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教育としてのディベート

タイトル: 治の力
探究領域: 社会寄与
セントラルアイディア:私たちは私たちを私たちのために治めている。

[5・6年生]

ディベートのフォーマットに忠実に則って議論を進めてゆく中であぶりだされること……それは思考のスタイルでした。

投票率が高くなると政治はよくなる

という論題でディベートしていたときでした。「高くなると政治はよくなる」という「賛成」の立場で考えなければならないチームでは、すぐにこんな意見が出ました。

「投票する人っていうのは政治のことを考えている人だから」

さあ、問題はこれからです。どうしてそう言えるのか?理由と根拠を考えなければなりません。

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「普段から政治のことを考えているから投票するんじゃない。だから投票率が上がるってことは、政治がよくなるってことにつながっているんだよ」

早速、いい意見が飛び出しました。政治のことに関心が高まり、民主的な世の中をつくりたいという気持ちが高まってきているせいか、自分なりに考えた意見はぽんぽん飛び出すようになっています。ただ、ここからが茶飲み談義とディベートとの違い。次に考えるなければならないのは、意見を支える根拠です。

「う〜ん、じゃあ i-padで調べる!」

おいおい、ちょっと待って。何を i-pad で調べるの?と問いかえすと、

「どうして政治に関心があると政治はよくなるのかその理由を探す!」

と答えるではありませんか。ここが第一の関門。根拠となるデータを探す前に、まずは自分なりの「根拠」とその「仮説」を持っていないと、やみくもに見つけるだけになってしまいます。i-pad でググれば、たくさん検索リストが出て来るので調べた気になりますが、それはいたずらに時間を過ごしているに過ぎません。

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「おっちゃん、根拠見つけた!」

ある子が叫びます。その子は、否定側の立論を考える上で、投票率の上昇が政治をよくすることにつながらない根拠を探し出しました。

「みんなの人気をとれるけど、あまりよくないアイデアが出されても投票率は上がるんだって。」

面白い根拠を見つけてきたね。自分で思いついたの?って聞くと、「知恵袋」に書かれていた答えでした。「仮説」に当たりをつけるには「知恵袋」も悪くないね。ただ、それはスタート。人気とりのために国民受けしそうなアイデアを出して投票率を上げた事実を探し出さなければ、根拠の質としてはあまり高くはありません。ここからが本当の根拠探し……ということでここから i-pad を使う価値が出てきます。ただし、この場合も、どういう検索ワードを入れて探すか。そこが課題になります。

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「おっちゃん、おれね反対の意見だいたいわかったから、その反論できるよ」

反論にどう答えてゆくかはディベートの命運を握る大事なポイント。心強いですね。ただ……どうもその「反論」は一面的になりかけているぞ。確かに、相手の不備を突くのも「反論」のひとつ。ただ、ジャッジの立場からすると、「肯定側の立論」なのに、「否定」の理由を「否定」しているだけでは、魅力的な立論になりません。「否定」側の「否定理由」を覆すような、自身の魅力的な理由を主張する必要があります。

「ああ、難しいな」

思わずため息がもれます。まったくその通り。恐らく彼らはここまで自分の「意見」を吟味したことなどなかったでしょう。これがディベートを教育で用いることの意義なのだなと実感。否応なく、自分の考えや判断の仕方をふりかえらざるを得ず、さらに、どこに問題があるのかをあぶり出してくれる。こうして、どう意見をつくりあげてゆけばよいのか学ぶのです。

論の勝ち負けなどという意識は見事にどこかに吹き飛んでいます。それよりも、相手の反論を利用して、自分たちの主張の弱みを直視し、よい面を根拠づけてゆくことが大事だ!という意識に満ちています。

来週は、いよいよプレゼンテーションデー。実際にディベートしてみて、聴衆の納得をどう得てゆくかリアルに挑戦します。

RI

TCS2015年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。



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