タイトル:エイリアン・パラダイス
探究領域:共存共生
セントラルアイディア:「異質との相互作用が変化を生み出す。」
情報収集のため、スクールから程近い井の頭自然文化園水生物館を訪れることにしました。
「うわっ、くすぐったい!」
入館してすぐの所に、泳いでいるウグイを実際に手で触れるコーナーがありました。
子ども達は水槽にはりつき、我先にといった様子で大盛り上がりです!
平日の昼間、天気も雨模様ということで館内はほぼ貸切状態。
近所で見たことのある馴染み深いものから、その存在すら知らなかったものまで、館内にはたくさんの水生物が展示されていました。
一つ一つ水槽を覗き込みながら、井の頭池に住んでいる生き物をじっくり観察します。
「あっ、名前のところにこの赤いマークがついてるのが、外来種みたいだよ!!」
少し先を進んでいた1年生の男の子が走って私のところに報告しに来てくれました。
『蚕糸の森見っけ隊』で磨いた発見力がここでも発揮されます!
「あれ、この草みたいなのにも同じマークがついてる!外来種って魚とかだけじゃないのかあ。」
「外来種=動物」も単なる思い込みに過ぎません。
先入観が崩れ、不思議そうな表情でオオカナダモの水槽を眺めます。
「これ、蚕糸の森公園の池にいたやつじゃない?」
「ほんとだっ!」
水槽の中にいるのはミシシッピアカミミガメ。
旧校舎のすぐ近くにあり、TCSキッズの遊び場として大変お世話になった公園の池を我が物顏で泳いでいたあのカメ達です。
なんと、あの池が実は外来種の宝庫だったとは・・・
決して広くはありませんでしたが、見学ルートを何周もまわり、館内を十分に堪能した様子の子ども達。
井の頭池には様々な種類の水生物が同居していることに驚き、水生物館を後にしました。
翌日のふりかえりは、スクールにて、井の頭池を代表する水生物を使ったクイズ大会からスタート!
写真で示した水生物が在来種か外来種のどちらかを当てるシンプルな問題ですが、全員の表情は真剣そのもの。
課題図書「タマゾン川」の内容を思い出したり、名前から判断してみたり。
答えを発表するたびに一喜一憂する声がフロア中に響き渡ります。
クイズに正解すればオッケー?
TCSのテーマ学習を少しでもご存知の方であれば、その答えが「NO」であることは容易にご理解頂けるでしょう。
一体、外来種とは何なのか。
このクイズはそのことを考えていくきっかけに過ぎません。
クイズ大会の余韻もそのままに、外来種の定義を尋ねてみることに。
改めての質問に少し戸惑いながらも、「『日本にもともといなかった外国から来た種類』なんじゃない」という答えが返ってきました。
「じゃあ、在来種は?」とさらに問いかけると、「うーん、最初から日本に生まれた生き物、かな」とどこか自信なさげな様子。
(予想通りの返答だな。ここで少し揺さぶってみよう。)
「よし、わかった。なら、コイは外来種か在来種のどちらだろう?」
少し意地悪な問題で、子ども達の反応を伺います。
「そりゃ、在来種でしょ。」「そうそう。」
コイは昔から日本にいるに決まってるでしょ。わざわざ何でこんな質問するんだろ?
ホワイトボードに張り出された「コイ」の二文字を眺める姿からは、そんな心の声が聞こえてくるかのようです。
「実はね・・・コイは外来種だよ!」
「???」
外来種の正確な定義は、もともとその場所に住んでいなくて後からやってきた生物、です。
「井の頭池における」という前提をおけば、たとえ外国産でなくても、もともと井の頭池に住んでいなかったコイは、モツゴなどの在来種から見れば立派な他所者。
先ほどまで頭にはてなマークが飛び交っていた1・2年生もその説明を聞いて納得の表情です。
では、一体、井の頭池の水生物における在来種と外来種の比率はどんなだろう?
さらなる疑問が湧いてきます。
子ども達は、それぞれ多少の違いがあれど、外来種と在来種の比率は50:50に近い数字を予想しました。
そこで井の頭公園がホームページに掲載している資料を読むと、そこには驚愕の事実が書かれていました。
実は、在来種は全体のうち2%程度しか存在せず、なんと今、井の頭池の約98%が、これまでいなかった新たな生物で占められているというのです。
「えーーーっ、そんなに少ないの?」
「水生物館には外来種のマークがついているものは少なかったのになあ・・・」
「なんで、そこまで外来種が増えたんだろう?」
もやもやや疑問は深まるばかり。
さらにその資料を読む進めていくと、外来種が井の頭池に住みついた原因として考えられるものとして
・釣りをしたい人の放流(ブラックバス、ブルーギル)
・ペットとして飼えなくなって捨てた(ミシシッピアカミミガメ)
・見て楽しむために放流(コイなど)
・転宅、改築により庭の池のコイを放流
などの理由が。
「ひどい、何それーーーっ!!」
井の頭池の自然環境が大きく変貌を遂げてしまったのは、実は人間の自分勝手な理由によるものだったのです。
「もしかして、外来種が在来種を食べちゃったのかなあ。。。」
先週、Webサイトの情報を参考にしながら、「絶滅危惧種」という言葉とその存在を知ったものの、正直まだまだ頭で理解するにとどまっていた子ども達。
実は、この問題は、決して遠い世界の出来事でないということを次第に実感してきました。
HY
※TCS2014年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。
探究領域:共存共生
セントラルアイディア:「異質との相互作用が変化を生み出す。」
[1・2年生]
自分たちの身の回りで、どんな生物・植物が消えようとしていて、また逆に増えようとしているんだろう?情報収集のため、スクールから程近い井の頭自然文化園水生物館を訪れることにしました。
「うわっ、くすぐったい!」
入館してすぐの所に、泳いでいるウグイを実際に手で触れるコーナーがありました。
子ども達は水槽にはりつき、我先にといった様子で大盛り上がりです!
平日の昼間、天気も雨模様ということで館内はほぼ貸切状態。
近所で見たことのある馴染み深いものから、その存在すら知らなかったものまで、館内にはたくさんの水生物が展示されていました。
一つ一つ水槽を覗き込みながら、井の頭池に住んでいる生き物をじっくり観察します。
「あっ、名前のところにこの赤いマークがついてるのが、外来種みたいだよ!!」
少し先を進んでいた1年生の男の子が走って私のところに報告しに来てくれました。
『蚕糸の森見っけ隊』で磨いた発見力がここでも発揮されます!
「あれ、この草みたいなのにも同じマークがついてる!外来種って魚とかだけじゃないのかあ。」
「外来種=動物」も単なる思い込みに過ぎません。
先入観が崩れ、不思議そうな表情でオオカナダモの水槽を眺めます。
「これ、蚕糸の森公園の池にいたやつじゃない?」
「ほんとだっ!」
水槽の中にいるのはミシシッピアカミミガメ。
旧校舎のすぐ近くにあり、TCSキッズの遊び場として大変お世話になった公園の池を我が物顏で泳いでいたあのカメ達です。
なんと、あの池が実は外来種の宝庫だったとは・・・
決して広くはありませんでしたが、見学ルートを何周もまわり、館内を十分に堪能した様子の子ども達。
井の頭池には様々な種類の水生物が同居していることに驚き、水生物館を後にしました。
翌日のふりかえりは、スクールにて、井の頭池を代表する水生物を使ったクイズ大会からスタート!
写真で示した水生物が在来種か外来種のどちらかを当てるシンプルな問題ですが、全員の表情は真剣そのもの。
課題図書「タマゾン川」の内容を思い出したり、名前から判断してみたり。
答えを発表するたびに一喜一憂する声がフロア中に響き渡ります。
クイズに正解すればオッケー?
TCSのテーマ学習を少しでもご存知の方であれば、その答えが「NO」であることは容易にご理解頂けるでしょう。
一体、外来種とは何なのか。
このクイズはそのことを考えていくきっかけに過ぎません。
クイズ大会の余韻もそのままに、外来種の定義を尋ねてみることに。
改めての質問に少し戸惑いながらも、「『日本にもともといなかった外国から来た種類』なんじゃない」という答えが返ってきました。
「じゃあ、在来種は?」とさらに問いかけると、「うーん、最初から日本に生まれた生き物、かな」とどこか自信なさげな様子。
(予想通りの返答だな。ここで少し揺さぶってみよう。)
「よし、わかった。なら、コイは外来種か在来種のどちらだろう?」
少し意地悪な問題で、子ども達の反応を伺います。
「そりゃ、在来種でしょ。」「そうそう。」
コイは昔から日本にいるに決まってるでしょ。わざわざ何でこんな質問するんだろ?
ホワイトボードに張り出された「コイ」の二文字を眺める姿からは、そんな心の声が聞こえてくるかのようです。
「実はね・・・コイは外来種だよ!」
「???」
外来種の正確な定義は、もともとその場所に住んでいなくて後からやってきた生物、です。
「井の頭池における」という前提をおけば、たとえ外国産でなくても、もともと井の頭池に住んでいなかったコイは、モツゴなどの在来種から見れば立派な他所者。
先ほどまで頭にはてなマークが飛び交っていた1・2年生もその説明を聞いて納得の表情です。
では、一体、井の頭池の水生物における在来種と外来種の比率はどんなだろう?
さらなる疑問が湧いてきます。
子ども達は、それぞれ多少の違いがあれど、外来種と在来種の比率は50:50に近い数字を予想しました。
そこで井の頭公園がホームページに掲載している資料を読むと、そこには驚愕の事実が書かれていました。
実は、在来種は全体のうち2%程度しか存在せず、なんと今、井の頭池の約98%が、これまでいなかった新たな生物で占められているというのです。
「えーーーっ、そんなに少ないの?」
「水生物館には外来種のマークがついているものは少なかったのになあ・・・」
「なんで、そこまで外来種が増えたんだろう?」
もやもやや疑問は深まるばかり。
さらにその資料を読む進めていくと、外来種が井の頭池に住みついた原因として考えられるものとして
・釣りをしたい人の放流(ブラックバス、ブルーギル)
・ペットとして飼えなくなって捨てた(ミシシッピアカミミガメ)
・見て楽しむために放流(コイなど)
・転宅、改築により庭の池のコイを放流
などの理由が。
「ひどい、何それーーーっ!!」
井の頭池の自然環境が大きく変貌を遂げてしまったのは、実は人間の自分勝手な理由によるものだったのです。
「もしかして、外来種が在来種を食べちゃったのかなあ。。。」
先週、Webサイトの情報を参考にしながら、「絶滅危惧種」という言葉とその存在を知ったものの、正直まだまだ頭で理解するにとどまっていた子ども達。
実は、この問題は、決して遠い世界の出来事でないということを次第に実感してきました。
HY
※TCS2014年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。