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民主主義は最悪な仕組み?

タイトル: 治の力
探究領域: 社会寄与
セントラルアイディア:私たちは私たちを私たちのために治めている。

[5・6年生]

前回の「治の力」では、人を統治する仕組みや歴史を知った後、当時の変ぽぽクラスのメンバーが「党」を結成し、TCSをよりよくする政策をつくって子ども達に訴えて実行することを目指しました。そのとき、政策決定のために一票を投じていたので、今回もそういうアウトプットを目指すのだろうと子どもたちは予想していました。

しかし、今回は、より大きな世界に目を向けます。大人でも実は正面きってしていない政治談義をとことんしてゆこうというわけです。

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連日、国会周辺でのデモが報道されています。テレビのニュースなどでいろいろな情報を目にし、耳にしている子どもたちから早速、さまざまな意見が飛び出します。

「集団的自衛権とか安保でしょ」
「安保はよくないよね」
「特定秘密保護法案も決めちゃったし」
「安倍は勝手に決めようとしてるんだ」
「戦争できるようになっちゃうんでしょ」
「戦争はやだよね」

予想通り、巷に流れている「ゴシップ」レベルの情報が飛び交います。

そこで、安倍さんのどこがいけないの?と軽くたずねてみると、勝手に自分たちだけで大事なことを決めていて、みんなの意見をくみとっていないのだと訴える子が現れました。

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この写真の人はイギリスの首相だったチャーチル。第二次世界大戦の際に、イギリスを旧知から救った名政治家として名をとどめています。チャーチルを名政治家たらしめているのはスピーチのうまさ。彼のスピーチを子どもたちに示します。

民主主義は最悪の政治制度だ

えっ?なんで?みんなで決めるのが最悪?この人独裁者だったの?

当然ながらある子らは戸惑います。一方、別の子らは、何か裏があるに違いないと推理を働かせます。ということで、発言の後半部分も示すと……

これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが

民主主義が現れる以前の政治制度はもっとよくないのだが、だからといって民主主義が即、手放しで素晴らしい仕組みだとは言えないということだというチャーチルの「真意」が見えました。

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ヒトラーは、決して不正をして政権を奪ったわけではありません。民主的な選択という方法を巧みに「悪用」して、自分たちの地盤を固めてゆきました。みんなが熱狂するようなアドバルーン的政策を掲げ、国民の目をくらませ、あたかもバラ色の未来が待ち受けているようなイメージを将来への不安を抱いている国民たちに見せつけました。この人に頼っていけば大丈夫!と思いこんだ大多数の国民がヒトラーを支持し、気づいたときには泥沼から出ることができず、悲惨な結末を迎えてしまいました。

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私たちの日本もヒトラーのことを「対岸の火事」として眺めるわけにはいきません。70年前の戦争に突入し、自国・他国に多大な迷惑をかけてしまいました。この反省から「日本国憲法」が制定され、国民主権が大事な柱になりました。

憲法は強い力を握る「権力者たち」を見張り、縛るもの。それが可能になるのは私たち「国民」が主体的に政治に関与し、われわれの代表者として働くべき政治家がきちんとすべきことを遂行しているかチェックしなければなりません。それが「国民主権」ということです。

「安倍さんを選んだのは国民だよね」
「ちゃんと国民は考えて代表者を選んでいるのかな」
「おっちゃん、表現の自由が大事なんじゃない?」
「新聞とかテレビがちゃんと情報を教えてくれないとね」
「それでもみんなの意見をまとめてゆくの大変だよね」
「多数決っていうのが曲者だよ。だって変な人がたくさんいたらその人たちの意見が通っちゃうもんね」
「いい意見が負けることがあるってことか」
「だったらすごい賢い王様がいてその人が決めてひっぱっていった方がいいかも」

さっきとは打って変わって話し合いが深くなってたぞ。小学生をみくびるなかれ。彼らの中に眠っている素直な疑問を出してゆくだけで、本質に迫る課題が浮かび上がってきます。

「こりゃあ民主主義って面倒だわ……」

みんなで意見を出し合って決めようという「きれいごと」が現実問題として、どんなに多くの困難を抱えているか……チャーチルの警句が胸にしみます。

いきなり座談は熱く盛り上がっていました。次週はさらにこれまでの政治制度の変遷をふりかえりつつ、さらに政治談義を続けます。

RI

TCS2015年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。



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