タイトル:詩人の旅
探究領域:意思表現
「パトス」の動きを「ロゴス」でとらえる。しかもそれは単なる「客観的説明」であればいいというものではなく、書き手と読み手との間に深い「共感」が芽生えることを目指している。はっきりと分断されて、つながることが不可能である「我」と「汝」との間になんとか橋をかけるために書かれた表現が「詩」になるのでしょう。
いきなりの哲学チックな文に当惑なさったかもしれませんが、「詩」を書くことの根源をおさえずして、なんとなく子どもらしいメルヘンチックな世界が描かれればよい……というのなら、あえて「詩人の旅」などという探究を行わなくてもよいでしょう。感情を言葉としていかに凝縮できるか考え続けるところにこの学びの本質がある。このコンセプトを探究教師がしっかり胸に抱いてともに子どもと学ぶことが大事だ!ということをまずはお伝えすることからスタートしたかったのです……
いつものようにメタメタマップを使って、子どもが「詩」についてどんなことを「知」っているか探るところから学びはスタートしました。
「詩というのはね、ほんとうは聞こえないことを書くと思う」
「しゃべらないはずのものの気持ちとか書くんじゃないかな」
おいおい、君たちはなんということから語り始めるのかね。いきなり「詩」の本質に関わるようなことが飛び出してきてしまいました。
「詩の書き方はふつうの文と違う気がする」
「でもどう違うのかわからない……」
詩の表現「形式」への疑問も上がってきました。
子どもたちが今、「詩」について「知」ってることが見えてきたところで、表現したい!という「詩心」を誘発すべく、早速、春の息吹あふれる外へ飛び出すことにしました。プチ「旅」として選んだ場所は新宿御苑。スクールからほど近く、この時期はまさに百花撩乱です。
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八重桜がまだ咲き誇り、ツツジが咲き始め、ハナニラが可憐な白いじゅうたんをしきつめます。濃淡いりまじるさまざまな新緑とあいまって、まさに「色とりどり」です。
詩作のための題材を選ぶ……そのための詳細な観察記録をつける……そんなのはあとあと!せっかく平日で訪れる人も多くない開放感ある空間に来たんですから、まずはのんびりと午後の昼下がりを過ごすことから。すると自ずと心も解放されます。
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一段落つくと、自然な衝動として、広い公園をあちこち探検したくなります。どうぞ、自由に行ってらっしゃい。そのときにもしこれは詩になりそうだというものがあったら見っけもんだね……ぐらいの「ゆるゆる」の指示(というほどのものでもないが……)だけ出して送り出します。
これだけ花が咲いているんだから花を題材にするかな……と思いきや、紋切り型の「花見」を楽しむ大人たちは足を踏み入れない雑木林の中に、子どもたちは魅力を見出します。「花より団子」ならぬ「花より雑木林」です。チャンバラしてみたり、重い石をみんなで動かしてみたり、ただ遊んでいるだけで、とても詩の題材を見つけにきたようには見えません。
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ところが、不思議なことに突然
「おっちゃん、詩ができたかも。書いていい?」
遊びをピタッとやめ、心地よい芝生に寝転がり創作し始めます。
(芝生でくつろぐって気持ちいい!芝生の気持ちを詩にしてみたいな……)
(あそこに忘れられたようなベンチがある。あのベンチはどんなこと考えてるんだろう)
(林に落ちている枝の生涯は……)
観察用紙を片手に義務的な題材ハンティングをしてもまったく見えてこない詩の題材が次々に浮かんできます。開放的かつ開放的な気分になったとき、実感とともに自然にわいてきた詩心に従って、気負わず、詩らしきものを書き残し始めました。「詩」とはどんなものなのかはっきりしたイメージは持てていませんが、その前提として必要不可欠な「詩心」を子どもたちは実感しました。
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翌日、詩に書いてみたい題材を見つけた子どもたちに、どんな「形式」や「技」を詩人は使っているのか知る学びを行います。工藤直子さんの『のはらうた』を面白がらない子どもはまずいませんが、メタメタマップで子どもたちが予想した「ものの気持ちになりきる」という大事な要素が詩にはあります。対象として客観的に眺め、観察し、説明するのではなく、対象の中に没入して、まさに「主観的」に語るのが詩です。
この他にも…… 同じ音を繰り返したり、擬音語・擬態語を利用したり、同じ言葉から別の意味を連想させたり、二つの言葉を対比したり、漢字を分解してみたり、ダジャレにしたり、いろいろな工夫をして、面白く!心に直撃するように書くのが詩なのかも……という意識が子どもが生まれてきたようです。それよりなにより、「詩って面白い!」という思いが満ちあふれ、早くも詩作の面白さにはまってしまいました。
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旅に出て詩心を揺り動かされたものを、技を使って表現してみると、心を動かす「ことば」が生まれる。それが「詩」……ということで最初の旅は、「小江戸」川越へ。詩人の旅の始まりです。
RI
※TCS2014年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。
探究領域:意思表現
[3・4年生]
言葉とイメージ。言葉と感覚。言葉と感情。この間には大きな隔たりがあります。その深い間隙をなんとか乗り越えようとつむがれるもの。それが「詩」ではないかと私は思います。「パトス」の動きを「ロゴス」でとらえる。しかもそれは単なる「客観的説明」であればいいというものではなく、書き手と読み手との間に深い「共感」が芽生えることを目指している。はっきりと分断されて、つながることが不可能である「我」と「汝」との間になんとか橋をかけるために書かれた表現が「詩」になるのでしょう。
いきなりの哲学チックな文に当惑なさったかもしれませんが、「詩」を書くことの根源をおさえずして、なんとなく子どもらしいメルヘンチックな世界が描かれればよい……というのなら、あえて「詩人の旅」などという探究を行わなくてもよいでしょう。感情を言葉としていかに凝縮できるか考え続けるところにこの学びの本質がある。このコンセプトを探究教師がしっかり胸に抱いてともに子どもと学ぶことが大事だ!ということをまずはお伝えすることからスタートしたかったのです……
いつものようにメタメタマップを使って、子どもが「詩」についてどんなことを「知」っているか探るところから学びはスタートしました。
「詩というのはね、ほんとうは聞こえないことを書くと思う」
「しゃべらないはずのものの気持ちとか書くんじゃないかな」
おいおい、君たちはなんということから語り始めるのかね。いきなり「詩」の本質に関わるようなことが飛び出してきてしまいました。
「詩の書き方はふつうの文と違う気がする」
「でもどう違うのかわからない……」
詩の表現「形式」への疑問も上がってきました。
子どもたちが今、「詩」について「知」ってることが見えてきたところで、表現したい!という「詩心」を誘発すべく、早速、春の息吹あふれる外へ飛び出すことにしました。プチ「旅」として選んだ場所は新宿御苑。スクールからほど近く、この時期はまさに百花撩乱です。
八重桜がまだ咲き誇り、ツツジが咲き始め、ハナニラが可憐な白いじゅうたんをしきつめます。濃淡いりまじるさまざまな新緑とあいまって、まさに「色とりどり」です。
詩作のための題材を選ぶ……そのための詳細な観察記録をつける……そんなのはあとあと!せっかく平日で訪れる人も多くない開放感ある空間に来たんですから、まずはのんびりと午後の昼下がりを過ごすことから。すると自ずと心も解放されます。
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一段落つくと、自然な衝動として、広い公園をあちこち探検したくなります。どうぞ、自由に行ってらっしゃい。そのときにもしこれは詩になりそうだというものがあったら見っけもんだね……ぐらいの「ゆるゆる」の指示(というほどのものでもないが……)だけ出して送り出します。
これだけ花が咲いているんだから花を題材にするかな……と思いきや、紋切り型の「花見」を楽しむ大人たちは足を踏み入れない雑木林の中に、子どもたちは魅力を見出します。「花より団子」ならぬ「花より雑木林」です。チャンバラしてみたり、重い石をみんなで動かしてみたり、ただ遊んでいるだけで、とても詩の題材を見つけにきたようには見えません。
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ところが、不思議なことに突然
「おっちゃん、詩ができたかも。書いていい?」
遊びをピタッとやめ、心地よい芝生に寝転がり創作し始めます。
(芝生でくつろぐって気持ちいい!芝生の気持ちを詩にしてみたいな……)
(あそこに忘れられたようなベンチがある。あのベンチはどんなこと考えてるんだろう)
(林に落ちている枝の生涯は……)
観察用紙を片手に義務的な題材ハンティングをしてもまったく見えてこない詩の題材が次々に浮かんできます。開放的かつ開放的な気分になったとき、実感とともに自然にわいてきた詩心に従って、気負わず、詩らしきものを書き残し始めました。「詩」とはどんなものなのかはっきりしたイメージは持てていませんが、その前提として必要不可欠な「詩心」を子どもたちは実感しました。
翌日、詩に書いてみたい題材を見つけた子どもたちに、どんな「形式」や「技」を詩人は使っているのか知る学びを行います。工藤直子さんの『のはらうた』を面白がらない子どもはまずいませんが、メタメタマップで子どもたちが予想した「ものの気持ちになりきる」という大事な要素が詩にはあります。対象として客観的に眺め、観察し、説明するのではなく、対象の中に没入して、まさに「主観的」に語るのが詩です。
この他にも…… 同じ音を繰り返したり、擬音語・擬態語を利用したり、同じ言葉から別の意味を連想させたり、二つの言葉を対比したり、漢字を分解してみたり、ダジャレにしたり、いろいろな工夫をして、面白く!心に直撃するように書くのが詩なのかも……という意識が子どもが生まれてきたようです。それよりなにより、「詩って面白い!」という思いが満ちあふれ、早くも詩作の面白さにはまってしまいました。
旅に出て詩心を揺り動かされたものを、技を使って表現してみると、心を動かす「ことば」が生まれる。それが「詩」……ということで最初の旅は、「小江戸」川越へ。詩人の旅の始まりです。
RI
※TCS2014年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。