[1・2年生]
誰かが飼育していた外来種を不用意に井の頭池に捨ててしまったことが、増えてしまう最初の要因になったことが、わかりました。
その結果、外来種が在来種を駆逐していったこともわかりました。
しかし、『井の頭 昔、いま、これから』での展示に書かれていた
ことを改めて読みなおしてみると、「外来種がきた」から「在来
種が消えた」というように単一の因果関係では説明できないこと
は明らかです。
1・2年生の子どもたちにとって、複雑な因果関係のからみあい
をはっきり理解するのは難しいでしょう。子どもだけでなく、大
人にとってもそれは簡単なことではないのですから。しかし、こ
の学びが目指すのは、「生態系」のつながりを完璧に理解するこ
とではなく、世界はいろいろな要因がからみあって成立している
のだ!というマインドセットを、自分の身近な世界の具体例に触
れながら養うことです。
「いろいろな要因がつながっていて、どこかが変化しただけで全
体に影響してしまう」
という「気づき」を得ることが何よりも大事。そのために働きか
けます。
まず、子どもたちに「原因」と「結果」という言葉を教えます。
「教える」といっても、自分たちが意識せずに頭の中で考えてい
ることに「名づけ」をする作業と言った方がよいでしょう。
「寒いところにずっといたからカゼひいちゃったってこと?」
「そうだよ!寒いところにずっといたっていうのを『原因』、
そのためにカゼひいちゃったっていうのを『結果』って言うん
だよ」
子どもたちの中にすでに因果関係を感知できる認知システムが
あるわけですから、そのシステムのことをどう呼ぶか教えるだけ
で、子どもたちはピンときてしまいました。
「じゃあ食べ過ぎたのが『原因』でお腹いたくなったのが『結果』
だ」
別の子が言うと、後はわれもわれもと言い出します。
「原因」と「結果」という言葉を知ったところで、1枚のシート
を渡します。それは枠線に沿ってハサミで切ると、18枚のカード
になります。カードには「外来種が在来種を食べる」というのも
入っているのですが、それ以外に「井の頭池の水がかれる」「水
がにごる」「水生植物がなくなる」などといったことが書かれて
います。これらの項目は、井の頭自然文化園水生物館の展示物に
書かれていたことなので、子どもたちはなんとなく見覚えがあり
ました。
「どうして水がにごるの?」
「水が入れかわらないから。」
「どうして水が入れかわらないの?」
「う〜ん……水がわいてこないからだ!」
「じゃあ、水が入れかわらなくて、にごるとどうなる?」
水がにごると、太陽の光が浅い水底なのに届かなくなる。そうなる
と光合成ができず、水生植物が成長できなくなり、ますます水質は
悪化し、植物プランクトンが大量発生する。その結果、在来種の
すみかがなくなり、数を減らす……そんなつながりがカードを並べ
てゆくうちに見えてきました。
在来種が減ったのは、外来種が在来種を食べただけでなく、水質の
悪化という要因も働いていたわけです。ある「原因」が別の原因の
「結果」になり、ある「結果」が別の「結果」を生む「原因」にな
っているのです。なんと複雑に因果関係がからみあっているのでし
ょう。カードを図として並べてみてその複雑なネットワークの一部
しか自分たちは見ていなかったことに子どもたちは気づきました。
この複雑なネットワークを「生態系」と呼びます。
「でもその中でも大きな要因は"水がわきださなくなったこと"と
"誰かが外来種を池に捨てたことだよね」
ある部分の変化が他の部分にも大きな影響を及ぼし、やがて全体に
波及してしまう。これが「生態系」の変化です。一部分の変化であ
るにもかかわらずが生態系全体に影響を及ぼしてしまう……いったい
この「変化」に人間生活がどのように関わっているのか、また生態
系全体にどんな悪影響を及ぼす可能性があるのか、ということへの
追究に移ってゆきます。
RI
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