タイトル: 信じるカネ?
探究領域: 社会寄与
セントラルアイディア:価値の移転は信頼によって成り立つ。
お金を集めたり、貯めたりすることにのみ関心があった子どもたちの視野が次第に広がってきました。どんなに多くの札束を持っていようが、その札自体の「価値」がなくなってしまったらただの紙くずです。
「じゃあお金をやりとりしている人どうしの関係ってどう考えたらいいんだろう?」
物々交換の時代からクレジットカードの時代に変わっても、結局、お金を介してやりとりされているのは「物」と「物」との交換が基本です。お金を出せば「物」をもらえる。お金を受け取った人は「物」を渡す。
「取引してるんだね」
おお、「取引」ですか。いい言葉が出てきましたね。そこでたとえ話をしてみることに。
メンバーの一人は、ガンプラを大事にしていました。この子にとってガンプラはとても「価値」のあるもの。さあ、そこにやっぱりガンプラに興味を持つ子が現れました。そしてこう言いました。
「ねえ、ガンプラちょうだい!」
さあ、君は、「いいよ!あげるよ!」って言えるか……
「言えるわけないじゃん!」
子どもたちみんなが即答します。
じゃあ、どうしたら「取引」できるか。
「お金だよ!」
みな当然でしょという顔つきで答えます。しかし、その後、すぐに別の子から、
「プレゼントすることもあるよ」
「ありがとう!もらってっていうのもあるよね」
「価値」のある「物」が「取引」されるのは、お金のやりとりがなされる場合だけではないということが明らかになってきました。
「取引」が行われているというのは「お金」のやりとりではなく、「お金」を仲介としてやりとりされる「価値の移転」である。
と、私が伝えると、子どもたちは、もやもやとした感じを前面に出して、価値の移転か???とつぶやきます。
どう考えても3・4年生にぱっとなじみのある言葉ではありません。明らかにまだ子どもたちには意味は伝わっていません。しかし、何か深い意味がありそうだということは明らかに感じとっています。よく、難しい言葉は、子どもにわかるようにかみくだいて説明しようとするケースが見られます。しかし、それは逆効果。
(なんか大事そうな感じ……)
呪文のように感じられて、ぱっと意味はわからないけれど、だからこそその言葉の意味をわかりたい!と思わせる「場」をつくることが不可欠です。
「大事なガンプラがA君からBさんに渡った。これが価値の移転だ」
カチノイテン……ちょっと面白い語感……そうか、イテンって引っ越しみたいなことじゃん……価値の引っ越し……なるほど……
「おっちゃん!ていうことは、私の消しゴムを○○ちゃんに渡したら価値の移転だよね」
説明せずとも、子どもたちはモヤモヤしつつ、面白がって「仮の理解」を語り始めます。
「そうそう!きみ、わかってきたね!」
なんて返せば、得意顔。こうして、語りながら、子どもがみんなとやりとりしながら理解してゆく。とりあえずの理解を恥ずかしがらずに語りあってゆきながら、みんなで頭ぐるぐるしながら知識をつくりあげてゆきます。
「じゃあ、ガンプラの箱の中に実際に物が入ってなかったらどうなる?」
「約束を守らなかったり、うそついちゃう関係だと取引成り立たない」
「そっか、それが信用ってことだよね」
そこで、信用をつくりあげる取引の条件として
「継続」
という言葉を黒板に書きます。これは「けいぞく」と読むけど、どんな意味か想像できるかな?とたずねると、「続く」という字が入っているので、「つづける」ということだとすぐわかります。
「信用はね、うそつかず、約束を守るということの継続によって生まれるね」
壊れているものを売りつけたり、ないものをあると言ったり、お金を払うと言ったのに払わなかったり。でも、逆に「信用」があれば「お金」がなくても、君に「お金」あげるからやってほしい!と言われるかもしれないし、今、すぐ払えなくても待ってくれる。
「お金」があっても、取引する両者に「信用」がなかったら取引は生まれない。だから「お金」を増やすことはできない。だから「盗る」しかなくなっちゃう。でも、そんなことしたらさらに「信用」を失って、誰も「価値」を「移転」しなくなっちゃう。
ということは世の中全体が「信用」できない人々の集まりだったら……「価値」の「移転」は生まれない。お互いに自分の「お金」だけ握りしめて、取引が行われない、動かない社会……物と物のやりとりも、アイデアのやりとりも生まれない、つまらなくて、貧しい世の中になってしまう……
「お金が使えるためには信頼関係がないとダメなんだ」
どうしてうそをついてはいけないのか、約束を守るのは何のためなのか。これまで、ただの「お説教」としか聞こえなかったことが、社会を動かす根幹なのだということを、お金の探究から少しずつ気づき始めました。
次週から早くも後半。価値の移転をスムーズにする信頼関係をどうつくるか、それがなかったら世の中はどんなに混乱するか、について追究を進めます。
RI
※TCS2015年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。
探究領域: 社会寄与
セントラルアイディア:価値の移転は信頼によって成り立つ。
[3・4年生]
「お金が大事っていうよりお金が通用することが大事なんだね」お金を集めたり、貯めたりすることにのみ関心があった子どもたちの視野が次第に広がってきました。どんなに多くの札束を持っていようが、その札自体の「価値」がなくなってしまったらただの紙くずです。
「じゃあお金をやりとりしている人どうしの関係ってどう考えたらいいんだろう?」
物々交換の時代からクレジットカードの時代に変わっても、結局、お金を介してやりとりされているのは「物」と「物」との交換が基本です。お金を出せば「物」をもらえる。お金を受け取った人は「物」を渡す。
「取引してるんだね」
おお、「取引」ですか。いい言葉が出てきましたね。そこでたとえ話をしてみることに。
メンバーの一人は、ガンプラを大事にしていました。この子にとってガンプラはとても「価値」のあるもの。さあ、そこにやっぱりガンプラに興味を持つ子が現れました。そしてこう言いました。
「ねえ、ガンプラちょうだい!」
さあ、君は、「いいよ!あげるよ!」って言えるか……
「言えるわけないじゃん!」
子どもたちみんなが即答します。
じゃあ、どうしたら「取引」できるか。
「お金だよ!」
みな当然でしょという顔つきで答えます。しかし、その後、すぐに別の子から、
「プレゼントすることもあるよ」
「ありがとう!もらってっていうのもあるよね」
「価値」のある「物」が「取引」されるのは、お金のやりとりがなされる場合だけではないということが明らかになってきました。
「取引」が行われているというのは「お金」のやりとりではなく、「お金」を仲介としてやりとりされる「価値の移転」である。
と、私が伝えると、子どもたちは、もやもやとした感じを前面に出して、価値の移転か???とつぶやきます。
どう考えても3・4年生にぱっとなじみのある言葉ではありません。明らかにまだ子どもたちには意味は伝わっていません。しかし、何か深い意味がありそうだということは明らかに感じとっています。よく、難しい言葉は、子どもにわかるようにかみくだいて説明しようとするケースが見られます。しかし、それは逆効果。
(なんか大事そうな感じ……)
呪文のように感じられて、ぱっと意味はわからないけれど、だからこそその言葉の意味をわかりたい!と思わせる「場」をつくることが不可欠です。
「大事なガンプラがA君からBさんに渡った。これが価値の移転だ」
カチノイテン……ちょっと面白い語感……そうか、イテンって引っ越しみたいなことじゃん……価値の引っ越し……なるほど……
「おっちゃん!ていうことは、私の消しゴムを○○ちゃんに渡したら価値の移転だよね」
説明せずとも、子どもたちはモヤモヤしつつ、面白がって「仮の理解」を語り始めます。
「そうそう!きみ、わかってきたね!」
なんて返せば、得意顔。こうして、語りながら、子どもがみんなとやりとりしながら理解してゆく。とりあえずの理解を恥ずかしがらずに語りあってゆきながら、みんなで頭ぐるぐるしながら知識をつくりあげてゆきます。
「じゃあ、ガンプラの箱の中に実際に物が入ってなかったらどうなる?」
「約束を守らなかったり、うそついちゃう関係だと取引成り立たない」
「そっか、それが信用ってことだよね」
そこで、信用をつくりあげる取引の条件として
「継続」
という言葉を黒板に書きます。これは「けいぞく」と読むけど、どんな意味か想像できるかな?とたずねると、「続く」という字が入っているので、「つづける」ということだとすぐわかります。
「信用はね、うそつかず、約束を守るということの継続によって生まれるね」
壊れているものを売りつけたり、ないものをあると言ったり、お金を払うと言ったのに払わなかったり。でも、逆に「信用」があれば「お金」がなくても、君に「お金」あげるからやってほしい!と言われるかもしれないし、今、すぐ払えなくても待ってくれる。
「お金」があっても、取引する両者に「信用」がなかったら取引は生まれない。だから「お金」を増やすことはできない。だから「盗る」しかなくなっちゃう。でも、そんなことしたらさらに「信用」を失って、誰も「価値」を「移転」しなくなっちゃう。
ということは世の中全体が「信用」できない人々の集まりだったら……「価値」の「移転」は生まれない。お互いに自分の「お金」だけ握りしめて、取引が行われない、動かない社会……物と物のやりとりも、アイデアのやりとりも生まれない、つまらなくて、貧しい世の中になってしまう……
「お金が使えるためには信頼関係がないとダメなんだ」
どうしてうそをついてはいけないのか、約束を守るのは何のためなのか。これまで、ただの「お説教」としか聞こえなかったことが、社会を動かす根幹なのだということを、お金の探究から少しずつ気づき始めました。
次週から早くも後半。価値の移転をスムーズにする信頼関係をどうつくるか、それがなかったら世の中はどんなに混乱するか、について追究を進めます。
RI
※TCS2015年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。