タイトル: 信じるカネ?
探究領域: 社会寄与
セントラルアイディア:価値の移転は信頼によって成り立つ。
物々交換から「お金」への移行は、いきなり起こったわけではありません。まず、物の中でも「必需品」が用いられるようになりました。その代表が「塩」でした。やがて「米」も使われるようになり、「米」の場合は、江戸時代の武士の給与は「米」でなされていたので、比較的最近まで「お金」と同様の働きをしていました。
確かに、これはほしくない人はいないし、備蓄しておいて損はしない物なので重宝されたでしょう。ただ、大きな欠点がありました。それは持ち運びが大変だ!ということです。
「塩やお米をずっとかついで買い物はできないもんね」
取引先まで簡単に持ち運びできて、価値のあるものとして最初に選ばれたのは「美しい貝殻」でしたが、金属を加工する技術が確立されてくると、金や銀といった稀少で、みんながほしがる物へと移行してゆきました。貨幣・コインの時代です。
「昔のお金っていうと、やっぱり小判とか金貨というイメージだもんね」
では、「貨幣」から「紙幣」へとどう移り変わってきたのか?それはなぜか?を考えます。
「なぜかはわかるよ。だって紙ならかさばらないじゃない」
カンのいい子が答えます。他の子たちもそう言われるとすぐに納得です。お財布を「紙入れ」と呼ぶように、紙に「数字」を書けばよいので、1万でも1億でも、紙に書いた「量」のお金を1枚で表すことができるのです。紙幣の最初は、「この紙はこれこれの価値があります」と保証した手紙のようなものだったのです。ただこれだとある人からある人へはよいかもしれないが、他の人へ譲るときや、お金をくずすときに厄介です。ということで、あまり大きすぎない単位で、日常持ち運びするぐらいの金額の「紙幣」がつくられるようになり、細かいはしたにはコインを当てるようになりました。
ただそうはいっても「紙幣」はただの紙なので、この紙きれにどうやって信用をつけるかが課題となりました。そこで生まれたのが「金本位制」でした。日本も明治政府になって「兌換(だかん)」と言って、1円紙幣を「金」と何グラムかと交換できるようにして紙幣の「信用」を 上げようとしました。しかし、流通する紙幣の量に比べて、十分な金を保有することは大変で、金ではなく銀と交換できるようにしたりしてなんとか続けようとしましたが、世界恐慌後の1931年に金本位制は終わりました。
「紙幣だったらいくらでも刷れるけれど刷り過ぎたら意味ないもんね」
紙幣をたくさん印刷すればみんなお金持ちになってハッピー!なんてそんなわけにはいかないだろうというふうに子どもたちもなんとなく感じとっていました。子どもの直観は正しく、紙幣の流通量が増えれば、その結果、物は値上がりするし、紙幣自体の価値は下がるし、いいことがないのです。
多くの国が「金」と交換できる紙幣を維持できなかった中で、唯一、金本位制を維持した国がありました。それは世界でもっとも強いと思われた国。アメリカでした。アメリカドルは、第二次世界大戦後、ますます価値を上げ、世界を支配する通貨として君臨するかと思われました。しかし、ソ連との冷戦による軍備拡張戦争や、「世界の警察」として、各地で起こる紛争に首を突っ込んでいるうちに、国力は落ち、ついに「金本位制」を維持できなくなりました。こうして「金」の裏づけを持つ「紙幣」は世界から姿を消したのです。にもかかわらず、いまだに「紙幣」の「信用」は維持されている。では、どうやって国際間で取引きされる「紙幣」の「信用」を維持しているのでしょう?
「毎朝、テレビのニュースで1ドル何円とか1ユーロ何円とか、ただいま数値が変わりましたとか言っているのを聞いたことあるだろう」
と子どもたちに尋ねると、ああなんかあるなあ!という顔をします。どの国の通貨にどれぐらいの価値を与えるかで「交換のレート」が変わります。これを時々刻々行ってゆく制度に変わったのです。これを「変動相場制」と言います。
「ただの紙くずにしないように努力してるんだなあ……」
誰かがぽつりとつぶやきます。まったくその通り。どんなに精巧に、本物の「紙幣」をつくったところで「信用」が失われればなんの価値もありません。
「おっちゃん、紙幣とクレジットカードって何が違うの?」
おっ、ついにそこに気がつきましたね。「紙幣」がなくても「金額」の取引は可能。それが明らかなのは、いまや会社のお給料を「紙幣」の束を袋に入れて渡すところなんてほとんどないじゃないですか。
「いったいお金の数の動きってどういうことなんだろう……」
物か、コインか、紙幣か、クレジットカードかという「違い」を超えて、取引されているものはなんなのか。いったい私たちは物やお金を媒介にして、何をやりとりしているのか。ついに今回のテーマ学習の「セントラルアイデア」に迫る瞬間がやってきました。
ということで、次週は、「価値の移転」ということを考えてゆきます。
RI
※TCS2015年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。
探究領域: 社会寄与
セントラルアイディア:価値の移転は信頼によって成り立つ。
[3・4年生]
お金は、物と物との交換では不便なところを補うために生まれ、どんどん発達してゆきました。しかし、最初から「紙きれ」が使われていたわけではありません。そこで、「紙切れ」がお金になるまでの歴史を学んでゆきました。物々交換から「お金」への移行は、いきなり起こったわけではありません。まず、物の中でも「必需品」が用いられるようになりました。その代表が「塩」でした。やがて「米」も使われるようになり、「米」の場合は、江戸時代の武士の給与は「米」でなされていたので、比較的最近まで「お金」と同様の働きをしていました。
確かに、これはほしくない人はいないし、備蓄しておいて損はしない物なので重宝されたでしょう。ただ、大きな欠点がありました。それは持ち運びが大変だ!ということです。
「塩やお米をずっとかついで買い物はできないもんね」
取引先まで簡単に持ち運びできて、価値のあるものとして最初に選ばれたのは「美しい貝殻」でしたが、金属を加工する技術が確立されてくると、金や銀といった稀少で、みんながほしがる物へと移行してゆきました。貨幣・コインの時代です。
「昔のお金っていうと、やっぱり小判とか金貨というイメージだもんね」
では、「貨幣」から「紙幣」へとどう移り変わってきたのか?それはなぜか?を考えます。
「なぜかはわかるよ。だって紙ならかさばらないじゃない」
カンのいい子が答えます。他の子たちもそう言われるとすぐに納得です。お財布を「紙入れ」と呼ぶように、紙に「数字」を書けばよいので、1万でも1億でも、紙に書いた「量」のお金を1枚で表すことができるのです。紙幣の最初は、「この紙はこれこれの価値があります」と保証した手紙のようなものだったのです。ただこれだとある人からある人へはよいかもしれないが、他の人へ譲るときや、お金をくずすときに厄介です。ということで、あまり大きすぎない単位で、日常持ち運びするぐらいの金額の「紙幣」がつくられるようになり、細かいはしたにはコインを当てるようになりました。
ただそうはいっても「紙幣」はただの紙なので、この紙きれにどうやって信用をつけるかが課題となりました。そこで生まれたのが「金本位制」でした。日本も明治政府になって「兌換(だかん)」と言って、1円紙幣を「金」と何グラムかと交換できるようにして紙幣の「信用」を 上げようとしました。しかし、流通する紙幣の量に比べて、十分な金を保有することは大変で、金ではなく銀と交換できるようにしたりしてなんとか続けようとしましたが、世界恐慌後の1931年に金本位制は終わりました。
「紙幣だったらいくらでも刷れるけれど刷り過ぎたら意味ないもんね」
紙幣をたくさん印刷すればみんなお金持ちになってハッピー!なんてそんなわけにはいかないだろうというふうに子どもたちもなんとなく感じとっていました。子どもの直観は正しく、紙幣の流通量が増えれば、その結果、物は値上がりするし、紙幣自体の価値は下がるし、いいことがないのです。
多くの国が「金」と交換できる紙幣を維持できなかった中で、唯一、金本位制を維持した国がありました。それは世界でもっとも強いと思われた国。アメリカでした。アメリカドルは、第二次世界大戦後、ますます価値を上げ、世界を支配する通貨として君臨するかと思われました。しかし、ソ連との冷戦による軍備拡張戦争や、「世界の警察」として、各地で起こる紛争に首を突っ込んでいるうちに、国力は落ち、ついに「金本位制」を維持できなくなりました。こうして「金」の裏づけを持つ「紙幣」は世界から姿を消したのです。にもかかわらず、いまだに「紙幣」の「信用」は維持されている。では、どうやって国際間で取引きされる「紙幣」の「信用」を維持しているのでしょう?
「毎朝、テレビのニュースで1ドル何円とか1ユーロ何円とか、ただいま数値が変わりましたとか言っているのを聞いたことあるだろう」
と子どもたちに尋ねると、ああなんかあるなあ!という顔をします。どの国の通貨にどれぐらいの価値を与えるかで「交換のレート」が変わります。これを時々刻々行ってゆく制度に変わったのです。これを「変動相場制」と言います。
「ただの紙くずにしないように努力してるんだなあ……」
誰かがぽつりとつぶやきます。まったくその通り。どんなに精巧に、本物の「紙幣」をつくったところで「信用」が失われればなんの価値もありません。
「おっちゃん、紙幣とクレジットカードって何が違うの?」
おっ、ついにそこに気がつきましたね。「紙幣」がなくても「金額」の取引は可能。それが明らかなのは、いまや会社のお給料を「紙幣」の束を袋に入れて渡すところなんてほとんどないじゃないですか。
「いったいお金の数の動きってどういうことなんだろう……」
物か、コインか、紙幣か、クレジットカードかという「違い」を超えて、取引されているものはなんなのか。いったい私たちは物やお金を媒介にして、何をやりとりしているのか。ついに今回のテーマ学習の「セントラルアイデア」に迫る瞬間がやってきました。
ということで、次週は、「価値の移転」ということを考えてゆきます。
RI
※TCS2015年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。