東京コミュニティスクール-探究型学習が教育の特長-全日制オルタナティブスクール(小学1年生から6年生)

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2013年09月 アーカイブ

2013年09月02日

「治の力」〜概要〜

タイトル:治の力
探究領域:社会寄与

[5・6年生]

「治」とは統「治」の「治」。私たち人類は社会を形成して生活している以上、スムーズに混乱なく社会運営するために、うまく統治する必要にせまられます。現在の統治の基本は、「民主主義」ですが、投票率の低下という事実に現れているように、よく機能しているとは言い難いでしょう。自分たちで決めるという意欲の低下とともに、「衆愚主義」となり、人気とりのスローガンに安易に流されやすい危うい面が見えています。このような現状の中で、「民主主義」を基本として、私たちが私たちを私たちのためにどう治めてゆけばよいか追究してゆくのが今回のテーマです。

そのために取り組むプロジェクトは、「住みよいTCSをつくるための改革案」を提示することです。このプロセスを通じて、統治する主体としていかに考え、行動してゆくかとことん探究です。人の統治の歴史について知り、憲法のような統治のための制度や仕組みについても理解を深め、TCS改革のリーダーとして新たな動きを創り出してゆくことに挑戦します。

RI

TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

2013年09月03日

「玉石混交」〜概要〜

タイトル:玉石混交
探究領域:万象究理

[3・4年生]

「石」。
道端・公園・河原・・・

普段は気にもとめる事のない「石」。

身の回りに当たり前に転がっている「石」

今回のテーマでは、その「石」を注意深く観察・調査していきます。

岩・石・砂・泥って何が違うの?
石にも種類があるの?
どうやってできるの?
地形ってどうやって変わるの?
この川は昔どんな地形だったんだろう?
こうして探究を進めるうちに、ただの石ころだと思っていたものから、長い年月をかけた大地のメカニズムやそこに起きた事象の連鎖に迫っていきます。

YI

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2013年09月04日

「おかげさま」~概要~

タイトル:おかげさま

探究領域:社会寄与

[1・2年生]

当たり前と思っていることでも、
実は誰かのおかげが隠されている。
身近な人から支えられていることは理解できても、
目に見えない誰かのおかげと言われてもピンとこないものです。

今回のテーマでは、普段会うことのない、
目に見えない人とのつながりを 明らかにしていくことを目指します。

生活のどの部分をとっても、たくさんの人のおかげがつまっています。
その中で、私たちの食に欠かせない「お米」を通して、 どれだけの人とのつながりがあるのかを見ていきます。
その人たちの努力を知ることで、自分たちが、みんなのおかげで 生きていることを実感し、ありがたいと気づけるよう、 隠された「おかげさま」を探究していきます。

AN

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2013年09月06日

おかげさまって何?

[1・2年生]

「これからやるテーマって、“ありがとうにありがとう”でしょ。」
実は、予定していた“ありがとうにありがとう”ではなくなったのです。
「なんで?」
いつもありがとうって感謝したい人を探究していくテーマに変わりはないのだけれど、
「ありがとう」と直接に会っていうことが難しい、かげに隠れている人たちを
見つけ出していくテーマにしたかったから、ちょっと変わったというわけ。
「ふーん。」
子どもたちには「おかげさま」という言葉は聞き慣れないようで、
頭の上には、?やモヤモヤが漂っている様子です。

「普段、当たり前のように食べているお米。
このお米は、どのくらいの人たちのおかげで食べられるのか。
お米の中のおかげさまを探していく。」これが今回のミッションです。

お米を買ってくれる、おうちの人。
届けてくれるお店の人。
売ってくれるスーパーの人。
お米を作ってくれる人。Tさん!
お米を発見した昔の人。

今年サマーキャンプでお世話になったTさんの田んぼで、子どもたちは
雑草抜きの手伝いをしてきました。
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「今、あの田んぼどうなっているかな。」「お米はもうできてる?」
「お米ってどうやってできるの?」
「もう雑草生えてないかな?」
子どもたちの関心が、お米を作っている人に集中していきました。
「Tさんに電話で質問したい!」
そこで、お米の作り方を下調べしつつ、質問することを考えることに。

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本には、米作りは八十八の手間がかかると書いてあります。
八十八ってどんなことだろう。
お米の本には何が書いてあるのだろう。
手分けして、わかったことをメモしていきました。
来週は、それぞれにわかったことをシェアしていくことになります。

まずは、自分たちの知っている人が、自分たちの知らないうちに
どうやってお米を作っているのかを探っていきます。

AN

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”ひらめき”をどんどん口に出そう!

[3・4年生]



3・4年生の新テーマはTCSの定番テーマ学習ともなっている「玉石混交」です。
初日はある児童がサマープロジェクトとして発表してくれたグランドキャニオンの話から始まりました。

「プロジェクト発表会で発表してくれていたグランドキャニオンの話だけど、もう少し詳しく聞かせてくれる?グランドキャニオンはこうだった!って書いてあるところってどういうことなの?」
「あのね、大昔のグランドキャニオンは平地だったんだって。それでね、4千万年くらい前からコロラド川が大地をけずって今の地形を作ったんだって。一番古い地層は20億年前のものなんだよ。」
「えーー!!!この谷が昔は平だったのー!??」

この話にみんなが釘付けになったところで私から本テーマのセントラルアイディアを伝えました。

「このテーマのセントラルアイディアはね、”事象は事象の連鎖である”なんだ。まさに今Kくんがシェアしてくれたことをこのテーマで探究していきたいんだよ。」
「いいねえ!それ面白そう!」と子どもたち。
「事象って辞書にはね、世の中に実際に起き、目に見える出来事って書いてあるよ。連鎖はねー、えっと、何回もくり返すつながりだって。」と3年生のある子が素早く辞書を開き説明してくれました。

「なんとなくわかった。」と子どもたち。

グランドキャニオンでの”事象の連鎖”の話のおかげで自分たちがこのテーマで向かっていく方向がなんとなく理解できた様子の子どもたち。テーマ初日なのでまずはこの”なんとなく”で十分です。実際に”発見”と”追究”をくり返しながらセントラルアイディアの理解が深まっていくことでしょう。

また、それとなく多摩川で過去に採集された石をみんなで観察してみました。すると私の予想以上に子どもたちは様々な反応を示し出しました。 

「なにこの石!!なんでこの石はシマシマなんだ!?」
「白い石と黒い石がくっついたのかな?」
「においをかいでみよう。あれ!?なんか変なにおいがする。」
「分かった。これ多分だけど何百年もの間に火山灰が重なってできたんじゃないかな。富士山が噴火した時は江戸にも灰が飛んできたって言うし。」
「あのさ、これは可能性が低いかもしれないんだけどひょっとしたらさ、シマウマの皮膚がはがれて石にくっついて化石になったんじゃないかな。」
みんなそれぞれに思いついたひらめきを発言してくれました。
するとある子が大きな声で言いました。

「あ!!!すごいこと発見したよ!この石ね、叩くとにおいが強くなる。なんかこげたようなにおいがするよ。みんな嗅いでみて。」

一人ずつにおいをかぎながら石を手渡ししていき”発見”を共有していきました。

多摩川”石”発見チームは初回からエンジンがかかっています。そして来週は早速多摩川上流のフィールドワークへ出発です!さあどんな”発見”があるだろう?

YI

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民主主義は最低の制度?

[5・6年生]

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この写真の男は誰?と子どもたちにたずねたら、みな「???」となるだろうと思ったら、

「ああ、この写真見たことある。長崎と広島に原爆を落として戦争が終わったから平和が来たってピースしてるんでしょ」

6年生の女の子から思わぬ発言が出ました。毎度、毎度のことですが、子どもの prior knowledge をバカにはできません。いったいそんなことどこで聞いたのということが飛び出してくるのが、情報洪水・氾濫社会を生きる子どもたちです。

実際に調べてみると、単にチャーチルはビクトリー(勝利)のサインをしただけのようなのですが、2本の指で広島・長崎の2つの原爆を表しているのだという「都市伝説」的うわさが広まっていることがわかりました。

この写真の男、チャーチルが残した言葉によってゆさぶることから今回の学びはスタートしました。第二次世界大戦・太平洋戦争の勃発した非常時に活躍した名宰相チャーチルが発した言葉とは……

「民主主義は最悪の政治形態である」

いかにもチャーチルらしいブラックなウィットがこめられています。この後に「ただし、これまで試されてきたいかなる政治制度を除けば」という部分が続くというオチがあることはみなさんご存知でしょう。しかし、その部分は隠して、前半の部分だけを読んで子どもたちがいったいどんな反応を示すか探ってみました。

”民主主義”と聞いて子どもたちが真っ先に思い浮かべたのは、

「選挙で決める」

ということでした。みんなの考えを尊重し、ひとりの意見だけで決めないのだから民主主義はいい考えと思うのが普通なのに、チャーチルはどうして「最悪」とまでいうのだろう……なにか裏があるに違いないと探究慣れしている高学年の子どもたちはすぐに気づきます。

「みんなが納得するなんてあり得ない」
「自分の意見が通らないと不満が残って協力する気になれないんだよね」

民主的に決めることの難しさを子どもたちはつぶやきます。

「顔で選んだりする人がいるじゃん」
「好き嫌いで決めることもあるよ」
「ちゃんと考えないで選ぶ人が多いんじゃないのかな」

みんなに決める権利を与えても、その権利を正しく行使する姿勢を持たない人ばかりだったら民主主義ではなく、衆愚主義になってしまうことを子どもたちは見抜いていました。

続いて、こんな挑発をしてみました。「ということはレベルの低い人たちによって決めるより、優れた一人のリーダーが決めた方が間違いが少ないってことかな?」

この「挑発」は子どもたちにバレバレで、

「そんな都合のよいことは滅多に起こらないよ」
「たいていひどい独裁者になっちゃうんじゃない」

という否定的意見でバッサリ切られてしまいました。

けれど……独裁だから悪い、民主主義だからいいと単純に割り切れないという認識が子どもたちに芽生えてきました。この認識こそチャーチルが言おうとしてしていたことです。「制度」があるだけではダメ。それは「可能性」を秘めているけれど、その「可能性」をしっかり活かすように私たちが成長して、運用してゆかなければならないのです。

私たち自身が、民主主義の優れた運用者として育ってゆく必要がある。そうでないと世の中はよくならない。だからこそ私たちには、私たちのために住みよく、生き生きとした環境を自ら選択・判断・行動してつくりあげてゆく責務があるのです。そうあってこそ「民主主義」という「制度」が生きるのです。

私たちが私たちを私たちのために「治める力」を育むために今回取り組むプロジェクトは、5・6年生変ポポクラスのみんなが「変ポポ党」を結成し、住み良いTCSをつくるための改革案を提示することです。

「独裁者としてではなく民主的なリーダーとなってみんなを巻き込むんだよ」

という私の言葉を受けて、すぐに、

「わあ、責任思い……」というつぶやきがもれました。オレの話を聞け!決めた通りにしろ!ではなく、逆に、ウケ狙いに走り、みんなが喜ぶけど住みよい環境をつくることにはつながらない提案でもなく、TCSのみんながそれなりの負担や義務を果たしつつ、だからこそよりよいTCSが築けるような「提案」を出し、みんなの共感を得るなければなりません。

テーマ発表のときにTCSの子どもたちに向けてスピーチし、TCS改革提案を訴え、過半数を勝ち取ることが、その提案を「本採用」するかどうかの大事な判断基準の一つとなります。世の大人の多くができていないことだからこそ、将来を担う彼らにぜひとも身につけてほしい。そして変革を起こす主体となって活躍していってほしい。そんな願いを込めて学びの口火は切られました。

RI

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2013年09月12日

TCSブックサポーターになろう!

あなたもTCS必読百冊の本棚のブックサポーターになろう!

読書好きこそ学び続ける力の源!という願いを込めて、探究学習に関連した本も含めたTCSらしい「必読百冊」を選びました。

TCSの子どもたちは、卒業までにすべての本の読破を目指しますが、どんな本なのかを手にとって見られるように、「必読百冊」の本棚をスクールに設けようと考えています。

そこで、みなさまに、ぜひとも本の寄付者になっていただきたいのです。

本にはご寄付下さった方の名前を記します。ただし、なるべく多くの方々の「思い」を集めたいので、お一人につき寄付は2冊(または2種類)までとさせていただきます。

あなたのクリックが、これからの日本を支える未来の人財を育てます。ブックサポーターとして教育に寄与できるチャンス!ぜひともご協力よろしくお願いいたします。

≪TCSのブックサポーターになろう!≫

TCS寄付サイト

※本の詳細は、「TCS必読百冊」ページよりご覧いただけますが、
寄付のお手続きは、寄付サイトよりお願いします。

2013年09月13日

八十八の手間を探せ!

[1・2年生]

「よいタネモミを選ぶために、塩水につけるんだって。
それで、沈んだモミを取り出して、消毒するって書いてあった。」
本に書いてあることから、わかったことを抜き取り、メモしたことを
読んでもらうと、見事に要点をつかんでいます。

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1.タネモミを用意する
2.塩水にお米をつける
3.しずんだタネモミを取り出す
4.消毒をする
5.水にひたす
6.保温器で温める

「ただタネを作るだけでも、こんなに大変なんだ。」
それぞれ担当になった部分から、わかったことを発表していきました。
イネにとって、いい虫と悪い虫がいること。
イネも病気にかかること。
害虫や病気からイネを守るために、雑草を抜いたり、薬を散布したりしている
こともわかりました。
中でも、子どもたちの関心を集めたのはアイガモ農法でした。
「アイガモの絵がかいてあるところの文字を読むとわかるよ。」
「アイガモが雑草や害虫を食べてくれるから、薬がいらないんだって。」
「うちのお米、薬使ってないやつって言ってたから、アイガモ使ってると思う。」

また、お米作りの様子が投稿されている動画を見てみました。
「あ。お米の手入れは毎日やるって、言ってる!」
「ここは重要」と思うところは、アンテナが動いているようです。
タネ作りからイネ刈りまで、おおよその流れを知ったところで、
Tさんに電話で聞いてみたいことを整理していきました。

Tさんのところに電話をかけたことで、
雑草抜きは3回やっていることがわかり、イネ刈りの時期も
もうそろそろで、順調に育っていることがわかりました。

手間をひとつずつ書き出してみたところ、31この手間が見つかりました。
「88まで、まだまだだー。」
「本当に88もあったのかな?」とたずねてみると、
「まだ見つけられてないんだと思う。」
「機械のおかげで手間が減っているのかも。」
「モミになったあとは、どうなるのかな。」と
早くも頭の中は、“モヤモヤ”と“?”がいっぱいになっている様子。

「そういえば、お米の本が3階にあった。」と言った子が、
TCS100選になっている『1つぶのおこめ』を持ってきてくれました。
読んでみると、それはインドの算数の昔話でした。
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女の子のラーニが、ごほうびに30日間お米つぶをもらっていきます。
1日目に1つぶ、2日目には2つぶ、3日目には4つぶ・・・
12日目には2048つぶに。子どもたちは数が大きくなることに
驚いていきますが、次の文を読んだことで、「?」が出てきます。

ー 13日目には、おこめを4096つぶもらいました。おわん1ぱいくらいの
ぶんりょうになります。 ー

「え。4000つぶなのに、おわん1ぱい分だけ?」
「ほんとに?」「数えてみたい」

お米作りにたくさんの手間がかかっていることが見えてきたものの、
それでも八十八まで見つからないということは、何かがあるということ、
おわん1ぱい分のお米は、本当に4000つぶもあるのだろうかなど、
発見、疑問を繰り返しながら、次週に続きます。
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AN

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奥多摩渓谷へ

[3・4年生]



今週は今の多摩川をじっくり観察し、そこでどのような事象が連鎖しているのか追究していくべく現地へ足を運びました。
まずは多摩川上流部である奥多摩渓谷へ向かいます。
河原にある石のform(色・形・大きさ・種類・厚み・硬さ・においなど)と川の流れを観察してみることでどんな”発見”があるのでしょうか?

奥多摩渓谷に到着すると早速ペアに分かれて調査開始!
調査内容は、
①大きな石を一つ選んでその石を中心に半径2mの円を描き、その中の大きい石のサイズを20個測る。
②1m四方内にある石灰石の数を数える
③なるべく色んな種類のお気に入りの石を10個見つけてスクールに持ち帰る 

「やったー。今日は他にお客さんいなくて貸し切りだねー!」
とある子が嬉しそうに言いました。天気も快晴で絶好のフィールドワーク日和です。
さすが晴れ男晴れ女だらけのTCS! 待ってましたとばかり、自前のメジャーと記録シートをバッグから取り出し、河原の散策が始まりました。

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「よし!この大きな石を中心に決めたよ。」
「78cm!!」
「65cm!」
各チームで岩の直径を計測していきます。

「あのでっかい岩も測りたいなー。いいよね?」
とある子が言い、大きな岩によじ登り出しました。
「3m87cmもあるよーーー!でかっ!!でも隣のもっと大きいのはこのメジャーじゃ測れなそうだな。一応測ってみよう。うーーーーん、やっぱり長さが5.5mのメジャーじゃ全然足りないな。」

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一通り岩の大きさ調査が終わると子どもたち全員の希望により少し早めの昼食タイムになりました。
河原に腰を降ろし、川の流れを観察しながら昼食です。


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「結構流れ速いね。でもなんでゆっくりの所と速い所があるのかなー?」

「予想なんだけど高さが違ったりするのかもよ。あと川の中の岩も関係あるんじゃない?」
となかなか論理的な予想をしている子どもたち。

「ねえねえ、あそこ渦巻いてるよ!」
「ほんとだ!すげえー。しかもよく見るとちょっと逆流してるよー。なんでだろう?」
「あれも多分思うんだけどね、川の中の岩が流れを変えてるんじゃないかな。」

ごはんを食べ終わったら自然に石投げが始まりました。
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どちらが遠くへ投げられるか競い合ったり、定番の水切り大会でひとしきり遊び、また調査を開始します。


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次は1m四方内の石灰石の数を数えます。
というのも多摩川上流部は昔から石灰石が採掘されることで有名な場所で今でも相当な数の石灰石を目にすることができるからです。


数えても数えてもまだまだある石灰石にめげることなく調査を進める子どもたち。
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10個ずつの塊を袋に入れて並べていくなどそれぞれに工夫しながら数えてみると200個から500個近くの石灰石を確認することができました。

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これらの結果を来週行なう多摩川中流のフィールドワークと比較することで何かの違いが見えてくることでしょう。
自宅から持ってきたトンカチで様々な石を叩いてみたり、においを嗅いだり、水中の石と河原の石の色の違いに驚いたりと様々なものを五感を使って”発見”した様子の多摩川”石”発見隊。
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来週は持ち帰った石を図鑑で調べながら科学的に分類していきます。

小さな発見や疑問を追究し、論理的な仮説を立てて目に見えない大きなつながりを発見していくことにこれからどんどん挑んでいきます!さあ、来週もはりきっていこう!

YI

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憲法を守るのは誰だ

[5・6年生]

みなさんは「あたらしい憲法のはなし」という小冊子をご存知ですか。これは昭和22年に公布された日本国憲法の精神や中身をわかりやすく説明した、中学1年生社会科の教科書です(わずか5年ほどしか使われませんでしたが……)。

現在は、青空文庫となってネット上で誰でも読めますし、定価300円で小冊子として販売されています。子どもたちにとってまず衝撃的なのは、約70年前に作られた日本国憲法が「あたらしい」と表現されているところでした。そう書かれていると"じゃあ古い憲法ってなんだろう……"と考えざるを得ません。ある歴史好きの子が

「聖徳太子の十七条憲法が古いのかな……」

と答えました。おおそうきたか……では、聖徳太子の「憲法」と私たちが手にした、民主主義を保障する「憲法」とはどんな違いがあるのでしょうか。そのことを明らかにするために、「あたらしい憲法のはなし」を読み進めると、最後の最後に、憲法は最高法規であることが書かれている章がありました。そこにはこんな記述が……

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「このように大事な憲法は、天皇陛下もこれをお守りになりますし、国務大臣も、国会の議員も、裁判官も、みなこれを守ってゆく義務があるのです。」

「憲法」を守るべきは権力者であって、「国民」の基本的人権を守り、「国民」の幸せをつくりだすような国の仕事をするように取り決めたものこそ「憲法」なのだという思いがひしひしと伝わってきます。そんな「憲法」つくったのは誰なのかと言うと、上の図に表されているように「国民」であって、権力を行使するものより上位にある存在なのです。これこそ「主権在民」ということなのです。

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「この本ってすごく熱く語っているよね」
「みんながつくったんだよ、みんなのものだよって何度も何度も繰り返して書いてる」

「あたらしい憲法」がこれまでの時代にはなかったどんなに素晴らしいものなのか強調するために、小冊子の書き方が「熱い」のではないかという気づきが自ずと子どもに生まれてきます。では、「あたらしい憲法」と、民主的でない時代、封建的な時代にも存在した十七条憲法のような「法」とは何が異なるのか……さらに調べてゆくと……

いちばん上に「国王」とか「支配者」がきて、そういう権力者が「法」を決めて「人民」を支配している。ひどい場合には奴隷としている。つまり「人が人を支配する」構造になっている。しかし、今、手にしている憲法は、「法」が権力者をしばり人民を守っている。つまり「法によって支配」される世の中になっている。

権力者による支配は、孔子の言う「君子」による治政を生むことはなく、暴君による悪政につながりました。そこに立ち向かった市民は自分たちの「権利」を訴え、闘い、勝ち取った「権利」を「憲法」という形で守ろうとしたのでした。

自分たちの自由が保障され、民主的な手続きによって物事を決めてゆけるのは「憲法」のおかげであり、それがこれまでの憲法とは異なる「あたらしい」特徴なのだということが明らかになりました。

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人を殺しちゃダメだとか、貧しい人を見放さないとか、どう考えても人として守るのが当たり前だと思われる「法」を「自然法」と言います。「憲法」は「自然法」によって成立しています。すると、これまで何気なくTCSの「憲法」という言い方をしてきた、「3つの約束(自分を大切にする、人を大切にする、ものを大切にする)」がまさに「憲法」と呼ぶにふさわしいものだということがはっきりしてきました。

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TCSの憲法である「3つの約束」をふまえ、住みよいTCSをつくりだすための改革提案を民主的な手続きで決めかつ実行してゆくことこそ今回取り組むべきプロジェクトだとはっきりしてきました。

「これからは他者の意見をぼーっと聞いてられないよ」

まったくその通り。みんなの意見を聞き入れつつ、よりよいアイデアを練り上げ、それをみんなが共感してくれるような表現で伝えなければならないのですから、意見を言う方も、聞く方もこれまで以上に他者の意見をしっかり聞き取らなければなりません。

意見を口にするには、よく考えた上で責任を持って「発言」しなければならないこと。こうして熟慮の末に出された他者の意見(異見でもある……)には、よく耳を澄まし、自分の考えを見つめ直す材料とすること。こうして視野を広げ、認識を深めつつ政策を磨いてゆくトレーニングが始まりました。「発見」を自由に積み重ねてゆくのとは異なるモードで対話するデモクラシーのレッスンです。

RI

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2013年09月20日

手間は八十八じゃない?!

[1・2年生]

先週の「?」を確かめることに。
おわん1杯分のお米は4096粒もあるのか。
本当かどうかを確かめるために、実際に半合分のお米を数えてみました。
「10のかたまりを作ればいいよ。」2年生がアドバイスします。
「小さくて大変!」といいつつ、8人での作業は思っていたほど時間は
かかりませんでした。最後にみんなの数えた記録を足し算してみると、

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4249粒

「えー!」「おー!」などの歓声が。
聞いて得ていた知識だからこそ、自分で確かめることに重みがあり、
納得感が増すのでしょう。

続いての「?」は「モミになったお米はどうなるのか。」
お米はどのようにして、私たちの元に届くのだろうか。
近所のお米屋さんに見学に行き、
お米屋さんの仕事を実際にさせていただきました。

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玄米を精米機に入れ、米ぬかを取り、
7分づきにしたり、白米にしたりします。

玄米は、農家や問屋から買ってくるそうです。



精米したお米をふるいにかけ、欠けたお米を取り除きます。
また、光に当てて、黒いお米も取り除きます。
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そこには、「食べられるけど、きれいなお米を届けたいから」という
お米屋さんの思いが込められています。

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秤でお米の重さを計ります。
今回は、一人450gずつ計測しました。




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袋の端に熱を当てて、封をします。
あとは、袋にラベルを貼ればできあがりです。



ラベルには、産地・品種・産年・精米年月日が記入されていますが、
今回は空欄にしてもらっていたので、自分たちで記入しました。

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そのほか、
今年購入したという、光でお米を選別する機械を
見せてもらいました。



親切に対応してくださったお米屋さん、どうもありがとうございました。

精米したお米をいただき、早速スクールで炊いてみることに。
ここでも、いくつかの手間がかかります。
お米を水で洗い、ごみを取る。お米を研いでぬかを取る。
カップで計り、水にひたす。火で炊く。

いただいたお米は新米の「七夕コシヒカリ」でした。
旧暦の七夕の時期(8月中頃)に収穫できるお米とのこと。
甘みがあり、鍋で炊いたため香ばしくおいしくいただきました。

このお米にはたくさんのおかげさまが詰まっています。

さて、そのおかげさまはお米を作る人、お米を売る人、お米を炊く人だけ?
「道具とか、機械を作っている人のおかげもある!」
「水や電気やガスのおかげでもある!」
かげに隠れたおかげさまがいるようです。

そうなると、お米作りに必要な物を作る手間が出てきます。
昔は手でやっていたことが、今は機械になった分、手間が省けたわけではなく、
別の人が新たな手間を担っていることになります。
肥料を作る手間、農薬を作る手間、
雑草抜きの道具を作る手間。田植えの機械を作る手間。などなど、
どんどん出てきます。
これらをお米作りの手間に加えると、八十八を越えていました。
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AN

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和泉多摩川(多摩川中流部)フィールドワークへ

[3・4年生]



先週多摩川上流で採集してきた石を図鑑とにらめっこしながら科学的に分類してみたことでそれぞれの石の名称や特徴を知ることができた多摩川石発見チーム。
今週は多摩川中流部に位置する和泉多摩川のフィールドワークへ足を運びます。
駅から徒歩10分ほどで河原に到着しました。

「なんかずいぶん広いなー。釣りしている人がたくさんいるね。何が釣れているんだろう?タマゾン川だからピラニア釣れてるかもよ。ねえ、インタビューしてきてもいい?」

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以前に行なったテーマ学習で学んだ”多摩川には外来種が多い”という情報が気になって仕方ない様子です。
人に話しかけることは大得意のTCSキッズ。今回のフィールドワークの目的とは違いますが実際に確かめてみる絶好の機会。
勿論OKを出すとある子がすぐに釣り人に話しかけました。

「やっぱり外来種ばかり釣れて困っているんだって。ペットショップで買ったりして飼えなくなった魚を多摩川に放しちゃうのが原因で絶対やめてほしいってさ。もともと多摩川に住んでた日本の魚より外来種の方が強いから外来種ばかり生き残っているんだって。」

思いがけず外来種に関する生の声を聞くことができました。

釣り人の方にはお礼をお伝えし、本来のミッションである多摩川中流部探検の始まりです。
多摩川に架かっている橋の途中に東京・神奈川の県境があります。

「わー!ここから神奈川だってぇ!おれ片足東京で片足神奈川〜!!」
とノリノリの探検隊。一応ここで記念撮影をパシャリ。

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今回の調査内容も前回と同様で、
①大きな石を一つ選んでその石を中心に半径2mの円を描き、その中の大きい石のサイズを20個測る。
②1m四方内にある石灰石の数を数える
③なるべく色んな種類のお気に入りの石を10個見つけてスクールに持ち帰る 

この結果を上流部での調査と比較することで様々な”発見”があるはずです。
河原を歩いていると石の小ささに子どもたちから声が上がります。

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「上流の方がもっともっと大きい石がいっぱいあったよね。なんか中流の石は全部小さいなぁ。」

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大きさを測ってみてもやはりその差は歴然です。 

次に場所を移して1m四方の範囲内にある石灰岩の数を調べてみましたが、これも格段に数が少ないことにみんな驚きました。

「全然石灰岩ないじゃん!0個かもしんないよ。」
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「そんなことないよ!石をどかしてみると小さい石灰岩があったりする。」
「本当だー。でも小さいし少ないなー。」
「この石見て!!石灰岩ぽいけど砂岩ぽい所もあるよ。ひょっとして混ざってるんじゃないの?くだけた石灰岩と砂岩が水の圧力でくっついてこうなってるんじゃないかな?」
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「やっぱりそうだ!黒い石に石灰岩みたいに白い字が書ける〜!!」

子どもたちに様々な『!』と『?』が生まれているようです。
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しかしこの場では解決できずモヤモヤとした疑問を残しながら戻っていくところにまた次の学びにつながる種があります。

石灰岩の調査を終えると、130万年前の化石が眠っていると言われている場所で化石探しをしてみました。
みんな大興奮で化石を探していましたがなかなか見つからず、地元の方の話では表面の固い土の下から出てくることがあるがそれなりに掘らないと出ないし簡単には見つからないとのこと。
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化石を発見することはできませんでしたが、上流では目にすることができなかった種類の美しい石が沢山ありました。 
色んな石に興奮してかなり多めの石を採集して持って帰り荷物の重さに苦しんでいる子もいましたが、スクールに戻るとふりかえりを行ないました。

・上流では大きな石が多かったが中流は小さな石が多い。
・上流は石灰岩がたくさんあったが中流はほとんどない。
・上流は水がきれいだったが中流はにごっている。
・中流の方が上流よりもレアな石が多かった。石の種類が多いみたいだ。
・石灰岩が少ないのはセメント会社が山奥の上流で石灰岩を取るよりも中流の方が取りやすいしお金もかからないから中流でたくさん採集しているんじゃないかな?
・なんで大昔の化石があるんだろう?
・図鑑によると石灰岩の成分は炭酸カルシウムで、それは海の生物に含まれているカルシウム分が堆積してできたって書いてあるけど多摩川は川なのにどういうこと?海の一部が多摩川になったのかな?
・石灰岩が少ないのは柔らかい石だから流れている途中で他の岩とけずり合って無くなったり、小さくなっているんじゃないかな?
・石灰岩が少なくなってるのは流れている途中で川底の泥がこびりついて他の石みたいに黒くなっているんじゃないかな?それで割ると実は石灰岩だったりして。
・石灰岩が少ないのは流れている間に他の石とぶつかり合ってくだけて、それがまたくっつき合って全然違う石が生まれてるんじゃないの?だからひょっとしたら石の種類が増えてるんじゃない?新しい種類が生まれてるのかもよ?

などなどそれぞれに気付いたことや疑問に思ったことをどんどんシェアしながら、上流部と中流部の違いの原因を推理していきました。
その際にどんなユニークな推理ももちろん大歓迎ですが、論理的に考えた上での推理は更に可能性が高い推理であることを強調しておきました。
例えば、
「上流の石を割ってみたら外見と中身の色が全然違ったから、ひょっとしたら上流から流れてくる間に色んな岩がくだけて種類がたくさんになりながら中流にながれてきたのかも?」

とある子が発言してくれたように実験してみた結果から推測してみるといった場合などです。
また図鑑などで調べた石灰岩の性質からするとこんなことが起きていたのかもしれないといったただの”ひらめき”だけではない論理的な推理がこれから多摩川での様々な事象の連鎖を発見していく際に大切になってくることでしょう。
”ひらめき”と”論理的な推理”の両方が多摩川での目に見えない事象の連鎖を発見していく上でキーになるはずです。
来週は疑問を追究し議論を進めていきます。どんな発見が待っているかな?

YI

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表現の自由と民主主義

[5・6年生]

ちょうど今週の授業が始まる週に、次の国会での成立を政府が目指している「特定秘密保全法案」へのパブリックコメント受付が締め切られました。これは、国家の安全に影響を及ぼすと判断された情報を公にした場合、国家公務員はもとより政治家そして一般市民も、最高で懲役10年の罪に処せられるという法案です。憲法で保障された「表現の自由」を奪う可能性が大いにあり得る重大な法案について、わずか2週間、国民全体の議論がわきおこることもないまま、パブリックコメントは打ち切られたのです。

先週、「憲法とは権力者を見張り、国民の基本的人権を守るためにある最高法規」ということを知った子どもたちに、この法案についてどう思うかたずねると、当然のことながら、憲法の保障する「表現の自由」に違反するのではないかという意見がすぐに飛び出しました。

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「国家の安全っていうけど、それを判断するのはだれ?」

まったくその通り。子どもたちもまずこの点に疑問の目を向けました。

「半沢直樹的なときはどうなるの?」

大人だけでなく子どもたちもはまっている人気ドラマを例に挙げて、内部告発のような、弱者や一般人が大きな組織に都合の悪い情報を明らかにしようとしたとき、それは「特定秘密」だ!ばらしたらつかまえるぞ!となってしまうんじゃないかという危険性を子どもたちはすぐに感じ取ります。

確かに、国家の安全に関わるっていうと、なんとなく説得力があるように感じる……でも、それは国家を揺るがす機密だからダメ!という言い訳は、無限に拡大解釈できる危険性が大!……そうなると、わたしたちの「表現の自由」は大幅に制限されるし、そもそも私たちが民主的に判断する根拠となる「情報」が公開されなくなってしまいます。

「なんか怖い感じがするな」

じわじわと不気味な影が迫ってくるのを敏感に感じ取った子どものつぶやきです。

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「表現の自由が保障されないと、民主的な仕組みはつくれない!」

大人たちはいったい子どもたちの世の中をどれだぐしゃぐしゃにすればいいんだという憤りが子どもたちの中に巻き起こりつつあったある日。子どもたちの中で事件が起きました。それは今ヒット中の映画『風立ちぬ』に使われている荒井由実の『ひこうきぐも』という歌を巡るトラブルでした。

『風立ちぬ』に感動し、その世界観とつながるユーミンの歌が素晴らしいと夢中になっている女の子の前で、ある男の子が『ひこうきぐも』のかえ歌を歌ったのです。自分のイメージをぶち壊されたと思った女の子は、「歌うのやめてよ!」ときつい調子で男の子に訴えました。男の子は、そんな女の子をからかおうという意図もありつつ、やめずに歌い続けました。それを見ていた周りの子たちが、「いやだと言ってるんだから歌うのやめなよ!」と男の子を責め始めます。すると、男の子は、逆ギレし、「なんでよってたかってオレの歌がいやだっていうんだよ!おれの自由だろ」と叫んだのです。しかし、女の子は周囲のみんなが自分を味方してくれていると感じとったのか、

「映画の世界にもぴったりで、みんなもいいなあと感動している歌をあんたの歌うように変えられるとむかつくの!」

明らかに女の子側の意見が優勢です。

こんな authentic なチャンスを学びに取り入れずしてどうする!突然ではありますが、本日のテーマ学習の予定を変更して、憲法の表現の自由をめぐる『ひこうき雲かえ歌訴訟』について徹底討論することにしました。

討論は、実際の裁判と同じスタイルで行いました。

男の子は神妙な面持ちで開口一番

「私が嫌だと言っている人の前でさらにからかうように歌ったことについては、気分を害してしまったと思うので謝罪します……」

おお、スゲエ。どこでそんな高度な作戦身につけてきたの?いきなり本物の法廷での論戦がスタートしたかのような滑り出し。これだから子どもの力は侮れません(authentic な学びだからこそこういうことが生まれるとも言えますが……)。まさか謝罪をされるとは思っていなかった女の子サイドはちょっと面食らった感じです。からかったのは悪かったけど、かえ歌自体は決してネガティヴな内容ではない!と訴えてきました。

「でも、多くの人がいい歌だなあと思っているのを変えてしまうのはどうかと思います!」

女の子は負けずに言い返します。すると男の子が

「あなたは私のかえ歌の一部しか聞いていません。全部をきいたらぼくの気持ちもわかると思います!」

男の子はその場で、自分のかえ歌を歌い始めました。すべての歌詞を聞いてみると、決してひどいものではありません。むしろ独自の世界観が示されていて興味深いぐらいです。

さあ、いよいよ裁判長たるおっちゃんの登場です。女の子におもむろにたずねます。

「男の子のかえ歌が気にいらないあなたの気持ちはよくわかりますが、それはあなたの好き嫌い、あなたの都合ではありませんか?」

すると、賢い女の子の顔がさっと変わります。

「そっか……難しいな……」

女の子は気づいたのです。あれだけ「政府は危険」「大人はひどい」と言っていたことを自分もやろうとしていたことに……。表現の自由を考えることはとても難しいことに子どもたちは気づき始めたのでした。

これは正しいからいい、これはちゃんとしてるからいい、これはふまじめだからダメ……ともっともらしい判断を私たちはしがちですが、結局それは自分たちにとって都合のよい考え方に過ぎないのではないか。その結果、多様な考えを抹殺しているんじゃないか。さらに始末が悪いのは、そのことに気づかず、自分たちには「正義」があると簡単に思ってしまう。そのワナにまんまとはまってしまう……

なぜ「表現の自由」が大事な権利として憲法で保障されているかと言えば、権力者のみならず私たちも簡単に他者の「表現」を気に入らないという理由で受け入れないということがあるからでしょう。権力者は、その大衆心理をうまく操作して、「民意」をつくりあげ、あるひとつの「表現」を是とする方向に持っていきがちである。その防波堤として「憲法」は「表現の自由」を認めているのです。

表現の自由、憲法は、大人の世界の他人事どころか、自分たちの日々の生活に深く関わっていることだと実感する貴重な学びになりました。

RI

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2013年09月27日

おかげさまの手

[1・2年生]

後半に入り、発表に向けての準備を始めていきます。
いくつもの手間をかけてくれる人たちのおかげで、
自分たちがおいしくお米をいただくことができる。
それを伝えるために、今回は、ひとつの手間を手型シートに書いて、
貼付けていくことにしました。
手型は、自分がお世話になっている人、
つまり、目に見えているおかげさまに当たる人のものを使うことにしました。
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その中にひとつ、こんな形の手型がありました。
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飼っているネコの手型を取ってきたとのこと。
なぜネコがおかげさま?
「Aちゃんにとっては、ネコも大事だから?」
「ネコがいると、いやされるから。」
今回のおかげさまは、「人」に限定していたものの、
私たちがみんなのおかげで生きていることに気づかせてくれる
きっかけにもなりました。

どう作業を進めていくか、記入する手間が重なってしまわないように、
イネの作業、機械、イネに必要なもの(機械でないもの)の
グループに分かれて作業をするという
2年生が考えた方法で進めていくことになりました。
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「さっこうって何だっけ?」
「しろかきって何?」
「この機械の名前は何だろう?」
用語の意味をもう一度確認したり、機械の名前を調べたりすることで
納得できることも多い様子。
調べてわかった意味は、忘れてしまわないように、シートの指の部分に
記していきました。
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だんだんと手が増えていっているところです。

AN

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”石”から見えてくる多摩川の軌跡

[3・4年生]



今週は多摩川(上流・中流)フィールドワークで浮かび上がった疑問と発見について議論し追究していきました。
先日の”ふりかえり”である子が図鑑を片手に石灰岩について調べていると、

「あのね、図鑑によると石灰岩の成分は炭酸カルシウムで、それは海の生物に含まれているカルシウム分が堆積してできたって書いてあるけど多摩川は川なのにどういうことだろう?海の一部が多摩川になったのかな?」
と発言しました。

理科の実験で多摩川上流で採集してきた石灰岩に酸をかけることでその成分である炭酸カルシウムと反応し、二酸化炭素が発生することを確認したばかりの子どもたち。
その炭酸カルシウムの正体がなんと大昔の海の生物の死がいだなんてどういうことだろう?と次第に興味が広がっていきました。

資料を読んでみるとなんとやはり海の生物(サンゴやフズリナ、ホウサンチュウや貝など固い殻を持つ生物)が堆積して石灰岩はできているということ。しかしなぜ奥多摩の山奥を流れる多摩川上流部にそんなものがあるんだろう?

するとある子が言いました。
「あっ!!ひょっとしたら昔多摩川は海のそこだったのかもしれないよ。だって前のテーマでエベレストも大昔は海の底でさ、プレートがぶつかり合った力で盛り上がって山になったってやったじゃん!その証拠にエベレストの頂上には海の生物の化石があるんだよ!」
「あ!そうだったー!思い出した!」
「ああ、そうだったね!じゃ多摩川が海だったかもしれないってありえる話かもね。」
とピンとひらめいた様子の子どもたち。

多摩川に関する資料を読み進めていくとこの謎についても記載されていました。
やはり多摩川は、いや日本列島は大昔海の中だったのです。それから長い長〜い時間を経て地形の変化をくり返しながら関東山地が隆起していきました。

「でもまだ関東平野は海の底なんだって!じゃあぼくの家はまだ海の底だ〜!」
「うわー!」
と大興奮の子どもたち。そしてやっと6000年前くらいに今の多摩川の形に落ち着きだしたとのこと。

なんと石灰岩の存在から多摩川の今昔物語が見え始めてきました。そして話は思わぬ方向に。

「なんかで読んだことあるんだけど大陸って1年に1mmくらい動いているんだよ。だから人間は気付かないけどさ、長い時間かけて土地の形はずっと変わっているんだよ。エベレストもそうだしさ。」
「そっかー。そういうことかー。けど大地震とかで一気に変わることもあるんじゃない?」
「そうだよ。プレートがぶつかったら一気に変わるかもよ?」
「だったらエベレストができた時ってどうだったのかな?頂上にいた生き物はさ、一気に盛り上がったんだったら超びっくりしたんじゃないの。海の中にいたのに気付いたら山の上だー!みたいな。」
「わはははは。」
「じゃあさ、今あるこの土地の形は実は変わり続けているんだ。それってすごいね。」
と一つの事象の連鎖から様々なイメージをふくらませていった多摩川石発見隊。

来週はさらに疑問を追究しながら、このテーマで発見した”事象の連鎖”についてまとめていきます。さあ来週もがんばるぞ〜!

YI

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変ぽぽ党の政策

[5・6年生]

先人の努力と犠牲の上に獲得した、民主的に決定する仕組みを活かし、住みよいTCSづくりを目指す「変ぽぽ党」の活動をいよいよ本格的に始動するフェイズに入りました。

政策を提案する際に「やりたいこと」を訴えるのはもちろんだけど「やるべきこと」も無視できない。そんなことをみんなで考えていたら、ある子が

「権利だけじゃなくて義務も大事だってことでしょ」

とサクッと答えるではありませんか。それもおっちゃんの言いたいことはそういうことでしょ、わかってますよ……と勝ちほこらんばかりに挑発した感じで私を見つめる……まあなんて生意気な……でも、このガチな感じがおっちゃんはたまらなく好きなのです。

こういう反応が出てくるところが authentic で transdsiciplinary な探究の素晴らしさです。「話し合いの中身」は「道徳」、「話し方」は「国語」、「民主的な考え方の歴史」「憲法の知識」は「社会」というふうにバラバラに学ぶのが教科学習。だから現実場面で活きて使える知識になりません。ところが、常に学んでいる中味と日々の生活と世の中の動きとをつなげる学びをしていると、「あれ?もしかしてこれは……」というようにどんどん知識のネットワークを広げ、深めてゆくようになる。だから学びと生きることが一体となり、教室やテスト時だけでなく、日常場面で活用できる知識が構築されるわけです。しかもみんなでああでもないこうでもないと「発見」を分かち合うプロセスが伴います。こうしていつまでもぐるぐると知識構築のサイクルを回し続けてゆくことで、お互いの認識を磨きあい、知識をつくりこんでゆく。これが social constructvism ってことでしょう。

お〜っと、話がずれてしまいましたね。子どもたちの様子に戻しましょう。

すみよいTCSをつくるためには、私たちの責任を果たしつつ、やりたいことを押し進めてゆく必要があるという前提は、これまでの学びによってしっかり共有されていることが明らかになりました。その上で、どんなことを政策として提案するか……まずはみんなの意見を自由に出してゆきました。

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「これまでやってたことじゃなくてTCSを改革する提案だよね……」
「変えるって新しいものをつくる場合もあるし、今あるものをよりよくすることもある」

アイデアを考える際に、どういう政策であるべきかみんなで確認しあった後、いよいよアイデアを出し合います。いつもどおりここから先の私の役割は、子どもたちの発言をしっかり書き留めることです。

・朝の読書タイムをつくる(理由)朝、ぼっ〜としている頭をぐるぐる動かすのにいいし、せっかくTCS 100 選をつくったんだから毎日少しずつでも読む機会をつくりたい。さらに語るベ〜のときに自分が読んだ本の中からおすすめを紹介する時間を設けよう!

・学習ゲームを開発しよう(理由)算数の時間にダラ〜んとしたり集中できないし、進まないのは楽しくないから。カードゲームには算数で使う計算や考え方が必要になる。だから算数を好きになるカードゲームをつくろう!

・自分研究の時間を設けよう(理由)自分が研究したいと思ったことを自由にやる時間をつくる。決められたわけではなく自分で決めたことをやることで責任感が育つ。

なかなか面白いアイデアが出てきたじゃないですか。どれも実現してもらいたいものばかり。だからこそ、ここで大事なのはどうやったら実現できるか考えることです。そんなことは百も承知の子どもたちだし、まさに problem ownership の心意気で自分たちの政策を訴えようとする意欲に満ちあふれています。だからこそここで必要なのは

「挑発」

です。

「みんなの出した案はどれも素晴らしいけど、どうしてTCSでこれまで実現されなかったんだろう?それにはきっとやれなかった理由、できなかった理由があるはず。それをしっかりつきとめて、どうすればその『障害』を取り除けるか考えないと、結局、あったらいいなあ、できたらいいのになあという夢物語に終わってしまう。それは政策とは言えないよね。その辺りを徹底的に考え、こうすればできる!っていう現実的な提案をつくりだそう!」

やる気を駆り立て、ハッパをかけるために用いるのではなく、どのような認識を持って取り組むか明確にしてくれるメッセージこそ、TCS流の「挑発」だというのが子どもたちの定義。この定義通り、子どもたちは冷静に「挑発」を受け取り、残り2週間、アイデアを実現する方法についてひたすら練り上げてゆくことに邁進してゆきます。今回のテーマ学習は、「終わりが始まり」にならざるを得ません。テーマ終了後も実現に向けて戦略を抱き、チームをつくり、プランとスキームに従って動き続けなくてはなりません。大変なことは間違いないけど、TCSを「治める力」を持つリーダーとして、そんじょそこらの「プロ」政治家に負けない、「アマ」政策家の本領を見せてやろうじゃないか!

RI

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