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こちら「編集部」!いざ発進!

[5年生]

「TCSの魅力」を伝える小冊子を作るために、まずは、優れた雑誌の「技」を
「盗む」ところから始めます。人をひきつける雑誌の紙面づくりについて「分析」
してみると……

男性誌と女性誌を1冊ずつ。どちらも装丁、レイアウトのセンスがあり、内容も
面白い!と定評のある雑誌です。

「女性誌は、会話が多い」
「誰かのアドバイスって感じだよね」
「やっぱり女の人って聞きたがりで話したがりなのかな?」
「毎日の生活に役立つという記事だから、読者に近い感じを出すためにインタ
ビューという形にしたんじゃない?」

ポンポンと鋭い分析が出てきます。写真を効果的に配置し、柔らかい感じを
出し、1つのトピックについて600字を越える文章にしない。会話文と説明文の
比率は3:2で、会話の方が多いということがわかりました。

一方、「専門店に行こう!」という内容の男性誌は……

「説明だけで会話がない!」

調べてみると会話文と説明文の比は1:22。

「これって鉄道模型だけ売っている店でしょ。マニアック!」

ある女の子がつぶやきます。こだわりの店特集ですから、その店の「売り」に
ついて編集部が熱く解説している感じの記事内容。女性誌と比べてレイアウト
は極めてシンプルです。

対象読者、記事内容によって文体や写真の配置、文字色なども変えている
ことが、雑誌の比較によって明らかになりました。

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「“専門店に行こう”を“学校に行こう”と変えればそのままスクールの宣伝に
なるよ!」

ある子が、男性誌の見出しとリード部分をうまい具合にパクって、TCSの魅力
を伝える小冊子の冒頭部分を書き始めました。

「本当だ、専門店のこだわりっていうのは、TCSのこだわりってすればいいし」
「個性的な商品との出会いは個性的な子どもたちとの出会いだよね」

次々に子どもたちは呼応し、みな「換骨奪胎」を始めました。

書き上げたものを発表してもらうと、確かにうまく言葉を置き換えてあるし、
とても子どもが書いたとは思えない「プロっぽさ」があります。しかし、なんか
しっくりこない……

「とってもよく書けているんだけど、なんかHくんらしさがないなあ」

ある子から鋭いコメントが出ました。

「そうだよね、これだと読んでいる人にただ真似しただけだなと思われちゃう
だろうな……」

元の文に使われている「言葉」を置き換えていくだけでは、限界があることに
子どもたちは気づきました。

すると、ある女の子が、自信なさそうに、

「私はいろいろ削っちゃって短くなっちゃったんだけど」

と自分の作品を評しました。「とりあえず読んでみて」と励まし、促し、読んで
もらうと……真似した文の「コンセプト」を活かしつつ、魅力あるTCSという学校に
ぜひ足を運んでほしいという思いのこもった、その子らしさのあふれたメッセージ
になっていました。
(※注・これから作ろうとしている小冊子の1ページ目を飾る可能性があるため、
残念ながらここで文章をお見せすることはできません。完成までしばしお待ち
ください!)

「編集」とは、「コンセプト」をしっかりつかんで的確に「まとめる」作業です。
したがって、まず多少「冗長」に表現してみて、その後、的確に刈り込んでゆく
ことが肝心!「編集」する上でのポイントを子どもたちは実感しました。

この後、子どもたちは活発に編集会議を繰り広げました。
その結果、2ページ目、3ページ目のラフイメージが固まりました。2ページ目は、
TCSの学びを通じて子どもたちがどう成長してゆくかを「植物」が成長する
イメージで図式化し、3ページ目では、TCSの子どもたちの「個性」について
徹底検証する……魅力的な紙面になってきました。

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さあ、快調な流れで小冊子の「形」が固まってきました。しかし、このまま
子どもたちの「思い」に安易に流されてはいけません。こういう時こそ、
探究教師が子どもたちの追究の質をより高いレベルに引き上げるために「介入」
すべきタイミングです。子どもたちの「やる気」を尊重しつつ、「何か見落としは
ない?」と視野を広げる働きかけをします。

形は整ってきたから、次は中味!つまり「文章表現」です。改めて、「編集方針」
に立ち返って考え直します。

なんでTCSの学びを宣伝するんだろう?……TCSの魅力を多くの人々に
知ってもらうため!……どうして知ってもらう必要があるんだろう?……
豊かな学びの環境を作るために「お金」がほしいから……お金と小冊子が
どうして結びつくのだろう?……小冊子を売って儲けるため?……でも、
そんなの高が知れてる……

「ただ宣伝して入学者が増えても、今のままでは校舎も狭いし、結局、大きく
発展しないと思う。かえって不満が増えるんじゃないかなあ」

こういう意見を子どもは出してくるから侮れないのです。そう、まさにその通り!

もし、私たちの学びが素晴らしいのなら、それを社会に訴える!

探究する学びの価値を知らしめて、それならば協力しようじゃないか、寄付
しようじゃないかというムーヴメントを起こすきっかけを作るための「小冊子」
なのです。それが「お金につながる」ということの真意です。

子どもたちは壮大な目標に向かって、さらに盛り上がってきました。同時に、
小冊子の求められるレベルのハードルがかなり高いことにも気づき、
(自分たちにできるかなあ……)
という不安も出てきました。おそらく、次週は、意味のある停滞期、いわゆる
「産みの苦しみ」に直面する1週間となるでしょう。これを乗り越えるのが
「探究」です。子どもたちの成長を促すファシリテーターとして、次週は、
いよいよ鬼編集長の出番です。

RI

TCS2010年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。



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