タイトル:理して利する
探究領域:万象究理
セントラルアイディア:則を学びて行わざれば即ち罔し、行いて則を学ばざれば即ち殆し
これまで自分が見たことがある「ピタゴラ装置」で印象に残ったところを設計しようとする子。まずはてこや滑車など習った原理を使おうとする子。持ってきた素材をどう使おうか考えて設計しようとする子。設計のとっかかりに個性が表れます。
「ここはただ転がすんじゃなくて弾ませるの」
「ここでビー玉を反射させて、こっちに飛ばして」
どんな工夫を凝らして設計しているか、意見を言い合いながら「全体設計図」ができていきます。
「全体設計図」とは言っても「完成型」とは程遠いものです。とはいえ「設計図」と呼ぶからには奇想天外な空想ではなく現実につくれるものを構想して書きます。原理と面白さ、やってみたいこととやれることのバランスをとりながら感性と理性をともに全開にすることが、ピタゴラ装置をつくる!という「仕掛け」によって、3・4年生でも見事にできるのです。
ただやみくもに取り組まず、仮説を持って取り組むためのもとが「設計図」。それを手にしてこどもたちは早速、装置のプロトタイプづくりに取り組み始めました。
2本の針金で橋をつくり、その上にビー玉を転がそうと「設計」したものの、針金の微細なゆがみでビー玉の転がり方が左右され、どうしても途中で落っこちてしまいます。
「だからわりばしがいいっておれは言ったんだよ……」
「そんなネガティブなことを言わないの。実験してやってみてダメだったら次の手段に移るのが大事なんでしょ」
いやいやただの仲違いではない、深いやりとりがなされているではありませんか。
さしがねを2本使って、90度に左折するビー玉の道を作ろうとしますが、2本の並べ方、そして傾斜のつけ方がなかなかうまくいきません。傾斜が急すぎるとビー玉は曲がり切れずに飛び出してしまいます。ゆるやかすぎると途中で止まってしまいます。
もうひとつのグループも傾斜のつけ方に苦心しています。プラレールの青いレールスキーのジャンプ台のようにし、転がしたビー玉をジャンプさせそれを受け止めた容れ物を引っくりかえし、その先にあるドミノを倒すきっかけにするという「設計」をしたのですが……ビー玉の飛び方が安定せず、うまく容れ物で受け止められません。
しかし、子どもたちはあきらめません。どうしたらうまくいくか考えて、ひたすら、しつこくやり直します。
「なかなかうまくいかないなあ……」
自分たちの作った設計図は文字通り「机上の空論」で実現できないものなのか……どうしたらうまくいくのか理性を働かせて試行錯誤しないといけない……現実と空想の間を行ったり来たりし、あてずっぽうではない実験的試行錯誤を繰り返す。「ピタゴラ装置」の製作は、遊び心が原点となる科学する心を子どもたちから素直に引き出します。
「やった!何回やってもうまくキャッチできる!」
プラレールグループから歓声が上がります。ようやくひとつの壁を乗り越えました。まだまだ先は長いですが、ますますやる気は高まります。
「ホワイトボードをただ転がすのもいいかんじゃない?」
針金の橋がわりばしの橋になり、ついには傾けたホワイトボードにわりばしをはりつけて、そこを転がす装置に変わっていった……
いろいろ実験してみて、うまくいかなかったら、どんどん変えていけばいい。最初の設計からがらりと変わってしまったけどさらによくなったじゃないですか。
こうして子どもたちは「装置」のプロトタイプづくりを早々に始めつつ、理知的な試行錯誤をしつこくやり続ける探究に没入し始めました。
RI
※TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。
探究領域:万象究理
セントラルアイディア:則を学びて行わざれば即ち罔し、行いて則を学ばざれば即ち殆し
[3・4年生]
身のまわりの素材を使い、理科実験で習った「原理」を活かしてピタゴラ装置をつくる探究がスタート。まずは、設計図づくりからです。12人のメンバーが4人ずつ3グループにわかれてみんなでどんな装置にしたらよいか考えます。これまで自分が見たことがある「ピタゴラ装置」で印象に残ったところを設計しようとする子。まずはてこや滑車など習った原理を使おうとする子。持ってきた素材をどう使おうか考えて設計しようとする子。設計のとっかかりに個性が表れます。
「ここはただ転がすんじゃなくて弾ませるの」
「ここでビー玉を反射させて、こっちに飛ばして」
どんな工夫を凝らして設計しているか、意見を言い合いながら「全体設計図」ができていきます。
「全体設計図」とは言っても「完成型」とは程遠いものです。とはいえ「設計図」と呼ぶからには奇想天外な空想ではなく現実につくれるものを構想して書きます。原理と面白さ、やってみたいこととやれることのバランスをとりながら感性と理性をともに全開にすることが、ピタゴラ装置をつくる!という「仕掛け」によって、3・4年生でも見事にできるのです。
ただやみくもに取り組まず、仮説を持って取り組むためのもとが「設計図」。それを手にしてこどもたちは早速、装置のプロトタイプづくりに取り組み始めました。
2本の針金で橋をつくり、その上にビー玉を転がそうと「設計」したものの、針金の微細なゆがみでビー玉の転がり方が左右され、どうしても途中で落っこちてしまいます。
「だからわりばしがいいっておれは言ったんだよ……」
「そんなネガティブなことを言わないの。実験してやってみてダメだったら次の手段に移るのが大事なんでしょ」
いやいやただの仲違いではない、深いやりとりがなされているではありませんか。
さしがねを2本使って、90度に左折するビー玉の道を作ろうとしますが、2本の並べ方、そして傾斜のつけ方がなかなかうまくいきません。傾斜が急すぎるとビー玉は曲がり切れずに飛び出してしまいます。ゆるやかすぎると途中で止まってしまいます。
もうひとつのグループも傾斜のつけ方に苦心しています。プラレールの青いレールスキーのジャンプ台のようにし、転がしたビー玉をジャンプさせそれを受け止めた容れ物を引っくりかえし、その先にあるドミノを倒すきっかけにするという「設計」をしたのですが……ビー玉の飛び方が安定せず、うまく容れ物で受け止められません。
しかし、子どもたちはあきらめません。どうしたらうまくいくか考えて、ひたすら、しつこくやり直します。
「なかなかうまくいかないなあ……」
自分たちの作った設計図は文字通り「机上の空論」で実現できないものなのか……どうしたらうまくいくのか理性を働かせて試行錯誤しないといけない……現実と空想の間を行ったり来たりし、あてずっぽうではない実験的試行錯誤を繰り返す。「ピタゴラ装置」の製作は、遊び心が原点となる科学する心を子どもたちから素直に引き出します。
「やった!何回やってもうまくキャッチできる!」
プラレールグループから歓声が上がります。ようやくひとつの壁を乗り越えました。まだまだ先は長いですが、ますますやる気は高まります。
「ホワイトボードをただ転がすのもいいかんじゃない?」
針金の橋がわりばしの橋になり、ついには傾けたホワイトボードにわりばしをはりつけて、そこを転がす装置に変わっていった……
いろいろ実験してみて、うまくいかなかったら、どんどん変えていけばいい。最初の設計からがらりと変わってしまったけどさらによくなったじゃないですか。
こうして子どもたちは「装置」のプロトタイプづくりを早々に始めつつ、理知的な試行錯誤をしつこくやり続ける探究に没入し始めました。
RI
※TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。