算数指導について研究を深める。現在、再び帝塚山学院小学校にて探究型学習の研究・実践に力を注いでいる。
[ http://tezukayama.ac.jp ]



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会場案内
株式会社内田洋行 大阪支店 大阪ユビキタス協創広場 CANVAS

住所) 大阪市中央区和泉町2-2-2
URL)http://www.uchida.co.jp/company/showroom/osaka.html


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交通のご案内(地下鉄をご利用の場合)
地下鉄谷町線・中央線「谷町4丁目駅」8番出口より徒歩8分
※お車でのご来館はご遠慮ください。

2012年12月06日

「エイリアン・パラダイス」~概要~

[1・2年生]

近くの公園の池になんとカミツキガメがいた……皇居のお濠はブルーギルだらけ……
電線にスズメじゃなくてカラフルなインコ……

私たちが気づかないうちに、どんどん「外来種」が入り込んでいます。こうした
「外来種」の増加は、同じ「生態圏」にいる「在来種」を圧迫し、「絶滅危惧種」
へと追いこんでゆきます。この現象は、世界各地で起きていますし、そしてもち
ろん大都会東京、つまりTCSの周囲でも、在来種の中に外来種が侵入することに
よる生態系の変化が起こっているのです。

いったいなぜこんなことが起きるのでしょう?
また、こうなることでどんな悪影響が待ち受けているのでしょう?
さらに、私たちの生活自体とどんなつながりがあるのでしょう?

これこそ今回のテーマ学習での探究課題です。

まず、在来種の生態系に影響を及ぼす外来種について調べ、次に、環境の変化に
適応する外来種の生態を知り、そのうえで、人のライフスタイルや都市化が生態
系の変化に与える影響までしっかり理解したうえで、いかにして多様な種のあふ
れる生態系を保持してゆくか探究してゆきます。

RI

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「いい仕事してますね。」~概要~

[3・4年生]

タイトル:いい仕事してますね。
探究領域:社会寄与

いい仕事とはなんだろう?
いい仕事をするためには、何が必要だろう?
職人とはどのようなものなのか?
実際に職人の方の仕事から学ばせていただき、そこで感じたこと、学んだことを実践します。
また同時に”モノを大切にする”とはどういうことなのかということに思いを馳せながら物作りに向き合っていきます。

今回のお客様は自分達のスクール。椅子の発注を受けて、実際に自分たちが使うものを作ります。

果たして、手を抜かず相手の気持ちを考えたいい仕事ができるでしょうか?
そして自分の作品に対してどのような思いを持つことになるのでしょうか?


YI

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「ロストエナジー」~概要~


[5年生]


タイトル:ロストエナジー
探究領域:共存共生


私たちは日々、豊かで便利な暮らしを営むためにエネルギーを用いています。
エネルギーを作りだすには資源が必要で、石油などの資源は有限です。
東日本大震災以降、節電・省エネが叫ばれるようになり、総選挙が近づく昨今、脱原発か否かといったエネルギー政策についての議論がされています。
エネルギー使用にはメリットデメリットの両面があり、どの選択が正解とは言い難いものがあります。
その中で私たちは社会システムやライフスタイルも含めて考え直す必要があり、どう生きるかの決断を迫られていると言えます。
本テーマ学習では、エネルギーが私たちの生活に及ぼすエネルギー問題を切り口として、「原子力はいけない、自然エネルギーだったらよい」というような一方的な判断ではなく、未知の状況に出会った際に、風評や先入観に惑わされず、複数のデータを見比べて、多面的に判断し、自分の価値観に依拠しつつ、バランスよく物事をとらえる力を養うことを目指します。


EN

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「人の心を動かすストーリー」~概要~

[6年生]

タイトル:人の心を動かすストーリー
探究領域:意思表現


探究領域「意思表現」のテーマで、パントマイム・詩・編集(小冊子作成)といった、
いろいろな表現方法を身につけてきた6年生達。
その集大成として、音楽・言語・映像を組み合わせた映画製作に挑みます。

この作品を通じて人に何を伝えたいのか?
ストーリーを効果的に演出するためにどんな工夫ができるのか?
この作品で本当に人の心を動かすことができるのか?

映画というフィルターを通して、自分の考えや思いをどう伝えるか、6週間かけて
探究していきます。

今回新たに「人の出演は無し」という制約条件を加えたことで、演出上の工夫が
より求められるなか、一体、どんな作品が出来上がるのでしょうか。

HY

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2012年12月07日

どうして絶滅危惧種になっちゃうの?

[1・2年生]

「"ダーウィンが来た"で見たよ!」

"絶滅危惧って知ってる?"と問いかけたときに、間髪入れず返ってきた
答えだ。すると、何人かの子どもたちが追随して「ぼくも見たよ!」と
言う。野生動物の生態を素晴らしい映像で見せてくれる番組で、動物好き
の子どもがはまって見ているのだ。

そもそもたいていの子どもは動物が好きだ。カブトムシオタクがいれば、
サバンナの動物にあこがれる子もいる。犬猫はもとより、ウサギ、ハム
スターのような小動物、なかには、イグアナやカメレオンのようなは虫類
にはまる子もいる。動物園に行きたがらない子どもが滅多にいないように
「動物」というネタは子どもを間違いなくひきつける。だからこそ「入り
やすく、出にくい」学びとも言える。

「知っているよ!聞いたことあるよ!」

という先入観を壊しつつ、自分が興味・関心のあることだけに固まらず、
より広い視野を育てなければならない。面白そう!という好奇心を入口
としながら、あれっ?なんか変?という違和感に基づく知的好奇心に火
をつける必要がある。そうしないと、自分の既に持っている知識の範囲
内にとどまるか、好きなことだけ調べる学びになってしまう。そうなら
ないように、子どもたちが既に持っている知識や体験をしっかり探り、
どうゆさぶってゆくか考えるヒントを得なければならない。

「絶滅危惧っていうのはねえ、もうすぐ地球上からいなくなっちゃいそ
うな動物だよ」

(ほう……発言した子だけでなく他にも何人か知っている子がいたぞ。
「絶滅」とか「絶滅危惧」ということについてはどうも何かしら聞いた
ことがありそうだ)

「シロクマとかもそうだよ」
「パンダもそうだよねえ」
「ニホンカワウソは絶滅しちゃったんだよ」

(なるほど……やっぱり、テレビや図鑑で絶滅しそうな危機にある代表
的な動物についても見聞きしているようだぞ)

ところが、子どもたちの発言をマップ化したものを眺めなおしてみると
楽しそうにワイワイ話していた割には、広がりも深まりもないことが
明らかに……絶滅危惧種という地球からいなくなってしまいそうな動物
がいることと、いくつかの動物種があがっただけだった。

いつもと違って空白だらけの模造紙(マイニングマップ)。
"どこにいるのかな?""なぜ絶滅危惧種が生まれているんだろう?"
と質問してみても、

「アフリカ……オーストラリア……」
「環境が悪くなったから」

というどこかでちょっとだけ聞きかじったレベルの、表面的な答えしか
出てこない。知らないことが問題なのではない。これから知っていけば
よいからだ。見逃してはならないのは、絶滅危惧種のことはわかってる
よ!という雰囲気になっていることと、よそのところの話、つまり他人
事で"わがこと"となっていないところだ。

「オーストラリアに旅行したときね、この動物なくなっちゃうってガイ
ドの人が言ってたんだ」
「ほらこの図鑑ひどいでしょ。サイの角とっちゃうんだよ」

ひとしきり話題は尽きないが、自分の身近なことという意識はない。
自分の知っている動物が消えたらいやだ、ひどい殺され方をするのは
ひどい、許せない、かわいそう……そう思うことが悪いわけではないが
それでおしまいになっている。

自分たちも含めた現代人の活動がどのように動植物を絶滅に追いこんで
いるのか、その結果もたらされる生態系の変化が私たちにどうはねかえ
ってくるのか……そのメカニズムを解きほぐし、どう対処したらよいか
考えるきっかけがないと学びは深まってゆかないだろう。

そこで、次週は、自分たちが日々暮らしている身近な場所で起きている
「絶滅危惧」の実態について追究してゆく。

RI

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”大切にしているモノ”と”大切にしていないモノ”の違いはなんだろう?

[3・4年生]

このテーマでは椅子製作を通して”いい仕事”とはどういうことなのか探究していきます。
家具工房を訪れて職人さんの仕事を見たりお話を聞いたりしながら自分なりの”いい仕事”を探究し、モノ作りに励みます。

1週目となる今週はまず”自分が大切にしているモノ”と”自分が大切にしていないモノ”について考えることから始まりました。

『ゲーム、家具、マンガ、折り紙の完成作品、ヴァンガード、布団、服、』など大切なものと『読み終わったマンガ、はけない靴、食器、チャレンジ(ドリル)、電気(節電していない)』などの大切にしていないモノの違いは何なのかそれぞれの意見を話し合いました。

子どもたちが大切にしているモノは『思い出があるから、おばあちゃんがくれたものだから、趣味のモノだから、高級だから、自分が持っている力を出して作り上げたモノだから、無いと困るから、気持ちがいい布団だから』など沢山の理由が挙がりました。その他にもモノは気に入らないと大切にならないなどの意見もありました。

TCSで最も大切している3つのルールに『自分を大切にする。人を大切にする。モノを大切にする。』というものがあります。自分が一生懸命物作りに取り組んでいく過程で”モノを大切にする”という認識がどう変化していくかということも見ていきたいところです。

2日目からは練習課題としてブロックボックス(立方体の棚)製作に取りかかりました。
まずはスケジュール計画をしてから製作する上での大切なルールを子どもたちと考えました。
いろいろなアイディアが出ましたが、その中から3つに絞り「1.ケンカをしない 2.手を切らない(ケガをしない)3.スケジュールを守る」をエッセンシャルアグリーメントとして決めました。

棚作りの作業は寸法を測り丁寧に木材に線を引いていくところから始まります。
慎重に線を引きますが、少し曲がってしまったり子どもによっては早速苦戦しています。
来週はノコギリやヤスリを使って棚製作も本格スタートです⭐

YI

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エネルギーについて思うこと


[5年生]


テーマ学習「ロストエナジー」が始まりました!


先輩たちの発表から、政策提言することは意識している様子。
しかし、テーマ名を提示し、
「エナジーと聞いてイメージすることはある?」
とたずねても、
「……」
「ロストってロスタイムのロス?」
とまだイメージは広がっていないようで。


そこで早速、今回の発表会でのミッションを伝えました。
それは、「総理大臣候補として、『消費電力50%減で豊かに暮らす社会』を提言する」こと。
そこから自然と、子どもたちがエネルギーに関する世の中の動きについて知っていることや感じることは何かという話になり…。
「原発は無くなって欲しい。」
「原発なくても電気足りてると思う。」
「具体性のある政策じゃないと説得力がない。」
「足踏み発電とかあるって聞いた。」
「蓄電ってどうなってるんだろう?」
「発電の仕組みがよく分かってないのに、あれこれ言っていいのかな。知りたいな。」
と子どもたちからは様々な意見が“止めどなく”でてきました。


イメージで考えてることもあれば、知らないから判断できないこともある。
一方向だけの情報では熟慮したとは言えない。
感情論の政策提言では、説得力も無く多くの人の共感も得られない。
このテーマでは、エネルギーが私たちの生活に与える影響を功罪両面で捉える中で、自分が電力に依存せず、どう生きていくかを決断していくことを目指します。


まず、そもそもエネルギーとは何か、エネルギー資源やその利用について学ぶことに。
いろんなエネルギーがあること、電気を使っている歴史は長くない割に熱・光などのエネルギーと関係していることに驚きました。
そこから、主要な発電方法はどんな功罪があるのかを資料を基にみていくことに。
「水力発電って安全性ある一方、ダムを作ることで環境破壊が起きてるのか。」
「でも、ダムって発電以外にも使えるよね?」
「小規模ダムにするといいって書いてるけど、どれだけ発電するんだろう?」
「主要な発電方法だけでなく、新エネルギーについても知っていかないと判断できないなぁ。」


主要な発電方法にはメリット・デメリット両方あることに気付いた子どもたち。
来週は、どんな発電方法の可能性があるのか、私たちはどれだけの電力を使用しているのかについて探っていきます。




EN

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TCS映画塾、開講!

[6年生]

卒業試験を兼ねているエキシビションを除くと、6年生にとってはTCSでの
最後のテーマ学習になる今回の「人の心を動かすストーリー」。
テーマ領域「意思表現」の学びの集大成として映画製作に取り組みます。

「君たちは今日から私が主催する映画塾の生徒です。」
突然の発言にきょとんとする2人。

最初に今回の学びのミッションと映画製作における制約条件を伝えます。

私:「人の出演は無しね。」
子ども達:「えーーー!!!」

過去の作品に自らも出演していた経験があり、この条件は全くの予想外
だったようで驚きの声があがります。

人の演技力が作品の印象の大半を決めてしまっていた昨年の反省をふまえ、
今回はストーリーとそれを効果的に演出するための工夫にこだわりたいことを
伝えると、子ども達も納得の表情。

「じゃあ、影を使った演出とかありかな?」
「手だけの出演はどう?」
「人形を使ったら面白いかも。」

2人から次々に面白そうなアイデアが出てきます。

制限があるからこそ、工夫が生まれる。
早くもどんな作品ができるか、楽しみになってきました。

次にテーマのタイトルにもなっている「人の心を動かす」とはどういうことかに
ついて、現時点での考えやイメージを出し合うことにしました。

「感動」「共感」「納得」「熱意」「驚き」といったある程度予想された
キーワードに続き、

「主人公の成長が見られた時かなあ。」
「観る人に少し考えさせる機会を与える作品かなあ。」
「内容のわかりやすさも重要だよね。物語としてのつながりがないと
 ひかれない。」
「観る側が状況を知っている状態で、主人公が知らずに事件に巻き込まれて
 いくのをみるとハラハラドキドキする。」
「そういう意味で言うと、サスペンス劇場のように型にはまりすぎたものは
いまいち面白くない。」
とストーリ展開に関連する意見が出てきました。

2人しかいませんが、30分足らずで模造紙がいっぱいに。

今週後半からは、昔話や童話を参考にストーリーの型を示した上で、
早速ストーリー作りにはいります。

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「前から映画づくりは楽しそうと思ってたけど、いざストーリーを考えるとなると
なかなか思い付かないね。。」
「伝えたいテーマかあ、どうしよう・・・」

頭を悩ませながら、週末を迎えることになりました。

HY

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2012年12月14日

身近で生じた絶滅危惧種

[1・2年生]

絶滅危惧種について豊富な写真や資料を用いて説明してある学習用
ウェブページを発見。子どもたちとともに読み解いてゆきました。

その結果、明らかになってきたのは、絶滅危惧種が人為的な要因に
よって生じているということでした。人が毛皮を作るために、薬と
するために、あるいはペットにするために捕獲すること。娯楽とし
てのハンティング。食用にすること。さらには、人による開発、気
候の変化によって森林や湿地帯が失われてしまうこと、公害による
汚染という要因で、ある種の動物の生存が危うくなっていることが
わかってきました。

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しかし、それはどこまでいっても「どこか」の話。自分の住んで
いる「ココ」での話として受け止められません。そこで、実は、
自分たちが日々生活している周りで「絶滅危惧」という事態が生じ
ていることを実感するために、子どもたちにとってなじみ深く、
スクールからもほど近い、井の頭自然文化園水生物館を訪れました。

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かつてはこんこんと水が湧き出ていた井の頭池もすっかり水涸れ。
いまでは人工的に水を流し込んで浄化・循環している始末。水草
はなくなり、水深わずか1mほどの池の底も見えないほどにごって
います。

そんな環境変化によって井の頭池にむかし見られた動植物が消え
てしまったり、あるいは、いままさに消えようとする危機にあり
ます。昔見られたもの、昔は多くいたもの、反面、新しく見られ
るようになったものを実際に間近に観察して、井の頭池の変化を
知ろうという特設展示「井の頭池のむかし・今・これから」を
じっくり見学です。

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かつては当たり前にいたものの今は見られなくなってしまった
ウグイのような魚に手を触れてみたり、タガメやゲンゴロウを
見たり、環境の悪化によって消えてしまった水生生物を初めて
目にして大興奮の子どもたち。

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一方で、新しく増えている動物が存在していることを知り、
さらに驚きの子どもたち。

「蚕糸の森にいるカメだよ……」

スクール近くの池にもたくさんいるミシシッピアカミミガメは、
もともといなかった種類のカメ。アメリカザリガニ、ウシガエル、
そして……ブラックバスにブルーギル。

なんと今、井の頭池の約98%が、これまでいなかった新たな生物
で占められていることを知り、驚きはいっそう増すばかり。

「絶滅しちゃうやつがいるのに、増えちゃうんやつがいるなんて」

ある種の生物が消える反面、増える生物がいることに「違和感」
を覚えたのでした。

P1030370.JPG   P1030371.JPG

ここで子どもたちは「外来生物」という言葉を知ったのでした。
人が直接捕獲したり、環境悪化で死んでしまうだけでなく、新た
な種が突然侵入してくることで、もともと住んでいた種が駆逐
され、絶滅危惧種になってしまうのでした。

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「わあ、これは大変だ!」

捕まえたブラックバスを解剖してみたら胃から大量のタナゴ
(もともと井の頭池に普通にいた在来種の魚)が出てきた様子
を撮影した写真を見て子どもたちは衝撃を受けます。

いったいどこから「外来生物」が来たのか?
外国から海を渡って川を上り、井の頭池に来たのか?
どうして「外来生物」が勝って「在来生物」が負けてしまうん
だろう?

子どもたちはゆさぶられ、本質に迫る問いが頭の中にうずまき
始めたようです。単に誰かが誰かを捕まえるという「1対1」
の関係では完結しない「生態系」というシステムの変化を考える
入口にさしかかりました。

RI

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プロから学ぶ

[3・4年生]

テーマ2週目となる今週は武蔵砂川にある家具工房『KOMA』さんへ伺いました。これから初めての椅子製作に取りかかる前に、物作りのプロが働く工房を見学しお話を伺ってきました。

まず到着してKOMAの松岡さんに自己紹介と挨拶をし、今後製作する椅子の絵を子どもたちがそれぞれに描きながら特徴や使用する道具を説明しました。
PIC_0306.JPG
すると「じゃあ、のこぎりの練習をしてみようか!」と松岡さん。板とのこぎりを準備して下さり、子どもたちは早速切り始めます。「のこぎりは脇を締めて持つんだぞ。こうやって。それで引く時に力を入れるんだよ。引く時に切れるからな。」

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教えてもらったコツを試しながらその違いを体験しているようです。「よし、うまくなってきたぞ。よく切れてるよ。」と松岡さん。子どもたちはすでにワクワクした様子です。 「みんなカンナって道具知ってるか?」「知らない。あ、鰹節のやつか!スクールにもある。でもやったことない。」
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カンナの使い方も試し、見本を見せて頂いたようになかなかスムーズに使うことができない難しさを感じつつもこの道具が木の表面を滑らかにするためのものだということを教えてもらいました。

次に教えて頂いたのはインパクトレンチ(ドリル)です。なぜか電動工具に興奮気味の子どもたち。松岡さんは気前よく様々なサイズのドリルを準備して下さり、子どもたちは教わりながら大きな板に沢山の穴を開けていきました。これぞスクールではできない学びですね。ありがたい原体験です。

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何度もやる内に体重の掛け方や角度の大切さを感じている様子。椅子作りの前にプロの方に道具の使い方について実践レクチャーを受けられるなんて恵まれているなぁ。
そしてここからがさすが松岡さん。
「よし。じゃあこの板にスプレーで好きなように絵でも描いてみようか!」 いきなりの展開に驚きながらもワクワク楽しそうな子どもたち。 あっという間にドリルアートの出来上がりです。道具の使い方もただ練習するのではなくクリエイティブな遊びと一体にしてしまう松岡さん。さすがクリエイターですね。

それからもプロが使う大型電動工具やヤスリの使い方など色々と体験し、学ばせて頂きました。

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子どもたちにとって最も印象的だったのは、工具の使い方の見本で松岡さんがあっという間に木の剣や小さな木の家を作ってくれたことでした。

翌日のスクールでの振り返りでは「あんなにあっという間にきれいな剣を作れるなんてすごすぎるよ!」とプロのすごさに感じ入った様子でした。

椅子作りに対するやる気も俄然高まった子どもたち。いよいよ翌週から製作開始です。

松岡さん、そしてKOMAの皆さまお忙しいところ貴重な学びをさせて頂きまして本当にどうもありがとうございました。

YI

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ベストな発電方法ってあるの?


[5年生]


テーマ「ロストエナジー」2週目。

第1週で、「エネルギーとは何か」ということに触れた子どもたち。
そして、火力・原子力・水力という主要と言われる発電方法の功罪を見ていきました。
資源の有限性や環境破壊等の罪を見て来た子どもたちから自然と沸き上がってきた疑問は、
「太陽光発電」「地熱発電」など、“環境に良さそうな”“新しい”と聞いたことのある発電方法の可能性はどうなっているのかということ。


そこで、「再生可能エネルギー」と言われる発電方法の功罪について探るため資料にあたってみました。


風力発電・太陽熱発電・バイオ燃料発電など、多様な発電方法があることに驚く子どもたち。
環境の負荷や安全性に大きな問題が無いことというメリット(功)はあるけれども、
高いコストや天候等による供給の不安定性などの課題も見えてきました。
子どもたちが感じたことは、
「ベストな発電方法はない」ということ。


「複数の発電方法を組み合わせるべき?」
「一番“功”が多いのは、海洋温度差発電かな…?」


などの意見が出てきました。
けれど、これらの意見は「電力に依存する」「どうしたら今までともしくは今まで以上の電力使用ができるか」という考え方を基にしたもの。
私たちの目指すことは「消費電力50%減で豊かに暮らす社会」の提言であり、
「電力に依存しない生き方」とは何かを追究することです。


子どもたちもそのことは、言葉では理解しているつもりでも、
「電気が半分の暮らしなんてできるのかな……。」
「太陽光発電では供給が不安定だから、別の発電方法も組み合わせて……あーそれでは結局電気に頼ってる……。どうしたらいいんだろう……。」
「電力に依存しないこと=辛いこと」と思っている様子。


エネルギー政策を考えるより前に、
“電力に依存しないでどうやって豊かな暮らしをつくるか?”
“そもそも豊かな暮らしとは何か?”
ということについて考えることが大事なようです。


来週は、そのことも考えつつ、私たちの電力使用における変遷(CHANGE)について考えていこうと思います。


EN

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産みの苦しみ

[6年生]

今週は映画の核となるストーリーを考える1週間となりました。

今回のテーマの参考文献である「表現の技術」で紹介されていたポ
ストイットを活用してのストーリー作りにチャレンジする子ども達。

話の大まかな流れや出来事の因果関係、登場人物など思い付いたこ
とをポストイットに書き出し、いろいろ組み替えながら、内容を考
えていきます。

昔話や童話のストーリーのパターンを参考に設定を置き換えてみた
り、まずは登場人物のイメージを膨らまし、そこからストーリーを
考えてみたり。思い思いのやり方で取り組みます。

ただ、方法論さえわかれば、ストーリーが簡単にできてしまうので
あれば、誰も苦労しません。

断片的なアイデアは次々に思い付くのですが、考えが行ったり来た
りして、なかなかストーリーとしてまとまりません。
また、一旦、あらすじを考えたものの、「話の展開が当たり前すぎ
て、面白くないんだよね」と、再度一から考え直す場面も。

「映画を作るって、本当に大変なことなんだなあ・・・」

ある程度予想はしていたものの、最初の難関であるストーリー作り
に苦戦する映画塾のメンバー達。

冬休みまで実質残り1週間、はたして状況は好転するでしょうか。

HY

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2012年12月18日

2012年度冬休み課題図書

【1年生】               【2・3年生】
             


【4・5年生】





2012年度冬休み課題

【1~6年生】





大人の課題図書






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2012年12月21日

生態系ってなんだ?

[1・2年生]

誰かが飼育していた外来種を不用意に井の頭池に捨ててしまった
ことが、増えてしまう最初の要因になったことが、わかりました。
その結果、外来種が在来種を駆逐していったこともわかりました。
しかし、『井の頭 昔、いま、これから』での展示に書かれていた
ことを改めて読みなおしてみると、「外来種がきた」から「在来
種が消えた」というように単一の因果関係では説明できないこと
は明らかです。

1・2年生の子どもたちにとって、複雑な因果関係のからみあい
をはっきり理解するのは難しいでしょう。子どもだけでなく、大
人にとってもそれは簡単なことではないのですから。しかし、こ
の学びが目指すのは、「生態系」のつながりを完璧に理解するこ
とではなく、世界はいろいろな要因がからみあって成立している
のだ!というマインドセットを、自分の身近な世界の具体例に触
れながら養うことです。

「いろいろな要因がつながっていて、どこかが変化しただけで全
体に影響してしまう」

という「気づき」を得ることが何よりも大事。そのために働きか
けます。

まず、子どもたちに「原因」と「結果」という言葉を教えます。
「教える」といっても、自分たちが意識せずに頭の中で考えてい
ることに「名づけ」をする作業と言った方がよいでしょう。

「寒いところにずっといたからカゼひいちゃったってこと?」
「そうだよ!寒いところにずっといたっていうのを『原因』、
そのためにカゼひいちゃったっていうのを『結果』って言うん
だよ」

子どもたちの中にすでに因果関係を感知できる認知システムが
あるわけですから、そのシステムのことをどう呼ぶか教えるだけ
で、子どもたちはピンときてしまいました。

「じゃあ食べ過ぎたのが『原因』でお腹いたくなったのが『結果』
だ」

別の子が言うと、後はわれもわれもと言い出します。

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「原因」と「結果」という言葉を知ったところで、1枚のシート
を渡します。それは枠線に沿ってハサミで切ると、18枚のカード
になります。カードには「外来種が在来種を食べる」というのも
入っているのですが、それ以外に「井の頭池の水がかれる」「水
がにごる」「水生植物がなくなる」などといったことが書かれて
います。これらの項目は、井の頭自然文化園水生物館の展示物に
書かれていたことなので、子どもたちはなんとなく見覚えがあり
ました。

「どうして水がにごるの?」
「水が入れかわらないから。」
「どうして水が入れかわらないの?」
「う〜ん……水がわいてこないからだ!」
「じゃあ、水が入れかわらなくて、にごるとどうなる?」

水がにごると、太陽の光が浅い水底なのに届かなくなる。そうなる
と光合成ができず、水生植物が成長できなくなり、ますます水質は
悪化し、植物プランクトンが大量発生する。その結果、在来種の
すみかがなくなり、数を減らす……そんなつながりがカードを並べ
てゆくうちに見えてきました。

在来種が減ったのは、外来種が在来種を食べただけでなく、水質の
悪化という要因も働いていたわけです。ある「原因」が別の原因の
「結果」になり、ある「結果」が別の「結果」を生む「原因」にな
っているのです。なんと複雑に因果関係がからみあっているのでし
ょう。カードを図として並べてみてその複雑なネットワークの一部
しか自分たちは見ていなかったことに子どもたちは気づきました。

この複雑なネットワークを「生態系」と呼びます。

「でもその中でも大きな要因は"水がわきださなくなったこと"と
"誰かが外来種を池に捨てたことだよね」

ある部分の変化が他の部分にも大きな影響を及ぼし、やがて全体に
波及してしまう。これが「生態系」の変化です。一部分の変化であ
るにもかかわらずが生態系全体に影響を及ぼしてしまう……いったい
この「変化」に人間生活がどのように関わっているのか、また生態
系全体にどんな悪影響を及ぼす可能性があるのか、ということへの
追究に移ってゆきます。

RI

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椅子製作スタート

[3・4年生]

練習課題のブロックボックス作りも終了し、今週からいよいよ椅子製作が始まります。ブロックボックス作りでは最終段階のダボ穴あけとダボ取り付けの工程でやや苦戦することになった子どもたち。

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微妙な位置のずれによって組み立てるとバランスが若干ずれてしまい美しい立方体にすることの難しさを体験しました。
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しかし、この経験を次に活かすために行った練習課題です。子どもたちはこの作業を振り返りながら位置出しのための線引き作業の大切さをよく感じた様子。本番の椅子作りは一つ一つの工程を丁寧に積み重ねていきましょう!



2日目の授業の冒頭で、子どもたちはスクールからの正式な注文書と設計図を手渡されました。
さあいよいよ職人としてのデビューです。注文書には納期や要望事項などが記載されています。

『1.しっかりとした作りで使いやすいものであること(ガタガタしているものは論外)2.図面に対して正確なもの *今後自分自身のスクールの椅子として完成より1年間使うこととする。』などなど。

まずは設計図を確認しながら、納期までの作業スケジュールについて計画します。
完成予定はテーマ5週目の最終日なので、そこから追っていくと9日間の作業時間で工程を組むことになります。
必要な作業内容を子どもたちと考えてみると練習課題で行った経験から全ての内容を挙げることができました。
大きく分けて【1.線引き2.切断3.ヤスリで調整4.ダボ穴あけ5.組み立て6.仕上げ】の工程を9日間のスケジュールに落とし込み、目標が定まりました。

これから今まで以上にノコギリを使用する作業が増え、安全に注意したり相手が喜んでくれるものを作るために丁寧な作業を心がけたりと職人になるには意識することが多々あります。

そこで教室に職人の心得を掲示し、作業前には必ず大きな声で唱和してから作業に臨むことにしました。これも職人の心得の内の一つ”型から入れ”という教えの一つです。

まずは設計図に基づいて材料に線引きをし、切断する作業から始まります。
練習で得た教訓である最初の線引きが肝心ということをよく意識し、慎重かつ丁寧に線を引こうと頑張る子どもたち。
それでも寸法チェックをするとサイズのミスが見つかりやり直す場面もありましたが一生懸命がんばっている小さな職人たち。
さあベストを尽くしていい椅子を作ろう!!

YI

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マインドセットを打ち破れ!


[5年生]


テーマ「ロストエナジー」第3週。


今週は、「そもそもどのぐらい電気を使っているんだろう?」という疑問から、エネルギーにまつわる歴史や変遷(CHANGE)について考えてみました。
エネルギーと文明との関わり、電力需給はどう変遷し、その変遷に合わせてどのようなエネルギー政策が行われてきたのか、資料を読んでみることに。
「どんどん発電量が増えている、バブルの時の方が少ない。」
「今よりもバブルの時の方が電気使ってそうな気がするんだけど。そうでもないのかな。」
「どのくらい電気って余っているのかな?」
「火力発電量が増えているということは、二酸化炭素の排出も増えているんだろうな…。」
「原子力発電をしていない国は、どうやって発電しているんだろう?」


ある朝の会で、
「電気って必要?電気を使わない時代に戻ろう!」
という話題になったことがありました。
その時に出ていた意見の多くは、「電気が無くても生きてはいけるけど、今が良い」というもの。
テーマでもその話をした時に、電気を使いだした昔の生活はどうなっているのかという疑問が浮かびました。
そこで当時(戦後復興期とバブル時代)の生活が見える映画を鑑賞してみることに。
「携帯電話が大きい!」
「自動改札機が無い!」
「冷蔵庫が氷だ!」
「テレビが来ることが大きな出来事なんだ!」
と今では当たり前になっているものが無いことを発見。けれど、今より楽しそうな印象(特にバブル)も受けたようです。


では、昔に戻ればいいのか?


「でも、いろいろと電気を使っている社会に生きているから……。」
とここでも電気を使えないことへの消極的な反応が見られました。
こう感じることはこの世の中に生まれてきて仕方ないこと?
どの時代にも功罪(いいこと/よくないこと、便利なこと/不便なこと)はあるでしょう。
大事なことはそれを踏まえた上で、どう生きるか(何に優先をおくか)決断をすることです。


非電化工房を運営する藤村靖之さんの本「非電化思考のすすめ」(WAVE出版)には、そのヒントが詰まっていると思い、子どもたちに紹介しました。
そこには以下のようなメッセージが込められていました。

==============


電気は便利なもの


ただ全ての電気消費が必要なのだろうか?
電気を使うことが本当の幸せなのか?


『人や世の中にとって本当の幸せは何か』を考えるべき


節電、省エネ、脱原発を考えるだけではマインドセット(思考の枠組み)は変わらない
結果、ブームに終わり、根本的なエネルギー問題の解決は得られない
マインドセットを変えない限り、電気に依存する社会のまま


==============


藤村さんの言葉に触れて、
「ただ、使う電気の量を減らすという考えでは解決にならない。」
「電気を使わないでもたのしく暮らすことはできるのではないか。」
という考えがわずかに芽生えたかな、というところで冬休み。
冬休みには長い時間を使って、
“将来、どんな暮らしをしていたいか?そのために必要なことは何か?
それは、電力に依存しない社会でもできるか?どんなマインドセットを持って生きるべきか?”
というようなことを考えてきて欲しいと思います。



EN

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いざ試し撮り

[6年生]

当初のスケジュールから遅れてはいるものの、なんとかストーリー
のあらすじを考えた子ども達。

撮影している中で、いろいろ見えてくるものがあるかもしれないと
いうことで、試し撮りしてみることにしました。

紙芝居方式の案で進めようと考えた女の子はまずは場面の絵を描く
ことに。
「主人公の男の子は普段は冴えない感じで、寝癖がついてるんだ。」
登場人物の設定も考慮しながら、次々に絵を書き上げていきます。

もう一人の男の子は、主人公の少年がずっと川を眺めているシーン
をどう撮るか考え中。
絵に加え、レゴやパターンブロックを使うなど、様々な演出方法の
アイデアを試してみることにしたようです。

ある程度、作業が進むと、二人はipadで撮影した動画をimovieで
編集し始めました。
撮影した場面に一番適した音楽(効果音)を探す作業は子ども達の
心をわしづかみにしたようで、

「これ、楽しすぎる!」
「去年の卒業生はipadが使えず、残念だったね。」

という正直な感想が聞こえてきました。

「テーマ学習の時間の前までは、今日はストーリーを考えなきゃと
かやらないといけないことが頭をよぎり、少し気が重くなるんだけ
ど、いざやってるみると、そのうちにどんどん楽しくなってくるん
だよね。」

先週の停滞感を乗り越え、子ども達もエンジンがかかってきたよう
です。

今回、冬休みのホームワークとして、作品を一旦仕上げてくるよう
子ども達に伝え、スクールのipadを貸し出しました。
私の作品も含めて、年明けの1回目の授業にて上映会を行うことに
しました。

一体どんな作品ができあがるのか、非常に楽しみです。

HY

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ミラクル・ハイパーステージ12/22(土)

TCS「ミラクル・ハイパーステージ 2012」開催!

TCSスクールコンサート「ミラクル・ハイパーステージ」も、恒例となってきました。
TCSキッズ&スタッフ&保護者&卒業生による大ステージ。

日頃磨き上げた技能が数多く披露されますので、どうぞお楽しみに!
年の瀬のこの時期、ご多忙とは存じますが、万障お繰り合わせの上ご来場ください!

今年は、下記の通り開催を予定しています。
※一般の方にも参観いただけます。ご希望の方は、下記までご連絡ください。

                 記

日時:平成24年12月22日(土)
   14:00~16:00(13:40開場)予定
 ※開始時間は変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。

会場:初台The DOORS(京王新線初台駅徒歩30秒)
   渋谷区本町1-2-1  [地図]

*アクセス*
京王新線「初台」駅、甲州街道北口より徒歩30秒
※京王新線「新宿」駅より1駅。
 京王線「新宿」駅とは場所が違いますのでお気をつけ下さい。
 調布方面よりお越しの方は「笹塚」駅でお乗り換え下さい


【お問合せ・お申込み】
東京コミュニティスクール(担当:若林・工藤)
TEL:03-3313-8717
E-mail:school@tokyocs.org
※迷惑メール防止のため、「@」を全角にしています。お手数ですが、半角に変更してから送信してください。

   件名を 「ミラクル・ハイパーステージ見学希望」とし、
   本文に以下の事項をお知らせください。
     1.見学希望者氏名(すべてご記入ください)
     2.(保護者の方は)お子さんの現学年
     3.E-mailアドレス
     4.電話番号(最も連絡のとりやすい番号)
     5.TCSを知った経緯(知人、ネット検索、新聞名・雑誌名など)
     6.質問事項等(あれば)

以上

2012年12月22日

平成25年度新一年生を
追加募集します!




NPO Tokyo Community School 
特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール 


〒164-0001 東京都中野区中野1-62-10 
TEL: 03-5989-1869  FAX: 03-5989-1649 
e-mail: school@tokyocs.org