[6年生]
「セントラルアイデア」に導かれたテーマを追究することでエキシビションが単なる調べ学習にならず、自律的かつ意義のある探究になります。しかし、これまで自分でセントラルアイデアをつくったことのない子どもたちにとって、これはとても難関でした。なんとか「セントラルアイデア」が決まった子どもたち。次のポイントは、「キーコンセプト」を用いて「セントラルアイデア」を分解することです。大手流通企業の大規模ショッピングセンターにはまっている!という漠然とした興味が、conflict という「コンセプト」によって見つめなおすことで
「買い物を楽しむ」いう「消費前提の暮らし」と従来の生き方・働き方を乗り越えた「循環し型のゆるやかな暮らし」とのconflict という社会的に意義のあるテーマに“進化”しました。次は、このテーマをどんな「仮説」で追究するか考えることです。
「仮説」というと難しく聞こえますが、要は、「どうやって conflict をなくすか? 何か提案できないか?」ということです。具体的に言えば……働く時間も通勤する時間も大幅に減らし、自然の中で時間に余裕のある暮らしをしたい……この結果、現金収入は減るかもしれないが、現金になるべく頼らず、だからといって貧しい感じではなく暮らす方法は模索できるはず……そんな頭の使い方をするということです。
ここで大いに役立つのが8つの「キーコンセプト」(form / function / causation / change / connection / perspective / reflective / responsibility) です。
「まちづくりによって生き方と働き方が変わる」
というセントラルアイデアを「キーコンセプト」で分解してゆきます。
form……それはどんな街なんだろう?……自然にあふれている街。働くことと住むことが一体となっている街。
では続いて function……そんな街の機能って何なのかなと考えてみると……自然にあふれているということは、畑や牧場などで食べ物を自給自足できる。ということはお金があまりなくても、そこで循環することを目指せば、豊かな気持ちで暮らせる。ということは、私たちが実は求めている生き方や働き方を変える機能を「まち」が持っているんじゃないかという「仮説」が生まれる。
では生き方・働き方を変えるためにはどうしたらいいのかというと「サイズは小さく、その中で循環する」ことを目指すという側面が浮かび上がってくる。自分たちでつくって、自分たちで使って、自分たちで育ててゆくためには、みんなの顔が見えるまちのサイズじゃないとダメだ。なぜ小さいまちを目指すのかという causation という切り口での問いが立ちました。
もともとは大手流通企業のショッピングモールに魅せられて探究を始めました。その企業も、単に物を売ればよいと考えず、モールに来ることが楽しく、いきいきした気持ちにすることを目指しています。ところが、今、自分が「キーコンセプト」によって分解しながら見えてきた街は、自分が当初あこがれていた街とずいぶん様子が違ってきました。いったいどこが違うのか?ものの売り方が違うのか?まったくやり方が異なるわけではなく、参考にした部分はどこなのか?その結果、自分はどう変えたのか?……こうして connection / perspective / change という切り口によって「まち」の具体的な姿がより鮮明になってきました。
いよいよ「キーコンセプト」によって分解されたと問いに基づいて、リサーチし、自分なりのアイデアを考え出す流れができました。まったく何の仮説も立てず、漠然と資料を集めてしまう「調べ学習」を乗り越えられそうになってきましたね。これでこそエキシビションに値する探究です。とはいえ、自律的に追究できるかどうかは、本人の「意志」にかかっているので、後は子ども次第。どこまでやれるか、子どもを信じるしかありません。いったいどうなるか……
RI
※TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。