[3・4年生]
今までケーススタディや実際にスクールで起きた出来事を題材に客観と主観を行き来しながら自分たちの判断基準の特性を分析してきました。そしてテーマ3週目となる今週は自分たちの判断基準からは一度離れ、他者の判断から 学んでみることにしました。
題材としたのは、重松清の『半パンデイズ』 です。
この作品は、中学入試にも多く出題されますが、 子どもから大人へと成長してゆく過程で繰り広げられる微妙な人間関係 が見事に描かれています。
コンテクストがしっかりとした物語を客観的かつ登場人物たちに感情移入して”自分ごと”として読み込むのに最適と言えるでしょう。
読み始める前に子どもたちとは主人公や登場人物の判断基準や主人公の行動とその理由や気持ちとその変化を意識して読むことをシェアしました。
「ねえ、ぼく思うんだけど主人公のヒロシは東京から引っ越して最初はずっと東京に戻りたがってたけど、”アホ”っていう広島弁が好きになり始めた所からこの町にも慣れてきたんじゃないかな?」
「ヒロシはさ、ヤスおじさんもあまり好きじゃなかったけどなんかだんだん慣れてきてるよね。」
「なんでそう思ったの?」
「最初はヤスおじさんを威張ってる強引なお父さんのお兄さんと思ってたみたいだけど、なんかさ、頼りになるおじさんだなって思い始めてる気がするんだよね。」
「なろほど〜。そうかー。微妙なヒロシの気持ちの変化を感じながら読んでるね。」
「なんかぼくもさ、最初はヤスおじさんを好きじゃなかったけどだんだん好きになってきた。」
「お、それは何で?」
「やっぱり頼りになりそうだし。」
言葉では表現されていない登場人物の心境の微妙な変化に敏感に気づいて物語に入り込んでいる子どもたち。
出会ったばかりの6年生の少年はヒロシとは逆にお父さんの仕事の関係で東京へ引っ越すらしい。彼は出会ったばかりのヒロシを海に案内し、この町について沢山のことを一気に伝えた。 「この6年生のヨウイチくんは東京から来たヒロシに自分が引っ越す前に色々と教えてあげたかったんじゃないかな。」
「ぼくが思うのは、きっと自分は今夜東京に引っ越すっていうことと、ヒロシは東京からこの町に来たばかりっていうのがさ、状況が近いから親近感になってるんじゃないかな?」
「引っ越すのはぼくもしたことあるけど、新しい所にいく楽しみもあるけど不安もあるじゃん。それと地元にいたいって気持ちもあると思うんだ。ぼくは引っ越し前は引っ越ししたくなかった。だから好きな地元のことを思っていっぱい話してるんじゃないの?」
「じゃあたくさんのことを伝えていたのは自分のためってこと?」
「それもあると思う。」
「うーん。それもあるかも」
身近にありそうな小学生たちの物語に気が付けば感情移入し、自分だったらどう思うか、自分だったらきっとこうすると考えながら読み進み始めた第3週。
来週はすっかりこの町にも慣れて広島弁を話すようになったヒロシの周りで起きる様々な事件について読み進め語り合っていきます。
YI
※TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。