[5・6年生]
今週は、「本質に迫る6つの問い」によって章を分けたテキストを用いて、DNAについて学びを進めてゆきました。
たとえば Function of DNA という章では……
いったいDNAはどんな役割を果たしているのか?ということについて
「知識」を得ます。DNA の持つ遺伝情報によってタンパク質が作ら
れる……では、DNA からどうやってタンパク質が作られているのか
テキストを読みつつ理解してゆきます。
「まず、DNA がゆるんで、遺伝情報を持っている部分があらわになる。
そこに塩基がくっついて RNA ができる……」
テキストに書かれていることを改めてホワイトボードに図示しながら
まとめてゆきます。「探究教師」は、ただ子どもに任せて、自由に
学びを行わせるわけではありません。知識を伝授する授業もしっかり
行います。だからといって、「探究教師」は、「覚えろ」「写せ」と
いうふうに知識を提示しません。よき学び手としてのモデルとなり、
どう知識を獲得してゆけばよいのか、子どもたちに自らの姿勢・態度
として見せ、さらに、
“なんのためにこの知識を学んでいるんだろう?”
という子どもたちの reflective mind を喚起するのが役目です。
「なんで3つの図を書いたんだろう?」
ホワイトボードに描いた解説図を見せて、子どもたちに問いかけます。
DNA から RNA ができる……そして、RNA が細胞の中の核から抜け出て、
リボゾームに到達する……リボゾームでは、RNA 情報の読み取りが行わ
れ、その情報に基づいてアミノ酸がつながれてタンパク質ができる……
そうか、このプロセスを効果的に図示するには、
① DNA での様子 ② DNA からリボームに行く過程 そして ③リボゾーム
での様子、という3つの場面を描くとわかりやすい!
図をながめ、考えてゆくうちに、子どもたちの reflective mind が作動
し始めます。知識の提示 → 記憶 という学習を繰り返すだけなら、
自発的な学びを大きく阻害する“教わり慣れ”を促進してしまいます。
知識を咀嚼し、理解するには、自分の手で図式化してとらえることが
とても大事です。与えられた資料を読み込み、自ら内容を理解しつつ
知識を構築してゆく力をつけるためには、
どうやって図を描いたら理解しやすいだろう?
描いた図にどんな解説文を“端的に”書き添えるとよりわかりやすく
なるだろう?
という reflective mind を喚起する問いかけを行い、子どもたちと
ともにどうしたらよいかじっくり考える学びが必要なのです。
板書されたものをただ受け身で「写す」だけでは、自ら図式化できる
ようにはなりません。そこで、子どもたちが納得したところで、板書
した図は消してしまいます。「えーっ!」と子どもたちは驚きます。
A4のプロジェクトペーパー1枚をすべて使って資料から読み取った
内容を図と端的な解説文で的確にまとめるという課題に挑戦です。
「おっちゃん、DNAゆるむのはどうしてかな?」
ある子がつぶやくと、触発された別の子が
「最初に見たDVDで、マスターキー遺伝子がどの部分をゆるませるか
決めるって言ってた。だから、そのこと書き加えてもいい?」
と今読み解いている資料の内容と、これまで学んできた「知識」とを
つなげて、より豊かな図を作り出そうとしました。
スバラシイ!自律性が発揮されたことを大いに認めます。
資料を読み直し、板書された図を思い出し、悩み、工夫しながら手を
動かしながらまとめていると、子どもたちの中に「問い」がわきでて
くるようです。
「核から出てゆけるのは、核に無数の穴が開いているということ?」
「うまくリボゾームにたどりつけるなんてすごいよね」
「リボゾームの方が RNA を呼び寄せてるのかな?」
「リボゾームでコピーミスが起きたらへんなアミノ酸をつなげること
になっちゃう!」
「それが突然変異のもとかな?」
「病気かも……」
“なんとなくわかった!”で済ませてしまうのではなく、的確に図示し、
言葉で説明すると、ただ「覚えた!」では終わらず、自ずと「問い」
が生まれてくる!
知識を獲得するからこそ、いろいろな知識が活性化されて、新たな
「問い」が生まれてくると言ってもよいでしょう。何も材料のない
ところで、ただ、考えているだけで、意義のある「問い」は生まれ
ません。ただそうなるには、自発的に知識を獲得する作業が不可欠!
ということを子どもたちに実感してもらいました。
これで前半終了。後半は、獲得した「知識」も参照しつつ、遺伝を
引き受けつつ、どう変わっていけるのか、ディスカッションを通じて
考えを深めてゆくフェイズに入ります。
RI
※TCS2011年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。