タイトル:詩人の旅
探究領域:意思表現
セントラルアイディア: 感性と情緒が凝縮された言葉は人の心を結びつける
多くの子どもたちにとってのお気に入りは、窓を開放して外に向かって書くこと。
隣の子……いや……作家のことなど気にせず、黙々と作品づくりに没頭しています。
しばらくすると、とりあえず書き上げたので見てくれと私のところへ持ってくる。さあ、ここからが真剣な詩作修業の始まりです。的確に Good & Better でフィードバックして言葉のセンスを磨いてゆく「編集者」の腕が問われます。
「基本はまずリズムだな」
詩が詩たるゆえんは、決まった音で表現されるリズムの心地よさが私たちの心を揺さぶるところにあります。どうして詩はあんなに細かく行変えするのかな……それは、テンポよいリズムをつくるため。きみのはふつうに作文で説明しているのと同じ。こんなに書かないで、字数を削ってリズムの出る書き方ができないかな。
ぼくは人のひざの上でうずくまっている
みんながぼくをさわってくる
いいかげんにしてほしい
伝えたいことはわかったよ、じゃあ、これをリズムよくしてみないか。そのためになんとか同じ音の数に合わせられないか……
このアドバイスを聞いて、作家は書き直す。そして再び目にした詩は……
おれはつかまれる
おれはもちあがる
おれはうずくまる
おれはさわられる
いいかげんにしてよ
おお、スゲエぞ。すべて8文字で決めてきた。こうするとリズムが出てくると同時に、誰かのされるがままになって、ちょっとあきらめ気味なモルモットの気持ちが浮かび上がってくるよ。
別の子が作品を持ってくる。
アライグマは夢を見ている
どんな夢を見ているかというと自分の住む家のこと
その家でどんなことをしているかということ
そうか、アライグマがうろうろしているのは、自分の夢の世界に浸りきっているからなんだ。そんなアライグマの気持ちを出すために、同じ言葉を繰り返し用いてみるのはどう?とアドバイス。
なにかひらめいたかのように再び書き始め……しばらくたってできた作品は……
あらいぐまの理想 ぐるぐる
家がほしいなあ
あらいぐまの理想 ぐるぐる
野原にあるんだな
あらいぐまの理想 ぐるぐる
窓から野原が見えるんだなあ
いいねえ。うろうろ歩いていながら、理想に思いをめぐらしているのが「ぐるぐる」という言葉でとってもよく表現されているよ。
旅で得た着想が、詩の基本「型」を与えられることでこんなにも素直に「詩」としてまとまるなんて。できすぎのように思うかもしれません。でも、本当にこうなってしまうのです。それは、彼らが旅に出て、観察して、これだとほれこんだものを詩にしているから。それに、詩心というのは誰でも潜在的に持っているのです。それを効果的に表す「型」が与えられるとより凝縮されて表現できるということなのでしょう。「五七五」なんていうのもそういう「型」のひとつですね。思いをそのまま書くのではなく「詩」のフォーマットの「型」に当てはめてみることの面白さに目覚め。ますます詩人の世界に没入してゆきます。
「ダジャレも大事な詩のワザだよ!」
リスの気持ちをリッスんしよう。サルがぼーるをけってフットサル。そんな例を挙げてゆくと、そりゃあ子どもたちは大盛り上がり。詩のワザとは、子どもの大好きな「言葉遊び」なのです。
「ダジャレは、同じ音の別の言葉を用いてつなげることだろ。この他に「連想」っていうワザも身につけたら鬼に金棒だ」
子どもの詩作に合わせて、ワザをどんどん投入してゆきます。
ハナコの目はどこまで言っても底が見えない海のよう
こういうのが「連想」だと例を挙げると、詩心が動いている子どもたちは、ピンとくるようです。
「そうか。おっちゃん、こんな感じ?」
こうもりについて詩をつくっている男の子が自分の詩をこんなふうに書きかえてきました。
おいらはまっくろなぞうきん
スバラシイ!まさにこういうことだよ。つくりたい内容があるところに「型」が入るとこういう化学反応がバシバシ起こるのです。そこで彼にはもうひと超え!ということで、「ぞうきん」が次に連想を引き起こすか?そこまでつながるともっと面白くなるぞ!とゆさぶります。しばらく、詩作ならぬ「思索」に入った後、書いてきたのは……
おいらはまっくろなぞうきん
昼間はおとなしくただ干されているだけさ
なるほど。明るい昼間はただぶらさがって眠っているこうもりの姿を干されているというふうに表現してさらに「連想」を広げたんだな。面白いじゃないか。
自分の思いを「型」にのせて表現する探究を楽しみ始めた一週間でありました。
RI
※TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。
探究領域:意思表現
セントラルアイディア: 感性と情緒が凝縮された言葉は人の心を結びつける
[3・4年生]
いよいよ本格的な詩作に取り組みます。小さいながらも詩人である「先生」方は、思い思いの場所を見つけます。机に向かってもよし。寝転がってもよし。一人の世界に没頭できるスペースで書きます。多くの子どもたちにとってのお気に入りは、窓を開放して外に向かって書くこと。
隣の子……いや……作家のことなど気にせず、黙々と作品づくりに没頭しています。
しばらくすると、とりあえず書き上げたので見てくれと私のところへ持ってくる。さあ、ここからが真剣な詩作修業の始まりです。的確に Good & Better でフィードバックして言葉のセンスを磨いてゆく「編集者」の腕が問われます。
「基本はまずリズムだな」
詩が詩たるゆえんは、決まった音で表現されるリズムの心地よさが私たちの心を揺さぶるところにあります。どうして詩はあんなに細かく行変えするのかな……それは、テンポよいリズムをつくるため。きみのはふつうに作文で説明しているのと同じ。こんなに書かないで、字数を削ってリズムの出る書き方ができないかな。
ぼくは人のひざの上でうずくまっている
みんながぼくをさわってくる
いいかげんにしてほしい
伝えたいことはわかったよ、じゃあ、これをリズムよくしてみないか。そのためになんとか同じ音の数に合わせられないか……
このアドバイスを聞いて、作家は書き直す。そして再び目にした詩は……
おれはつかまれる
おれはもちあがる
おれはうずくまる
おれはさわられる
いいかげんにしてよ
おお、スゲエぞ。すべて8文字で決めてきた。こうするとリズムが出てくると同時に、誰かのされるがままになって、ちょっとあきらめ気味なモルモットの気持ちが浮かび上がってくるよ。
別の子が作品を持ってくる。
アライグマは夢を見ている
どんな夢を見ているかというと自分の住む家のこと
その家でどんなことをしているかということ
そうか、アライグマがうろうろしているのは、自分の夢の世界に浸りきっているからなんだ。そんなアライグマの気持ちを出すために、同じ言葉を繰り返し用いてみるのはどう?とアドバイス。
なにかひらめいたかのように再び書き始め……しばらくたってできた作品は……
あらいぐまの理想 ぐるぐる
家がほしいなあ
あらいぐまの理想 ぐるぐる
野原にあるんだな
あらいぐまの理想 ぐるぐる
窓から野原が見えるんだなあ
いいねえ。うろうろ歩いていながら、理想に思いをめぐらしているのが「ぐるぐる」という言葉でとってもよく表現されているよ。
旅で得た着想が、詩の基本「型」を与えられることでこんなにも素直に「詩」としてまとまるなんて。できすぎのように思うかもしれません。でも、本当にこうなってしまうのです。それは、彼らが旅に出て、観察して、これだとほれこんだものを詩にしているから。それに、詩心というのは誰でも潜在的に持っているのです。それを効果的に表す「型」が与えられるとより凝縮されて表現できるということなのでしょう。「五七五」なんていうのもそういう「型」のひとつですね。思いをそのまま書くのではなく「詩」のフォーマットの「型」に当てはめてみることの面白さに目覚め。ますます詩人の世界に没入してゆきます。
「ダジャレも大事な詩のワザだよ!」
リスの気持ちをリッスんしよう。サルがぼーるをけってフットサル。そんな例を挙げてゆくと、そりゃあ子どもたちは大盛り上がり。詩のワザとは、子どもの大好きな「言葉遊び」なのです。
「ダジャレは、同じ音の別の言葉を用いてつなげることだろ。この他に「連想」っていうワザも身につけたら鬼に金棒だ」
子どもの詩作に合わせて、ワザをどんどん投入してゆきます。
ハナコの目はどこまで言っても底が見えない海のよう
こういうのが「連想」だと例を挙げると、詩心が動いている子どもたちは、ピンとくるようです。
「そうか。おっちゃん、こんな感じ?」
こうもりについて詩をつくっている男の子が自分の詩をこんなふうに書きかえてきました。
おいらはまっくろなぞうきん
スバラシイ!まさにこういうことだよ。つくりたい内容があるところに「型」が入るとこういう化学反応がバシバシ起こるのです。そこで彼にはもうひと超え!ということで、「ぞうきん」が次に連想を引き起こすか?そこまでつながるともっと面白くなるぞ!とゆさぶります。しばらく、詩作ならぬ「思索」に入った後、書いてきたのは……
おいらはまっくろなぞうきん
昼間はおとなしくただ干されているだけさ
なるほど。明るい昼間はただぶらさがって眠っているこうもりの姿を干されているというふうに表現してさらに「連想」を広げたんだな。面白いじゃないか。
自分の思いを「型」にのせて表現する探究を楽しみ始めた一週間でありました。
RI
※TCS2016年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。