[5・6年生]
子どもたちが何を「学んだ」のかを探る、一種の「テスト」のような「質問」でした。
その結果、明らかになったことは、紙芝居づくり「を」やらされたのでもなく、宇宙の
知識「を」知ったわけでもなく、「宇宙紙芝居作り」という創造的なミッションに没入
することで、いかに「協働」し、そのためにどう「コミュニケート」するか、を体得した
ことが明らかになりました。
今回の「探究領域」は「時空因縁」、そしてその仕上げとなる「小学校最終学年」の
「探究」でした。低学年のときに自分たちの身近な「空間」の探索からスタートし、
中学年で、自分たちが「今、生きている」のは、どんな「因縁」があるのか、過去へと
「時間」をさかのぼりました。そしていよいよ、今回、新たに生じる「因縁」に翻弄され
つつも、未来においてどう前向きに生きてゆくかを考えてゆく探究を行ったのでした。
そのための仕掛けが「宇宙紙芝居」だったわけです。
未来における人類の可能性を伝えるというメッセージを創り上げたからこそ、「何を
学んだか?」という問いかけに
「可能性が1%でもあるなら、希望を持って生き続ける」
「フィクションとして創ったのに、なんだか本当に起こりそうな気がしてきた」
という答えがすっと出てきたのでしょう。今回のテーマ学習で身につけてもらいたい
「意識」が自然に口にすることができた!学びを「達成」した子どもたちに「あっぱれ」
をあげたいと思いました。
「何が大変だったか?」という問いには、9人で1つの物語を作ること、つまり“何か
をクリエイトするためのコラボレーション”の大変さをほとんどの子が訴えました。
とっても大変だった……でもあきらめなかった……
そこがスゴイわけで、なぜ丸投げしたり、適当に妥協したりせず、愚直に意見を戦
わせ、建設的に創造し続けられたのか……当然、生まれてくる疑問を子どもたち
にぶつけると……
「あせらず、おこらず、ゆっくり考える」
「自分の意見を言う、人の意見を聞く、それを合わせて説得する」
というそのまま教室の壁に貼っておきたいほどの素晴らしい答えが返ってきました。
この答えが素晴らしいのは、教わった「知識」を記憶して答えたわけではないところ
です。こんな標語を一度も教えたことはありませんし、コラボの秘訣について質問
されるなんて子どもたちは全く予想していなかったでしょう。にもかかわらず思わず
口にしてしまったということは、体験を通じて結晶化した「知恵」となって身についた
からです。
子どもたちがいかに「創造するチーム」になっていたかは、途中からTCSに入学し、
いきなりわけもわからずテーマ学習に参加した子でさえ
「これまでひとりでやれればいいとずっと思ってきたけど、協力するとこんなにいい
んだと初めて実感した」
と答えてしまったことでも明らかです。クリエイティヴィティとエンパシーは一体なの
だと子どもたちは見事に体得しました。
今回、初の試みとして、IBのlearner profileを明確に掲げてみました。取り上げた
のは“risktakers”“open-minded”“principled”の3つで、宇宙紙芝居に登場する
キャラクターにその特徴を具現化させるという「制約」を与えました。登場人物の
どんな言動が「学習者像」を現しているかたずねると、
「未来に何が起きるか、宇宙にどんな危険が待ち受けているか、わからないのに
思い切って地球を飛び出した博士はrisktakersだ」
「見知らぬ人が倒れていてその人を助けて一晩寝かせてあげた主人公はopen-
mindedだ」
「自分たちだけが生き残るためでなく、地球のみんなのために人工太陽を作った
人たちはprincipledだ」
というように次々に答えが返ってきました。「おまえはRだ」「それ×Pじゃない」と
いうようにlearner profileの頭文字で、日常のお互いの行動を言い合ったりして
いるほどで、今後も、どんな学習者像を目指した学びなのかあらかじめ提示した
上でテーマ学習を進めてみたいという思いを強くしました。
RI
※TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。