東京コミュニティスクール-探究型学習が教育の特長-全日制オルタナティブスクール(小学1年生から6年生)

ホームTCSの概要TCSの教育入学案内TCSコミュニティNPO法人東京コミュニティスクール

2012年11月 アーカイブ

2012年11月02日

相手に伝わるための表現の工夫


[1・2年生]


今週も、身体を使った表現の追究を行いました!


落語に続いて、今回触れてきたのはノンバーバル表現の骨頂とも言えるであろう「パントマイム」。
ストリートパフォーマンスを鑑賞し、目の前で表現に触れることができました。
訪れたのは、上野公園です。
ここは、東京都の文化振興事業であるヘブンアーティストに登録しているパフォーマーの活動場所の一つ。
公園内の至る所で様々なパフォーマンスを行っていました。


相手に伝わるための表現の工夫01パントマイミストのパフォーマンスを探して観に行ったのですが、
パフォーマーの方曰く「パントマイム」ではなく「サイレントシアター」とのこと。
身体の動きや道具を用いながら、ストーリーを音に合わせて一人で表現していました。
マジックなどの驚きもありつつ、笑ってしまうおかしな動き・表情もあり、子どもたちは魅了され「おもしろい!」と興奮気味。
オーディエンスには外国人の方も多くおり、その外国人の方にも伝わっていた様子が伺えました。
これは、まさに私たちが目指すべき身体表現!
楽しむだけでなく、表現の工夫のヒントを発見する機会になったと思います。


あくる日は、振り返り。
「曲に合わせて動きを変えていた。」
「スローモーションになると、どんな動きかよくわかる。」
「一人でも道具を動かせるための仕掛けがあった。」
「言葉を書いて見せていた。」
「表情が細かい。」
などなど、相手に伝わるための表現の工夫について次々と意見が出てきました。


相手に伝わるための表現の工夫02    相手に伝わるための表現の工夫03
そして今回も、出て来た工夫を活かしつつ実際に真似てやってみることに挑戦!
スローモーションでの動きや、声無しで人に座るよう指示することなどをやってみました。
「スローモーションのつもりだけど、早くなってしまう。」
「怒っているところなのに笑ってしまうよ。」
となかなかうまくいきません。
伝わらず「なんで伝わらないんだ!」とイライラした子もいました。
でも、イライラしてもどうしようもない。
声無しで相手に伝えるのは簡単ではないってわかったのだから、
今は出来なくても、このテーマ学習を通して伝えられるよう取り組もう!


さぁ、来週も引き続き身体を使った表現に触れていきます。



EN

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

栄養素ってどんな働きをしているんだろう?

[3・4年生]

今週は引き続き消化器官についての確認からスタートしました。
先週小腸の中にある柔毛という組織で胃から送られてきたドロドロの食べ物から栄養分を吸収するということを学んだ子どもたち。
その柔毛を広げてみるとなんとテニスコートとほぼ同じ面積の約200m2になるそうです。

その大きさを実感するために公園に行き、200m2のサイズを測って線を引いて確認しました。
また、小腸で栄養を吸収したカスが大腸へ送られて最終的に排便されるという消化器官の流れを読み合わせました。

そして2日目からはいよいよ栄養の話。小腸で吸収される栄養とは体でどんな働きをしているのかな?という質問し子どもたちの予想を聞きました。

「カルシウムが骨を作る。牛乳にカルシウムが入ってるんだよ。」
「肉を作る。」
「元気にさせる。」
「健康の元。」

など的を得た意見が色々と出てきました。
それから“エネルギーをつくる”、”体を作る”、”体の調子を整える”という栄養の3つの働きや”五大栄養素”について資料を読み込んでいきました。

体を作り、エネルギーを生み出す栄養素であるたんぱく質についても色々な種類があり、それぞれにいい点と良くない点があることを知り、感心した様子の子どもたち。

「肉の食べ過ぎは血がドロドロしちゃうんだなー。でも吸収しやすい良質のたんぱく質とも言われてるんだね。」
「魚は良質のたんぱく質なんだって!昨日も魚食べたよー!」
「油の取り過ぎは良くないんだねー。」
「なんでも”すぎる”は良くない!」

バランスが大切というキーワードにみんな納得の様子です。
来週も引き続き栄養素について探究していきます。

YI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

映画・絵本で考えを深める

[5・6年生]

子どもたちが「死」についてどんなことを考えているかイメージ
マップを作って探ってみた結果、やはり、自分が死んだらどうなる
かということにすべての関心が向いていることがわかりました。
それも、自分の体が生理学的・医学的にどう変化するかということ
ではなく、自分が死ぬのは漠然と恐い気がするという思いや、死ん
だら死後の世界に行くのではないか……天国や地獄はどんなところ
か……ということばかりイメージしていました。

しかし、「死」について考えるとは、自分の死だけを考えることを
意味しません。自分の「死」は、自分自身で体験することはできず、
「死ぬかもしれない」という恐怖、「まだ死にたくない」という未
練の気持ちとともに、実は、私たちにとって切実な問題は、他者の
「死」に直面することなのです。もし自分にとって本当に大切な人
を「死」によって失ったら……もしかしたらショックで立ち直れない
かもしれない。親を亡くす。恋人をなくす。子どもを亡くす。友達
を亡くす。先生をなくす……自分に「縁」のある大切な人が、死に
よってこの世からいなくなってしまうとはどういうことなのか。
幸いにもこれまでそのような「死」を経験していない子どもたちは、
想像することが難しいようです。そこで、本を読み、映画を見て、
イメージを広げることにしました。

まず、読んだのは、『さようならエルマおばあさん』という写真本
でした。実在した方のドキュメンタリーで、余命わずかと宣告され
たおばあさんを、飼い猫が見守り、語るというスタイルで書かれて
いました。おばあさんの凛とした性格がにじみ出ている見事な白黒
写真とそこに添えられた、飼い猫の視点で書かれた簡潔な文が非常
に効果的です。

エルマおばあさんは、事も無げに、

「死ぬってことはね、魂が、この体を出てこことは別の世界に行く
だけなんだからね」

と家族に告げる。

「ああ、顔が変わってきた……」

ページをめくるにつれて、明らかに写真の中のエルマおばあさんの
体がやつれてきていることに子どもは気づきます。しかし、エルマ
おばあさんの気持ちは、ますます研ぎ澄まされてゆきます。

「わたしはね、これまでの人生で、いまがいちばん幸せだよ。いろ
んな失敗や、つらかったことも、いまはいい思い出だし、仲たがい
した人のことも、いまは許せるから。なぜその人が、あのとき、ああ
しなければならなかったのか、その理由がわかるようになったから
なんだよ……」

そして自分に死の訪れる日を見事に言い当て、従容としてこの世を
去りました。

「エルマおばあさんはどうしてあんなに冷静に死を受け入れられた
んだろう。自分にはちょっと無理」

素直な感想が飛び出します。その一方、

「自分しか知らない歴史は残しておきたいとは言ってたから、何か
を後に残したいという気持ちはあったような気がする」

という「本質に迫る意見」も出てきました。

自らの「死」を受け入れるにしろ、他者の「死」を受け入れるにし
ろ、何かを「受け継ぐ」という要素が重要なカギを握っているとい
う意味では同じなのではないかということが見えてきました。

そこで、次は、内田麟太郎さん作の絵本『なきすぎてはいけない』
を読み解くことにしました。この絵本の秀逸なところは、たかす
かずみさんの巧みに描かれた絵を、読み手がじっくりながめること
で、祖父を亡くした孫がその悲しみを乗り越え、やがて自分も成長
し、親となり、さらに祖父の立場に立って、自分が受け継いだメッ
セージを受け渡す流れをつかめるようになっているところです。
子どもたちは、作者の術中にはまり、細かく絵を読み解くことに
自ずと没頭し、世代から世代へメッセージが渡されてゆくこと。
そして、死という必然のもたらす理不尽に対し、思いっきり「泣い
て」発散してよいこと。でも「泣きすぎてはならず」、「笑って
いる顔」という”自分らしさ”を活かし、

「なくなったものはだれもいきているもののしあわせをいのって
いる。ただそれだけを」

という「祖父」からのメッセージを、まさに作中の「孫」と一体
化したかのように実感したのでした。

最後に、名優ジャック=レモンの遺作となった映画『モリー先生
の火曜日』を見ました。この本については、今さら多くを語ること
はないでしょう。スポーツジャーナリストとして有名な著者が、
筋肉の萎縮する難病になった大学時代の恩師を、毎週火曜日に見舞
ううちに、期せずして人生についての最終講義となった。いわば
「講義録」と呼べる記録をまとめたのが、この本で、全世界でベスト
セラーになりました。映画は原作より劣ってしまうのが常ですが、
これはとてもよくできた映画でした。長年会っていなかった恩師
との死による別れに直面し、自分の生き方を改めて見つめ直さざる
を得なくなり、どう生きてゆくべきか再考するようになってゆく
流れが淡々と描かれ、深い感動へと導かれました。

「……」

映画視聴後に子どもたちも私も完全に絶句。ただ感動したでも、
涙が出たでもない、これまでに感じたことのない不思議な感情に
とらわれたという感想をもらすのが精一杯でした。

大切な、自分に縁ある人の死を通じて学ぶことがある。それは
どういうことなのか、いよいよ次週から、死の悲しみの淵で立ち
直れなくなっている人をサポートする仕事に従事する橋爪さんへ
のインタビューや、これから30年どう生きて行くかを考える、
"人生楽ありゃ苦もあるさ年表"作りを通じて、『私たちは私たち
のために生きている』ということへの追究を深めてゆきます。

RI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

2012年11月09日

まだまだ表現の工夫は無いか?


[1・2年生]


「身体を使った表現方法」の追究も終盤。
最後は、「Mr.ビーン」からの発見を試みました。


「Mr.ビーン」と言えば、ヴィジュアルコメディ。
ノンバーバル表現を駆使して、世界中の人を笑わしてきたエンターテイメントです。
この表現では今迄触れてきたものと違って、多くの人や道具・場所が登場します。
ライブではなく映像ならではの映し方などの演出も出てきます。


最初、ミュート(音無し)で鑑賞してみたのですが、子どもたちは映像からだけでも内容を想像することができたようで、終止笑い声が止まりませんでした。
「ひとを大切にしていなーい。」
とビーンの行動をTCS3つの約束(自分を大切にする・ひとを大切にする・ものを大切にする)と重ねてみる姿もありました。


振り返りでは、
「最初うまくいくけど、最後はうまくいかない。」
「いじわるなこと・バカなことをして、おもしろくする。」
「不思議なことが起こるとおもしろい。」
とストーリーについての工夫がここでは多く挙がってきました。


その他に、
「おもしろいところで、人が笑う声が入る。」
「車が変わっているのは時が絶ったことを知らせているのではないか。」
「別のところを見て、ものを投げることで、『自分は関係ないよ』と表現していた。」
「ここでもスローな動きがあった。」
「病院や道路など、本物の場所でやっていた。」
と、以前にも発見した目線や動きのスピード、音などの工夫も発見していました。


こうして、3つの表現に触れて来た子どもたち。
そこで出て来た相手に伝わる表現の工夫をまとめることで、どんなことを発見してきたか、他にも無いか考えました。
頭からつま先までの体の動きや表情といった身体に現れ出るもの、
どんな気持ちかイメージする感情によるもの、
音や道具など演出に関するもの、
「誰でも楽しめるようにする」「おどろかす」と言った観客に向けてのもの、
オチがあるなどのストーリーに関するもの、
これらの要素が浮かんできました。


さぁここからは、発表に向けての無声劇制作に突入します!


EN

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

健康的な生活とは

[3・4年生]

3週目となる今週は、引き続き5大栄養素について読み合わせを進めていきました。先週末理科実験で炭水化物に含まれる糖質を唾液の消化酵素で分解する実験を行った子どもたち。今週はビタミンとミネラルについて資料を読み込みました。

ビタミンとミネラルが体の調子を整えたり、他の栄養素の吸収を補助してくれる機能を持っていることを知り、3大栄養素である”タンパク質”・”脂質”・”炭水化物”と共にバランスよく毎日の食事でとることが健康的な体を作るために大切だということを知ることができました。

PIC_0281.JPG PIC_0287.JPG

また、ポテトチップスに含まれている油分量を調べる実験を行ったり缶ジュースに含まれる砂糖の量を調べました。85gのポテチに含まれる油量は約30g。すごい量です。またコーラやマックシェイクに含まれる砂糖の量の多さを知り、さすがにみんな驚いた様子でした。

「では健康的に生きていくためにはバランスよく栄養を取れればいいのかな?」と子どもたちに問いかけてみると、最初はそれで大丈夫だという答えが返ってきましたがしばらく考えた後で「ウォーキング」や「ウェイトをつけてランニングする」という発言がありました。そして3週目の最終日は国立栄養健康研究所へ”運動と健康のつながり”をメインにお話を聞きに行くこととなりました。

Unknown-3.jpeg 研究所に到着し、案内された運動用ホールで私たちを待って下さっていたのは健康増進研究部長の宮地さんでした。

「みんな歩くのは得意ですか?まずはいつも通りの歩き方で歩いてみて下さい。」

子どもたちの歩き方を確認してから目線・姿勢(背筋をピンと伸ばす)・足の運び方(踵から降ろすこと歩幅が広くなる)を意識した正しい歩き方を教わりました。

Unknown-5.jpeg

歩き方を練習しながら最初はぎこちなかった歩き方も段々とスムーズになってきました。また1分間の歩数も計測したところ大体125歩/分ということも分かりました。

「健康な生活を送るためには栄養バランスの取れた食事だけじゃなくて適度な運動と適度な睡眠も必要なんだ。でもね、運動って言っても正しい歩き方で歩けばウォーキングもとてもいい運動になるんだよ。エネルギーを燃やせるんだよ。君たちは一日の内どれくらいの時間歩いているかな?」「30分くらいかな。」「多分20分くらい。」「分はよく分からないけど1万歩くらいだよ。」と子どもたち。
「目安としては毎日1時間くらい歩くとちょうどいい運動量になるんだ。意識して1時間は歩く時間を作るようにしてみてね。」

Unknown.jpeg

子どもたちの座る姿勢と立つ姿勢についても背筋をピンと伸ばすことで意識せずに楽な姿勢を取るよりもうんとエネルギーを使うことができることを教わりました。 「君たちはいつも何時くらいに寝ているかな?」「10時」「8時」「9時」 「そうか、10時は少し遅いなー。君たちには10時間は寝てほしいな。せめて9時間は寝てくれよ。人はね、寝ている時に体が作られていくんだよ。だから君たちみたいに成長している子たちにはたくさん寝てほしいんだよ。」

と日常でもできる適度な運動と休息の大切さについてお話を伺うことができました。

その後部屋を移して栄養に関するお話を伺って質問を幾つかさせて頂きました。やはり健康な生活を送るには、健全な食生活と適度な運動と適度な休養のバランスが大切だということに気づかせて頂くことができました。やはりキーワードはバランスなのですね。       

国立栄養健康研究所の皆さまお忙しいところ丁寧に対応して頂き、貴重なお話を聞かせて下さいまして本当にどうもありがとうございました。

YI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

大切な人の死がもたらす悲嘆に寄り添うことの意味

[5・6年生]

エルマおばあさんにしても、モリー先生にしても、自らの「死」を
受容しつつ、この世に残る者に対して「生きる」ことの意味を淡々
と伝えてゆきました。そして、死を看取るものは、そこに近親者の
「死」が介在するからこそ、ただの悲しみを超えて、「なぜ生きる
のか」「どう生きるのか」を心から考える機会を得たのでした。

「死」を媒介とするからこそ「生」について考えることができると
いう一面を知った子どもたち。そんな子どもたちに、改めて、他者
の「死」がもたらす「現実」について、別の perspective から考える
きっかけとして、実際に他者の「死」に寄り添う仕事をしている方
にインタビューする機会を与えました。インタビューするのは、
これまでもずっと『個の尊厳』のテーマ学習の際にお世話になって
いる橋爪謙一郎さんです。橋爪さんは、事故などで傷ついたご遺体
を修復する「エンバーマー」の資格を日本で初めて取得し、その普
及と後進の育成に当たっている方です。私にとって、心から尊敬
する「友人」であり、お互いに新たな領域を切り拓くために邁進し
ているという意味で「同志」でもあります。インタビューは、馬喰
横山駅にほど近い橋爪さんのオフィスで行いました。

P1030097.JPG   P1030098.JPG

事前に、橋爪さんの著書の一部分を読み、その結果わいてきた疑問
を、記者会見風に橋爪さんに質問してゆくというスタイルで進め
ました。

死体は生きている体とどう違うのか?
エンバーミングをするときに本当にご遺体に話しかけながら作業を
するのか?

最初は、死んだ体やエンバーマーという仕事の技術的な部分に対する
好奇心からなされる質問からスタートしましたが、穏やかでありな
がら、自身の強い信念を熱く、真摯に語る橋爪さんの言葉にどんどん
惹きつけられ、それに触発されて、子どもたちから次々と素直であり
ながら意義深い質問が飛び出してきました。

「ふつうの人はあまり楽しいと思わない、つらいと思われる仕事を
しようと強く思えるのはどうしてですか?」

という子どもの問いに、

「ふつうに楽しいなあと思える仕事は他にやりたい人がたくさんいる
でしょ。でも、つらそうに見える仕事には、あまりいい人が集まらな
いと思った。人のつらさに寄り添う人がそんな人ばかりじゃあ困るよ
ね。だから自分がやろうと思ったんだ。悲しみの淵でつらいと感じて
いる人が、生前の生き生きした姿を取り戻した修復されたご遺体を見
て、きちんとお別れできるようになって、ぱあっと顔が明るくなって、
ありがとうございますって心から感謝の言葉を言われることも多い。
だからつらいというよりも、助けになれてよかったという気持ちの方
が強いね。」

と橋爪さんは答えました。

P1030103.JPG   P1030110.JPG

子どもたちがこの言葉を聴いているときの真剣な眼差しを見て、深く
感銘を受けていることが伝わってきましたが、そんなことよりもなに
よりも、自分自身がぐっときてしまっていました。

あっという間に1時間のインタビュー時間は過ぎてしまいました。
死にまつわることばかり話していた1時間余りだったのに、結局、
見事に、『私たちは私たちのために生きている』ということに気づか
されていました。大切な人の死に直面し、悲嘆にくれる人に寄り添
い、なんとか折り合いをつけて生きてゆけるようにサポートすること
を使命として広範に活動なさっている橋爪さんとのインタビューを通
じて、単に「情報」を得たというだけでなく、「他者の死」と「自分
の死」とのつながりについて、さらに深く実感できました。やがて
否応にも直面する「死」を意識し、それを鏡として「生」を考えると
いう流れが自然に子どもたちの中にできつつあるようです。このよう
な素晴らしいお時間を賜り心より感謝です。子どもたちもきっと同じ
思いでしょう。代表して、おっちゃんが申し上げます。

橋爪さん本当に、本当にありがとうございました。

RI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

理科実験「アジの解剖」 

今回の3・4年生の理科実験は、テーマ学習「からだに栄養 こころに栄養」とリンクした「アジの解剖」です。 テーマ学習の中で、消化管について資料を読み込み、胃の大きさを風船で表現したり腸の模型を作ったりしてきた子供たち。では、実際に動物の消化管を見てみよう!と解剖に取り組みました。

0.jpeg

1人1尾のアジを渡し、まずは外からじっくり観察してもらいます。全体の形やひれのある場所をスケッチしたら、「動かせる所をぜんぶ動かしてみよう!」

口が大きく開くことやえらぶたがパッカリ開いて口まで見通せることに驚く子供たち。最初はこわごわ触っていた彼らも、すっかり魚に馴染み、おもちゃや模型でない“本物”の魅力にハマったようです。


そこでいよいよ解剖開始。肛門からあごにかけて解剖バサミで切り、続いて肛門から背骨に向かって切り、そこから90°曲がってエラまで切って肉を取り去ると、窓が開いて内臓が丸見えになります。
みんな初めての解剖バサミも器用に使いこなして、最初の難しい仕事を見事乗り切りました。

0-1.jpeg魚の体にぽっかり開いた窓から見える内臓に、子供たちは大興奮。
「ねー、どれが心臓? この黒っぽいの?」
「このイカみたいなのは何?」

ギュッとお腹に詰まった状態では区別しにくいので、内臓を外に取り出して観察します。
エラをあごの骨から切り離し、ゆっくり引っ張っていくと、食道から腸まで消化管全部がきれいにつながったまま取れます。広げてみると、食道、丸く膨らんだ胃、そのあとに続く腸がよくわかります。

「魚の腸って、短い……」
とつぶやく子。


前日に、テーマ学習で人間の腸の模型(長さ6m!)を作ってその長さを実感していたからでしょう。

0-2.jpeg 今度は、消化管が口から肛門まで一本の管になっていることを確かめる実験をします。

エラを広げると、真ん中に“のど”が見えます。
そこに直径6mmほどの玉(BB弾)を押 し込み、外からしごいて食道を通らせていきます。

「胃まで来た!」
「ほんとだ、透けて見える」
「あれ、胃の中になんかしらすみたいなのが見えるよ!」

そこで、胃を切り開いて中身を観察してみることにしました。出てきたのは……少し柔らかくなった小魚や小さなイカ。消化される途中と思われます。


「まだ形が残ってるけど、これがドロドロのおかゆになるんでしょう?」

と、テーマ学習で学んだことがしっかり頭に入っています。

BB弾の旅を続けましょう。胃の中の食道側とは反対の方に続く穴を見つけてBB弾を押し込み細い管の中を進めていきます。そして……

「出てきた!」

口から入った食べ物が食道、胃、腸を経て肛門から出てくることを実際に目と手で確認できました。

みんな手際よく解剖したお陰で時間があったので、消化管以外のところも観察しました。心臓、背骨と神経・血管、目玉、はては脳まで調べつくす子供たち。ここまでしっかり勉強すれば、実験台となったアジも喜んでくれたことでしょう!



JW

2012年11月16日

3つの約束ってなんだ?


[1・2年生]


テーマ「心に響け」も4週目で折り返し地点。
発表する無声劇の創作にとりかかりました。


この劇の内容は台本があるものを演じるのではなく、子どもたちで内容を創ります。
しかし、どんなテーマにするか制約を設けました。
そのテーマはスクールの理念でありTCSキッズは必ず守らなければいけない約束、
『3つの約束ーひとを大切にする・自分を大切にする・ものを大切にする』。


と、テーマが決まっていても、それを劇にするとなると簡単にはいかないものです。
まずこの抽象的なテーマの“解釈”から始めました。


「3つの約束を守っている時ってどんな時だろう?」と問うと、
「自分をなぐらない。」
「ひとを泣かせたりしない。」
「ものを壊さない。」
などが挙がってきました。でもこれでは、ただの事例に過ぎません。
「良くないことをした時に素直に謝る。」
「誰かを助ける。」
「わざとカンニングさせるとか?」
「けど、それってその人にとって良くないこともあるよね?」
「しかるのも、その人にとって必要な時があると思う。」
「傷つけるのも、悪気が無かったらいいんじゃないか。」
「でも、そうしたら悪気が無かったら何をやってもいいってこと?それは違うと思う。」
「食べものを食べるのも、大切にしていないってなるのか。けど食べないと生きていけない。」
その後もみんなで話し合っていくと、いろいろな要素が見えてきました。


「同じことでも、状況や見方によって守っていたり守っていなかったりするのかな。」
と、Perspectiveな見方が出てきたところで、
「ひとを大切にする」「自分を大切にする」「ものを大切にする」約束ごとに3グループに分け、各グループでどんな劇にするか考えてみることにしました。
机を突き合わせ、白い紙にアイデアを書き出そうと…。
しかし、なかなか浮かばないようです。


そんな時、ある子から出てきた一言。
「ひとを大切にするシーンを考えたら、他の約束のことは考えなくていいのかな?ひとを大切にすると、自分が大切にできていない時もあると思うんだけど、それでいいのかな?」
その発言を受け、
「一つだけでも守れていればいいのか、全て守れているべきか、どうあるべきだと思う?」
とたずねると、
「全て守っているべきだと思う。」とのこたえ。
となると私たちが劇で演じるべきなのは、約束一つずつを守っている状態ではなく、3つ全てを守っていることを表現するべきだとの話に。


その後、実際にからだを動かし即興でシーンをつくってみました。
子どもたちは自ら道具を用意しノリノリで演じます。
その内容を見ていると、自然と3つの約束が混じっていました。
来週は、各自のアイデアを持ち寄り、内容決定のもと演技に入ろう!


EN

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

健康のバランス

[3・4年生]

テーマ学習の折り返し地点となる4週目は、まず国立栄養健康研究所訪問の振り返りからスタートしました。
教わったことを整理することで大切なこと体験が経験化されていきます。

「人は一日一万歩歩くと体にいいんだって。」(子ども)「それはなんでかな?」(私)
「やせる。」(子ども)「やせると何で体にいいの?」(私)「脂肪が無くなって病気の予防になるから。」(子ども)
「体が丈夫になるし体力がつくから運動はいいんだよ。」(子ども)「歩く時のポイントは1背筋をまっすぐ、2歩幅を大きく 3前を見る」(子ども)「なんで歩幅を大きくすると良い歩き方なんだろう?なんで前を見て歩くといいんだろう?」(私)
「歩幅を大きくすると足がピンと伸びるし、筋肉や腱の運動になるんだよ。あとね、前を向いて歩くと人との接触がなくなるんだよ。」(子ども)
「背筋を伸ばして歩くと普段の姿勢も良くなるし、そうすると眠くならないしエネルギーも使えるんだよ。」(子ども)

対話をして栄養と健康の先生が言ってたからというだけではなく、原因や理由に対する理解を確認しみんなでシェアしながらじっくりと振り返りを行った後は実際の自分たちの生活を振り返って一日の過ごし方を見直してみました。

まずは数直線に起床時間から朝食、登校時刻その際の徒歩時間(運動量)などを細かく書き出していってもらいました。

「うーーーん、1日40分は運動してるけどあと20分足りないなー。」「朝食は食べない日も多いんだけどどう書いたらいい?」「睡眠はバッチリ足りてる!」「間食も書いていいよね。」

この現状の生活サイクルを元に次は理想の(持続可能な)健康的な生活サイクルの計画を立てます。今までの学びで健康的な生活をするには”健全な食生活”と”適度な休養”と”適度な運動”のバランスが大切だということが分かりました。
これらを自分の生活に取り入れるためにはどんな工夫が必要なんでしょうか?特に栄養バランスの取れた食事メニューを考えるということが子どもたちにとっては最も知恵を使うところです。

絵に描いた餅のような特別なメニューではなく、お母さんも協力してくれそうな準備にもそこまで手間がかからない普段の食事メニューでなくてはなりません。嫌いな食べ物をただ避けるだけではなく、工夫して栄養をバランスよく取れるようなメニュー。どのような工夫がされるのか乞うご期待です。       

YI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

人生楽ありゃ苦もあるさ年表

[5・6年生]

絵本を読んだり、橋爪さんや是枝さんにインタビューしたりして、
死ぬという生理学的な事実について、そして、自分が「感知」でき
る「死」である「他者の死」、それも自分と縁ある人の「死別」が
自分の「生」にどんな影響を与えるのかについて考えてきました。

「死別」にはさまざまな形があります。肉親や友人が突発的な事故
や病によって逝ってしまったら、その「死」は立ち直れないほど大
きな「喪失感」を与えるでしょう。また、いじめなど理不尽な状況
から抜け出せそうもないと考えたとき、自らの命を絶ちたいと思っ
てしまうかもしれません。このように、「死」がやり場のないグリ
ーフ(悲嘆)をもたらしたり、逆に、グリーフが自らを「死」に追
いこむかもしれない中で私たちは生きる宿命にあります。

衝撃的な死が自分にどんな影響を及ぼすかといくら想像してみても、
実感はわかないでしょう。その苦しみを想像し、共感したところで、
自分がそうでない状況で生きている限り、どうしても「他人事」と
して「つらそうだ」「かわいそうだ」と思うことしかできません。
世の中にあふれる「衝撃的な死」について知り、想像し、考えてみた
としても、「自分がそんな境遇になったら生きていけない……」と
いう「恐怖感」をいたずらに増すことはあっても、現実にそのよう
な境遇に陥ってしまったときには一切役に立ちません。理不尽な死
別によるグリーフを乗り越えることなど簡単にできるわけがなく、
なんとか折り合いをつけていくしかない。そんなときに傍らに寄り
添ってくれる人がいることが何よりの支えになる。ひとりでかかえ
ず、わめくときはわめき、泣き叫ぶときは泣き叫び、誰かに支えて
もらえばいいんだよ。そうすればなんとか生き続けてゆけるよ。そ
のことだけよーく覚えておくこと。それが橋爪さんや是枝さんの教
えてくれたことの「肝」だったのです。

だからこそ、私たちは冷静に「不可避な死」について考える必要が
あるというのが今回の学びの大きな意義です。死の衝撃にフォーカ
スするのではなく、死を必然ととらえたとき、死者の人生、さらに
生前ともに生きた日々を思い、それを鏡として自らの生を考えるわ
けです。そのための仕かけの一つが、「人生楽ありゃ苦もあるさ年
表」を書くことです。約30年後、師の「死」に直面するというリア
リティの高い状況を設定し、それまで自分はどう生きているのか、
師の「通夜」に集まったとき、同級生たちとどんな話をするのか、
想像するには、その時点まで自分がどんな人生を歩んでいるかイメ
ージできていないとダメです。そんなの子どもには無理では……
そう思われる方も多いでしょう。大人ですら何十年後の自分を思い
描くことは難しいし、そんなこと意識せずに生きているからです。

しかし、子どもたちは、待ってましたとばかりに、口々に

「早く年表を書かせて」

と言うのでした。

未来年表を書かせるということは、キャリア教育の一環として決
して珍しいことではありません。しかし、師の死をきっかけとして
自分の人生をふりかえるという設定はあまりありません。とはいえ、
この設定が、どうしてここまで子どもの探究心に火をつけたかと
言えば、教師が自らのこれまでの人生とこれから歩みたい人生とを
赤裸々かつ率直に書き表し、子どもたちに見せたからでしょう。

「わあ、そんなことがあったんだ……」

うまくいったときもあれば、さんざんな目にあったときもある。
ただ成り行き任せで生きた部分があれば、じっくり考えて選択した
こともある。人生には浮き沈みがつきものだとわかり、自分たちの
これからの30年を考えるに当たって、気が楽になり、率直に書いて
みようと面白がる気持ちが刺激されたのでしょう。

「苦」を考えるなんて子どもにネガティヴなイメージを植えつけて
しまうんじゃないの?と考える人もいるかもしれません。しかし、
私たちは、理不尽なこと、いやなこと、失敗、恥と無縁に生きる
ことなどできません。そんなことがあっても、塞翁が馬ととらえ、
悔し涙を流しつつも、なんだこのやろう!と嘆きつつも、あきら
めずに粘るとその先に光明あり!というマインドセットこそ求めら
れているのではないでしょうか。

「苦」を「必然」として受け入れつつ、その先に必ず訪れる「束の
間の楽」「一期一会の楽」を目指す。そんなことが、「人生楽あり
ゃ苦もあるさ年表」を書くと見えてきます。

「ここでうまくいかないんだよね」
「ここで失敗するんだよ」

子どもが将来の「夢」について考えるときにこんなつぶやきをもら
すことはないでしょう。しかし、闇があるから光がわかるのたとえ
のごとく、自分に襲いかかるかもしれない「危機」を意識すること
で、その「危機」をも乗り越えたいと思うほどの「夢」かどうかも
明らかになるのです。映画にしろ、劇画にしろ、なぜそのストーリ
ーにのめりこみ、感動するかと言えば、波瀾万丈な人生がそこに描
かれているからではないでしょうか。にもかかわらず、「安定」し
た人生こそ「是」であり、そこからちょっとでも外れたら終わりと
いう「脅迫観念」が生まれ、世の中を支配してきました。しかし、
そもそも人生は予見不可であり、あれこれやってみて、うまくゆく
ときもあればそうでないときもあるけど、なんだかわからないが
このことに打ち込まずにはいられないというものを見つけて生き抜
いたときに、充実した生があると言えるのでしょう。

「おっちゃんはやりたいことやったんだ。しかし、まあぶざまな部
分満載だね。よくこれであきらめなかったね」

そんな"歩み"に触発されて子どもたちは、嬉々として年表づくりに
取り組み始めました。いったい、子どもたちはどんなことを考え、
どんな「人生」を描くのか……楽しみです。

RI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

2012年11月22日

テーマ学習発表会11/30

TCSテーマ学習発表会のご案内


東京コミュニティスクール(TCS)のテーマ学習では、1年間に6つの探究領域を学びます。ひとつの探究領域のもとでクラス毎にテーマが設定され、約6週間単位で活動が行われていきます。
(発表までの6週間、子どもたちが学んできた様子の詳細は、探究テーマ一覧表よりご覧ください。)

テーマ学習の成果を発表するテーマ発表会では、保護者だけでなく、一般の方々にも参加していただける機会になっています。(ご希望の方は、下記要領にてお申込みください。)

子どもたちは、どのようなプロセスで、どのようなことを学んでいるのか・・・。
ぜひ、直接子どもたちの様子を見に来てください。


               記

【日時】 2012年11月30日(金) 9:30~11:30頃

     9:30        開場
     9:30~9:35   イントロダクション
     9:35~10:05  (3・4年生)「からだに栄養・こころに栄養」
     10:05~10:35 (1・2年生)「心に響け」
     10:35~10:45 休憩
     10:45~11:20 (5・6年生)「個の尊厳」
     11:20~11:25 総評

【会場】 セシオン杉並  2階 視聴覚室
     東京都杉並区梅里1丁目22−32
     (東京メトロ丸の内線「東高円寺」駅より徒歩5分、地図はこちら
     ※車でのご来場はご遠慮ください。

【お申込み・お問合せ】
 東京コミュニティスクール
 E-mail:school@tokyocs.org
 TEL:03-3313-8717
 ※迷惑メール防止のため、「@」を全角にしています。お手数ですが、半角に変更してから送信してください。

  お申込みの際は、
   件名に、「テーマ学習発表会参加希望」とし、
   本文に、以下の事項をお知らせください。
     1.参加者氏名(すべて記入ください)
     2.(保護者の方は)お子さんの現学年
     3.E-mailアドレス
     4.電話番号(最も連絡のとりやすい番号)
     5.TCSを知った経緯(知人、ネット検索、新聞名・雑誌名など)
     6.質問事項等(あれば)


2012年11月23日

3つの約束をどう表現する?


[1・2年生]


子どもたちが目指すのは、TCSの理念「3つの約束(ひとを大切にする・自分を大切にする・ものを大切にする)」を表現する無声劇の制作。
今週もストーリー作りから入りました。


※発表内容に関係する具体的記述を避けること、ご容赦ください!


先週の話し合いから、3つの約束を全て守っている時を演じようとなった子どもたち。
「ひとを大切にする」ことが「自分を大切にする」ことに繋がらないか、
そしてその「自分を大切にする」ことが「ものを大切にする」ことに繋がることはないか、
各自が持ち寄ったアイデアを基に考えてみることにしました。
子どもたち各々のアイデアが、どの約束に関係するか書き出してみると、
「いや、このシーンは『自分を大切にする』だけでなく、『ひとを大切にする』にもなっていると思う。」
「『ひとを大切にする』ことをして、喜ばれると自分も嬉しいから『自分を大切にする』ことにもなるんじゃない?」
そうして話をしていくと、ストーリーがだんだん見えてきた!
そこで、役にわかれ演じてみることに。


やってみて、ビデオに撮ったものを見直すことを何度か繰り返していくと子どもたちからも
「こうしたらどう?」とアイデアが出てきます。
ただ、まだ相手に伝わるまでのパフォーマンスにはなっていません。
「今、この人はどういう気持ちなの?」
「そんなに早く励まされるものかな?」
来週はどうしたら相手に伝わるか、心に響くパフォーマンスになっているかを追究していきます。


EN

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

”こころ”の栄養について考える

[3・4年生]

早いもので今週でもう5週目となります。先週まで健康的な生活を送るために必要な”からだ”の栄養について色々と考え、自分たちの持続可能な理想の24時間のライフスタイルについて計画したり栄養バランスの取れた食事メニューをじっくりと検討してきました。

「バランスの取れた食事と適度な運動と休息が取れていれば私たちは本当に健康でいられるのかな?」と子どもたちに投げかけてみるとすぐに「あと”こころ”の栄養でしょ!テーマタイトルにあるから分かるよ!」と返事が返ってきました(笑)。

「じゃあ、”こころ”の栄養っていったいどんなことだろう?」と問いかけると「うれしいこと」、「楽しいこと」「面白いことや笑えること」「仲のいい友達と遊ぶこと」「夢について考えること」「空想の世界にはまること」「心があったかくなるようなこと。ココアを飲むとかさ。ココアは心も体もあったかくなる。」「ポジティブな気持ちになること。TCSフェスティバルやミラクル・ハイパーステージは年に一度だし、やる気になるからぼくにとっては”こころの栄養”だ。」

など色々な考えが出てきました。逆にネガティブな気持ちになるようなことやいじめなどは心に不栄養だそうです。確かに体が元気なだけでは本当に元気で健康とは言えません。

まずそれぞれの子どもが感じる”こころ”の栄養についてシェアしてから、次に自分たちをじっくりと振り返って今まで自分たちが出会ってきた辛いことや苦しいこと、乗り越えるために努力した壁やがんばった出来事などをイメージしながらその時支えになった言葉や気持ち・考えなどを思い出して自分の背中を押してくれるような応援の言葉・支えの言葉・勇気が出るような言葉について考えました。

みんな1年生の頃のことや大変だった時のことを思い出しながら少しずつ励ましの言葉が浮かんできています。来週末はいよいよ発表会。
もう1週間ラストスパートでがんばろう⭐ 

YI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

30年後の自分になりきる

[5・6年生]

家の人にもなるべく見せず、自分ひとりであれこれじっくり考える
のを楽しむようにということでホームワークにした「人生楽ありゃ
苦もあるさ年表」づくり。

「ねえ、みんなの年表を発表するんでしょう?」

授業前からいつもよりそわそわした様子の子どもたち。なんとなく
はずかしそうでもあり、反面、早く発表したいようでもあり、いず
れにせよ楽しんで考えぬいた末に、納得できるものができたという
手応えを感じているのが表情にありありと出ていた。

早速、ひとりずつどんな年表になったのか語ってもらうと、それぞ
れの個性がしっかり出ているとっても面白いものができあがってい
た。

「高校の終わりになってやっと勉強しなきゃと目覚め、猛勉強し始
めた」
「高校のときにネットを使ったビジネスを始める」
「大学時代にアメリカに留学し、そのときに環境を守る活動をした
ことがテレビ局への入社の際に役立った」
「小動物を救う団体を立ち上げたものの資金集めに苦労する」
「自分が提案した番組企画が通らずめぐまれない時代を過ごす」
「大学院では、交通と都市計画と自然保護とを一体化して考える
○○研究所に進学する」
「40歳を過ぎて映画監督として生きてゆくことを決意し、TCSのこと
を映画化し話題を呼ぶ」
「自然と住居とオフィスと店とをうまくまぜたまちづくりをプラン
するようになる」
「大学時代に出会ったエジプト人と結婚する」
「仕事が多忙で子育てに悩む」

誰ひとりとして、世間一般において「ふつう」と考えられている職
業に進むものがいなかったのは、TCSらしさなのだろうか。しかし、
それ以上に驚かされたのは、将来なりたい職業を口にするだけで終
わらないところだ。小学生なら、野球選手、サラリーマン、ケーキ
屋さん、研究者と職業名を挙げ、どうしてなりたいか、どんなこと
をしたいかを言えればそれで御の字であろう。それなのにこの子ら
は、「自分がなりたいもの」になるまでの過程、そしてなってから
の過程においてどんな紆余曲折があるかも含めて、具体的かつ詳細
に考えてきていた。どんな努力を強いられ、どんな出会いがあり、
さらに、うまくゆくときもあれば、失敗するときもありながら、な
んとか目指すものを追い続けるというストーリーが見事に年表に表
現されていたのである。

P1030239.JPG   P1030241.JPG

「環境っていうけどどんなことに関心を持っているの?」
「アイデアを紹介するっていったいどんなことなんだろう?」
「単に借金するんじゃなくてみんなから出資してもらってお金を集
めるやり方かもね」

お互いの発表を聞きながら、建設的なつっこみを入れあうことでイ
メージを明確にし、年表のリアリティがさらに増した。こうして、
年表をじっくり発表し終えた後、30年後の自分として演じることに
ほとんど抵抗はなくなっていた。それどころか、もう30年後の自分
に「なりきって」いた。

突然、師の訃報に接して集まったら、どんな行動をとるだろう……

悲しみはありながら、今、抱えている仕事のこともあり、きっと通
夜の会場でちょっと時間ができたら、そこで仕事を始めるだろう。
久しぶりに会ったら、そこでお互いの近況を報告しあうだろう。
始めはなんとなくぎこちなく、固いムードも、だんだん柔らかくな
っていき、師の思い出とともにTCS時代の思い出話に花が咲くだろう。
それは「悲しい」というより「懐かさ」に満ちたものだろう。ひと
しきりそんな話が済むと、気の許せる仲間との語らいゆえに、今、
自分が抱えている悩みを語ることもでてくるだろう。そうこうして
いるうちに、式が始まる……

そんな流れが見えた途端、彼らは「なりきっている」がゆえに自然
に内から発せられる「声」としてセリフが口をついて出てきた。見
事な即興劇が始まった。

最初のセッションは、とにかくダラダラとしたやりとりが続いた。
それだけで1時間以上かかった。しかし、それは決して無駄なプロ
セスではなく、30年後の自分自身の特徴をさらにしっかりとつかみ、
相手とどのような語り合いが展開するのかより深く理解することに
つながった。

こうして、2回、3回とセッションを積み重ねてゆくうちに、どん
どんとお互いの「らしさ」が明確になってゆき、必要なやりとりだ
けがすくいとられて、より自然で、洗練された「劇」となっていっ
た。

もはや彼らが小学生には見えなくなっていた。未来の自分を生きて
いる立派な「社会人」となっている。「通夜劇」の見通しはつき、
「個の尊厳」もいよいよ大詰めを迎えた。

RI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

2012年11月30日

心に響く表現になっている?


[1・2年生]


テーマ「心に響け」、早くも最終週を迎えました。
今週は、ひたすら無声劇の練習を積み重ねながら内容・表現を練り続けました。
もう、「生みの苦しみ」の一週間でした。


今回の無声劇の内容は、登山をテーマにしたもの。
誰も登ったことのない山を前にして、周囲にバカにされながらも一人ずつ仲間を集めて登頂するという内容です。
しかし、表現したいものは登山の大変さだけでなく、あくまでも「3つの約束(ひとを大切にする・自分を大切にする・ものを大切にする)」です。
今回は「千里の道も一歩から」と題し、「一度だめでも諦めないで一歩ずつでも進もう」というメッセージを伝えようとなりました。


子どもたちと、
「今の演技がどう3つの約束と関係しているの?」
「本当にそれで励まされていると言える?」
「今、どんな気持ちなんだろう?その気持ちを表すにはどんな身体の動きや表情をしたらいいのだろう?」
とひとつひとつのシーンについて、実際に劇をしながら確認していきます。


子どもたちからも、よりよい表現にしようとアイデアが出てきます。
「足音を太鼓で表してみる?」
「太鼓だけではなく、木琴も入れる?山に登れた時に目立たせるように。」
「雨の音を探さなくてと鈴に見立てたらいいんじゃない?」
「鈴を持つ手を変えながら降ると動いても鈴が見えなくなるよ!」


もちろん、一人ではなく全員で一つのものをつくるのですから、思い通りに進まないこともあります。
「こうしようよ。
「えー、こうした方がいいよ。」
意見の食い違いも起こります。


でも、練習を通して自分たちで解決する姿勢も見えてきて、
「一人ずつジャンプするリズムが揃ってない。もう一回やろう。」
「僕がこう動くから、そしたらこうしてね。」
と、子どもたち同士で声を掛け合い改善していく姿も見られました。


ビデオに撮り、自分たちのパフォーマンスを確認したり、見学者に見てもらいコメントをもらいながら、どこが伝わりにくいか、どうしたらより伝わりやすくなるか、ということについて磨きをかけていきました。


そうして本番ギリギリまで、練習を重ねに重ねていきました。
そして、本番。
「緊張するー。」
「○○ちゃんと肩組むの恥ずかしくなってきた…」
と言いつつも、息を合わせ堂々と上演していました!


子どもたちの懸命さにオーディエンスの中にはあたたかい気持ちになった方もいたようです。
伝わったところも伝わらなかったところもありました。
子どもたちは伝えることの難しさと伝わった喜び両方を実感できたことでしょう。
相手に伝わる表現は今後も重要なこと。
今回のテーマで学んだことが役立つことを願います。



EN

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

テーマ発表に向けて

[3・4年生]

今週末はいよいよテーマ発表会。
アウトプットの製作と発表練習に打ち込む週となりました。 今回のアウトプットは健康的な24時間の生活を計画した円グラフと栄養バランスがとれた食事メニュー、そして『勇気宣言』です。


みんなそれぞれに自分をじっくり振り返り、自分を励ます言葉を『勇気宣言』として考え出しました。

今回はアウトプットが3種類あるので一つ一つを丁寧に仕上げていくことにかなりの労力がかかります。
書いては書き直すというプロセスを何度も繰り返しながら少しずつブラッシュアップされていきます。最後までに丁寧に仕上げるという自分のアウトプットへのこだわりが大切ですがせっかくいい所までできていたのに管理が雑でアウトプットが破れてしまうというハプニングもありました。”モノを大切にする”というスクールの3つの約束の重さが身にしみます。

また栄養バランスの取れた食事メニューについては栄養素が体内でどのような働きをしてくれるかについても調査しながら作成していきました。そして平行して発表練習に励みます。

さあ、どんなテーマ発表会になるでしょうか?楽しみです!!

YI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。

「演じる」から深まり、広がる「未来像」

[5・6年生]

「動物保護と街の開発の間にどんな関わりがあるのかな?」

ある子は、将来、小動物を保護する団体を作りたいと年表に書き込んで
いました。別の子は、住居とオフィスと自然とをバランスよく組み合わ
せた街づくりをしたいと考えていました。そんな二人の子が、環境保護
という観点で協力したというやりとりが即興劇の中で生まれました。
そこで、冒頭のようなつっこみを入れたところ、

「う〜ん……」

口ごもるだけで何も答えられず頭を抱えてしまいました。自然・環境保
護と都市開発を両立させた理想の街づくりをしたいという思いを口にし
たものの、その具体像があいまいだということが露呈したのです。

これをきっかけに子どもたちはみんなで知恵をしぼり始めました。なん
とか即興劇の流れを保持するために、動物保護と街づくりとをつなげよう
とし始めたのです。

「野生動物が住宅街に出てきちゃうのを防ぐんじゃないの?」

ある子が言うとその意見に呼応して、

「里山が大事だというのを聞いたことがある」

自然を放置するだけだと荒れ放題になり、かえって野生動物の生態系が
乱れます。日本には人が自然に適度に手を入れて、動植物と人間とが共存
してサステナブルに暮らすための「里山づくり」という発想があると知っ
ている子がいました。しかし、そのアドバイスもいまひとつピンとこな
かったようで、未来の街づくりプランナー君は、

「街を動物領域と人間領域に分ければいいのかなあ……」

と相変わらず、人と動物、町と自然とを分離する発想に縛られ、融合し
ようという考えには至りません。だからといって、子どもたちは、短気
にならず、簡単にあきらめず、みんなでアイデアを出し合って、悩んで
いる子が、なんとか自分なりの発想にたどりつけるように後押しします。

「もしかして、自然を守るって言ってるだけで、自分の気にいった建物
だけつくれればよいと思っている悪徳会社なの?(笑)」

と、誰かがユーモアを含みつつ"挑発"すると

「そんなわけないじゃん!」

と反論する。

里山について書かれている資料を見つけ出して、それを読みつつ、みんな
とやりとりを積み重ねてゆくうちに、自分が何をしたいのかが次第に見え
てきた未来の街づくりプランナー君。ようやく納得できる考えがまとま
った様子だったので、劇を再開すると……

「野生動物が人の住むところに出てきてしまうのは、人が自然に手を加え
ないで放ってしまうからです。したがって、私のプランでは、まず、里山
の環境をとりもどすことを考えます!」

と熱く語るではありませんか。より具体的で、納得性が高まったセリフに
みな拍手。自分の将来像が、より進化し、深化した瞬間です。

他の子にとっても、この子の悩みは決して他人事ではなく、まさに「他人
のふりみて我がふり直せ」という気持ちを刺激したのも面白いことでした。

女子アナになりたいと言っていた子は、原稿をただ読むだけの仕事を目指
すのではなく、自分の伝えたいことをテレビというメディアを通じて報道
したいという思いがセリフに表れていないことに気づきました。さらに、
そもそも、自分はどんなことを、なぜ伝えたいと考えているのか……そこ
まで深く突っ込んで考えているの?という”挑発”に応えなくてはいけない
という気持ちが芽生えてきたようです。すると、「女子アナをやっている」
と言っていただけのセリフが、「児童虐待の現実を見つめ、それをどう
なくしてゆくか考える番組を作ろうと苦労している」というふうに変わり
ました。

ただひたすら即興劇を繰り返すと、30年後の未来と現在とを行き来する
「時間旅行」をせざるを得なくなります。このゆさぶりを通じて、漠然
と"やりたいなあ"と思いついたに過ぎないことが、より詳細で、現実的な
イメージへと変化してゆきました。その結果、”自分がやりたい”だけで
なく、”みんなのためにもやらなければならないこと”なのだという使命
感へと高まっていったと言えるでしょう。自分だけでなく私たちのため。
「私たちは私たちのために生きている」ということが自分らしさを輝か
せること、つまり、「個の尊厳」につながっていることが、即興劇で見
られる30年後の子どもたちの姿から自ずと明らかになったのでした。

たまたまテーマ発表会の前日に、インターナショナルスクールの先生方
が見学にいらしていて、その方々の前で、本番さながらに劇をお見せす
るチャンスを得ました。自然で、どこまでが演技なのかまったくわから
ず、アラフォーになりきっている子ども達の姿に先生方は感激しきりで、
子どもたちもその反応に大きな手応えを得た感じでした。

しかし、最大のヤマ場は、実は、この劇のあとに、子どもたちが読む弔辞
にありました。これは、この学びの「最終評価」、いわば「テスト」の
ようなもの。自分らしく生きつつ、みんなのためにやらねばならぬことに
たくましく挑んでゆくことを高らかに宣言し、聞き手の心を打つことが
できれば合格ですが、おざなりの美辞麗句を並べただけで、思いが伝わ
らなければ、ミッション・インコンプリート……なんともシビアでありな
がら、だからこそ authentic な学びと言えるのです。本気でミッションを
やりきったなら、自ずと思いが弔辞に現れるはずです。

したがって、いかに Gerating Participant である探究教師と言えども、事
前に弔辞に手を入れることはできません。多くのオーディエンスの前で、
いったいどんなことを語るかは子どもたちに委ねられました。

「緊張するなあ……」
「まだ最後の部分が決まらない……」

子どもたちのつぶやきを耳にしつつも、私にできることはもはやありま
せん。そろそろ私は「天」に登る潮時を迎えました。

RI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。



NPO Tokyo Community School 
特定非営利活動法人 東京コミュニティスクール 


〒164-0001 東京都中野区中野1-62-10 
TEL: 03-5989-1869  FAX: 03-5989-1649 
e-mail: school@tokyocs.org