[1・2年生]
壁一面に貼られたメタメタマップ。そこにはそれぞれの子どもの特徴となるラーナープロファイルについて書かれています。積極的に話しかけるし、問題を解決するためにいろいろアイデアを出すから Communicators だ。
いつも笑顔を絶やさず、人に心配をかけないようにするから Open-minded だ。
「あれっ?これなんだろう?」といつも考えているから Thinkers だ。
自分で自分の特徴を言うのではなく、友達に自分の特徴を言ってもらうと、自分が思っていることとは違った、自分が思いもつかなかったことがあぶりだされてきました。私ってそんな風に思われていたんだ……そんな風に見えるんだ……意識していなかった「美点」を知って、子どもたちはうれしいような、恥ずかしいような不思議な感覚にとらわれているようでした。
「でも、話しかけるだけでなく、もっと聞くことができたらいいよね」
「聞いて、ひらめいたアイデアを返してあげたらもっとすごい」
Communicators だと言われた子に対し、こうしたらもっとよくなるという better のアドバイスが加わります。みんなでお互いのラーナープロファイルについて詳しく分析し合って、とても豊かなメタメタマップができあがりました。さあ、いよいよこれを見ながら、それぞれが最終成果物である「ラーナープロファイルのマーク」づくりに取り組みますが……どうしても「具体的」なイメージから逃れられません。
Principled のマークをつくろうとしている子は、争いをしている二人のピクトさんを指差してダメだよと言っているピクトさんを描きました。
「Principled の人ってあまりよくないことをしようとしている人を注意しているだけなのかな?」
とゆさぶってみると、そんなことはないと首をふります。じゃあ、もっと「一般的なイメージ」にしないといけない。あまりに状況が「具体的」すぎるから、「意味」を考えて、もっと「抽象化」する必要があるのだ。もちろん、このまま伝えても、子どもには何が何だかわからないので「模様みたいにできないかな」と投げかけてみました。それでも、どうしようと思い悩んでしまいます。実際の場面を描写するのはダメ。ピクトさんが何人もでてくるのはまずい。それをどうやって模様にできるの……
「もう無理かも」
だんだん悲しそうな顔になってきました。
子どもが持つ「具体的なイメージ」を一段高い「抽象概念」へと高めてゆくアシストをするのは、探究教師の大事な役割の一つです。1・2年生にはまだまだ「抽象的思考」はできないのでは……と思うかもしれませんが、レベルが異なるだけで彼らなりの「抽象化」を行うことができます。こうした頭の使い方を支えてあげるのが探究教師なのです。
どうしても具体的なイメージから離れられないというけれど、Principled な人ってどんな人なのか……実際に何かをしている姿からちょっと離れて考えられるかな?とたずねると
「う〜ん、正義とか正しいこととかするのって大変だけど、あきらめないでやり続けていく感じかな……」
お、なかなか面白いアイデアが出てきました。そこもう一押しするために
「正しいことをやり続けてゆくって大変だよね。それなのにどうして Principled な人ってそれができるんだと思う?」
すると……
「だって、正しいことを最初からできるわけじゃなくて、いっぱい失敗しちゃうと思うんだけど、それでもあきらめないでやり続けてだんだん成長していって、正しいことができるようになると思うから」
うん、いいねえ。どんどん「抽象化」されてきたじゃないか。大切な心を初めから持てないんだけど、その理想に向けてあきらめずに成長してゆく人。それが Principled な人ってことなんだな。それをイメージにしたらどうなるだろう?と問いかけると、しばらくの沈黙の後
「ハートがだんだん大きくなってゆく感じかな。ハートはね正しい心を表しているんだ」
おいおい、なんて素晴らしいアイデアなんだ!それいいじゃないか。正しい心を抱きたいという理想に向けてひたむきに成長するイメージをピクトグラムにすればいいという方向性が見えてきましたよ。
もう無理そう……という悲壮な感じがすっと消えて、ちょっと何かをつかんだかもという自信が顔に現れてきました。さあ、後はひたすらデザインを磨くのみ。ギリギリまで高い質のアウトプットを目指す「つら楽しい」最終週に突入です。
RI
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