タイトル:詩人の旅
探究領域:意思表現
セントラルアイディア: 感性と情緒が凝縮された言葉は人の心を結びつける
俳句にせよ、和歌にせよ、赤を入れてもらう中で表現の仕方を学びます。赤の入れ方が不適切であれば、子どもの詩はよくなりませんし、もともともっていた感性にふたをされてしまいます。なんとも責任重大!探究教師のふんばりどころです。
どんなところを意識して赤を入れたかというと……
まず、詩のリズムという点。詩は「韻」文と呼ばれるのですから、内容以前にまずリズムがないといけません。せっかく面白い内容でも、説明的になってしまうのは、選んだ言葉をリズムにのせて表現していないから。同じ音で始まったり、終わったり、決まった音数で進んでいったり、読みながら身体が動いてくるようなものにすることが基本。ということで、リズムが出るように赤を入れます。
ある子は蝶をモチーフに詩を作りました。
ひらひらひらと飛んでいる
花の近くをあちこちふらふらと
「ひらひら」と「ふらふら」という擬態語をせっかく使っているのに、もったいない!そこでこんなふうにしてみます。
ひらひらひらと飛んでいる
ふらふらふらと飛んでいる
花の近くを飛んでいる
こうすると一行の音数が同じになり「七五調」になります。また、「飛んでいる」という言葉繰り返されます。こうして自ずとリズムが生まれます。
次に、描いている対象のイメージを表現していること。ああなるほどと思われるイメージとそうかそんな見方もあったのかとゆさぶるイメージと両方が必要です。このバランスがとれないと、「月並みすぎてつまらない」か、「まったく何が言いたいのかわからない」かのどちらかになり、心に響きません。
ハトをモチーフに詩をつくっている子がこう書いていました。
クックックッ空を飛ぶ
どこまでも自由に
鳥が自由に空を飛んでいる。それをそのまま言葉にした。その「想い」はよくわかります。ただ、それを直接的に表現しても読み手・聞き手は
「へえそうなんだ」
「それって当たり前だよね」
と感じるだけで、共感はしないでしょう。
自由に飛んでいる……どうしてそう見えたの?どこでどんなふうに行動していたの?
自由に飛んでいる……ハトは本当に自由なの?空を飛べていれば自由なの?
赤を入れる前に、このことを「詩の作者」にたずねます。すると
「首を動かしてベンチのまわりをぐるぐるまわっていたの。たぶんぼくがエサをくれると思ったんじゃないかな。でもなかなか空に飛んでいかないんだよね。いったん飛んでもまた戻ってくるし」
ほらほら、そんな「想い」があるんじゃない。じゃあこの「想い」を言葉に凝縮してみよう……ということで「師匠(笑)」のアイデアを示す。
クックッ首を動かして
クックッ食いものクッくれよ
たまには空に飛び立つが
クックックルリとすぐもどる
「どうだ。君が書いたクックッという音でリズムをつけながら、想いをちゃんと表現してるだろう」
あくまでも自分の詩がベース。さらに自分の「思い」が表現されているのですから、子どもたちは驚きとともになんとなく誇らしげ。
(そうか……詩の言葉ってそういうことなのか)
なんとなくコツをつかんでゆきます。こうしなさい!では伝わらない。だからと言って自由にやって!でも変わりません。型を示し、型の使い方を示し、でも、その型をどう使うかは本人がいろいろ試行錯誤して習得してゆくしかありません。それが詩のようなワザを身につけるときの学び型でありましょう。
こうして詩が形になってきて、いよいよ朗読してどう伝えるかという段階に入ります。先にも述べたように、詩は「韻文」であり、リズムがある。さらには「詩」は「うた」と読めるように「歌」なのです。文字で表現されてはいるものの音として、声として伝えるものです。
「言葉」を「声」に変えるということはただ「音読」すればよいということではなりません。それじゃあまさに「棒読み」。どんなに面白いことが書かれていようとそれでは伝わりません。特に今回、私たちが目指す詩は、人々の心をつなぐ詩。共感を呼びおこす詩です。シュールで難解な詩ではありません。自分の想いを適度のボリュームの言葉に凝縮して語ることを目指しています。
少な過ぎたら伝わらない。多すぎるとクドい。この度合いは、声に出して読んでみるとよくわかります。あまりに漠然としているとなにを伝えたいのか、モチーフは何なのか、まったく伝わりません。一方で、聞き手が長いなと感じるようなら、説明的すぎるのです。
早口だったり、声が小さかったり、抑揚がなかったり、まだまだですねえ。間がないんだよねえ。もったいないなあ。そんな読み方では相手の心に届かないぞ……
残りはあと1週間。テーマプレゼンでの「詩の柔道」に向けてトレーニング開始です。
RI
※TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。
探究領域:意思表現
セントラルアイディア: 感性と情緒が凝縮された言葉は人の心を結びつける
[3・4年生]
できあがった詩に赤を入れる。もちろん子どもの想い・意図・個性を考えて赤を入れる。必死になってホームワークをこなしました(私がです……)。俳句にせよ、和歌にせよ、赤を入れてもらう中で表現の仕方を学びます。赤の入れ方が不適切であれば、子どもの詩はよくなりませんし、もともともっていた感性にふたをされてしまいます。なんとも責任重大!探究教師のふんばりどころです。
どんなところを意識して赤を入れたかというと……
まず、詩のリズムという点。詩は「韻」文と呼ばれるのですから、内容以前にまずリズムがないといけません。せっかく面白い内容でも、説明的になってしまうのは、選んだ言葉をリズムにのせて表現していないから。同じ音で始まったり、終わったり、決まった音数で進んでいったり、読みながら身体が動いてくるようなものにすることが基本。ということで、リズムが出るように赤を入れます。
ある子は蝶をモチーフに詩を作りました。
ひらひらひらと飛んでいる
花の近くをあちこちふらふらと
「ひらひら」と「ふらふら」という擬態語をせっかく使っているのに、もったいない!そこでこんなふうにしてみます。
ひらひらひらと飛んでいる
ふらふらふらと飛んでいる
花の近くを飛んでいる
こうすると一行の音数が同じになり「七五調」になります。また、「飛んでいる」という言葉繰り返されます。こうして自ずとリズムが生まれます。
次に、描いている対象のイメージを表現していること。ああなるほどと思われるイメージとそうかそんな見方もあったのかとゆさぶるイメージと両方が必要です。このバランスがとれないと、「月並みすぎてつまらない」か、「まったく何が言いたいのかわからない」かのどちらかになり、心に響きません。
ハトをモチーフに詩をつくっている子がこう書いていました。
クックックッ空を飛ぶ
どこまでも自由に
鳥が自由に空を飛んでいる。それをそのまま言葉にした。その「想い」はよくわかります。ただ、それを直接的に表現しても読み手・聞き手は
「へえそうなんだ」
「それって当たり前だよね」
と感じるだけで、共感はしないでしょう。
自由に飛んでいる……どうしてそう見えたの?どこでどんなふうに行動していたの?
自由に飛んでいる……ハトは本当に自由なの?空を飛べていれば自由なの?
赤を入れる前に、このことを「詩の作者」にたずねます。すると
「首を動かしてベンチのまわりをぐるぐるまわっていたの。たぶんぼくがエサをくれると思ったんじゃないかな。でもなかなか空に飛んでいかないんだよね。いったん飛んでもまた戻ってくるし」
ほらほら、そんな「想い」があるんじゃない。じゃあこの「想い」を言葉に凝縮してみよう……ということで「師匠(笑)」のアイデアを示す。
クックッ首を動かして
クックッ食いものクッくれよ
たまには空に飛び立つが
クックックルリとすぐもどる
「どうだ。君が書いたクックッという音でリズムをつけながら、想いをちゃんと表現してるだろう」
あくまでも自分の詩がベース。さらに自分の「思い」が表現されているのですから、子どもたちは驚きとともになんとなく誇らしげ。
(そうか……詩の言葉ってそういうことなのか)
なんとなくコツをつかんでゆきます。こうしなさい!では伝わらない。だからと言って自由にやって!でも変わりません。型を示し、型の使い方を示し、でも、その型をどう使うかは本人がいろいろ試行錯誤して習得してゆくしかありません。それが詩のようなワザを身につけるときの学び型でありましょう。
こうして詩が形になってきて、いよいよ朗読してどう伝えるかという段階に入ります。先にも述べたように、詩は「韻文」であり、リズムがある。さらには「詩」は「うた」と読めるように「歌」なのです。文字で表現されてはいるものの音として、声として伝えるものです。
「言葉」を「声」に変えるということはただ「音読」すればよいということではなりません。それじゃあまさに「棒読み」。どんなに面白いことが書かれていようとそれでは伝わりません。特に今回、私たちが目指す詩は、人々の心をつなぐ詩。共感を呼びおこす詩です。シュールで難解な詩ではありません。自分の想いを適度のボリュームの言葉に凝縮して語ることを目指しています。
少な過ぎたら伝わらない。多すぎるとクドい。この度合いは、声に出して読んでみるとよくわかります。あまりに漠然としているとなにを伝えたいのか、モチーフは何なのか、まったく伝わりません。一方で、聞き手が長いなと感じるようなら、説明的すぎるのです。
早口だったり、声が小さかったり、抑揚がなかったり、まだまだですねえ。間がないんだよねえ。もったいないなあ。そんな読み方では相手の心に届かないぞ……
残りはあと1週間。テーマプレゼンでの「詩の柔道」に向けてトレーニング開始です。
RI
※TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。