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両親、祖父母からの手紙

[3・4年生]

両親、祖父母に依頼した「ホームワーク」が「提出」されました。その「ホームワーク」とは、小学生時代、自分たちがしていた「遊び」について「写真」とともに「息子・孫への手紙」としてまとめること。いったい、どんなことをお父さん、お母さん、お祖父さん、お祖母さんは書いているのか……子どもたちはワクワク、ドキドキです。

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「この写真はいつどんな状況で撮影された写真なんだろう?」

「昭和拾九年拾月」と写真の裏に書いてあるが、いったいどう読むの?えっ!これで「じゅうがつ」なんだ。

「甲州」って書いてあるけど、どこ?……なんか聞いたことあるなあ……甲州街道。ああ、山梨か!

集合写真だけど遠足じゃなさそう……手紙を読むと、「集団疎開」って書いてある。「疎開」って何だ?……「そかい」って読むのか、でも意味は?戦争の被害から逃れるために家族とともにまたは子どもだけで田舎に逃れることだと辞書に書いてある。

写真を1枚解読するだけで多くの情報があぶり出されてきます。身近な人のもたらした証拠と証言の重みが子どもを駆り立て、頭も心もグルグルしっぱなしです。

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「おじいさんは戦争系だよね」

ある子が面白いことをつぶやきます。どの子のおじいさんも戦争のことを語っていて、具体的な遊びの話はほとんどないのです。では、お祖母さんはどうかと言えば、お手玉、ゴムとびといった遊びが出てくるものの、その時代に食べ物がなかったことやキレイな服にあこがれつつ、夢にまで見た「空想」の服を紙に書いていたというようなエピソードが続きます。

「子ども時代の遊び」という問いかけがかえって孫に対して本音を語るきっかけになったようです。いつも接している、じいじ、ばあばとは違う、歴史の証人としての姿が現れ、子どもたちは不思議な感覚に包まれていました。

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「お国のためにお勉強だって!」
「お国って?」
「日本じゃないの?」
「なんで自分のためじゃなくて日本のために勉強すんの?」

手紙を読み解いてゆく中で、モヤモヤがどんどん生まれ、「歴史」の迷宮へと入ってゆきます。

戦争中にお国のために勉強したって言うなら……きっと外国のことを知るために英語を勉強したんだよ!勝つためには科学も必要だよね。だから理科とか算数とか勉強したんじゃない……

そんな子どもたちの様子を見て、私は暗澹たる気持ちに襲われました。今、目の前にいる子どもたちが素直に気づく「真っ当なこと」を、当時の政策決定者は、無視し、無謀な戦争に走り、精神論のみに傾いた教育と教練のみ行っていたのが実状だったのですから……。むざむざ多くの命が失われてしまったのかと思うと、無性に悔しい気持ちがわいてきました。もしかしたら、お祖父さんも、お祖母さんも、「どんな遊び?」と聞かれて、「遊べるような状況じゃなかったんだ」という遠い思い出がよみがえり、なんとも釈然としない気持ちがわきおこり、孫に「真実」をぜひとも伝えておkたいという気持ちになったのかもしれないとふと思いました。

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なんとなく深刻な感じが漂う祖父母の手紙とは対照的に、父母の手紙には、天真爛漫さがあふれ、子どもらしいエピソードが書き連ねられていました。いたずらの話、破壊してしまった話、危険な話、きたない話、くだらない話、面白い話の数々。でも、最後に必ず「よい子のみんなはマネしちゃダメだよ」という注意書きがつきます。そりゃないよ、パパ、ママ!あんたたちがやったことを私らがやったらダメってどういうことよ……というようななんとも説得力のない内容です。

「遊び」をあまり語らない「祖父母」と、子どもらしい遊びに興じた「父母」。この世代差を生んだ「歴史的背景」は何?と考えざるを得ません。と同時に、じゃあ自分たちはどうなの?といよいよ自分たちの遊びについて吟味する眼が自ずと生じてきました。

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子どもたちは真剣に父母、祖父母の手紙を読み解きます。わあすごいと思ったところ、あれっなんで?と不思議に思ったところにアンダーラインを引くように言うと作業に熱中、没頭します。これが authentic な題材に接したときの学習者の姿なのでしょう。

手紙を読んでさらに知りたくなったことは改めてインタビューしてみることをホームワークとし、来週は、アンダーラインを引いた気になった部分と再インタビューしたことを「付箋」に書き、「遊史〜ト」を作成してゆきます。

RI

TCS2013年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。



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