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よりよい作品をつくるプロセスは終わらない……

タイトル:Dear Editor
探究領域:意思表現
セントラルアイディア:「編集によって情報の価値は変わる。」

[5年生]

「せっかくここまでよかったのに、ここで突然、終わっちゃうんもんな……」
「こうしたら面白くなるかもな」
「でも、どんどんこの子の作品ではなくなっちゃうよね」

放課後、志願残業の日々が続きます。本来、学びは、通常の学びの時間帯で終わらせるべきで、残業はもってのほかという考えもあるかもしれません。しかし、これは学びとはいえ、本物の「仕事」です。TCSキッズの文集をつくりあげるという「仕事」への責任感が、彼らを思いっきり駆り立てます。そのうえ、この「仕事」はまさにクリエイティヴなもの。ただ、だらだらやったから時間超過したわけではありません。何かをつくるとなると、こだわりが生まれます。しかし、こだわりは、なかなか形にできません。形になったかなと思うと、どこかに納得いかないところが残ります。

「まだまだだなあ……」

こうして、よりよい作品にしてゆくための終わりなきプロセスにはまりこめば、残業せざるを得ないのです。

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ひとりで考えてきたアイデアをシェアして磨く。これも「編集」の大事なプロセスです。

ある子の作文が、尻切れとんぼ。ただ、どんなふうな展開にしたいのかということがなんとなく見える手がかりはある。あたかも探偵のように、その手がかりをもとに、ホームワークで、クライマックスシーンを文章化してみました。それを聞いてもらって、さらによくしてゆこうというわけです。

「こんなふうにしてみたんだけどどうかなあ。今、読んでみるね!」

個の作業とシェアしてふりかえる作業のサイクルが「編集」には不可欠。本を「編集」するという「仕事」を通じて、本作り以外にも応用できる、アイデアの「編集」技法を学び、身につけていくよい機会になっているのです。

「ちょっと待って……今のところ意味が通らないんだけど」

「読み手」としてのチェックが入ると、「書き手」は意図を説明します。このインタラクションが、質問する方とされる方、双方の「編集力」を高めます。

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お互いに意図が伝わり合うと、ともにアイデアを出し合って、磨いてゆくプロセスが動き始めます。共創するプロセスの開始です。

このプロセスで陥るのが、TCSの探究の特徴である「つら楽しい状態」です。ただ、どちらかというと「楽しい」の方に比重が傾いています。もちろん、どこまでも、どこまでも改善したい部分がでてきて、つくっても、つくっても、なかなかこれだ!という形にならないからつらい。ど〜んと停滞し、無口・沈黙が続くときもあってつらい。でも、これは生みの苦しみのための「つらさ」。

「これだ!」

とひらめき、欠けたピースがパチンとはまる瞬間の快感。つらかったからこそそこから解放されて何かをつかんだときの充実感は、必死につくることをしない限り味わえません。

「ああ、もうこんな時間か……」

一人の作品を手直ししているだけなのに、数時間があっという間に過ぎ去ります。

編集チームは本当によく「仕事」しているなあと思います。やらされ感は微塵もない。それぞれが、自分の職務を分担し、個の作業に没頭しつつ、共創プロセスにも積極的に関わる。

「おっちゃん、文章をこれまでここまで考えて書いてなかったよ」

本気の「編集」に関わり、「編集」の大変さを実感しただけでなく、「編集」のコツを、つかみつつあるからこその一言です。

あっという間に5週間が過ぎ去り、残りは1週間しかありません。必死に作業しているし、決して手を抜いているわけではないのに、終わりません。計画を立ててコツコツやるだけでは乗り越えられない「つくる学び」の苦しみと醍醐味。「まあ、これでいっか……」ですますのが、「気持ち悪い」と思えるような学び。いつまでたっても終わらないし、やればやるほどまだまだな部分が出てくるけれど、締め切りまでに「最善の形」に持ってゆく。そんなマインドが育つのが「探究する学び」です。さあ、泣いても笑ってもあと1週間。終わらない「つら楽しい」プロセスをひたすら進むぞ!

RI

TCS2015年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。



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