タイトル:似て非なるもの
探究領域:自主自律
セントラルアイディア:「私たちは過去を受け継いで、未来を創り出す。」
遺伝子操作をして生まれた「適正者」だけが優遇される近未来を描いた世界。 いわば、デザイナーチャイルドが当たり前であり、自然出産で生まれた者は「不適正者」として生きていくことを強いられてしまいます。主人公は、暴力的な傾向がある、心臓が弱い、寿命は30歳等のデータが出された「不適正者」。周りからは不可能だと決めつけられつつも、彼は宇宙飛行士の夢を持ち続けます。すべては遺伝子情報で決まり、あらゆる場面で遺伝子鑑定が行われる中、彼は「適正者」に成りすますことで宇宙へ行くことを実現可能にしていく内容となっています。「適正者」に成りすましたとはいえ、本人の遺伝子情報が変わるわけではなく、夢を叶えるためにたゆまぬ努力をしていく姿が描かれています。
子どもたちは、主人公が生体偽装して宇宙局の採用試験を受ける場面に強い衝撃を受けた様子でした。
尿検査と血液検査のみで採用されてしまうからです。
「面接とかしないの?」「あれだけ?」
不適正者というだけで社会的差別を受ける世界に驚き、観た後の感想が2つに分かれました。
「本人の力で宇宙局に入れたわけではないのだから、
いくら努力しても認められるのは遺伝子情報だけ。本人の努力は宇宙飛行士になれるものだったのか疑問。」という見方と、
「宇宙に行けたのは、本人の努力があってのこと。たとえ、偽っていたとしても努力は本物。」
という見方。 でも、一致していることは、遺伝子情報だけで左右されたくないということでした。
次の日、ある事件(?)が起こります。
5・6年生の中の一人がちょっとしたことで嘘をつき、それを隠そうとごまかし続けてしまったのです。
「自分の問題はごまかすことにある。変わりたい。」そう、思っているにも関わらず、また嘘をついてしまった。本人からしたら、信頼回復に努めたく、必死に「反省している。もうしないようにする。」と訴えます。
嘘をついてしまう、ごまかしてしまうことは誰にでもあることです。本人が「次から気をつける」といえば流されてしまう話かもしれません。でも、今回は『GATTACA』を観た翌日。なんというタイミングなのでしょうか。
「もしかしたら、嘘をつきやすい遺伝子が突然変異で出てきてしまったせいなのかもしれない。」との、おっちゃんからの問いかけに5・6年生全員が頭を抱え込みました。
遺伝子のせいにしてしまえば、それはもう直せないことなのか。それを認めてしまうと、自分ではもう、どうしようもできないのか。それぞれが自分の直したい問題点に置き換え、悩み出しました。友達が変われないということは自分自身の変わる可能性をつぶしてしまうことになると理解しているのです。遺伝子情報だけで左右されたくないとはいっても、こうした問題に直面し、それを自分ごととして捉えたときには、気持ちが揺さぶられます。変わりたいと思っているけど、変われない。どうせダメだと思ってしまう。親から受け継いでなくても、突然変異を起こしてしまった遺伝子があり、それが原因となっているのかも。変われないのは遺伝子のせい?
「違うと思う。」考えてから一人が言い出しました。
「孔子先生もおっしゃってる。
“秀でて実らざる者あり”(才能があっても、実らない人がいる。人は努力が必要だ。)って。
ということは、秀でていなくても実る者がいるってことでしょ。遺伝子がよくなくても、努力すればよくなれるってことだよ。」
「誰にでも変わりたいことはある。遺伝子で変われないと決まっちゃったら、誰も信用されなくなっちゃう。」
「◯◯は前に事件起こして失敗してから変わってきたと思う。だから、変われるよ。」
変われるといっても、どうしたら変われるのだろうか。
そんな疑問も出てきます。
「強い意志を持てば変われる!ショックを受ければ、強い意志が持てる!」
「ドカーンって大きなショックでなくても、
小さな失敗をちょくちょくして、少しずつ変わっていく場合もある。」
「そう、ドカーン型とチョクチョク型があると思う。」
「強い意志って、遺伝子には関係ないんじゃないの?」
「でも、新しもの好きの遺伝子があるって(テキストに)書いてあったよ。」
「何かを感じるときにも、ホルモンが関係しているでしょ。
ホルモンはタンパク質でできてるって書いてあったから、やっぱり遺伝子に関係していると思う。」
「成績も遺伝子が関係しているって。」
「何!!」
先週まで読んできたテキストをもう一度読み直すことで、まだ読んでいなかった部分から新しい情報を得ていきます。
「デザイナーチャイルドに生まれたかったなー。」
おやおや?遺伝子情報だけに左右され始めてる??
こちらの本も参考にしています。
『遺伝子が語る「命の物語」』
著書の村上氏は眠っている遺伝子をオンにすることで可能性が広がることを提唱されています。 「遺伝子のスイッチ」の節を読んでいくうちに、話に引きつけられていきます。
「やべ、変われるかもって可能性を感じてしまった。」
これまた揺さぶられているようです。
遺伝子の中に眠っている部分があって、それを呼び起こすことで人は変われる・・かもしれない。
「ポジティブになりたいって毎日声に出していってみよう。」
「プラス思考がいいなら、ニコニコしてればいいのかな。」
変われないのは、遺伝子がオフになっているせいなのか。オンになれば、変わりたい自分に変われるのだろうか。やはり遺伝子が関係しているのか。具体的にどうすれば変われるのだろうか。
来週も引き続き悩んでいきます。
AN
※TCS2015年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。
探究領域:自主自律
セントラルアイディア:「私たちは過去を受け継いで、未来を創り出す。」
[5・6年生]
DNAのメカニズムが少しずつ見えてきたところで、それがどのくらい自分の生活に影響しているのかについて考えていきました。考えるきっかけとして、映画『GATTACA』を観ました。遺伝子操作をして生まれた「適正者」だけが優遇される近未来を描いた世界。 いわば、デザイナーチャイルドが当たり前であり、自然出産で生まれた者は「不適正者」として生きていくことを強いられてしまいます。主人公は、暴力的な傾向がある、心臓が弱い、寿命は30歳等のデータが出された「不適正者」。周りからは不可能だと決めつけられつつも、彼は宇宙飛行士の夢を持ち続けます。すべては遺伝子情報で決まり、あらゆる場面で遺伝子鑑定が行われる中、彼は「適正者」に成りすますことで宇宙へ行くことを実現可能にしていく内容となっています。「適正者」に成りすましたとはいえ、本人の遺伝子情報が変わるわけではなく、夢を叶えるためにたゆまぬ努力をしていく姿が描かれています。
子どもたちは、主人公が生体偽装して宇宙局の採用試験を受ける場面に強い衝撃を受けた様子でした。
尿検査と血液検査のみで採用されてしまうからです。
「面接とかしないの?」「あれだけ?」
不適正者というだけで社会的差別を受ける世界に驚き、観た後の感想が2つに分かれました。
「本人の力で宇宙局に入れたわけではないのだから、
いくら努力しても認められるのは遺伝子情報だけ。本人の努力は宇宙飛行士になれるものだったのか疑問。」という見方と、
「宇宙に行けたのは、本人の努力があってのこと。たとえ、偽っていたとしても努力は本物。」
という見方。 でも、一致していることは、遺伝子情報だけで左右されたくないということでした。
次の日、ある事件(?)が起こります。
5・6年生の中の一人がちょっとしたことで嘘をつき、それを隠そうとごまかし続けてしまったのです。
「自分の問題はごまかすことにある。変わりたい。」そう、思っているにも関わらず、また嘘をついてしまった。本人からしたら、信頼回復に努めたく、必死に「反省している。もうしないようにする。」と訴えます。
嘘をついてしまう、ごまかしてしまうことは誰にでもあることです。本人が「次から気をつける」といえば流されてしまう話かもしれません。でも、今回は『GATTACA』を観た翌日。なんというタイミングなのでしょうか。
「もしかしたら、嘘をつきやすい遺伝子が突然変異で出てきてしまったせいなのかもしれない。」との、おっちゃんからの問いかけに5・6年生全員が頭を抱え込みました。
遺伝子のせいにしてしまえば、それはもう直せないことなのか。それを認めてしまうと、自分ではもう、どうしようもできないのか。それぞれが自分の直したい問題点に置き換え、悩み出しました。友達が変われないということは自分自身の変わる可能性をつぶしてしまうことになると理解しているのです。遺伝子情報だけで左右されたくないとはいっても、こうした問題に直面し、それを自分ごととして捉えたときには、気持ちが揺さぶられます。変わりたいと思っているけど、変われない。どうせダメだと思ってしまう。親から受け継いでなくても、突然変異を起こしてしまった遺伝子があり、それが原因となっているのかも。変われないのは遺伝子のせい?
「違うと思う。」考えてから一人が言い出しました。
「孔子先生もおっしゃってる。
“秀でて実らざる者あり”(才能があっても、実らない人がいる。人は努力が必要だ。)って。
ということは、秀でていなくても実る者がいるってことでしょ。遺伝子がよくなくても、努力すればよくなれるってことだよ。」
「誰にでも変わりたいことはある。遺伝子で変われないと決まっちゃったら、誰も信用されなくなっちゃう。」
「◯◯は前に事件起こして失敗してから変わってきたと思う。だから、変われるよ。」
変われるといっても、どうしたら変われるのだろうか。
そんな疑問も出てきます。
「強い意志を持てば変われる!ショックを受ければ、強い意志が持てる!」
「ドカーンって大きなショックでなくても、
小さな失敗をちょくちょくして、少しずつ変わっていく場合もある。」
「そう、ドカーン型とチョクチョク型があると思う。」
「強い意志って、遺伝子には関係ないんじゃないの?」
「でも、新しもの好きの遺伝子があるって(テキストに)書いてあったよ。」
「何かを感じるときにも、ホルモンが関係しているでしょ。
ホルモンはタンパク質でできてるって書いてあったから、やっぱり遺伝子に関係していると思う。」
「成績も遺伝子が関係しているって。」
「何!!」
先週まで読んできたテキストをもう一度読み直すことで、まだ読んでいなかった部分から新しい情報を得ていきます。
「デザイナーチャイルドに生まれたかったなー。」
おやおや?遺伝子情報だけに左右され始めてる??
こちらの本も参考にしています。
『遺伝子が語る「命の物語」』
著書の村上氏は眠っている遺伝子をオンにすることで可能性が広がることを提唱されています。 「遺伝子のスイッチ」の節を読んでいくうちに、話に引きつけられていきます。
「やべ、変われるかもって可能性を感じてしまった。」
これまた揺さぶられているようです。
遺伝子の中に眠っている部分があって、それを呼び起こすことで人は変われる・・かもしれない。
「ポジティブになりたいって毎日声に出していってみよう。」
「プラス思考がいいなら、ニコニコしてればいいのかな。」
変われないのは、遺伝子がオフになっているせいなのか。オンになれば、変わりたい自分に変われるのだろうか。やはり遺伝子が関係しているのか。具体的にどうすれば変われるのだろうか。
来週も引き続き悩んでいきます。
AN
※TCS2015年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。