[5年生]
今回は、103という他の教室とは離れた小部屋で学びを進めています。このスペースがなんとなく編集工房の雰囲気を醸し出していて、子どもたちの
「本気度」を高めるのに有効に作用しています。1つのテーブルを囲み、早速、
先週出された「問い」に基づいて「編集修業」を始めます。
【その1】わかりやすく、面白く、伝えたいことをまとめる。
テーマ学習「ボーダレスワールド」で集まった切手を用いたオリジナルワールド
マップを5・6年生の有志で完成させました。それをデジカメで撮影し、ポスター
化して、切手を送って下さった方々に送ろうと決めました。そこに「手紙」を
同封したいのですが、感謝の念と地図に込めた思いとが伝わるような手紙の内容
をどう「編集」するかが最初の修業課題です。
「ありがとうって書くのは当然だからな……」
「切手が送られてきたとき、みんなうれしくて盛り上がったってことも書いた方
がいいよね」
まず、みんなで意見を出し合って、書くべき内容を箇条書きにまとめました。
次に、そのうちのどれを書くか、どんな順序で書いたらよいかそれぞれ考えて、
アウトラインを作りました。さあ、ここまでくれば、アウトライン通りに文を
まとめていくだけ!となるはずなのですが……
「なんか気持ちが伝わってこないな……」
切手を送ってくれてありがとうございました。おかげでワールドマップができ
ました。あなたの国以外にも5カ国ぐらいの国から来ました。もし会えたらいい
ですね……と当たり障りのない文をまとめたものの、なんかインパクトにかけます。
「あなたの切手で世界征服!ってどう?」
なかなかショッキングな表現で、面白さは確かにあるものの、誤解を招く懸念
があります。
ただ説明するだけではダメ、だからといってウケを狙った書き方も読み手の気分
を害する可能性あり。長くてもダラダラした文は読む気にさせないし、短すぎて
何の工夫も感じない無味乾燥な文もダメ。相手の心に訴えかける文を「編集」する
難しさに直面しました。
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【その2】「小冊子」の効果的なレイアウトを考える
文だけで説明するだけでも大変なのに、読者を引きつける表現をしなくてはならない。
それも、ただキャッチーな言葉であればいいだけでなく、自分たちの「思い」が
的確に伝わるものでなければならない。確かに、「編集」とは、「よくすること」
なのですが、編集する目的を知るにつれて、到達すべき質の高さを子どもたちは
意識し始めました。
「こりゃあ大変かも……」
子どもたちに、よい意味での緊張感がみなぎってきたところで、視点を変えます。
「編集するのは文だけかな?」
子どもたちには、駅などにおいてあるフリーペーパーやカタログなどを集めてくる
ように言ってありました。鉄ちゃんの男の子2人組は、鉄道の旅を誘うフリーペーパー
やチラシをごっそり持ってきていました。
「写真をうまく使ってるね」
「字の大きさや色を変えてる」
男の子たちの持ってきた冊子を見て、女の子たちが鋭い指摘を始めます。
読んでみたいなという仕掛けをすることも「編集」の大事な要素だと気づきます。
「世界直結!っていうメッセージをワールドマップポスターにのせたらどうかな?」
自分の持ってきた冊子を眺めているうちにある男の子がひらめきました。この子は、
すぐに面倒がって、長い文章をなかなか書こうとしない子でした。そこで……
「それは、面白い。短い言葉で伝わるようにという視点はすごく大事!
よし、君、コピーライターになってくれたまえ」
少ない言葉で的確に伝えるセンスをまず磨くという特命を下しました。
字ばっかりじゃダメ。写真やイラストを効果的に使う。写真と言葉の見やすい配置
を考える。目を引く色づかい。あっと思わせることば……
文だけでなく、レイアウトを考えることも、優れた「編集者」になるために不可欠
だと理解しました。
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最後に、私が、センスいい「編集」をしているなと感じた雑誌を見せました。
「写真と字のバランスがいい思う」
「説明の文章と人の会話とをうまく混ぜている」
一つの記事のまとまりが何字ぐらいか数えてみると、500~600字にまとめて
います。見出しの言葉にも気を使っているし、写真の脇にも的確に説明が……
人に読ませるために文章もレイアウトもとことん気を配っていることがわかりました。
さあ、感心ばかりしていられません。この技を盗みつつ、子どもらしい、そして
自分たちの個性を活かした斬新かつ魅力的な冊子を作らなければなりません。
「修業と並行してやらなきゃ……」
誰かがぼそっと素晴らしいつぶやきをします。次週からは、「編集修業」とともに、
小冊子作りのための「編集会議」を始めます。
RI
※TCS2010年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。