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コンセプトに導かれてテーマを吟味する

[6年生]

Exhibition は、子どもたち主導で進めるプロジェクトですが、
ただやりたいことをやればよいというものではありません。
常に「個人」と「社会」と「自然」とをつなげるという視点で
物事を考えられるようになる……というのが、「学び続ける人」
に必要な態度です。このため、個人的に強い関心を駆り立てら
れるテーマでありながら、そこには、社会的な意義がなければ
ならないという「制約」を課します。

制約なきところに真の創造はない

探究心を開発してゆくには、ただ自由にやりなさい!ではダメ
です。と同時に、とことん突きつめてみたいという思いも必要。
この2つのバランスが大事です。

そこで、今回の Exhibition では、探究領域を「共存共生」とし、
追究すべき「コンセプト」を "conflict" と設定しました。

「これまで共存共生でどんなテーマをやってきたかな?」

子どもたちと一緒にふりかえってみると……水知らずにはいられ
ない……ゴミアミーゴ……限りある資源限りなき欲求……という
タイトルが即座にあがりました。と同時に、

「スクールの節電対策を提案したよね」
「歩きながら落ちているゴミを集めたなあ」
「砂と石で簡易浄水器を作ってろ過した」

という体験もありありとよみがえってきました。

「ということは、こういうことを Exhibition でやるの?」

すかさず鋭い子が質問してきました。渡りに船で、この質問を、

「こういうことってどういうことかな?」

と返して、みんなでどんなテーマが「共存共生」なのかと考えて
ゆくと……

公害などの環境問題……確かに自然と人間との「共存共生」を考え
ればそうです。エネルギーの節約……資源と人間との「共存共生」
に関わる問題です。生物と人間と自然の三者のバランスとなれば
絶滅危惧種や生物の多様性保護といった生態系の問題が出てくる。
さらに、人間どうしの「共存共生」を考えれば、豊かさと貧困と
いう問題がある。国の間での格差も問題だが、同じ国内での貧富の
差もある。また、人種による差別も「共存共生」の前に立ちはだ
かる大きな壁だし、それが暴力や虐殺に結びついてしまった歴史
は今も続いている。暴力の最たるものは「戦争」で、今後、資源
の奪い合いが戦争につながるかもしれない。しかし、もっと不思議
なのは、本来、人の心を安らげるための宗教が対立を生み、血み
どろの戦争を招いてしまうことだ……

こうしてみんなで議論を発散してゆきながら、イメージを広げ、
深めたところで、

では、きみたちがもっとも関心のあるテーマは何か?

と問いかけました。

すると……魚資源、いじめ、児童虐待、節電といったテーマが出て
きました。しかし、ここからがポイントです。確かに子どもたちは
「共存共生」について議論してゆくうちに、自ら関心のあるテーマ
を見出しました。しかし、ここで性急に飛びついてはダメ!

本当に追究する意義のあるテーマなのか?

と「メタ認知」を働かせ、テーマを吟味することが大事なのです。
このプロセスを経るかどうかが、ただの調べ学習になってしまうか、
意義のあるテーマを見出して追究を進められるかどうかの分かれ目に
なります。

このときに用いるのが「コンセプト」です。今回子どもたちに提示
した「コンセプト」は conflict です。魚資源について興味を持った
子に、 conflict という「コンセプト」を提示し、どんな葛藤が起こり
得るか?と問い直すと、彼の「思考」が動き始めます。

「ぼくは寿司屋になりたいんだ。だけど最近、マグロとか寿司ネタ
になる魚がなくなっているってよくニュースでやってるよね。もし
将来寿司ネタがなくなってしまったら、ぼくはいやだ。だからなん
とかしたいんだ。」

なるほど……これは切実なる「葛藤 conflict」です。

自分の好きな寿司をこれからも安定して食べ続けられるようにする
にはどうしたらよいのか。
そのために私たちは寿司ネタとなる魚資源をどう確保してゆけばよい
のか。
世界的な健康ブーム、日本食ブームで、刺身となる魚の奪い合いは
始まっている。
また、海洋汚染の問題もある。
こうした conflict をどう乗り越えて、50年後もおいしい寿司を
食べ続けられるのか……

conflict という「コンセプト」でテーマを見つめなおすことで、つり
が好き、寿司が好き、だから魚について調べよう……という初発の
興味にとどまらず、社会的に意義のあるテーマへと拡張してゆけること
が確認できました。

こうなれば、いよいよ、どんな「仮説」を持って追究するか考える
段階に入ります。

「コンセプト」に導かれたテーマをどんな「仮説」で追究するか

このことについては次週、お話しましょう。

RI

TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。



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