[3・4年生]
2週間連続で週に1度の全員会食で「残飯ゼロ」を達成!フードロスについて追究している3・4年生だけでなく、1年生から上級生までみんなに意識が行き渡っているのがスバラシイ。メインディッシュのチーズハンバーグは、みんな大好きなので廃棄は出ないと予想していましたが、付け合わせのインゲンとトマト・キュウリ・セロリのマリネは、野菜嫌いもいるし、かなり残るのではないかと懸念していました。なんといっても飲食店の食べ残しワースト1は「野菜」というデータがありますからねえ。それを裏打ちする結果になるのではないかと思っていたのに、そんな悪い予感を見事にくつがえす結果となってみな満足です。
食べる量が少ない子は、育ち盛りでもっと食べたい!食べられる!という子に食べてもらいます。どうしても苦手なものがある子は、「いらないから食べて!」ではなく、本当は自分が食べなくてはいけないのに申し訳ないなという気持ちを抱いて、無理に押しつけるのではなく、好んで食べたいと思う子に手をつける前に譲ります。
誰かに食べてもらったり、食べ残しが出たら別のモノに作りかえて後で食べれば済むという安易な発想になっていない。食べ物への「感謝」がちょっとだけ芽生えたのかなという感じです。
先週、先々週と日本のフードロスの現状について理解してきた子どもたちに、さらに視野を広げるために、今回の探究で理解を深める key concept "connection" に基づく「本質に迫る問い」を投げかけます。
「connection ってつながりでしょ。海外の畑でつくったものを日本が輸入して、その国の人はその畑を使えなくて食べ物がないっていうようなことだよ」
あれこれ見て、知って、やってみて、考えて、話しあってきたうえで key concept という認識のメガネが入るからいろいろ見えてきてしまいます。最初から「本質に迫る問い」によってしぼりこまずに、課題にどっぷりつかって、あれこれ知って、やってみて思い切り広げてから「整理する」ために key concept を用いることが大事なのだと改めて実感しました。もはや教えずとも、子どもたちが学びを通じて広げ深めてきた「知識」と「発見」をどんどん「発言」してもらうと、あっという間に「つながり」と「影響」を明らかにする「メタメタマップ」ができあがりました。
さあ、ここからが「メタメタマップ」の本領発揮です。key concept に触発されて掘り起こすという「メタ」な作業に続いて、掘り起こされたマップを見てどんな「つながり」があるか「整理」してゆく「メタ」な分析を行います。掘り起こす「メタ」と俯瞰する「メタ」。それを「図=マップ」にしてゆくから「メタ メタ マップ」というわけです。
こうして整理してゆくと、いかに「日本のフードロス」が、特に途上国の貧困や飢餓に直接的影響を与えているかが明らかになります。マップが豊かになってくると、背後にあるさらに重大な問題とのつながりまで見えてきます。
「食べ物だけでなくて、その食べ物を作るためのエネルギーもむだになってるような気がする」
なんてシャープな気づきでしょう。こんな気づきがタイミングよく生まれる展開に一役買っているのが、以前行ったテーマ学習です。終わったはずのテーマが新たな学びにつながり、発展してゆく。これが探究する学びの積み重ねの妙です。
「水問題」について扱った No Water No Life というテーマで「仮想水」という問題が出てきたことをある子が思い出しました。 海外から「肉」を輸入するということは、家畜の飼料を育てるために使われたものも含め、大量の「水」を輸入していることと同じだというのが「仮想水」の問題です。せっかく食べ物を輸入してもムダに捨ててしまうならば大量の「水」を廃棄していることと同じだと気づいたのです。
「水だけじゃなくてそこで働いている人のエネルギーもムダになるってことでしょ」
子どもたちの考えを connection という認識のメガネでつむいでゆくことでこんなにも豊かな知識図ができあがりました。
こうして知識は整理され、理解は深まりましたが、「で、どうしたらいいの?」という私たちが共存共生というテーマで考えなければならない responsibility についてはまだ手つかずです。
「キレイゴトを言うだけになっちゃうしな……」
たたみ部屋に掲示してある論語カードをある子が教室に持ってきて
「やれてないのに説得力ないよ……」
とため息をつきます。
先ず行う。その言はしかる後にこれに従う。
確かにその通りです……
これは難しい……どんなことを提案すればいいんだ……悩みは深まる一方です。もはや「知らぬが仏」ではいられません。より深く知ったからこそうかつなことを言えなくなっています。でもこれこそが、学びの深まりにより生まれる「意味のある停滞」です。
子どもだけじゃなく、教師の立場からしても、来週には発表会があり、なんとかまとめに入りたいと気があせります。しかしここで安易にまとめず、じっくり考えを深めようと腹をくくり、子どもとともに唸りながら考え続けようとする。そんな状況にダイブできる教師こそ「探究教師」であり、共に解をつくりこんでゆく generator と言えましょう。
次週は最終週。「意味のある停滞」を乗り越えて、発表するアイデアを形にします。よりよいものをつくりこむための胸突き八丁。もうひとふんばりです。
RI
※TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。