東京コミュニティスクール-探究型学習が教育の特長-全日制オルタナティブスクール(小学1年生から6年生)

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2010年10月 アーカイブ

2010年10月01日

「意識」を「実践」につなげる難しさ

[6年生]

先週の金曜日は、アウトドアデーで、スクール全体で練馬区にある光が丘公園に
出かけました。この機会を利用して、6年生の子どもたちは、ここまで練り上げて
きた「投球理論」を「実践」してみました。

「結果が出ないなあ……」

これまで考えてきた「理論」は間違いだったのか……それとも、「意識」したことを
うまく「行動」に移せないだけなのか……子どもたちは悩み始めました。

撮影したビデオを見直して、自分たちの考えた理論を「検証」します。

「腕が伸びてないね」

女の子のフォームを分析すると、最初からひじを曲げた状態で投げようとしている
ので、せっかく下半身が生み出した力を有効に使っていないことがわかりました。
男の子のフォームを分析すると、右足にためた力を左足に移動させることに失敗し、
下半身の力をうまく利用していないことがわかりました。

「意識しようと思っても投げるときには意識しきれないんだよね」

「理論」を「実践」に移すには、「自覚」できるチェックポイントが必要!このままでは
引き下がれない!と、子どもたちは、実際に投げるときに意識すべきポイントを明ら
かにし、再度、挑戦です。

①後ろに沈みこむことで力をため、それをふみこむ左足にのせること
②左足を軸として「回転」を引き起こしてゆく感じ
③下半身の力が肩甲骨を回転させ、その回転がひじのしなりを生み、最後にスナッ
プでボールを押し出すこと

これらのポイントを「意識」し、梅里公園へ……

まずは、肩のストレッチ、そしてキャッチボール。身体も肩も温まってきたところで
測定開始です。

男の子も女の子もともに記録は26m。1投目、2投目と記録に数メートルほど及ばない
平凡な記録が続きます。やはり「理論」は「机上の空論」か……と思われた第4投目。
女の子は自己ベスト更新の27mを出しました!
そして、男の子は、一気に3m更新の29m!

「やったー!」

ちなみに小6女子の平均は約18mですから、もともとよい記録だったのですが……

翌日も、実践は続き、ついに、男の子は、30m20cmを記録。30mの大台に乗せました。
決して体格に恵まれていない子が、30m越えを可能にしたのは理論の賜物です。
30m越えをしたときのフォームを分析すると、下半身で作り出した力をムダなくボールに
伝えていることがわかります。

「肩よりも太ももの内側が痛いんだよね」

どう力を作り出してボールに伝えたか自分の身体が証明していることに男の子は驚いて
いました。

一方、この日、どうしたことか女の子は記録がふるいません。早速、撮影したビデオを
分析すると、ひじの位置が肩よりも低いことが判明。やはり、身体のメカニズムがちょっと
でも狂うと記録は出ないことを痛感しました。

「トレーニングも考えなきゃね……」

女の子はつぶやきました。確かに、11月中旬の記録会にはあと1ヶ月半あります。
それまでに練習を積み重ねることで記録は変わってくるでしょう。よい投げ方を身体に
覚えこませる投げ込みの他に、投げる力を生む筋肉を強化する必要があるのでは、
と考え、投げるときに使っている筋肉を調べてみました。すると……

ひじのしなりを生んでいるのは、力コブを作る上腕ニ頭筋ではなく、その反対側の上腕
三頭筋。肩甲骨の周りの筋肉、大胸筋、腹筋、背筋、そして大腿筋というように全身の
筋肉を使って投げていることがわかりました。次に、筋力をつけるにはどうしたらよいかと
調べてみると、上腕三頭筋と大胸筋を鍛えるには腕立て伏せがいい!そこで、早速、
やってみるものの、まだ腕力のない子どもたちには腕立て伏せができません。大人向け
のメニューはこなせないことがわかりました。

「毎日、投げてたら肩が痛い!」

パフォーマンスを追い求めるあまり、故障してしまっては元も子もありません。

トレーニング方法とケガの予防と言う新たな課題を発見し、いよいよ次週は、最終週。
発表に向けて、これまで追究したことのまとめに入ります。

RI

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天気図を見比べる

[5年生]


今週から「気象データを統合して、天気の変化をどのように予測するか?」という段階に入ります。
先週までに得てきた知識を繋げると、前線について理解することができます。


今までに天気図を見続けてきて、前線という名前は知っていても、
これが何なのか、天気にどのような影響を与えるのかは分からず、
前線を使って天気図を見ることができなかった子どもたち。


天気図を見比べる_01前線とは何か、大気がどのような状態だと生じるのか、
どんな種類があって、前線がどのように天気に影響するのかを学ぶと、
天気図を見方が変わって行きました。


天気図を見比べる_02 天気図を見比べる_03

「この雲が西に動いて晴れる」
「前線が日本に接近する」


など、天気図を読む際に、今まで学んだことを活かそうとする姿勢が見られました。


ある日のこと、前日は晴れたのに翌日は雨が降ったことがありました。
2日間の同じ時間の天気図を比べてみると、あまり変わっていないように見えます。


みんなで考えてみるが、んーわからない。
「気圧や前線の位置はほとんど違いが無いように見えるけど、
どうして天気が変わったんだろう?」


そこで、
「気象庁の人に聞いてみたら?」
とのアイデアが、子どもたちから出てきました。


早速、気象庁の天気相談所に電話!


天気図を見比べる_04天気相談所の気象予報士からは、
「気圧の谷ができているね。」
「わずかに前線が北上して、日本に近づいているんだよ。」


こうして、現人から天気図の読み解き方を一つ教わることができました。
天気図を読み解くことには慣れてきた子どもたち。
ここからは気象予報士の視点も活用しながら精度を上げることが必要となります。


来週はいよいよ最終週。
発表の準備とともに、天気図を見続けて、読み解くことに挑戦し続けよう!


EN


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歴史はつながっていく・・・

[4年生]
さて、源「自」物語のテーマいよいよ大詰め。

今週はまず、「戦争当時の生活を肌で感じたい」ということで、
九段下駅からすぐの昭和館に見学に行きました。
そこは日本の戦争に関する資料が展示してありました。
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「戦争中は国会議事堂の前でも畑を作っていたんだぁ」
高さのある建物の歴史の中で、国会議事堂の話が出てきたので、目がいきました。

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給食に関しても、コッペパンとスキムミルクが展示してありました。
「これだけで給食・・・」

そして、流行歌の歴史について調べていた子は、戦争中、戦後まもなくの音楽が実際に聴くことができ、
興味津々。

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「“なんだ空襲”って曲があるよ!なにこれ?」
「戦争中の歌ってなんかすごい」
いろいろな曲を聴いてみました。

昭和館では、実際に昔の戦争当時の生活について考えさせられました。


次の日にはまず振り返りをしました。
「なんか空襲体験とか体験できたのはおもしろかった。」
「戦争の時のテレビ放送は何か話し方が今と違っていた」
「北朝鮮みたい」


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今まで調べてきた年表ができあがりました。

「戦争のあたりは、軍歌ばっかだ」
「この戦争が終わった後に流行したリンゴの歌は、戦争のときに作曲したもので、戦争中にふさわしくないって発売されなかったんだって」
「そういえば、トットちゃんの時代でもあったよ。お父さんがバイオリンで軍歌を弾かされたって」
「そうだったそうだった」
自分たちが学んできたことに歴史がつながっていくおもしろさを少しずつ感じているようでした。

そのあらたに調べたこと、発見したことをさらに年表に書き込んでいきました。

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家族の年表も貼ってみたのですが、何かもの足りない。
中々話を聞きだすことが難しかったようで、何かどうしてよいかわからない。
1枚の写真に関しても、どの時の写真だったかを聞いてそれを書いてきただけになっていました。

どうしたものか・・・。どうしたら家族の歴史について深くなっていくのだろうか?
子どもの口からも
「なんかこれだと寂しいね」と出てきました。

他の年表を見ていて、
「そういえば、ファミコンの話でね。こんな話をしてくれたよ・・・」
という自分たちの調べたエピソードに関する話をしてくれました。

「この頃は仮面ライダーがはやっているんだ」
「お父さん見ていたって言っていたよ」
「そういえば、仮面ライダーの写真あったよ」


家では家族と調べていることに関して、いろいろと話をしているようでたくさんエピソードを聞きました。

「そういえばスキムミルクは?」
思い出したように話題が挙がりました。
「お父さんは、まずいって思ってなかったらしいよ」
スキムミルク(脱脂粉乳)は一時話題になり、ある子が家にあったと持ってきてくれていました。
実際に水に溶かして飲んでみると・・・。

「まずい」
「意外とと平気、でもおいしいものじゃないな」
「どうして、こんなの飲んでいたんだろ?」
「栄養が足らなかったからでしょう!」


その他聞いていないことで自分たちの歴史について、「紅白のこと」「ブームになったおもちゃのこと」
などなどこの人によって感じ方の違いがでてくるのではということを考えました。

そこで、自分たちの興味を持った歴史について当時はどうだったのかということを聴いてみるということになりました。


来週はいよいよ最終週。

歴史の中でつながっているものを見ていく中で、変化しているもの、変わっていないものを探していきます。


TK


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ふりかえり、そして、水しらべ

[1・2・3年生]

先週見学に出かけた境浄水場について
「どんなことが印象に残っている?」と訊いてみました。
子供たちの反応が少し鈍いようだ。
出かけた日から5日ほど経っているためなのかと、
ちょっと心配になっていると、
「説明にアニメを使っていなかった!」
との声あがった。それに続き
「水滴(すいてき)くんと水玉(みずたま)ちゃんがいた。」
と都の水道局のマスコットキャラクターの名が。
やはり、アニメやキャラクターは子供たちに
強い印象を与えるようです。

しばしの沈黙の後一人の子から
「大きな池が20個あった。」
と、やっと本題へ入れる話題が出てくる。
沈殿池(ちんでんち)と呼ばれるもので、この池の大きさで
二人の子の意見が食い違う。
この件はあとで、当日案内してくれた浄水場の
職員のお姉さんに電話で確認してみることに。

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さらに、別の子から
「石や砂のろ過装置があった。」の発言が出てくる。
これに対し
「うん。あった、あった。」と応答する子が。
しかし、二人が思い出したのは別のもので、
一つは、教室前方のスクリーンの前においてあった、
高さ1メートルほどのアクリル製の筒状のもので、
もう一つは、建物の外で目にした、前面にガラスが張られた、
コンクリートとレンガで作られたものでした。
現場ではあまり興味を示す素振を見せなかったが、
やはり、砂ろ過装置のことは覚えていたようです。
ここから高速ろ過と緩速ろ過のことへつながれば、
というこちらの期待ははずれ、この話題は終了。
少し残念でした。


その後、
「水道水を作ってる。」
「砂を洗ってベルトコンベアーで運んでた。」
などの声が上がる。
しかし、子供たちは今一つはのっていないようなので、
ここでふりかえりを切り上げ、二人の子を選抜し、
境浄水場へ確認の電話をかけに。
沈殿池一つの大きさは、
【長さ約87メートル、幅約54メートルで、25メートルプール約16個分】
ということが判明、ほかのメンバーに報告。
ここで数人から「結構大っきいんだ。」の反応があった。
水再生センター見学の時と比較して、盛り上がりに欠けているようで、
少し気がかりです。


翌日は、ここまでやってきたことのふりかえりを行いました。
海から雲、山、川などを通り私たちのもとへたどりつき、
そしてまた海へ戻って同じ動きを繰り返すという
『水の大きな流れ』について
二つの水工場を見て歩いたことで、
テーマのスタート時に比べ、より深く知ることになったのだろうか。
確かめてみることにしました。
『大きな流れ』の簡単なイメージ図はすぐにできました。
それをもとに一人一人絵で表現してみることにしました。
みんなイメージ図を参考に描き始めましたが、
さらにイメーじを広げ、水再生ロボットを産みだす子、
あるいは、できるだけ詳細に描こうとする子など、
それぞれが“自分らしさ”を発揮した作品を仕上げました。
いずれにしても、汚れた水がそのままぜんぶ、
海へ流れるのではないことには気づいたようです。

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そして今週はもう一つ水しらべでやり残していた、
『お風呂と洗濯で使う水の量しらべ』を実行。
スクールの風呂場のバスタブにお湯をため、
バケツリレーならぬペットボトルリレーよろしく、
全員でペットボトルにお湯を詰め、
風呂場の隣にある洗濯機にせっせと移しました。
洗いとすすぎの計2回。
結構時間もかかるし、楽な仕事でもないが、
めったにやれることではないからか、
子供たちは嬉々として動いてくれた。

さあ、あともう1週。みんなでがんばっていこう。



TY


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2010年10月08日

さあ Report だ!

[6年生]

最終週は、ここまでリサーチしてきたことをまとめる作業です。

「おっちゃんはできあがったのをチェックしてくれればいいから」

子どもたちがミッションを自らのものとし、そのミッションを自ら課題化し、追究を
進めてきたという自負を感じました。これが6年間テーマ学習を積み重ねてきた
底力でしょうか。

今回は、科学者が学会で発表するスタイルでいく!ということは学びの当初から
伝えていました。子どもたちはテレビのニュースやドラマで、学会発表にパワー
ポイントが用いられているのを見たことがあるので、自分たちもパワーポイントで
発表する気満々でした。

小学生にパワーポイントを使わせるときに絶対に気をつけなければならないことが
あります。1つは、発表する中味、書かれた文章が大したものでなくても、体裁だけ
整うのでなんとなくよいものができたような気にさせてしまうこと。そして、もう1つ
は、先生が文を打ち込み、発表時も操作し、子どもが先生の操り人形となるような
発表をさせてしまうことです。

この子たちは、前回の「駄菓子屋経営」のテーマ学習で、パワーポイントを用いて
「経営報告」をしたことがあり、パワーポイントのスライドの作成方法、操作方法を
理解していました。したがって、あと彼らに確認することは、

“中味”!つまり、どんな内容をどんな構成でまとめるか決めること

です。結局、これはパワーポイントを使おうが使うまいが発表においてもっとも
肝心な部分です。ここがバッチリ決まらなければどんなにIT機器を使ってもダメな
発表にしかなりません。

「まずはミッションだね」

今回の学びの「目的」となるミッションを知らせることが第一。次に、このミッション
を達成するために追究した「課題」は?それをどう調べた?理論的な裏づけは?
その理論にしたがってどんな実践をした?その結果、どんなことがわかった?
今後の展望は?というように、子どもたちと議論しながら、これまで行ってきたこと
を整理しました。「おっちゃんはチェック役でよい」と言い放っただけのことはあり、
話し合いはサクサクと進みました。

これでスライド全体の構成と流れが決まりました。あとは流れに沿ってスライドに
書く「文章」を作成してゆくだけです。

「課題は……えーと、ボールをどうすれば遠くに飛ばせるか?かな」

学習ファイルにこれまで書きためてきたノートを見直してある子が文章を作ります。

「飛ばすだとバットで打つみたいだよ。投げるの方がいいんじゃない?」

他の子がよりよい表現になるように建設的な助言をします。こんなやりとりを繰り
返し、3人で協力して、文章表現を磨いてゆきました。子どもが自律的に探究する
ようになると探究教師の役は、子どもの言う通り“チェック係”に過ぎません。

「順番は?」「ワンシートワンメッセージになってる?」「なんか足りないな?」
「もっとよくなるんじゃない?」

というようにフィードバックするだけです。

子どもたちがいちばん知恵をめぐらし、工夫したのは、自分たちの実践を通じて
発見したメカニズムをまとめるスライドでした。自分たちで撮影した動画をコマ送り
再生して静止画にしたものを、パワーポイントのスライド上に並べ、連続した動きを
見せました。スライドの上半分にメカニズムを意識する前の投球動作の連続写真、
下半分に記録を伸ばしたときの投球動作の連続写真を示し、上下を見比べて、
身体の使い方がどう違うか、分析できるようにしたのです。さらに、写真の一部を
拡大したり、見てほしい部分に矢印や〇を描いたりして、わかりやすく説明する
ために工夫されたスライドを作成してゆきました。

「ひじしか使っていない投げ方が、足で生んだ力を活かして身体全体を使った
投げ方に変わったんだよね」
「ひざの角度が、記録を出したときの方が小さいから、より軸足に力をためこんで
いると思うんだよね」
「ぼくは、他の人よりも手首のスナップをきかせている。だって、他の人は腕全体
がワイパーみたいに動いているけど、ぼくのは手首の部分だけ曲がってる!」

できあがったスライドを見ながら、子どもたちは、分析した結果到達した自分たち
なりの解釈を語り始めます。それは、自分たちが調べたことを「根拠」にして、
身体のメカニズムを「意識」して動かした結果、創り出した「オリジナルの知」です。

スライドがすべて完成したとき、子どもたちの頭の中はさらに整理されました。
したがって、改めて、細かく発表練習する必要はありませんでした。覚えた知識
ではなく、自ら創り出した知識を発表すればいいのですから当然と言えば当然
でしょう。子どもたちは、自信を持ってテーマ発表へと臨みました。

RI

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気象データを活用して天気を予測する

[5年生]


テーマ「明日天気になーれ!」も最終週。
発表会に向けて動き出しました。


今回のテーマでは、ポートフォリオの作成も重要視しました。
一人ひとりが6週間で学んだことの過程を自分の言葉で説明できるほど理解し、
しっかり丁寧に記録できているかどうかが問われます。
そのため発表においても、個人ごとに、
テーマ学習で何を学び、何を伝えたいか、そこからさらにわいた疑問、そして明日の天気予報を発表することにしました。


ここからの追い込みでどこまで力を発揮できるか。


s-PA058595.jpg  s-PA088653.jpg
前線、風の動き、空の色、台風、天気予報の仕組み(気象情報会社との比較)、高層天気図と、子どもたちが伝えたいことは様々。
全員がもっと知りたいこと・疑問に関して自発的に動いて情報を集めていました。
資料を見たり、インターネットを活用したり。
中には、民間の気象情報会社に電話をして質問したり、
気象庁を自ら訪問したりしていました。


そうして、発表会当日まで内容を練っていきました。


発表会本番では、発表時間が短く、話すことが限られ、
そのため、ポートフォリオ型の発表で重要であるテーマ学習全体のプロセスを詳しく説明することができませんでした。


しかし、発表の内容では、テーマ学習で学んだことや伝えたいことに加えて、
学んだ内容を天気の予測に役立てようとする様子が伝わりました。


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「気象データだけではなくて、人間の目も予測には必要。」
「台風の進路についての知識があれば、台風が起きた時にどの方向に進むのか予測できる。」
「天気の予測には、地上天気図だけでも不十分で、加えて数種類もある高層天気図を重ねて見ることが必要。」


彼らの発言から、このテーマ学習のミッション「気象データを見比べ、大気と水の動きを見ることで、天気を予測する。」を意識していることが分かります。


個人による発表でとても緊張していたようですが、
明日の天気予測に関しても自分なりに論を付けて説明できていたことは、
テーマ当初に比べれば格段の成長と言えると思います。


今回のテーマ学習のように、
今後もファイルに自分でも振り返られるような学びの軌跡を残しておく事、
そしてミッションを意識して、そのことに関係しそうな疑問を追究していく学びをしていって欲しいと思いました。


EN


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「変わったもの」と「変わらないもの」

[4年生]

いよいよ最終週。
年表ができあがり、貼り出しました。
それは、壁一面覆い尽くす量になり、その100年の歴史の深さを感じさせます。
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その年表を見ながら、深く歴史を探っていきました。
「年表を見比べて、変わってきたものって何?」
と問いかけると、

「流行している歌は、変わっている」
「戦争中は、軍歌がはやっている」
「最近の曲は踊れるような感じの曲」

「給食も戦争中は、一品。物がなかったから少ない」
「戦争前の方が、二・三品ぐらいで多いな」
「戦争の後は、どんどん栄養がよくなっているよ」

その他のことで「変化したもの」に関して、探っていきました。
変化してきたものでは、歴史が移り変わり、少しずつ変化してきたことから分かりやすく見つけやすい。

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「変わらないことってあるのかな?」
と問いかけると、

「人がいるのは変わらない」
「歌があることって自体は変わらない」
確かに。

でも何かみんなをあっと言わせるような、発見はなかなか見つかりません。

いろいろと議論をしているところで、

「ヨーヨーというのは、ときどきブームになっているな」
「ハイパーヨーヨーって新しくなってるけどね」
「そういえばベーゴマもベイブレードになった?」

「あそびのゲームとかをして楽しむことは変わってないな」
「どうしていつの時代もあそぶのかな?」
「楽しいからに決まってる!」

深く深くその歴史で共通していることを見て分析すると、いつまでも続いていたり、時折ブームになるような要素、内面のことは変わらないことが出てきました。

それからは、発表に向けての原稿作りとスライド作りに追われました。
まずは、自分たちの伝えたい歴史を選び出し、スライドを作り、順番を考え、
原稿を作り、さらにもっと良くなるようにと推敲していきました。


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PA083945.jpgずっと根気のいる作業で、何とか発表会に間に合いました。


いよいよ本番。
発表会では、家族の歴史とその他の歴史が移り変わっていくところを映し出し、さらにスライドを流しながら、その当時を代表する音楽を流していきました。

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家族のエピソードを交えながらの発表は、時々、笑いもおき、そして「なるほど」というような声も聞こえ、とても和やかな雰囲気で終えることができました。



TK


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なぜ水は大切なのか?

[1・2・3年生]


テーマ「水知らずにはいられない」も最後の週を迎えました。
発表に向けて時間との勝負になりました。


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まとめる内容は、次の三つに決まりました。
1、【沈澱】から【消毒】までの水をきれいにする工程。
2、今回知った、水をきれいにするのに使われるもの。
   【微生物】、【砂ろ過】、【薬(凝集剤)】
3、私たちの生活での水の使用量。


「写真はどれを使おうか?」
と、ある子は使える写真を選び始める。
水再生センターと浄水場でもらった資料の中と
デジカメで撮ってきたものを丁寧に見てゆく。
中から、災害時(震災時)用の仮設トイレ、
浄水場にあった砂ろ過装置の模型などをピックアップ。
どのような配置にするかを考える。


同じ模造紙に別の子は、水をきれいにする工程の図を書き始めている。
後で説明を加えるようだ。
各自が役割をこなすべく動き出す。

「水をきれいにするのに使われるものだけをまとめてみよう。」
の提案で、別の模造紙に、【微生物】と【砂ろ過】については簡単に図説、
【薬(凝集剤)】については浄水場での実験の写真を掲載し、まとめる。

「詳しくやりたい。」という声が多かった微生物については
【アルケラ】、【ペラネマ】【マクロビオツス】
の三種類を細かく写生し説明文を付ける
という作業を短時間で仕上げてしまいました。


その間に、各自発表で行うコメントの内容を考えたり、
水調べで集めた数字を整理したりで、時間を奪われる。
そのために、ペットボトルでの砂ろ過の実験に
充分時間をかけられないという状態に陥る。

PA068642.JPG  PA068649.JPG

男の子たちだけで、放課後におこなった実験は
あまりうまくいかず、結局、発表することになったのは、
よりきれいな水を作れたことから、
次の日女の子が、一人でおこなった実験の様子になりました。

水の使用量のまとめは、1日一人当たりの量を求めることに苦戦し断念。
適切な量の算出方法を提示しきれなかったことが悔やまれます。


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発表の練習も本番までに数回のみ。
そんな中、彼らのできはわるくは無かったと思います。
彼らの成長を感じました。


発表の最後に
「水はとっても大切。」
といってくれた子がいましたが、
私たちが使う水の多さと、水をきれいにすることの大変さを
彼らはどれくらい実感できたのだろうか。
なぜ「水は大切なのか?」の問いに
どれくらい迫ることができたのか。
多少の疑念を残しつつ今回のテーマを終了しました。



TY


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2010年10月15日

「Body and Soul」~ふりかえり

[6年生]

・合格!競技会で記録を伸ばせ!
・これまでで最高の部類に入るプレゼンだった。
・ポインターも使いこなし、自分の言葉でしっかり説明しているところから、いかに
自律的に追究しているかわかった。

参加者のフィードバックの通り、子どもたちは本当に素晴らしい発表をしました。
テーマ発表恒例の「大人からの質問」にも、パソコンを手際よく操作して、その質問
に関連するスライドを再度映し出して答えようとする……質問内容がはっきりしない
場合は、もう一度質問内容を確認する……鍛えるべき筋肉についての質問が来る
かもしれないと想定して作成していた資料を、案の定、その質問が来たときに用いて
説明する……立派な「学会発表」になりました。

しかし、子どもたちは、この発表は「中間発表」に過ぎないということもしっかり自覚
しているところがさらに素晴らしい!のです。「終わりが始まり」というのがテーマ学習
の合言葉。テーマ発表翌日の「ふりかえり」では、もっとよくしたい!という観点で、
2つのことを考えました。1つは、今回の発表でいまひとつ聴衆に伝わらなかった部分
を再検討すること。そして、もう1つは、11月に行う記録会で記録を出すために
どのようにトレーニングするかということでした。

まず1つ目の点については、「力=質量×加速度」というニュートンの運動法則と、
身体で生み出した力をうまく伝えるための連続的動作であるキネティックチェイン
とがどうつながるのか、いまひとつ聴衆に伝わらなかったところが最大の反省点
でした。もしかしたら、まだ理解していないのでは……という疑念を聴衆に持たせて
しまったことが子どもたちは悔しかったようです。

ボールを放すときに力を加えるということは、ボールの初速を上げるということで、
ボールを放したときの初速が上がればそれだけ飛距離は伸びる。そう伝えたかった
のに、うまく説明できなかった……しかし、それも現状の実力です。さらに説明の
精度を上げるべく今後も精進また精進です。

失敗は学びの種!しっかり「ふりかえり」、前向きに再スタート!です。

ボールにより多くの力を与えるためにキネティックチェインを意識する……
その結果、ボールの初速が上がり、飛距離が出る……
このことを検証するためには、腕のふりのスピードを計測し、ボールにどれだけの
加速度を加えたかを調べればいいかも……
子どもたちは、改めて丸山先生から聞いた話を思い出し、新たな追究のタネを
見出したようです。

記録会に向けては、故障しない投げ方、準備運動と運動後の身体の管理も
考えて練習しようということになりました。

子どもたちは、テーマ学習の追究サイクルを自覚し、いままで以上に追究計画を
しっかり立て、また、追究すべき問いを明確にして地道に進んでゆきました。
決して先生から言われたからではなく、自律的にやりきったことが、今回のテーマ
学習の最大の成果であり、評価ポイントでしょう。

「知を活用して知を創る」探究学習を子どもたちは見事に実践しました。


RI

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「明日天気になーれ!」ふりかえり

[5年生]


本テーマのミッションは、
「気象データを見比べれば、大気と水の動きが見えてきて、天気を予測できる。」
ということ。


このミッションを意識できなければ、
気象庁を訪れること、
毎日天気図を見比べること、
観測器具を作って観測をすること、
雲や風を生じさせる実験をすることなど、
一つひとつの活動の必要性を理解して探究することができません。


子どもたちは、時間を重ねるに連れて、
このミッションを意識することができるようになりました。
子ども自身がミッションを意識しているかどうかが、
テーマ学習を動かす鍵になると感じました。


天気予測の精度を上げることもとても大切なのですが、
予測の当たり外れに一喜一憂することなく、
外れたならどうして外れたのか「振り返る」ことが重要ですし、そのことを続けることで予測の精度を上げることができます。
子どもたちは、気象データを読み解き振り返ることを続けることで、
「前はこうだったよね。」と以前の経験を予測に活かすことができるようになりました。


気象予報士でも、予報が外れることはありますし、
私たちが普段触れることのできる気象データ(地上天気図などの)では情報としては不十分で、正確な予測をすることはとても難しいことです。
それでも、このテーマ学習をする意義は、
「情報を統合して多面的な視点により分析できる力を養える」ところと言えるのではないでしょうか。


また、ポートフォリオの作成も子どもたちはよく頑張ったと思います。
他者が見ても内容が分かるレポートができていれば、作成した本人も内容を理解しているし、
その逆もあることがよく分かりました。
中には、自分の言葉で記録しまとめることができた子もいました。


この「情報を分析する力」・「ものごとを多面的に見る力」と、
そして学びの軌跡を自分の言葉でまとめる経験は今後のテーマ学習でも役立つでしょう。


EN


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源「自」物語はこれからも続いていく ~ふりかえり

[4年生]
発表会も終わり、ふりかえりです。

みんなに書いてもらったふりかえりシートを見ていきました。

「流行歌やおもちゃ、高層建造物という独自の視点から100年の歴史を調べたことが面白かったです。」
「変わったことと変わらないことの分析が良かった。」
という声がありました。

自分たちのやってきた源「自」物語のよいと思うところに関していろいろと書いてありました。

しかし、それ以上に重要な点は、むしろ「こうした方がよいのでは?」など改善点を指摘されたときに
そこから学ぶことが多いのです。

今回もそのことについて議論をしていきました。
「戦争が終わった後の給食とそれまでの給食は何が違うのか?なぜ違うのか?なぜ脱脂粉乳?」
「これは、年表で調べているときに描いてあったよね」
「発表に入れないとこ」
発表でしか、みんなの前で伝える機会がないので、調べたことも発表で伝えなければ、伝わりません。

内容ももっとよくするためにはということを考えていきました。

さらに、
「歴史の流れと人々の気持ちで変わるもの、変わらないものがあるのは、なぜ、どうして?」
という質問があり、そのような見方もあるのだと、深く見ていく大切さを学びました。


今回のテーマでポイントになっていたインタビュー。
そのことについて振りえかえりました。
「プレゼンテーションの方法を考えていく」
ということはこれからの学びに重要になったきます。

家族のインタビューに関して聞いてみると、
「難しかった」

その原因を探っていくことにしました。
うまくいかなかったことから、学んでいかなければなりません。

「質問をどのようにしたらよいか分からなかった」

今回はできなかったこともそこから学ばないと進歩がないということで、
うまくいかなかった原因はどこにあるのかを探っていきました。

どのように話をしたのかを聞いてみるとある問題点が浮き彫りになってきました。

どうやら一方的に質問をしてしまい、どのような趣旨でインタビューをしていないことが
大きな原因のひとつのようです。
そのことを伝えて、依頼をすることもとても大切であることを学びました。

しかし、それで果たしてうまくいくのか?

今後実践してみたときに問われてきます。
そこでうまくいかなかったらまた考える。
うまくいったならさらに磨きをかけていく。

学びは決して終わりません。

同じように自分の歴史はこれから続いていきます。

そこで世の中はどうつながり、どう変わっていくのでしょうか?
源「自」物語の探究は終わりません。




TK


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「水知らずにはいられない」~ふりかえり~

[1・2・3年生]

テーマ発表会が終わり、ふりかえりです。

授業中に溜めた雨水を
「ちょっと飲んでみよう。」
と一人の子の提案に、
みんなでほんの少しずつ飲んでみた。
「けっこうおいしい。」
「ぜんぜん問題ないよ。」
という子供たちの反応だった。
しかし、彼らの表情は不安げで、どこかで、
「雨水や川の水をそのままでは飲んで大丈夫?」
と思っていたようです。


そんな彼らは、二つの水処理場へ出かけ、
自分たちの使う水だけでなく使った水も
人の手できれいにされていることを知りました。
また、水をきれいにする仕組みや
微生物、砂ろ過、薬品が水の浄化に
使われることも知りました。

一人の子は、発表会で
「微生物が汚れを食べて、体が重くなると底に沈むから」
きれいな水と汚れが上下に分離することを
説明できるまでになりました。
ただし、その発表会では、
「きれいな水と飲むことができる水をどう見分けるのか?」
という新たに追究すべき課題もいただきました。


「けっこうあるね。」
これは、全員でスクールにあるお風呂の水量を測った時に、
数人の子から出た声です。
隣にある洗濯機に、2リットル入りペットボトルを使い、
洗濯用の60リットル、すすぎ用の60リットルと
2回に分けて計120リットルを運びました。
何度も何度も往復しました。
それでもなお、お風呂にかなりの水が残り、
思わずもれた感想でした。
これで、普段私たち使う水の量の多さを
少し感じられたようです。


残念だったのは、自分たちの手で行う砂ろ過の実験を
思ったようににできなかったことです。
試行錯誤を繰り返すことで、
水をきれいにすることは決して簡単なことではない
と充分に体感することができませんでした。
そのため、やりきったという感じを持てない子もいました。
今回の「水知らずにはいられない」のテーマ学習は終わりましたが、
学びそのものは続きます。
機会を見つけ、実験に再チャレンジしてみるのも
意義あるものになるはずです。




TY


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2010年10月21日

「個の尊厳」~概要~

[5・6年生]

タイトル:個の尊厳
探究領域:自主自律

私たちはみな個の尊厳を持って生きています。
それは、みんなが「かけがえのない存在」であるということを意味します。
誰であろうと、どんな事情があろうと、個の尊厳を犠牲にすることがあってはならない……
しかし、現実社会は、すべての人々の命の尊さを保つのは無理と言わんばかりに、
競争の勝者のみが生きる権利があるかのようです。

今回のテーマでは、そんな世の中の姿に異議を唱え、
私は、決して私のためだけに生きているのではなく、私たちすべてのために生きている
という「証」を探す「哲学の旅」に出ます。

そのために、まず、私たちにとって不可避な「死」の「現実」を直視します。
「死」とはどういうことなのか?「死」によって私たちはどういう事態に直面するのか?
追究します。

そして、「死」があるからこそ見出せる「生」の意味について考えてゆきます。
「死」は「生」と不可分であり、「死」を「生」の「鏡」とすることによって
人はなぜ生きるのか考える糸口とします。

理不尽に訪れる「死」と同様に、実は「生まれる」ことも自身の選択によって生じた結果
ではありません。しかし、自己の選択を超えた大きな意味がそこにあるからこそ、
何かにとらわれることなく、ただ生きるだけで素晴らしいのだ!
という価値観の構築を目指して、白熱した議論と思索を繰り広げてゆきます。

RI

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「てこでも動かない?」~概要~

[4年生]


タイトル:てこでも動かない?
探究領域:万象究理

ハサミ・栓抜き・エレベーターなどなど・・・私達の身の回りには
暮らしを便利にしてくれるものがたくさんあります。
毎日、当たり前のように使っている道具ですが、よーく考えてみましょう。
なんでこんなに便利に使うことができるのでしょう?

今回のテーマ学習では、こうした身の回りにある道具に隠されている
「てこ」「歯車」「滑車」「りんじく」などの仕組みを実験を重ねることで、小さな力でも大きな力を生みだすその仕組みや重さと長さの関係性を探っていきます。

さらに、その知識を活かして、自分達で模型を作り、実際に小さな力で大きな力を生み出すにはどうすればよいのかを試行錯誤していきます。
「こうだからこうなるだろう」と仮説を立て、検証をし、うまくいかなかったらその原因を探り、仮説が実証されたら、さらにもっと高めるために考え、そこから新たな仮説を立て、検証する・・・。
その繰り返しの中で、より小さな力でより大きな力を生み出すには考えていきます。



TK


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「からだに栄養、こころに栄養」~概要~

[3年生]

タイトル:からだに栄養、こころに栄養
探究領域:自主自律


「時空因縁」「共存共生」に続き、
3年生が今回学ぶ探究領域は、「自主自律」です。
タイトルは「からだに栄養、こころに栄養」になります。


健康であることは、私たちが生きていく上で最も大切なことの一つ。
私たちが日頃、あまり落ち着いて考えることが無いテーマを
取り上げました。

最初はまず、食べることに注目し、
「どんなものを食べているか?」
「食べたものはどうなるのか?」
の問いをたて、食事と栄養そして消化について調べを進め、
栄養のバランスと健康について考えてみます。


そして、そこから
「健康とはどんな状態のことなのか?」
「健康はからだだけで良いのか?」
「こころが健康であるためには?」
といった問いへとつなぎ
「健康な状態になるためにどうすべきなのか?」
「その状態を保ち続けるにはどうすべきなのか?」
といったことを意識とからめて追究していきます。



TY


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「心に響け」〜概要〜

[1・2年生]


タイトル:心に響け
探究領域:意思表現


「ひとを大切にする」、「自分を大切にする」、「ものを大切にする」というスクールで大切にしている3つの約束。
言葉ではその意味を理解していても、時に守れていない言動が起きてしまうことがあります。


「どうしたら、いいのだろう?」


本テーマでは、言葉では理解していることを言葉以外の方法で表すことに挑戦します。
違う方法で表現することで、相手(あるいは自分自身)とのより深い理解と共感に繋がると考えるからです。
しかし、表現するには、表現したいことを「解釈」していないとできません。
そのため、表現する前にはものごとの「解釈」にこだわります。


まずは、現地・現物・現人に出逢い、多様な表現方法に触れます。
そして、表現したいことを表現するために最適な表現方法を選び、
表現したいことを深く「解釈」してから、
心に響くような表現となるよう自分の表現をとことん磨きあげていきます。


EN


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2010年10月22日

不老不死は幸せか

[5・6年生]

「今回のテーマでは死を探究するわけではない」

このことを初回の授業で一番強調しました。確かに、「死」について追究を進めて
ゆくのですが、それはゴールではありません。ちょっと扱い方を間違えると、興味
本位、面白半分に「死」を取り上げることになりかねません。単に恐がらせたり、
気持ち悪がらせたりするために「死」について考えるのでは毛頭なく、私たちが
「生」の意味をつかむために、誰もが避けることのできない「死」の「現実」を直視
するのだということをしっかりと伝えました。

「テーマタイトルは何?」
「個の尊厳だよ」
「???」

死ぬことが生きることとつながっていそうだ……という説明までは、なんとなく
わかったような顔をしていた子どもたちでしたが、「個の尊厳」と言われるとまったく
ピンと来ない様子でした。

「個の尊厳という言葉の意味について今つかめなくても全然構わない。ただ、なぜ
人は死ぬのか考えても、絶対に正解はでない。そんなことを必死に考えて、考え
抜くことが今回のテーマなのだ。だからどうか頭に思いっきり汗をかいて、ついて
きてほしい」

ミッションの中味はつかみ難いものの、ミッションの厳粛さと取り組まざるを得ない
永遠の課題であるということは、子どもたちの胸に深く刻みこまれたようでした。
これまでにない「重い雰囲気」のすべり出しとなりました。

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学びへの「心構え」を示し終えたところで、いよいよ「死」について個々にイメージ
マップを書いてもらい、子どもたちの既有知識を探る作業へと移ります。まず、頭と
気持ちの柔軟体操として、

「ずっと死なない方がいいと思う人はいる?」

とたずねてみました。するとだれも手を挙げようとしません。みな悩んでいる様子
です。しばらくするとある子が

「苦しまなければならない状態でずっと死ねないのはつらすぎる……」

とつぶやきました。その声に呼応して、別の子が、

「自分のことを愛してくれている人とか、反対に自分が愛している人がいなくなって
自分だけ生きているのはいやだ……」

という意見を述べました。

この後、やがて死ぬとは、時間に限りがあるということで、だからこそ、生きている
うちに精一杯がんばろうという張り合いが生まれるのではないか、という結論めいた
発言も出てきました。

「マンガには不老不死ってよく出てくるんだよね」
「でも、ただ不老不死でもやだな。病気で苦しんでも、怪我させられても死なないん
じゃかえってつらい」
「自分の理想の年齢で止められて不老不死ならいいんだけどな」
「無病で、幸福で、友達も親しい人もみんな生きていて、理想の年齢で止められて
……不老不死ってけっこう条件があるんだな」

「結局、時間が止まっているっていうことじゃない。それじゃあきっとつまらないと思う」

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不老不死は果たして幸せか……学びの開始早々、子どもたちの議論は核心をつき
始めました。生きることは「動いていること」「変化していること」。しかし、死は「止まっ
ていること」「変わらないこと」とするならば、ある一点で止まり、波風がないことは
「生」とは言えないのでは……

素の意見を言いながら、ただ茶化しただけのふざけた話し合いに堕さず、かといって
優等生的な本音を隠した無味乾燥なものにもならない。テーマ学習で培ってきた
“ディスカッション力”に驚かされました。

このような議論の果てに、いざ、イメージマップ作り。「死ぬってどういうこと?」
という問いかけに対し、子どもたちは、集中し、黙々と書き続けます。スイッチが
入った感じです。30分ほど経過したところで終了し、みんなで書いたことをシェア
しました。

動かない、葬式、会えなくなる、息をしない、片道切符、すべての器官が止まって
しまう、火葬する、お墓、真っ暗な世界、冷たい……

「なんでお葬式のときに記念写真を撮るのかな?」

1年半前、お母さんを亡くし、肉親との死別を経験した子がつぶやきます。お棺の
中を撮影したり、祭壇の前でみんなで写真を撮影したりすることにどんな意味が
あるのか……その子は、今だからこそ、その時に口に出せなかった本心を思わず
口にしたのでしょう。他の子どもたちも、みな彼のお母さんの葬儀に参列しており、
身近な人の死について鮮烈な記憶がありました。その共有体験を出発点にして
いるからこそ、子どもたちの議論とイメージマップ作りは、「本気」になったのだろう
と感じました。「死」を「わがこと」としてとらえる地盤が既に築かれていたのです。
それゆえに、さまざまな本質的な疑問が子どもたちから出されました。

「なぜ毎日、多くの人々が死んでゆくのに、一人ひとりを大切に送ろうとすることを
やめないのか?」
「生きていても死と同然のことはあるのではないか?」
「死とは結局、無なのではないか?」
「時間と空間が消えてしまうことが死では?」

これらの「問い」を深めてゆくためには、まず、「死」の「現実」について知ることが
必要です。そこで、遺体修復を行うエンバーマーであり、残された遺族のグリーフ
ケアに携わっている橋爪謙一郎さんをインタビューします。より深いインタビューを
行うために、予備調査として、橋爪さんはどういう人で、どんな仕事をしているのか、
橋爪さんをモデルにしたテレビドラマや著書を通じて調べてゆきます。

RI

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小さなチカラで大きなチカラを生むもの

[4年生]

「てこでも動かない?」
と題名を聞くと、「やったことあるよ」という声。
まずは、どんな知識があるのかをどんどんと出していきました。

「支点と力点と作用点ってあるんだよ」
“てこ”とはどういうものかということをホワイトボードに絵を描いて説明してくれました。

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「力点と支点が近い方が重くなるんだよ」
「違うよ。逆だよ」
よく分からなくなったようで、
実際に消しゴムと定規で実験をし始めました。

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てこの原理を利用したものにはどういうものがあるのかを探し出しました。
「ここが支点、ここが力点、ここが作用点、これはてこだ」
「ここが支点?これは作用点になるのかな?」
「これは、てこじゃないよ」
「なんでてこじゃないの?」
「だって・・・」
議論を戦わせていました。


しかし、説明するのに誰もが分かるように伝えるにはまだまだ。
ここにはしっかりとした知識が必要なことが浮き彫りになってきました。


実際に小さな力で大きな力にしていくものを体感しようということで科学技術館へ行きました。
ここで小さな力から大きな力を生み出すものを探していきました。

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滑車を利用して、車を持ち上げるもの
歯車をたくさん組み合わせて大きい力にするもの
歯車を組み合わせて、動きを小さくするもの
綸軸の原理を利用して、力比べをするもの
などなど・・・。
たくさんの機械仕掛けのメカに触れることができ、思う存分に体感することができました。


次の日には、科学技術館で体感したことを振り返っていきました。

「これは歯車がいっぱい使われていた」
「歯車の数って力に関係あるのかな?」

「これは滑車が使われていたと思う」
「滑車の数も3個もあったよ」
「多い方が軽くなるのかな?」


振り返りをしているうちに、どういうところに焦点をあてて探究していくのかがだんだんと浮かび上がってきました。


「こっちの側の方が力が強かったな」
「きっと歯車が大きい方が力が強くなるんだよ」

「力も体重をかけると、力が入るよ」
「体重のかけ方にもよるんじゃない」
「でもジャンプして思いっきり体重をかけた方が力は入るよ」


「てこではやっぱり距離って関係あるんだ」
「支点、力点、作用点?」


議論の中で、
「ぜんぜん言っていることが分からないよ」という言葉も聞こえ、
それでも、根気強く説明するという事を繰り返していて、
相手が分かるように伝えることの難しさを感じているようでした。

今回のテーマ学習の探究領域は“万象究理”
科学的に説明することが大きな課題になります。


来週からは『どんな仕組みで小さい力が大きな力になっていくのか』を探究していきます。




TK


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「すべての食事を記録せよ」

[3年生]

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3年生の新しいテーマが始まりました。
タイトルは、「からだに栄養、こころに栄養」です。


教室に入ると、
「今度のテーマは何ていうの?」
元気な声が飛んできた。
「お~、元気だね?何だと思う?」
と返す。
「栄養かなんかでしょ?」
すでにどこかで情報を得ているらしい。
テーマのタイトルを知りたがる子を尻目に、
「何でそんなに元気なんだい?」
と話題を“元気”へと戻し、イメージマップ作りへ。

『犬をみたら』、『電車に乗る』、といった事から、
『台風の日』、という面白い意見まで、
元気をもたらしてくれるもの・ことがいくつか集まりました。
そして、こちらの思惑通りというか、当然のことというか、
食べることも、その中にありました。
これで、
「どんなものを食べているのか?」
という問いを投げかける準備は整いました。


毎週木曜日は、給食の日ということで
週に一回だけスクールの全員が同じ食事をとる日。
前日水曜日の授業で、今回の最初の使命
「すべての食事を記録せよ。」を伝えておいた。。

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「今日の給食で何を食べたか思い出してみよう。」
というこちらからの提案でこの日の授業がスタート。
メニューは、あじフライと付け合せのキャベツ、
ポテトサラダにごはんと味噌汁。


給食の時間二人とも、最後のほうでやっと手を付けた
味噌汁を思い出せなかった。
「他にもう無かった?」
というこちらの質問に
「何にも無かった。それで全部。」
と言い張っていた。


そこでこの授業用に余分に注文しておいた、
さっき食べたばかりの食事が登場。
びっくりしたような表情でそのあじフライやポテトサラダを
ながめていた子から、
「味噌汁を忘れてた。」の声があがる。


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その後、手分けしてそれぞれを分析。
一人の子がポテトサラダを担当。
中身の、ハム・きゅうり・人参を思い出せていたが、
玉葱と一番肝心ないもを忘れていた。
この子は、その後あじフライの衣を
箸とともに使った手を油まみれにしながら、
かなり長い時間分析を続けていた。


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もう一人の子は、味噌汁を平たい紙皿に移し,
少しだけ残っていた具材の豆腐とキャベツを確認していた。
最後に食事の記録の仕方を伝え授業を終えました。

食べ物をこのように扱うことは、めったにないからか、
二人とも楽しめたところもあったようです。


テーマ終了まで記録を続けるという大変な使命が、
二人を待ち受けます。
大きな成果を目指し最後まで頑張ろうね。




TY


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心に響くような表現とは?

[1・2年生]


「心に響け」第1週。


タイトル通り、「心に響くような表現の探究」を6週間かけて行っていきます。
表現するためには、まず表現する内容を「解釈」していないとできません。
本当に「解釈」できていれば言葉以外の方法でも表現できるはずです。


「表現」や「響け」の言葉の概念は1・2年生には難しいかもしれません。
けれども、本テーマではこの言葉を用いて、学びを進める中で子ども達の中にこれらの概念を育てて欲しいという思いで、敢えて子ども達にもこれらの言葉を使うことにしました。


導入として、「『表現』にはどんなものがあるかな?」と、子ども達に探るところから始めました。


「げき」
「サッカー」
「オーケストラ」


など、「表現」という言葉の意味を手探りながらも意見が出てきました。

スクールで大切にしている「3つの約束」があります。
「自分を大切にする」
「ひとを大切にする」
「ものを大切にする」


この約束に関しては、普段からスクールでも確認し合っており、
低学年の間でも、これらを守るためにどうしたらよいかということを今まで幾度となく話し合ってきました。


しかし、3つの約束の意味を言葉では説明できても、未だにものを壊してしまったり守れていない言動が見られます……。
子ども達もそのことを分かっていて、「意識を意識する」ことの難しさを感じているところでした。


そこで、
「この3つの約束を、みんなの心に響くように、そしてスクールのみんなの心にも響くように表現しよう。」と、この3つの約束を言葉以外の方法で表現するミッションを子ども達と確認しました。


そのための第一歩は「インプット」です。
選べるほどの表現方法を知らないと、表現することは困難だからです。
次の日から早速、どんな言葉以外の表現方法があるのか多様な表現に触れていきました。
「ドラマ」・「ミュージック」・「アート」・「ムーブメント」の大きく4カテゴリーに分けて探っていきます。
(もちろん、これらのカテゴリーが複合されることもあります。)


今週は、「ドラマ」と「ミュージック」。


「ドラマ」では、映画とミュージカルを鑑賞しました。


映画はチャップリンの無声映画を鑑賞。
短編映画を音無しと音有りで2回見比べてみました。


心に響くような表現とは?_0190年前の作品とは思わせないほどに、子ども達はチャップリンの世界にのめりこみ楽しんでいました。
そして、体の動き以外は少しの字幕と音楽しか使っていないのに、細かいストーリー展開まで捉えることができたことから、
言葉が無くてもストーリーを伝える力があることに子ども達は驚いていました。


ミュージカルでは、劇団四季の「赤毛のアン」を鑑賞。
3時間という長時間でさすがに疲れたようですが、最後まで投げ出さずに鑑賞できていました。
無声映画と違い、台詞あり・ダンスあり・音楽あり・豪華なセットや衣装ありという盛りだくさんな表現方法との対比が感じられたと思います。


そして、「ミュージック」。
TCSボランティアで音楽担当の通称あやちゃんのご協力の元、音を使った表現方法に触れました。
行った活動は大きく3つ。


一つ目は「からだと声を使って表現」(パントマイム)です。
動物なら動きと鳴き声、乗り物なら動きとエンジン音など、お題を他者に伝えられるように工夫することが必要です。
体現することを恥ずかしがったりする場面もありましたが、ものごとの特徴を捉えて相手に伝わるように表現できていました。


二つ目は「音楽を聴いてテーマを当てる」。
動物をテーマにした音楽を聴いて、どの動物をテーマにした音楽か当てるものです。
かっこうであれば音楽の中に鳴き声を表しているような演奏が聴こえたり、子ども達はよく聴いて動物の特徴を発見していました。


三つ目は「楽器を使ってものがたりを表現する」。
子ども達から出てきたアイデアを紡いで、
「ぞうとかめが出会って、けんかして、仲良くなる」というストーリーをつくり、ピアノや鉄琴、たいこなどを使ってそのお話を表現してみました。
最初はどうしたらいいか悩む様子も見られましたが、けんかするところはたいこを早いテンポで強く叩くなどの工夫が見られるようになりました。


心に響くような表現とは?_02  心に響くような表現とは?_03

表現に触れた後は、ふりかえりも行います。
子ども達には、「音だけでこれだけ表現できるんだ。」という発見がありました。


来週は、「アート」の表現方法に触れていきます。
作品から子ども達がどのような解釈をするのか楽しみです。


EN


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2010年10月29日

橋爪さんにインタビュー

[5・6年生]

アメリカでエンバーマーとしてのトレーニングを受け、その後、心理学も学び、
遺族のグリーフサポートの必要性を日本に広めようと精力的に活動なさって
いる橋爪謙一郎さん。橋爪さんの生き方から「死」の「現実」とはどういうこと
なのかを学ぶために、インタビューさせていただくことにしました。

子どもたちは、インタビューに先立ち、橋爪さんとはどういう人なのか、予備
調査をすることにしました。これまでもテーマ学習ではさまざまな人にインタ
ビューを試みてきましたが、知りたいことがある程度明確で、ピンポイントで
質問できるようなものでした。それに対して今回のインタビューの目的は、
橋爪さんの人となりを浮き彫りにすることです。したがって、質問してただ知識
を得られればよいというものではなく、橋爪さん自身が本質的なことを語りたく
なるようなきっかけとなる効果的な質問ができるかどうかがカギになります。
そこで、まず、手に入る資料で橋爪さんとはどういう人なのか調べ、そのうえ
で質問すべきことを考えることにしました。

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最初に、橋爪さんをモデルとした『死化粧師』という漫画をテレビドラマ化した
ものを見ました。内容は、愛するわが子を失い、生きる目標を失いかけた
母親が、主人公、間宮心十郎のエンバーミングによって、まるで生きているか
のように微笑むわが子と再会し、「笑顔がいちばん大事なんだ」と言っていた
わが子の思いを胸に生きていくことを決意するという話でした。

子どもたちがもっとも注目したのは、やはりエンバーミング処置を施そうとする
シーンでしたが、そのシーンも、しっかりと描写されているわけではなく、体内
の血を抜いて、化粧するらしいぞ……となんとなくわかる程度。出演している
役者さんの演技力と、橋爪さんが監修したであろうセリフに真実味があるので、
それなりのレベルを保っているものの、わざとらしくコミカルな部分を入れたり
するので、深みのあるドラマには仕上がっていませんでした。

「子どもが息しているのわかったね」

瑣末な部分やギャグっぽいセリフしかあまり残らなかったようでしたが、これは
子どもたちのせいというよりも、ドラマが「死」の「現実」を伝えきれていなかった
からでしょう。

次に、橋爪さん自身が書いた著書『エンバーマー』からの抜粋を渡しました。
エンバーミングをどのような手順で行うのか、それによってどんな効果を遺体に
及ぼすのか、そして橋爪さん自身がどういう思いでエンバーミングを行っている
のか、丁寧に読んでゆきました。

「エンバーミングと死化粧ってどう違うのかな?」
「橋爪さんは、エンバーマーやめようと思ったことあるのかな?」

DVDをただ視聴したときと異なり、著作を読み進めてゆくと、自然に「疑問」が
浮かんできます。

「いい質問だね。読んでいるときに気づいたことは全部メモしとけよ!」

所詮、テレビドラマは、強烈な映像イメージと単純な方向に誘導するストーリー
展開で「見せられている」だけ。文章は、自分でイメージをふくらませながら
読み解いてゆかなければなりません。その結果、有意義な「疑問」が自然に
出てきます。これをしっかりメモしておけば、橋爪さんの人生を浮き彫りにする
優れたインタビューにつながる、よい質問の源になります。

“本に書かれていること、調べればわかることを質問してもよいインタビューには
ならない。相手の本当の思いを引き出し、語ってもらうような質問を考えよう”

このことを合言葉に、それぞれが「質問」を考え、インタビューに臨みました。

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橋爪さんのオフィスを訪れた子どもたちは、記者会見風に、橋爪さんに「質問」
を投げかけてゆくことにしました。

「どんな化粧品でエンバーミングを行うのですか?」

やはり、どうしても気になるのは、技術的な面への「疑問」です。

「ご遺体は体温がないでしょ。冷たくてもうまくのびるように脂分とかを配合した
ファンデーションを使うんだよ。」

穏やかに答える橋爪さんの言葉に、子どもたちは、単に化粧品の成分の「知識」
ではなく、死体の冷たさという、「死」の「現実」を感じ取ります。

橋爪さんは、自らエンバーミングのときに使う道具も見せてくれました。

「えっ?これだけ……」

誰かがつぶやくと、すかさず橋爪さんは、

「大地震などの災害で多くの人が亡くなったような現場でこそ、エンバーミング
が必要になるんだよ。そんなときは最低限の道具を持ってかけつけなくちゃ
ならないし、完璧に道具がそろってなくても、あるもので工夫しないとね」

微笑まじりで語りながらも、そこにはプロフェッショナルとしての技術に裏打ち
された自信と使命感がにじみ出ていました。

「エンバーミングをするときにどんなことを心がけているのですか?」

「ぼくは、ご遺体も人間だと思っているから、処置している最中、ずっと話しかけ
ているんだ。対話している感じかな。そうすると、その人がどんな人生を送って、
どんなふうな姿で送られたいか見えてくるような気がするんだよ」

「自分が大事に思っている人でもエンバーミングしますか?」

「ううん……難しい質問だね。そこにいるのが私の妻です。妻はもし私が先に
死んだら私をエンバーミングしてほしいと言っているんだけど、私は冷静にでき
そうな気がしない……」

橋爪さんの人となりを浮かび上がらせる本質に迫る問いも子どもたちから続々
と出され、あっという間に1時間が過ぎてしまいました。

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「自分の死はどうにもならないけど、他の人の死のためにできることはある。
だからぼくは、亡くなった方と遺された方々のために全力を尽くしたい!」

「悲しいときは、頑張ったり、我慢しないで、思いっきり泣いていいんだよ。
弱くて構わないんだ!」

橋爪さんは、子どもたちに思いを語ります。

他の子の質問に対する答えまでメモしなかったり、集中力が持たず、質問
から派生して橋爪さんが語った重大なメッセージを聴き逃したりした子どもも
いましたが、意義のある質問を考えてきていたこと、橋爪さんから発せられる
答えを必死に記録していたこと、一問一答ではなく、インタビューを通じて
さらにわいてきた疑問を質問し、深めてゆこうとしていたことなど、全般的に
子どもたちはよくやりました。

次週は、インタビューの成果を活かすために、じっくりふりかえり、橋爪さん
から何を学んだかしっかりまとめることからスタートします。

RI

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てこの仕組みってなんだ?

[4年生]

今週は、てこの仕組み、原理を探るために、実験をしていきました。

ここでは、その事象ではどのような理が存在するのかを探究です。
まさに万象究理。
そこでは、論理を組み立てて、科学的に説明できないといけません。
誰にでも分かりやすく説明すること、その原理を伝えることとは難しいものです。
しかし、そのことが最後のテーマ発表で問われていきます。

てこの原理探るために、木の棒と紐を使って、“てこ”の装置を作り、
はじめに知っていたことでもあったので、その自分たちの確認していきました。

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「この場合は・・・」
てこの実験ということで支点の位置をずらすために、工夫をしていました。

てこのことに関して詳しく分かってくると
探してみると身近にあるものが出てきました。
小さい力を大きくしていくものは、世の中にいろいろと存在しています。

「はさみ」「ホッチキス」「プルタブ」・・・
などなど身近に使われているものが出てきました。

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「“ツメきり”もてこなのかな?」
「てこじゃないかな?」
「どこが支点、力点、作用点なのかな?」
「このところでしょ」
「なんで、そう思うの?」と問いかけると、
この『何でそうなるか』ということを説明できるということが万象究理という探究領域では重要です。

議論していると
「これ二つ組み合わせているのかな?」と鋭い意見が出てきました。
「なるほど、ということは・・・」
このことから、議論が動き、みんなの納得できる解を見出すことができました。

以前にこのテーマをやった先輩に聞いてみると、一番説得性のある解が出てきました。
さすがは先輩。


さらにてこの原理について探っていきます。
「力がつりあうときはどんなとき?」ということを考えました。
「力が同じならばつりあうはず?」
「では、距離が違った場合はどうやってつりあうのだろうか?」
「関係あると思う」
ということを議論して考えました。

そこで、実験の流れについて確認しました。
『まず分からない問題があり、そこから「こうなるだろう?」と仮説を考え、
それを検証するために実験をし、その結果をまとめて考察しその原理を探る。』

去年「あなただけに伝えたい」というテーマをしてきた4年生たち。
その法則性を見つけ、暗号を解くことを学んできました。
その経験から、「何か法則を探す」ということが身についているようで、どのような法則があるのかを仮説を立てました。
「重さと距離を掛け算をすれば、できるんじゃないかな?」
「なんで思いついたの?」
「そんな気がする」

というわけで次は実験で検証です。
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「ほらぁ!」
「やっぱりそうだ!」
と法則が証明され、その発見に喜びを感じていました。

ある子は頭を使い、つりあいの法則を分解して、おもりを分解して考え、
一つのおもりに対してつりあいが取れるようにおもりを置くということを考え出しました。

何回もやることで信頼性が深まり、
『おもりの重さ×支点からの距離』が実証されていきました。

それでは実際にその法則を使えないと知識としては役に立たないものであるということで
宿題でかなり難しい問題を出しました。

果たして法則を使い問題を解く事ができるでしょうか?



TK


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栄養士さんに訊いてみよう。

[3年生]

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2週目に入りました。
今週は外出の予定があります。
スクールの給食を作ってくれている救世軍を訪ね、
栄養士さんに話を伺ってきます。


その前に、週末の食事の記録をチェック。
「これで大丈夫?」
「結構しっかりできてるね。」
と記録シートに目を通す。
少しずつ記録することに慣れてきている様子。

それから、外出に向けての下準備に入りました。
先方には、子供のインタビューを先にして、
その後で、説明を加えていただく
という段取りでお願いしてあります。


そこで、質問の内容を考えておかなければなりません。
「何て訊けばいい?」
となかなかいいアイデアが浮かばない様子。
きっかけになればと思い、
料理・メニュー、食材についての説明を
軽く行ってみるも、あまり効果なく、生みの苦しみといった状態。
最終的には宿題になりました。


いよいよ、外出当日。
待ち合わせ場所は、救世軍ブース記念病院の
敷地内にあるカフェテリア。
少し早めに着き、15分ほど待つと
約束の時間に、女性の栄養士さんが到着。
挨拶をして、いよいよインタビューの開始。

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子供たちが事前に用意した質問は、全部で九つ。
「食べたものはどうなるのですか?」
と、緊張しながら最初の質問。
恥ずかしさからか、相手の顔を見ずに
訊き始めたので、
「ちゃんと正面を向いてインタビューしないと。」
と、こちらから一言注意。
しだいに正対して話ができるようになりました。


「どうなると思う?」
と、最初の質問を先方に問い返され、
「胃で消化される。」
と一人の子が答える。
「その後は?」
という問いには
「・・・」
と返答につまる。
すると栄養士さんは、
「胃で消化されると、腸へ運ばれて吸収されるの。」
と説明し、さらに
「では、吸収されるのは何かな?」
と問いかける。
「栄養?」
「そう、栄養だね。」

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今回担当していただいた栄養士さんは
子供向けに話をした経験もあるようで、
分かりやすく上手に説明を進めてくれる。
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その後、栄養・栄養素についての話を中心に、
栄養士さん達の食生活、お菓子や給食のことなど、
さまざまな質問に応えていただきました。
最後に、病院食やスタッフさん用の食事を作る
厨房の見学をさせてもらいました。

帰りがけ、日頃私たちも利用することの減った八百屋さんを見つけ、
お店の方にお願いし、写真を撮りました。

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翌日の授業は、インタビューのことを中心に振り返りを行い、
「食事の記録を、グループ別に色分けしてみない?」
と提案したところで終わりました。
来週は、栄養素についての調べを進めます。



TY


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表現を「解釈」する練習

[1・2年生]


テーマ「心に響け」第二週。


今週は「ムーブメント」&「アート」の表現方法に触れました。
それはテーマ学習の時だけではありません。
その時間を超えて、機会を作ることができるのがTCSの学びです。
コア・コンセプトである「解釈」に通ずる学びを行いました。


まず、目黒区洋舞祭にてバレエを鑑賞。
休日にも関わらず、ご家族の協力の元、実現できました。
そこでは、紫綬褒章受賞者石井漠氏の作品などを近くで鑑賞できる貴重な機会となりました。
数少ない音と体の動き・表情を用いて短時間でストーリーを伝えるというものでしたが、
「内容がわかりにくかった。」
と「解釈」するには難しかったよう。
しかし、「怖がらせる」という作品にある、子どもを驚かして怖がらせるというシーンについてよく覚えていて、
「こんな風に,怖がっている表情をして、急ぎ足で逃げて行ってた」
と、楽しんでからだで再現していました。



表現を「解釈」する練習_01アートの時間では、サウンドスケープに挑戦。
これは、聴こえたものを紙に描くという、
聴覚を使って、かたちがないものをかたちにすることの挑戦です。


表現を「解釈」する練習_02からす・鳥・車・人といったいろいろな音をキャッチして、点・線・丸など様々なかたちにして、時には色を変えて。
騒がしい音は濃く描くなどの工夫が見られつつ、全員が音を「解釈」して具現化することができていました。



表現を「解釈」する練習_03テーマ学習内では、「現地」に行き「現物」に触れました。
国立近代美術館を訪れ、ガイドの方によるギャラリートークを体験。
到着した子どもたちは、まず美術館の前にある竹のオブジェに興味を示します。


館内に入っても、子どもたちの興味を引きつける仕掛けがあります。
「壁にある四角のかたちは建物の中にいくつか隠れているよ。見つけたら教えてね。」
「4階にある絵には猫が16匹描かれているんだ。探してみてね。」


表現を「解釈」する練習_04国立美術館が制作した所蔵作品がカードになっているアートカード。
事前にゲームをして遊んでいたので、
「観たことある!」
「このカードの作品だ!」
と、カードに載っている作品を生で観れたことでよりアートに親しみを持っていたようでした。


表現を「解釈」する練習_05ある作品を前に、ガイドさんはこう問いかけます。
「何が見える?」


「つりざおが見える。」
「それってロープじゃない?」
「陽が当たってるから暑そう。」

表現を「解釈」する練習_06「日本人の顔に見えないなぁ。」
「漁をしながら旅をしている!」
「魚をつる作戦を考えているんだよ。」


いつ頃の作品で何を描いているかを知ることより、
まず、作品から何が見えるか、自分なりに発見をしたり想像を巡らす経験をすることが、「解釈」に繋がるのだと思います。
その一歩として、アートを間近に感じられたこの経験は有意義なものになりました。


振り返りは時間をかけてじっくり行います。
「体の動きだけで表現できるってすごいと思った。」という感想が子どもたちから出てきました。
だんだん「表現」という言葉が子どもたちの中で概念化され、ことば以外にも表現方法はあるのだという気付きが芽生えてきたように思います。


さぁ、来週も引き続き表現に触れることで、
表現には言葉以外にも多様な方法があること、
言葉以外の方法でメッセージを伝えることができることへの深い気付きへと繋げていきます。


EN


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