[4・5年生]
「人間は楽な方がいいから、ガマンする省エネプランはダメだと思う」
ある子がつぶやきます。
「電気を消したらポイントをもらえるっていう節電ゲームをすればみんな
楽しめるかな?」
別の子が提案します。
「明るくないと本当に目が悪くなるのかな?」
さらに別の子が疑問を出します。
「冷蔵庫は余り物を入れるものって考えると、余り物を近所の人と分け
合えばいらないかな?」
またまた別の子が意見を出します。
電気の節約方法を提案するだけでなく、人間の限りなき欲求をどう制御
するか熟考は続きました。
冷蔵庫班の子どもは、さっそく冷蔵庫を動かし、周囲に十分スペースを
作り、放熱によって温まった空気が流れるようにしました。電灯班の子
どもは、昼間使う必要のない電灯のスイッチに目印のテープを貼って、
使わないように警告しました。自分たちの立てた省エネプランの実行に
向けて子どもたちは動き始めました。
「また、つけっ放しじゃない」
「まったく……ちゃんと消してよ!」
スクールのエアコンや電灯のつけっ放しについて、言われてではなく、
自ら気づき始め、注意し始めたところは学びの成果の一つです。ただ、
子どもたちが、電気をムダづかいしなければいいのだ……というところで
とどまってしまったら、学びは浅いものになってしまいます。調べた省エネ
プランを自ら実行し、協力をみんなに訴えてゆくことは大事ですが、それで
よし!では「共存共生」の学びにはなりません。
「自分たちが省エネするしかないじゃん」
という子どものもっともな発言を受けて
「それはその通り。でも、人間の限りなき欲求を見直さないと問題の根本
解決にはならないよね」
と、ライフスタイルの見直しまで掘り下げてみるように促しました。
「ピンとこないなあ……」
電気を用いないライフスタイルが「楽しい」というイメージはわいてこないと
正直に戸惑いを明らかにする子がいます。
「便利になって時間がいっぱいできても、その時間をやらされる仕事に使う
のはどうかな」
電気の使用によって生まれた“時間”を有効に活用するというと聞こえがいい
ものの、じつは仕事に追われてあくせくしているだけ。働かないとお金がない
というけれど、そのお金で不必要な電化製品を買っているなら、それが本当
に豊かな生活なのか……鋭い発想をする子も出てきました。
テーマ発表では、自分が考えた節電プランと、電気をなるべく用いないライフ
スタイルについて自分の見解を述べることにしました。
「冷房は、部屋を涼しくするためにあるんだから、部屋が涼しければ冷房は
要らないんだよね」
エアコン班のひとりの子がアイデアを述べると、すかさず別の子が、社会で
習った「ヒートアイランド現象」について語り始めます。そんな話し合いを通じて
空気が通り抜ける家の構造にするとともに、涼しい風を生み、気温を上昇させ
ない街づくりをすることが必要だと気づき、そのことを訴えようと決めました。
壁面緑化が気温低下に効果があるように、木々や植物が周囲にあれば、節電、
省エネに効果があるだけでなく、人間が活き活きと暮らせる街となるでしょう。
窓を大きくしたり、空気の通りをよくすると、冬場、すきま風に悩まされるのでは?
いやいや、吉田兼好が徒然草で「家のつくりやうは夏をむねとすべし。冬は
いかなるところにも住まる。」と言っているように、今年の猛暑を考えても、
夏涼しく暮らす道を考えることが先決だ……子どもたちとアイデアを語り合い
ながら、自分自身、いろいろなことを思い悩みました。
人間の限りない欲求と「共存共生」を意識した楽しい暮らしとの両立。
追究すればするほど悩みは深まります。
RI
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