[5年生]
「どうしても絵が書けないんだ……」4コマ漫画担当の子がつぶやきました。TCSのテーマ学習について
いまいちイメージがわかない大人の戸惑いを表現するストーリーを
考え、気の利いたセリフもできたものの、どうしてもそれを絵にできない
というのです。すると……
「おれ描いてもいいよ」
ある男の子が助け船を出しました。
翌日、助け船を出した子が、家で「仕事」をしてきた成果を披露します。
その絵を一目見て、セリフを考えてきた子が、
「うまく表現できてるよ!いいねえ!」
と絶賛。自分のイメージをうまく表現してくれたことを感謝し、うれしく
思っている気持ちがあふれていました。他の子どもたちも集まってきて、
「確かに!センスいい絵だと思うよ」
小冊子全体の中で、読者の関心を一気に引き寄せるために重要な位置
づけとなる「4コマ漫画」のページができあがり、みんなの気持ちがさらに
高まってきたようです。
「全体的なデザインはいいけど、ここ、何を表現しているかわかりにくい
かも」
細部にまだ修正点があることを見逃さない指摘が出ましたが、単に重箱
の隅をつつくような感じにはまったく聞こえませんでした。だからこそ絵を
仕上げてきた男の子は、納得した顔でその指摘を受け入れ、すぐに修正
しました。よりよくし続けることが「編集」だという一体感が見事に生まれて
いました。
「う~ん、困ったな……」
テーマ学習の一例について説明するページを担当している女の子が苦戦
していました。「個の尊厳」というTCSならではの学びをアピールしたいもの
の、端的にどう説明したらよいか悩んでいたのです。
「そうだよな、おっちゃんの葬式の劇と個の尊厳ってどうつながってるかって
わけわからないもんな」
と返すと、
「そうか、それってみんな関心のあるところかな……」
「葬式?劇?個の尊厳?」というタイトルが固まりました。
「30年後のおっちゃんの葬式っていう設定で考えってたら劇のシナリオも
固まったし、自分が将来何してるかって思い浮かんできたんだよね……」
独り言とも問いかけともつかぬつぶやきを口にしつつ、考えをまとめてゆき
ます。
「そっか、個の尊厳がわかって劇やったというよりも、劇やったから個の尊厳
がイメージできたのかも?」
自分らしさってなんだろう……とただ言われてもピンと来なかったのに、
30年後の自分に「なりきってみる」仕掛けとして劇があったことに気づいた!
「いいねえ!それで行こう!」
編集長のGO指令で一気に書き進みます。
「おっちゃんの葬式」だったからこそ"ただ悲しい"ではなく、"どう生きるんだ"
と問われるに違いないという真剣さが生まれた……
「個の尊厳」と「劇」と「葬式」とをつなぐ記事ができあがりました。
さあ、あと残り1週間。怒涛の追い込み……と思っていた折、関東東北大地震
が起きてしまいました。とりあえずスクールは休校せず、時間を短縮して授業
を行うことになりました。
授業後の残業はなし!……果たして小冊子は間に合うのか?不安のよぎる
幕切れとなりました。
RI
※TCS2010年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。