[5・6年生]
会場が暗転するとそれまでのざわついた雰囲気がさっと消えた。市川力の死が告げられ、かつての教え子たちが、関係者控え室に集まり、
告別式直前のひとときを過ごしている場面であることがナレーション
される。再び部屋が明るくなると……
そこは30年後にタイムスリップした世界になっていた。
司会進行はスタッフに任せ、弔辞のときには部屋から立ち去った。この
ため、どんな雰囲気の中で、どんな弔辞が読まれたのか私は知る由もない。
しかし、小金井祭典の是枝さんの厳かなる司会によってリアリティは一層
増し、子どもたちは、30年後の世界に羽ばたき、またテーマ発表会のオー
ディエンスが、告別式の参列者へと姿を変えたであろうことは容易に想像
がついた。
今回の発表へのフィードバックとして、保護者を始めとする大人のオーデ
ィエンスに、未来へ「志」を持って生きようとする子ども達へのエールを
書いてもらった。
「有限の人生で何をなすべきか、私自身深く考えさせられた。」
「人の死を自分の活力に変えて生きてゆく力を感じました。」
「他者と関わり刺激を受け何かを感じることが生きることの素晴らしさな
のではないかと思いました。」
「ただ夢を描くのではなく、具体的に自分の夢を描写していく。そこに
個の尊厳のテーマの価値があると思った。」
これらはフィードバック用紙に書かれた大人からの熱いメッセージのほんの
一部に過ぎないが、大人たちが魂をわしづかみにされ、子どもたちの学びの
深さを実感したことがひしひしと伝わってくるだろう。特に保護者は、あた
かも自分自身の告別式でわが子の語る姿を見たような思いになったのだろう。
現実には、見ることも聞くこともできないわが子のフェアウェルメッセージ
に接し、立派に成長し、自らを乗り越えて生きてゆこうとするわが子の姿が
ありありと見えて、万感あふれるものがあったに違いない。
テーマリフレクションのとき、大人からのフィードバックをひとつずつ私が
読み上げてゆくときの子どもたちひとりひとりの顔には、単なる満足感では
なく、一段上のステージに成長した実感をつかんだ自信があふれていたのが
印象的だった。
リフレクションの最後に、今、心に去来することをなんでも書いてほしいと
紙を渡すと、どの子もバリバリと書き始めた。最初は10分ぐらいで終わろう
と思っていたのに、どの子も集中して書き続け、結局、30分ぐらいになって
しまったことには驚いた。そこには、当然ながら、学び開始期にマイニング
された思いとは異なる、死と生とのつながり、さらには自分と他者とのつな
がりがびっしり書き込まれていた。
さあ、いつもの通り、テーマ学習は、終わりが始まり。「個の尊厳」を持っ
て生きてゆく旅がいよいよ始まりました。人生楽ありゃ苦もあるさ。夜明け
の来ない夜はない。思いっきり生き抜いていこう!
RI
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