[5・6年生]
今週はこれまでもずっと『個の尊厳』のテーマ学習の際にお世話になって いる橋爪さんのオフィスを訪問し、インタビューをさせて頂きました。橋爪さんは、事故などで傷ついたご遺体 を修復する「エンバーマー」の資格を日本で初めて取得し、その普 及と後進の育成に当たっている方です。
実際に他者の「死」に寄り添う仕事をしている方 にインタビューする機会に恵まれることはそうありません。
子どもたちが他者の「死」がもたらす「現実」について、別の perspective から考えるきっかけとしてこのインタビューを申し入れ、ご協力頂けることになりました。
子どもたちは先週橋爪さんの仕事について書かれいている本を読み解きながら、そこには書かれていない疑問や自分の悩みと重なり合った質問をいくつも話し合い、インタビューに備えていきました。
そして当日、最初橋爪さんの仕事の内容やイメージからやや緊張した様子でしたが橋爪さんの笑顔と話しやすく明るいお人柄と絶妙なユーモアですぐに緊張もほどけ、いつもの彼らでインタビューが始まりました。
エンバーマーとして第一人者とのことですが、橋爪さんの他にも弟子はいるんですか?
自分が死ぬとしたら死化粧を依頼しますか?
友人や家族の死化粧をしたことはありますか?
真剣に考えた上で直接ご本人に聞いてみたかったことを質問していきます。
「おばあちゃんの死化粧を依頼されたことがあるけど、そりゃあ断ったよ。いやだったんだ。その”死”を受け入れられない時は断るよ。」
との言葉に子どもたちは、プロの方であってもやはり自分の肉親との別れはたった一度の特別なものなのだ、とその思いにハッとさせられたことを話していました。
エンバーミングの仕事をやめたいと思ったことはありますか?
「ぼくはね、世界征服したいって思ってるような子どもだったんだ(笑)」
「あっ(笑)それぼくたちもこの前話してたところ!」
「先生にはあまりよく思われない子どもだっただろうなぁ。
”この授業の内容全部知ってるから図書室で好きな本読ませて下さい。”って言っちゃうような子どもだったよ(笑)だって好きな本読んでいた方が良かったからね(笑)
でね、自分を必要としてくれる人がいたり、必要としてくれる場所があればさ、それって世界征服に近いと思わない?(笑)今の仕事でぼくを必要としてくれる人がいるから辞めようとは思わないんだ。人を助けたいという気持ちはずっとあってね。遺族の方に感謝してもらえると嬉しいし、”にこっ”としている表情を見るのが嬉しいんだ。」
子どもたちは、
「みんなが一緒に同じ世界を見ているワケじゃないでしょ。一人一人見ている世界があるから、その人の世界を良い世界に変えることができたら世界征服とも言えるってことを橋爪さんは言ってたんだと思う。」と理解したことを語ってくれました。
仕事でよく”死”に触れていると”死”に慣れてきますか?
「”死”に慣れたことは一度もないなぁ。もし慣れたとしたらきっとこの仕事を辞めるだろうな。」 との返答に子どもたちも驚きとともに納得した様子。
子どもたちは、”環境に慣れると色んなことが簡単になってくるけど死に慣れるとひょっとしたら軽い気持ちになるのかな?と思って質問したけど橋爪さんの答えを聞いてやっぱり”死”は一人一人違うものだし、毎回が初めてだから仕事でよく直面するとはいえ、慣れていくようなものではないんだ。”と話していました。
気付くと橋爪さんの話に引き込まれ、あっと言う間にインタビュー時間は過ぎてしまいました。
大切な人の死に直面し、悲嘆にくれる人に寄り添い、なんとか折り合いをつけて生きてゆけるようにサポートすることを使命として広範に活動なさっている橋爪さんとのインタビューを通 じて、「貴重なお話を聞けた」というだけでなく、「他者の死」と「自分の死」とのつながりや、「生」ということに対してさらに深く実感することができました。
また、一つの分野を第一人者として切り開いてきた魅力的な大人との出会いから子どもたちは年を重ねていく楽しさや喜びを感じ取り、少し自分の未来への考え方が変わったと話していました。
そういう意味においても正にこれから子どもたちが自分の40年後の未来について試行錯誤を重ねながら考えていく上で大変貴重な学びの機会を与えて頂くことができました。
橋爪さん、そして(株)GSIの皆さま、このように貴重なお時間を賜り本当にどうもありがとうございました。
YI
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