[1・2年生]
週末のホームワークで子どもたちがつくってきた、スクールにあったら役立つと思う「禁止マーク」をシェアしました。この日は見学者の方が多い日でした。もしうまくできたピクトグラムだったら、絵だけできちんとメッセージが伝わるはず。そこで、自分たちのつくったマークがピクトグラムとしての機能を果たすのかどうか、見学者の方に判定してもらうことにしました。「がけ崩れ注意かな?」
「飛び出していってはダメっていうこと?」
階段ではつまずきやすいということを警告したかったのに、絵を雑に書いてしまうと斜面が波打っているように見えるし、茶色を使ったから余計土砂が崩れているようです。窓から身を乗り出すことを禁止したかったのに、窓と描かれた人との大きさのバランスが悪いので、ドアを開けて走り出してはダメというふうに見えてしまいます。
子どもたちは見学者の方からの率直な意見を神妙に受け止めています。絵だけでメッセージを伝えることの難しさに子どもたちは直面しました。
テーマ学習による探究は、教科融合で行われますが、今回は特に「アート」と「算数」に焦点をしぼっています。アートの時間では、ピクトグラムの原理について、色の意味や、円、三角形、四角形というシンプルな形を組み合わせて人の動きを効果的に表現するにはどうしたらいいか学びます。
子どもたちは「なんとかして人に伝わるマークをつくりだしたい!」という強いモチベーションが湧いていますから、貪欲に知識を吸収します。さらに、ハサミをうまく使いこなさないときれいな形をきりとることはできないので、指先に注意を集中し、美しい形をきりとるためにどうハサミを用いるか必死になります。
大きさの異なる美しい円をいくつも描き出す必要性が出てくるので、コンパスも駆使しないといけません。円だけでなく、正三角形と正方形と長方形……数々の図形をどう組み合わせるか……定規を用い、丁寧に図形をつくりだしてゆく作業の連続。ハサミ、コンパス、そして定規を authentic な状況で何度も使わざるを得ない学びは、自ずと図形感覚を高める学びとなり、算数の知識・理解へとつながってゆくのでした。
アートや算数につながる知識や技能は「習得」するためのものではなく「探究」で即活かすもの。「習得」と「探究」は車の両輪であり、常に並行して進んでゆきます。見学者の方からの率直なフィードバックと習得した知識と技能とを活かし、2階たたみ部屋の窓から身を乗り出してはいけません!というマークを改めてつくり直します。
つくった作品は、これでいいかな?と思ったらすぐにみんなの前でシェア。フィードバックをもらいます。
「円の大きさはよくなったけど、人の動作がまだわかりにくい」
「じゃあどうしたらいい?」
「地面を表す線を入れて、足が浮いている感じを出せばいいんじゃない」
まだできていないから……自信がないから……見ないで!と作品を隠したり、仲間からのフィードバックを素直に受け入れられず、自分のやり方に固執したり、ダメな部分を指摘するだけでどうしたらもっとよくなるかアイデアを提示しなかったり、という子がまったくいません!これぞTCS のよき文化として培われている good & better なフィードバックです。
1・2年生だって、いや1・2年生だからこそ、自然にこの学びの姿勢を身につけることができるし、この先、学び続け、成長し続けることができるのです。
みんなで語り合って、ひとりで黙々とつくりこんで、いろいろ試行錯誤して、描き直しを繰り返して、ようやく「作品」ができあがります。
「見て、おっちゃん!こんな感じかな?」
おお、随分洗練されたじゃないか!これなら窓から乗り出すなってはっきり伝わるね。
シンプルな形とはっきりした色の組み合わせで大事なメッセージを的確&印象深く伝えるにはどうしたらよいかつかみとりつつある子どもたち。まだまだこんなレベルでは終わらせません。次週はさらなる高みへとジャンプしてもらいましょう。
RI
※TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。