[3・4年生]
子どもたちは最後の1週間、ただひたすら黙々と書き進めてゆきました。なんという集中力でしょう。400字詰めの原稿用紙10枚以上書くという目標に向かって、前向きにチャレンジしてゆく様子を見ると、作文が嫌いな子どもが世の中に多いなんて信じられません。なぜ子どもたちがここまで燃えたかと言えば、マイ=ヒーローについて書きたいことが頭の中にたくさん生まれたからです。
書きたいことはたっぷりあるから原稿用紙を埋めることはまったく苦にならない!
それが子どもたちの真情でした。でも、そんな子どもたちでも、時折、鉛筆が進まず、ぴたっと止まる瞬間がありました。それは、書きたいことをただ書き連ねてゆくだけでは面白いストーリーにならない……いったいどうしたらいいだろう……と考えあぐねたときでした。
「う〜ん、悩むなあ」
調べたエピソードを全部書けば、あっという間に10枚を突破するのですが、それではつまらない。ヒーローの魅力を存分に示すとともに、そのエピソードを、自分とつなげたいと子どもたちは考えていました。
本に書かれていたこと、調べたことを、自分がそのヒーローから何を学び、どう生きてゆくか考える材料として使ってこそ、本や資料を「写した」だけで終わらない、面白いストーリーになります。「マイヒーローについて」という文章ではなく、テーマタイトル通り、「マイヒーロー“ストーリー”」に仕上げなければなりません。
悩んだときはおっちゃんにぶつけるのが一番だと子どもたちは知っているので、私にいろいろ話しかけてきます。
「自分だったらもう完全に負けそうだったら、むかついて帽子とか投げちゃって冷静になれない。でも、そうならないで最後まであきらめないからスゴイんだよね」
野球選手をヒーローに選んだ子は、その選手の「あきらめない」ところに魅力を感じ、またその部分こそ自分にほしいことだと熱く語りました。そこで……
「その選手はなんでそんなに我慢強いんだろうね?」
さらに深ぼりしてゆくよう促す問いかけをします。すると……
「我慢強いというより、絶対に夢を果たしたいっていう強い気持ちがあって、そのためにとにかく練習し続けるっていうところがあって、だから我慢してるっていうより夢を追いかけてる感じなんだと思うんだよね?」
おいおい、なんていいこと言うの!それだよそれ!ぜひ書いておこうよ!
こんなやりとりを各々の子どもたちと積み重ねつつ、1枚また1枚と着々と書き進めてゆきました。
「見てよこれ!こんなになっちゃったよ!」
うそみたいにチビた鉛筆。最後の最後、削ったらこんなに短くなってしまいました。こんなに短期間で、鉛筆がこんなに短くなったことに子どもたちは驚き、と同時に、必死に努力した証を得たようで、誇らしげな様子でした。
小さく、短くなるものがある一方で、どんどん厚くなるものもありました。6人の書いた「マイヒーローストーリー」をすべて束ねたらこんなに厚くなったのです。
ついに「第1稿」が完成!オメデトウ!全員ここまで無事たどりつきました。
でも、まだこれで終わりではありません。書いたものをもう一度読み直して「改訂&校正作業」に入ります。さらに、テーマ発表会に向けて、作文のエッセンスを3分に凝縮して、マイヒーローの魅力とともに自分がヒーローから学び、どんなふうに生きてゆきたいかを宣言するスピーチをまとめるという大仕事が残っています。
束の間の喜びの後、もはやリトルヒーローと化した子どもたちは、新たな目標に向かって再発進してゆきました。なんて頼もしいんでしょう!
RI
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