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文として書き残すこと

[6年生]

「コンセプト」にしたがって「仮説」を練り、その「仮説」に関する
情報を本やネットといった資料によって裏づけてゆきます。しかし、
この作業を積み重ねているだけでは、結局、最初に自分が思いついた
ことを補強することはできても、それ以上の「発見」の広がりも深まり
もありません。

とても賢く、真面目で、鋭い感性を持った子でありながら、最初に抱いた
「仮説」を発展させてゆくことができず、どうしたらよいか困り果てて
いました。

「このままじゃあ、つまんないし、調べることがなくなっちゃう……」

この子は、“宗教は、人の救いのためにあるはずなのに、異なる宗教間
で争いが絶えないのはなぜか?”ということについて追究しようと決め、
“ある神を信じると、人の好みの常で、他の神を信じている人を認め
たくなくなるからに違いない”という仮説を立てました。追究の入口と
しては決して悪くはなく、とても面白い見解なのですが、この「仮説」
に合う事実を本やネット記事から抜き出すだけだと、「ただの調べ学習」
と化してしまうのです。

“人は自分の信じているものと異なるものを受け入れたくない。だから
宗教どうしの争いが終わらない”と結論づけて探究を終えたとしたら、
自分の当初の「思いつき」についていくつか事例を集めて補強したに
過ぎない……賢いこの子は、こうなりたくない!とわかっていて、悩ん
でいたのです。

では、どうすればよいのでしょう?

ここで大事なのが、“これは!”と感じた「ひらめき」をひたすら

「書いて残す」

ということなのです。「ひらめき」をとにかくメモして残しておく。
それもなるべく単語ではなく、自分が話したように文で書き残す。
この積み重ねです。頭の回転がよい子に限らず、どんな子でも、必ず、
面白い「思いつき」をします。特に、今回の Exhibition のように、
「コンセプト」が決まり、初期の「仮説」も決まっている追究ならば、
その路線に沿って、さまざまな「思いつき」が生まれます。

しかし、子どもは、その「思いつき」をとらえず、流してしまいます。
だから、「思いつき」は「思いつき」のまま、発展することなく彼方
に消えてゆきます。これを繰り返している限り、永久に「発見」を
広げ、深めてゆくことはできません。

子どもは、とてもよいことを突然ツィートし始めます。

「宗教争いは神を信じたいと思う人も大事なんだけど、信じさせたい
と思う人によって作られているんじゃないかと思う」

おいおい!なんて面白いことをつぶやくんだ。それがあれだけ悩んで
いた子の話すことかね。これだから思いつきってやつは手に負えない!
それってどういうこと?もう少し詳しく説明してくれない?と返すと、

「この神を信じないとよくないことが起こると多くの人々に思わせる
人たちが現れたってことだと思う」

宗教を民衆支配の手段として用いた……という側面があるということ
に気づき始めたのです。ちゃんと自らの力で「発見」を広げていって
いるのに、それを「書き残そう」としないので、捨ててしまっている
のです。

そうならないように「まずメモ!言ったことをメモ!」と伝えるの
ですが、ここで問題が生じます。

「えっ?今、なんて言ったっけ……覚えていない」

「ひらめき」を口にした通りに記録するのは、実は子どもにとって
そう簡単な作業ではないのです。だからこそ、トレーニングを積み
重ね、習慣化してゆかなければなりません。なぜなら、うまく自分の
「ひらめき」を記録し、それをいくつもためてゆき、その断片を俯瞰
して眺めてみると、「あれっ?もしかして……」というこれまで考え
もつかなかった新しい次元の発見へとつながるからです。これこそ
「発見の技法」と言えましょう。

ぜひともこの技法を Exhibition を通じて身につけてほしい!

まず「ひらめき」を「文として書き残し」ストックしてゆくことを、
習慣づけるよう徹底したいと思っています。

RI

TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。



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