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大切な人の死がもたらす悲嘆に寄り添うことの意味

[5・6年生]

エルマおばあさんにしても、モリー先生にしても、自らの「死」を
受容しつつ、この世に残る者に対して「生きる」ことの意味を淡々
と伝えてゆきました。そして、死を看取るものは、そこに近親者の
「死」が介在するからこそ、ただの悲しみを超えて、「なぜ生きる
のか」「どう生きるのか」を心から考える機会を得たのでした。

「死」を媒介とするからこそ「生」について考えることができると
いう一面を知った子どもたち。そんな子どもたちに、改めて、他者
の「死」がもたらす「現実」について、別の perspective から考える
きっかけとして、実際に他者の「死」に寄り添う仕事をしている方
にインタビューする機会を与えました。インタビューするのは、
これまでもずっと『個の尊厳』のテーマ学習の際にお世話になって
いる橋爪謙一郎さんです。橋爪さんは、事故などで傷ついたご遺体
を修復する「エンバーマー」の資格を日本で初めて取得し、その普
及と後進の育成に当たっている方です。私にとって、心から尊敬
する「友人」であり、お互いに新たな領域を切り拓くために邁進し
ているという意味で「同志」でもあります。インタビューは、馬喰
横山駅にほど近い橋爪さんのオフィスで行いました。

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事前に、橋爪さんの著書の一部分を読み、その結果わいてきた疑問
を、記者会見風に橋爪さんに質問してゆくというスタイルで進め
ました。

死体は生きている体とどう違うのか?
エンバーミングをするときに本当にご遺体に話しかけながら作業を
するのか?

最初は、死んだ体やエンバーマーという仕事の技術的な部分に対する
好奇心からなされる質問からスタートしましたが、穏やかでありな
がら、自身の強い信念を熱く、真摯に語る橋爪さんの言葉にどんどん
惹きつけられ、それに触発されて、子どもたちから次々と素直であり
ながら意義深い質問が飛び出してきました。

「ふつうの人はあまり楽しいと思わない、つらいと思われる仕事を
しようと強く思えるのはどうしてですか?」

という子どもの問いに、

「ふつうに楽しいなあと思える仕事は他にやりたい人がたくさんいる
でしょ。でも、つらそうに見える仕事には、あまりいい人が集まらな
いと思った。人のつらさに寄り添う人がそんな人ばかりじゃあ困るよ
ね。だから自分がやろうと思ったんだ。悲しみの淵でつらいと感じて
いる人が、生前の生き生きした姿を取り戻した修復されたご遺体を見
て、きちんとお別れできるようになって、ぱあっと顔が明るくなって、
ありがとうございますって心から感謝の言葉を言われることも多い。
だからつらいというよりも、助けになれてよかったという気持ちの方
が強いね。」

と橋爪さんは答えました。

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子どもたちがこの言葉を聴いているときの真剣な眼差しを見て、深く
感銘を受けていることが伝わってきましたが、そんなことよりもなに
よりも、自分自身がぐっときてしまっていました。

あっという間に1時間のインタビュー時間は過ぎてしまいました。
死にまつわることばかり話していた1時間余りだったのに、結局、
見事に、『私たちは私たちのために生きている』ということに気づか
されていました。大切な人の死に直面し、悲嘆にくれる人に寄り添
い、なんとか折り合いをつけて生きてゆけるようにサポートすること
を使命として広範に活動なさっている橋爪さんとのインタビューを通
じて、単に「情報」を得たというだけでなく、「他者の死」と「自分
の死」とのつながりについて、さらに深く実感できました。やがて
否応にも直面する「死」を意識し、それを鏡として「生」を考えると
いう流れが自然に子どもたちの中にできつつあるようです。このよう
な素晴らしいお時間を賜り心より感謝です。子どもたちもきっと同じ
思いでしょう。代表して、おっちゃんが申し上げます。

橋爪さん本当に、本当にありがとうございました。

RI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。



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