[5・6年生]
「みんなスクールがよごれていることで見学に来た人をがっかりさせてしまうなんてもったいないと思いませんか」スクールクリーン&整理整頓政策を訴える女の子は、ただどうやって掃除すればよいかを説明するだけでなく、なぜこの政策が必要なのか聴衆に訴えかけようとしています。いよいよ最終週。スピーチだけで(つまり、keynote や模造紙による補助なしに)勝負するプレゼンに向けてひたすら磨きをかけていきました。
訴えかける対象は1年生から4年生までの下級生。彼らに伝わる言葉でなければいけません。そして、彼らのやりたいことに媚びることなく、単なるウケ狙いでもなく、TCSを本当に住みやすくするために必要な政策を訴えなければなりません。
スピーチだけで自分たちのアイデアを訴えかけると言えば、やはりTED。TEDの伝説的スピーチの一つで、社会運動の引き起こし方について端的に語った、デレク=シヴァーズの演説を参考にすることにしました。
わずか3分間。ある男が一人で裸踊りをしているのだが、当然のことながら、周囲の人たちは、始め奇異な目を向けるばかりです。ところが、そこに一人、その裸踊りに加わる人が出てくると状況が動き始めます。その男に続いてもう一人、また一人と踊り出す連中が現れるのです。こうなってくると踊りに加わらない方が面白くない!この流れに乗り遅れてはいけないとばかりに、われもわれもと裸踊りを始めるのです。
このエピソードから言えることは、何かの動きを起こすときには、旗振り役のリーダーもさることながら、そのリーダーについてゆこうと考える最初のフォロワーがカギを握るということです。
リーダーを lonely nuts(孤独なバカ)という状態から救い出し、新しいやり方もよいかもという機運を生じさせるためには、first follower (最初のフォロワー)を尊重し、対等に扱い、彼らとともにさらに動きを大きくしてゆこうと考えることが重要なのです。
これまでも「民主的なリーダー」は「独裁者」でもなければ、「ポピュリズムを操る者」でもないと頭では学んできたものの、最初のフォロワーをどう作るかというところまでは考えが及ばなかった子どもたちは、シヴァーズのスピーチに衝撃を受けたようです。
笛吹けど踊らず……
ということわざのごとく、「やれよ!」というだけ、さらにやらなかったら強圧的な態度で「やらせる!」というやり方では、ムーヴメントは起こせません。最初からすべてのメンバーにやらせようと目論むよりも、コアなフォロワーをまず作ること。こうして形成されたコアメンバーみんなで知恵を出し合い、そのムーヴメントにはまることがとっても面白い!という機運をつくりあげること。そうすると、様子見だったり、反対だったりした者も、少しずつ興味を持ち始め、一人また一人と賛同し、ともに行動してくれる仲間になってくるのです。そんな目論見を持ってスピーチに磨きをかけることが目標となりました。
ただ自分の思いをぶつけるだけではダメ。だからといって冷静にこれは必要なことですと述べるだけでも惹きつけない。一緒に汗を流してくれませんか!そうするとこんな面白いことがありますよ!と聴き手のパースペクティヴをゆさぶるスピーチをつくりだすために、みな必死になって知恵をしぼります。
変ポポ党としての結束力はいっそう強まり、なんとかして政策を通したいという思いも最高潮に達してきました。そのためにどうやって有権者であるスクールの子どもたちを巻き込むか……極めてチャレンジングな課題に取り組む子どもたちの姿は、一見すると寡黙で動きもあまり見えず、停滞しているように見えます。しかし、頭をフル回転させて、より深く思考しているからこそ、まさに沈思黙考の境地なのです。
さあ、みんなどんなスピーチで臨むのか。テーマ発表に向けて最後のひとふんばりです。
RI
※TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。