タイトル:ありがとうにありがとう
探究領域:社会寄与
セントラルアイディア:「私たちはおかげさまで生きている。」
というように、漢字に表して考えてみると深い意味が見えてきます。「かげ」だけでなく、そこに「お」と「さま」という言葉がくっついているのですから、とっても「ていねい」に表さないといけないことだとわかります。
「『お』は、『お』にぎりとか『お』ふろとか、いうように大事だよというもののうえにくっつけるんだよ」
「『さま』もえらい人につけるよ」
「おかげさまはすごいよね。『お』も『さま』も両方るいてるもん」
「お日様とかお月様とかお星様とか、宇宙のものに両方つくのが面白いよね」
「神様も仏様も『様』だけで、『お』神様とは言わないよ!」
「神様よりお月様の方が上なのか……」
「あれ?でも『お』かみ『さん』とは言うよね」
「おかみさんってお母さんだったり、お店の女の人に使う」
「やっぱりお母さんはえらいんだ」
いやあ、この話題だけで全然話が止まりません。やはり「ことば」の意味を深堀りしてゆくのは、それだけで好奇心をひきつけるものなのです。なのに、「国語」の授業ということで形式化された瞬間、つまらないものに変貌してしまうのです。
「ことば」への感度が高まったところで、「おかげさま」というのは、私たちを庇護してくれる、大いなる「陰」への感謝から発せられる言葉だということについて考えてゆきます。
「『ありがとう』って『ありがたい』っていう言葉からできたんだ」
こう一言発しただけで、
「どんな漢字書くの?」
という言葉が子どもたちから返ってきます。「かげ」を漢字に直して意味を発見していったのがよほど面白かったのでしょう。もう一度、同じことができるのではないかと興味津々というところでしょうか。
そこで模造紙に
有難い
と書きます。もちろん一年生が習っている漢字ではないし、結構「難しい」漢字です。
「どっかで見たかも……」
確かにどちらの字も日常よく使われるので、身の回りで見ているはずです。そこでいくつかこの漢字を使った言葉を並べてみます……
有名、有楽町
「ああ『ゆうらくちょう』だ!」
鉄の男子はすぐに反応します。もうひとつは「ゆうめい」って読むよ!と言った途端に、「ああ」という声がもれます(笑)。
「でも、『ゆう』とは読まなくて、これは『ある』と読む。もうひとつの漢字『難』は『しい』という送りがなをつけて『むずかしい』と読むんだ」
「あることが難しい=有難い」
そうか……あることがむずかしいってことはなかなかないんだ。めったにないことが「有難い」ということ。
「おかげさまは有難いっていうのは、おかげさまというときって感謝するときで、ああこんな よいことを私にくださいましてありがとうございましたという気持ち。それはなかなかないこと。あたりまえじゃない!っていうことだよ」
「ありがとう」と言うのは、「あたりまえじゃないんだ!」と高らかに宣言していること。誰かから親切にされたり、恩恵を受けたり、助けてもらったり……いやいや人だけじゃなくて、病気が治ったり、作物が実ったり、いい天気になったり、自然のすべてが私たちの「陰」として、目立たず支えてくれている。しかし、それは、あたりまえのことではない。なかなかないことが眼の前に起きているんだよということを常に常に、口に発する度に、思い起こさせることばが「ありがとう」だったのです。
「ありがとうって言う言葉を使うときって大変だなあ……」
ある子がつぶやきました。置き忘れてきた筆箱を誰かが持ってきてくれたとき、その子の顔も見ずに、ただそっけなく「ありがとう」とぼそっと言って受け取るだけ。ただ、それでもまだ「ありがとう」というだけマシかもしれない……ただ黙って無造作に受け取るだけかも。さらに悪くなれば、みんなお互いに無関心で人の忘れ物なんてわざわざ届ける人など一人もいない。
自分はそもそも「ありがとう」って言っていただろうか。言っていたとしてもただ反射として感謝の気持ちのかけらもなく発していただけではないか。
「そんなにみんな悩むことないよ。だって、ありがとうなんていちいち言わなくたって、君たちのために何かをしてくれる人はいるんだからさ。構わないじゃん」
出た、おっちゃんの「挑発」!だという顔で私のことを見ます。一年生諸君もだいぶわかってきましたねえ。
そんなわけないに決まってるじゃん……でも、現状、そうなってるから痛いところつかれたなあ……
「おかげさま」の意味も、「ありがたい」の意味もわかった。それが「あたりまえ」じゃないことも「知っている」。でも、「あたりまえ」だと思って普段行動していて、全然、おかげさまの気持ちもありがとうの気持ちも伴っていない……じゃあどうすればいいのだろう。そもそもどんな「ありがたさ」の中に生きているのだろう。この2つの疑問についての探究が始まります。
RI
※TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。
探究領域:社会寄与
セントラルアイディア:「私たちはおかげさまで生きている。」
[1年生]
「おかげ」は「影」、「おかげさま」は「陰」というように、漢字に表して考えてみると深い意味が見えてきます。「かげ」だけでなく、そこに「お」と「さま」という言葉がくっついているのですから、とっても「ていねい」に表さないといけないことだとわかります。
「『お』は、『お』にぎりとか『お』ふろとか、いうように大事だよというもののうえにくっつけるんだよ」
「『さま』もえらい人につけるよ」
「おかげさまはすごいよね。『お』も『さま』も両方るいてるもん」
「お日様とかお月様とかお星様とか、宇宙のものに両方つくのが面白いよね」
「神様も仏様も『様』だけで、『お』神様とは言わないよ!」
「神様よりお月様の方が上なのか……」
「あれ?でも『お』かみ『さん』とは言うよね」
「おかみさんってお母さんだったり、お店の女の人に使う」
「やっぱりお母さんはえらいんだ」
いやあ、この話題だけで全然話が止まりません。やはり「ことば」の意味を深堀りしてゆくのは、それだけで好奇心をひきつけるものなのです。なのに、「国語」の授業ということで形式化された瞬間、つまらないものに変貌してしまうのです。
「ことば」への感度が高まったところで、「おかげさま」というのは、私たちを庇護してくれる、大いなる「陰」への感謝から発せられる言葉だということについて考えてゆきます。
「『ありがとう』って『ありがたい』っていう言葉からできたんだ」
こう一言発しただけで、
「どんな漢字書くの?」
という言葉が子どもたちから返ってきます。「かげ」を漢字に直して意味を発見していったのがよほど面白かったのでしょう。もう一度、同じことができるのではないかと興味津々というところでしょうか。
そこで模造紙に
有難い
と書きます。もちろん一年生が習っている漢字ではないし、結構「難しい」漢字です。
「どっかで見たかも……」
確かにどちらの字も日常よく使われるので、身の回りで見ているはずです。そこでいくつかこの漢字を使った言葉を並べてみます……
有名、有楽町
「ああ『ゆうらくちょう』だ!」
鉄の男子はすぐに反応します。もうひとつは「ゆうめい」って読むよ!と言った途端に、「ああ」という声がもれます(笑)。
「でも、『ゆう』とは読まなくて、これは『ある』と読む。もうひとつの漢字『難』は『しい』という送りがなをつけて『むずかしい』と読むんだ」
「あることが難しい=有難い」
そうか……あることがむずかしいってことはなかなかないんだ。めったにないことが「有難い」ということ。
「おかげさまは有難いっていうのは、おかげさまというときって感謝するときで、ああこんな よいことを私にくださいましてありがとうございましたという気持ち。それはなかなかないこと。あたりまえじゃない!っていうことだよ」
「ありがとう」と言うのは、「あたりまえじゃないんだ!」と高らかに宣言していること。誰かから親切にされたり、恩恵を受けたり、助けてもらったり……いやいや人だけじゃなくて、病気が治ったり、作物が実ったり、いい天気になったり、自然のすべてが私たちの「陰」として、目立たず支えてくれている。しかし、それは、あたりまえのことではない。なかなかないことが眼の前に起きているんだよということを常に常に、口に発する度に、思い起こさせることばが「ありがとう」だったのです。
「ありがとうって言う言葉を使うときって大変だなあ……」
ある子がつぶやきました。置き忘れてきた筆箱を誰かが持ってきてくれたとき、その子の顔も見ずに、ただそっけなく「ありがとう」とぼそっと言って受け取るだけ。ただ、それでもまだ「ありがとう」というだけマシかもしれない……ただ黙って無造作に受け取るだけかも。さらに悪くなれば、みんなお互いに無関心で人の忘れ物なんてわざわざ届ける人など一人もいない。
自分はそもそも「ありがとう」って言っていただろうか。言っていたとしてもただ反射として感謝の気持ちのかけらもなく発していただけではないか。
「そんなにみんな悩むことないよ。だって、ありがとうなんていちいち言わなくたって、君たちのために何かをしてくれる人はいるんだからさ。構わないじゃん」
出た、おっちゃんの「挑発」!だという顔で私のことを見ます。一年生諸君もだいぶわかってきましたねえ。
そんなわけないに決まってるじゃん……でも、現状、そうなってるから痛いところつかれたなあ……
「おかげさま」の意味も、「ありがたい」の意味もわかった。それが「あたりまえ」じゃないことも「知っている」。でも、「あたりまえ」だと思って普段行動していて、全然、おかげさまの気持ちもありがとうの気持ちも伴っていない……じゃあどうすればいいのだろう。そもそもどんな「ありがたさ」の中に生きているのだろう。この2つの疑問についての探究が始まります。
RI
※TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。