[5年生]
「バブルのときは今より40%も消費電力量が少なかったのです。私たちはいつの間にか電力を使い過ぎる生活に慣れてしまったのではないでしょうか。
今こそ生き方、働き方を見つめ直す時期ではないでしょうか。」
「原発を止めても原発のゴミはなくなりません。まず、核のゴミを自ら引き受ける
ことからスタートし、覚悟を示しましょう。」
「私たちは今こそものづくりからアイデア大国へと変わりましょう。エネルギーを
使わないアイデアを開発することに力を注ぎましょう。」
3人の候補者は、50%消費電力量をカットしても豊かに明るく暮らせる世の中を
作るためにどうしたらよいか、具体策を堂々と述べました。
いつもは自分の考えを堂々と語る男の子がいつになく緊張したのか、たどたどしく
なったり、具体例をいくつも挙げて理路整然と語る女の子が、着実に聴衆の心を
つかんでいったり、放射性廃棄物の問題に正面からぶつかっていこうという表明を
した男の子が意外に支持を集めたり、三者三様のアイデアを提示し、聴衆である
大人を真剣にさせる、とても興味深い「スピーチ」となりました。
選挙の結果、知財立国を目指すという女の子のスピーチがもっとも「共感」を得て
当選しましたが、それでも過半数には届かず。生き方・働き方を変えるという主張、
そして原発の処理に覚悟を持って当たるという主張も一定層の支持を集めました。
ふりかえりシートには、どこに共感し、どうすればもっとよくなるかということを自由に
記述してもらう欄を設けました。リフレクションの際に、それをみんなで読んでいき
ましたが、真剣に書かれた大人たちの意見を目のあたりにして、子どもたちは、
自分たちのスピーチの「重さ」を改めて認識したようです。そして、自分の主張の
受け取られ方も人それぞれで、肯定的にとらえてくれる人もいれば、否定的に
とらえる人もいて、さまざまな考えを持つ人々が集まっている社会の中で、意見を
まとめていくことがいかに難しいか実感したのではないでしょうか。
これまで、何度も何度も繰り返し述べてきたように、今回の学びで目指したことは、
エネルギー問題についての知識を増やして、もっともらしい提言をまとめることでは
ありませんでした。不測の事態に直面した時に、「○○は××だ」と自分の見解に
しばられて言い切ってしまうのではなく、perspective を変えて、balanced な判断を
すること。そして、その判断に responsibility を持つことを学んでほしかったのです。
「この学びを始めるまでは、原発はただ嫌だ、怖いとだけ思っていたけど、自分で
スピーチをまとめてみてどうすれば原発のない世の中を実現できるか考えるように
なった。」
「原発のせいで放射能がまき散らされたいうことばかり考えていたけど、原子力に
頼って便利に暮らしてきたことをふりかえらないといけないと思うようになった。」
「原発がないと世の中が成り立っていかないと決めつけないで、生き方や考え方を
変えればどうにかなる!と考えられるようになった」
ふりかえりを終えて、子どもたちが素直に口にした感想です。まだまだ、balanced
とは言い難い状態の子どもたちですが、この学びを通じて、少なくとも、いざという時に、
ある見方だけで決めつけて判断してはいけない、そうでない見方もあるかもしれない
と考える必要がある!という意識は確実に芽生えたと言えましょう。
RI
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