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小さな力で大きな力


[3・4・5年生]


今回、子どもたちに「認識」してもらいたいコンセプトは、入力する
力は小さくても、ある原理を適用すれば大きな力に変えられるという
ことです。実際に学ぶ内容は、理科に属する内容。「てこ」「滑車」
「歯車」の原理を知り、それらを効果的に組み合わせると大きな力を
生むことができると実体験を通じて理解します。

まずは、mining から。子どもたちがどんな先行知識・概念を持って
いるか探ります。“小さな力で大きな力”と聴いてイメージすること、
知っていることをどんどん挙げてもらいました。

ちょっと沈黙する時間が経過した後、

「アリかな……」

誰かが自信なさげに応えます。確かに、アリは自身よりも大きいもの
を運ぶことができます。なかなか面白い!

この答えがみんなの緊張の糸をほどいたようで、堰をきったように
いろいろな意見が飛び出しました。

「スターウオーズのヨーダは小さいのに大きな者も倒せる!」

このようにアニメ・漫画・映画のキャラクターや妖怪についてイメージ
する子どもが数名現れました。

つづいて

「水は少ないと大したことないけど、津波のような大きな力も起こせる」

「砂粒は、一粒だとものすごく小ちゃいけど砂嵐になったら大きな傷を
つけられる」

小さな力でもそれが結集すると大きな力に変わるという観点が示され
ます。ネット社会においては、実際にツイッターやフェイスブック
などで民衆の意見が集約されて一つの巨大な勢力へと容易に発展して
ゆくことが実証されています。子どもたちが「小さな力で大きな力」
とたずねられて「チリも積もれば山となる」という連想をすぐにした
ことはとても興味深く感じました。

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大分、盛り上がってきたところで、ちょっと観点をズラす問いかけを
します。

「じゃあ、小さな力しか与えないんだけど大きな力を出すにはどう
したらよいだろう?」

すると、即座に

「てこを使えばいい!」
「うん、それから滑車使って引っぱり上げてもいいよね!」

という返答が……

今回やろうとする内容があっさり出てきてしまいました。

「支点、力点、作用点も知ってるよ」

なんでそんなによく知ってるのかたずねると、すでにサイエンス教室
の授業で実験したことがあったようです。テレビで、オランダの家に
は「滑車」がついていて、重い家具を運ぶことができるとか、ゲーム
の中にも「てこ」や「滑車」が出てくるとか、子どもたちから、どん
どん「てこ」や「滑車」についての知識が出てきます。

ただし、子どもたちの言うことを耳にしている限り、知識の断片が
バラバラに語られるだけで、まだうまく統合されていないことが明らか
です。

「えっとねー、長い部分で押すとね、てこは大きな力なんだよ」

原理についても、なんとなく理解している状態。体系立ってきちんと
説明できません。
そこで、今回のミッションを提示します。

「君たちのミッションは、子ども一人の力で車を動かすということだよ!」

NHK Eテレで放送中の「大科学実験」のようなミッションに子どもたちは、
ノリノリです。ただ、ここで注意しなければならないのは、" just fun ! "
という気持ちだけに支配されてしまうことです。あくまでも、目的は、
小さな力で大きな力を生み出したことを「原理」に基づいて「説明」し、
「実証」することです。そうならなければ「科学的ミッション」とは
言えません。

しかし、子どもたちもさるもの。こちらの言わんとすることを先読み
して、「なんとなく」では「ダメ」で、“きちんと”“完璧に”やったこと
を説明できるようにする!と言い出しました。

教師の期待に応えようとしていると言えばそれまでですが、テーマ学習が
何を目指すか、子どもたちが体得してきたからこそ発せられたセリフと
も言えましょう。

「“きちんと”とか“完璧に”というけどどんな説明ができるの?」

と問い返すと、「計算する」という答えが返ってきました。

どんな原理で動く仕組みなのか、どれだけの力が働くのか、「計算」で
シミュレーションして予測し、結果も、数学的に実証する……

今回、子どもたちにぜひともそうなってもらいたい姿が具体的に見えて
きました。さあ、そのために来週以降は、基本原理について“きちんと”
理解する学びを始めます。

RI

TCS2012年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。




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