[1・2年生]
冬休みのホームワークで自分が選んだ3つのラーナープロファイルについてどんな人なのか言葉と絵にしてみるという課題を出しました。えっ…1・2年生にその課題はちょっと難しすぎない?と考える人もいるでしょう。でもそう考えてしまうのは「正解主義」に毒されているということです。ラーナープロファイルの定義と意味をきちんと説明できるかどうかを試すためにホームワークを出したわけではありません。3週間を通じて、テーマ学習のときはもちろんのこと、朝の会やアセンブリーの時間にも頻繁に耳にしているラーナープロファイルについてどんなイメージができあがっているのかをマイニング(掘り起こす)するためのホームワークなのです。今こんな理解をしていると素直に書いてきてくれればよい。ただそれだけです。当然ながら、あれっ?いったいどういうことかまったくわからない……という場合もあるでしょう。その場合はそれでよいのです。
提出されたホームワークに目を通すと、冬休み前にみんなで深く議論した Thinkers や、クラス名にも用いられている Caring については、かなり明確に「意味」を構築していることがわかりました。しかし、Communicators や Inquirers といったプロファイルは、あまりよくイメージできていないこともよくわかりました。
ラーナープロファイルの示す行動特性や態度についてイメージできなければ、マークをつくることなどできません。テーマ学習の半分が過ぎているのに、まだイメージが明確になっていない……やっぱり定義を教えておいた方がよかったんじゃないか……と考えがちですが、定義を言葉で伝えるだけでは、覚えてオウム返しに答えることはできるかもしれませんが、認識が変わらないので、すぐ忘れるし、理解されません。理解されていなければ、自発的にイメージを思い浮かべられず、マークをデザインすることなど到底無理です。
この状況において探究教師になりきれていない人は、どうしようとあせり、半ばパニック状態に陥るケースもあります。ここまで3週間も学びをしてきたのにアウトプットできないなんて失敗したのか……と。
まるでおいしいお酒を醸すように、アウトプットはあせらず、だからといって放りっぱなしではなく、日常の中で考え続ける機会を生み出し、発酵するプロセスをつくるのが探究教師の大きな役割であり、力と言えるかもしれません。ホームワークも含め、いろいろな角度からラーナープロファイルについて語って語って語りつくす機会を積み重ねて3週間かけて発酵する。探究による意味づくりにおける「待つ姿勢」とはこういうことなのでしょう。
さあ、ここで再び「メタメタマップ」が大きな力を発揮します。学びの最初に prior knowledge を探るだけがメタメタマップの役割ではありません。子どもが日々更新している knowledge を表出するためにいつでもメタメタマップを使います。
メタメタマップは、集合知を生み出すメディアです。今回一緒に学びを行っている8名が素直に発した思いと考えを探究教師が必死になって丸めずに模造紙に記録してゆくと、ひとりで考えていただけでは構築できなかった意味が生成されます。そのために自分がどんなラーナープロファイルを持っているのか自分で見つけるのではなく、「他者」つまり自分以外の7人の友達に指摘してもらい、どうしてそう思ったのか根拠とともに説明してもらうというやり方をしました。
「とってもCaring だと思う。だって自分が使うよりも先にハサミを相手に貸すことができるから」
「いろんなことにチャレンジできるから Inquirersだよ」
クラスメイトから自分の強みとなっているラーナープロファイルを面と向かって言われると、みんな照れくさそうだけど、とてもうれしそうです。自己効力感の源泉となるエネルギーを友達からもらっていることがはっきりとわかります。
どんな意味なのかイメージできなかったラーナープロファイルが、実は自分の特徴となる姿勢なのだと明らかになったり、自分には欠けていると思いこんでいたラーナープロファイルが、実は友達から見ると、その子らしさを表しているものだとわかったり……そんなやりとりを通じて自分を特徴づけるラーナープロファイルが浮かび上がり、結果的に、そのラーナープロファイルがどんな意味を持つものなのか次第につかめるようになってゆきました。他者の目による多くの視点、つまり「目他・目多(メタ・メタ)」することで実感を伴ってラーナープロファイルについてどんどん理解が深まりました。
メタメタマップに記録された友達からの貴重な指摘が、意識の奥底でずっと発酵してきた考えと反応し、まるであぶくが浮かび上がるように豊かなイメージとなって湧いてくるのであら不思議。ほらほら3週間はムダじゃあなかったのですよ!
知識を更新・熟成し、具体的なイメージが立ち上ってきたら、いよいよ次週はラーナープロファイルのピクトグラム化のために、抽象化して表現し直さなければなりません。具体化に向かっていたベクトルを正反対に向けて、どう抽象的な模様で表現するかということへの挑戦が始まります。
RI
※TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。