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すべては「おかげ」

タイトル:ありがとうにありがとう
探究領域:社会寄与
セントラルアイディア:「私たちはおかげさまで生きている。」

[1年生]

一年生ももう少しで二年生。成長著しい時期を迎えました。最初は、思いを素直に語ることができなかったり、いたずらに他者を攻撃してしまったり、ただぼーっとしてしまったり。それが今では、

「えっ、おっちゃん、もう終わっちゃったの?」

90分ずっと語り合うことが「タスク」ではなく、自分の思いを吐露する時間になっているからノンストップで終わってしまいました。

1年生だって、というか、子どもって、語りたいことはずっと語っているじゃないですか。しつこいぐらいに。だから大人は「もういい加減にして!」とむしろ止めさせます。なのに、「授業」となった途端、素直な思いが出てこないというのは、子どもが何かを感じとっているから。「こんなこと言わない方がいいかな……」
「まちがっているかな……」
「馬鹿にされるかな……」

という雰囲気の場になっているということでしょう。

こうなると、先生の期待・正解を読むのにたけた子は、正解っぽい知識のひけらかし、きれいごとでなんの議論も生まないぬるっとした意見をするし、できない子は、わざとおちゃらけた答えをして、場をかくらんするということが起こります。

しかし、一年生の頃から、探究教師が誠実に子どもと向かい合って、子どもの素の思いをすくいあげて、意味のある議論が面白い!と感じるように環境設定していく必要があります。

今回のテーマは、語り合いを通じて意味を再構築してゆくことがメインとなります。まさに一年生にとって、次の段階に登ってゆく一里塚です。自分の思いを素直に発し、他者の思いに耳を傾け、実際に観察したり、聴いたり、体験したことをもとに、今までとは異なる「意味」を構築する。こういうと、とっても難しいことをするように聞こえてしまいますが、要は、なんとなく知ったつもりだったり、逆に、まったく見えていなかったりしている状態に自分があったことに気づき、これまでとは異なる「認識」を持って日々行動するようになるということです。こうして、ちょっとずつ、保護下から少しずつ「社会」に踏み出し、自分だけではない「世の中」で生きてゆくことの意味を実感してゆくのです。

具体的にどんな「概念」を追究するかというと「おかげさま」。なんとも日本独特の表現です。誰かの、何かの「おかげさま」の中に生きるってどういうことなのか、自分がその渦中にいることに気づく学びと言えましょう。

「おかげさまって聴いたことがある?」

一様にみんな???

「じゃあ『おかげ』は?」

「ああ〜!」

「おかげさま」は聞いたことないのに「おかげ」だと聞いたことある!ってなるところが面白い!

じゃあどんな「おかげ」を聞いたことがあるの?とたずねると、

「◯◯のおかげで仕事が少なくなったよ」
「きみのおかげでなくしたものが見つかった」
「ママのおかげで新型テレビが買えた」

自分・友だち。お父さん・お母さんが何かいいことを自分にしてくれたときおかげを使っていることが自ずと見えてきちゃったね。

「おっちゃん、いいことだけじゃないよ。『お前のおかげで転んだじゃねえか』って言うじゃん」

おっ!またまた面白いところに気づきましたね。

すると……

「わるい時は『せい』じゃない?」
「あっそうか?でも『おかげ』とも言うような気がするしなあ……」
「『せい』は悪いときしか使えないかもね」
「そうか、おまえのせいで時間がむだになった!って言えるけど、おまえのせいで優勝したできたよ!とは言えないや」

ここまで私は「せい」についても「おかげ」についても辞書的意味は提示していません。もしそうしたら……素直な子どもは、考えるのをやめて、それをただ覚えて終わり。わかったと思ってしまうでしょう。

でもこうしてこれまでの体験を掘り起こして、ていねいに意味を紡いでゆけば、自ずと「意味」が見えてくるのです。この段階になって初めて、辞書を使って、どんな意味が「通例」なのか(あえて「正解」とは言わない!)知ると、使える言葉、深い理解へとつながるのです。この手間を惜しんではいけません。

そして私も、子どもたちの先行知識をつかむことができました。「おかげ」は身近な人の見えている部分に使うと思っていること。「おかげさま」となったときに「おかげ」とどう違うかは考えていないこと。自分の「せい」についての認識は甘いこと。

「じゃあこれから『おかげさま』探検の旅にでよう!

「やったあ!」(何をするのかまったくわかっていないのに、なんとなく面白そうだから勢いで言ってしまった子ども特有のやったあですが(笑))。こうして一週目の探究は過ぎました。

RI

TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。
 



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