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「わからない」から「わかる」

[3・4・5年生]

“わかった”と思ったことが“わからなくなる”

子どもがこんな状態に陥っているのを目にしたら

理解力がない子ねえ……

と嘆くか

教え方がなってないんじゃないの?

とあきれる人が多いのではないでしょうか。

しかし、人がある原理を「理解 understanding 」するためには、
「わかる」と「わからない」との間の往復運動を必ず繰り返します。

ある「原理」を知り、「練習問題」で「確認」したときには、答え
も出せたし、わかったような気がした……ところが、自らこの「原理」
を活用した「装置」を設計しようとしたらわからなくなった……こう
なるのが「ふつう」です。

「知る」ことと「活用できる」こととは違う

のですから、当然のこと。現実への活用に迫られて「わかったつもり
に過ぎなかった」ことが明らかになります。

「この設計図、なかなかよく書けているんだけど計算が違うなあ……」

複滑車を用いて、2トンの重さの車体を、より小さな力で引っ張ること
を可能にするなかなか面白い「装置」を設計・デザインできているの
ですが……残念ながら、肝心の数値の計算が誤っています。

定滑車2つに、動滑車を1つ組み合わせ、丁寧に仕組みを描き、どの
部分にどれだけの力が働くか数値まで細かく書きこまれています。
熱心に「ホームワーク」に取り組み、じっくり考えてきたことがよく
わかります。と同時に、この「設計図」は、見事にこの子の「理解」
の状態を浮き彫りにしました。定滑車が2つで動滑車が1つの場合、
定滑車と動滑車とのロープのつなぎ方を工夫すれば、確かに「1 / 3 」
の力にはなります。しかし、この子の「設計」では、定滑車1つと
動滑車1つの場合と変わらないロープのつなぎ方をしているので、
「 1 / 2 」の力にしかなりません。

与えられた練習問題を解く場合、動滑車から伸びる3本のロープが
すぐに目に入ってきます。このため、

3本だから……3分の1

というような“なんとなくの”理解でも正解してしまいます。

しかし、自分で「設計図」を書くとなると、動滑車と定滑車とを1本
のロープでどのようにつなぐか、ロープを引っ張ったとき、どんな
ふうに滑車が動くか、といったことをしっかりイメージできないと
ダメです。こうなって初めて、「わかったつもり」が破綻します。

(あれっ……いったいどんなふうにロープがつながってたんだろう)

「わかった」と思っていたことが、一気に「わからなくなる」のです。

ここで子どもに「ああもういやだ」「もう無理」と思わせず、「深い
理解に向けての避けざる一里塚だ!」と気づかせることが探究教師の
役目です。そのための仕掛けが、子ども一人の力だけで重量2トンの
車を軽く動かしてみるという課題を成し遂げるという「ミッション」
設定です。

ただやらされている「学習課題」ならば、「別にわからなくてもいい
や」となってしまうでしょう。しかし、子どもたちにはミッションが
浸透していて、どうしても自分たちの考案した装置で車を動かしたい
と強く念願しています。

「どうすれば3分の1になるんだろう……」

なんとか数学的に正しい理解に到達しようとねばり強く取り組みます。
「宿題」の「間違い直し」とはひと味違う、authentic な仕事だから
こそ正しい値を出したいという気迫が生まれます。

一方で、この子に触発されて、他の子たちも“勝手に”しかし“有機的に”
動き始めます。一見、特に話し合いなどしているように見えず、みな黙々
と勝手に考えているようです。しかし、あちこちで「つぶやき」が起き、
その「つぶやき」が思わぬ「気づき」や「発見」につながっています。

「もっと動滑車を増やせないかな……」
「滑車が増えると滑車の重さも加わっちゃうからなあ……」
「棒とロープだけで滑車みたいにするのもありでしょ……」

子どもたちはお互いのつぶやきを勝手に理解し、それぞれ自らの「設計」
をふりかえり、より洗練され、より正確な「設計」を目指します。

このままでは不完全でミッションがうまくいかないだろう!
それはいやだ!なんとかミッションを達成したい!

そんな切迫感に後押しされて、あれこれ考えるから、思わずつぶやいて
しまう。するとそのつぶやきが別の子に予期せぬ刺激を与え、思わぬ
「ひらめき」を生み、その「ひらめき」をやっぱりつぶやく。それがさらに
波及して……というように「発見」の連鎖が生じるのです。このプロセス
を経ずして、「原理」を「活用」できるようにはなりません。

子どもたちは、単なる「教科」の学びでは到達できない「探究」の深み
へと進み始めました。

RI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。



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