インターネットを使って手紙の送り先となる学校を探していてぶつかった
課題は、ネットで住所を調べられたり、ホームページを持っていたりする
学校は、恵まれた国であるということでした。アフリカのリベリアという国
の小学校に手紙を送りたいと考えた子がいて、早速、ネットを使って調べ
たところ、まったくヒットしません。しかし、ネットサーフィンを続けていると、
ピースウィンズジャパンというNPOが、小学校建設支援に関わっていたこと
がわかりました。早速、問い合わせてみたところ、すぐに返事を下さいま
した。その内容は、
「実は、リベリアでは郵便制度がなく、郵便配達人がいない状況にござい
ます。住所はお伝えできますが、郵便制度が機能していません。」
というものでした。
「郵便がなければ手紙送れないよね……」
ある子がつぶやきます。ネットで住所を調べられないどころか、郵便自体
がない国。そこにつながるには、やはり、現地と関わりのある人と出会わ
なければなりません。テクノロジーによってボーダレスワールドになったと
いえども、それは“つながりやすさ”が格段に向上したということであって、
最終的には、人と人とのつながりがカギを握ることは変わりません。
人と人とのつながりを創り出すには、相手の心を動かす「説明」が必要
です。そこで、「直筆の手紙」とは異なった形で相手の心を動かす手法と
して、ビデオレターの作成に取り組みました。ビデオレターは、「画像」と
「音声」によってリアルな感覚を相手に届ける効果があります。
どんなところに住んでいる、どんな人が、どんなことをイメージしてメッセ
ージを伝えようとしているのか
明確になります。「使用済み切手でオリジナルワールドマップを作る!」
という活動に参加してみたいと思わせるビデオメッセージ作りの開始です。
セリフは、英文手紙の文章をそのまま使えます。まずはそれを「なるべく」
暗記する(いざとなったらカメラのそばに置かれたカンペを読めばよいので)。
とはいえ、子どもたちは、カンペばっかり見ていたらカメラ目線にならず訴え
かける力が落ちることをよく自覚していますし、そもそも読み方、発音をしっ
かり覚えておかなければカンペがあっても役立ちません。
「ウィ、ウィ、ウィ……ワ、ワ、ワーン?」
「ちがう、それはワーントじゃなくてウーッド」
「somethingってどう読むの?これ覚えられな~い!」
ペアになってお互いの読み方を聴きあったり、授業終了後も自発的に居残
りして読みの特訓をする子が現れたり、みな手紙の文章を淀みなく読み上げ
られるように必死に取り組みます。単なる英語学習時のような「やらされ感」
が皆無なのは、探究のための必要感があって英語を覚えなければならない
からです。自分がきちんとメッセージを伝えられないと切手集めの活動がうま
くいかないから困る、それはいやだ……という強い動機に突き動かされて
いるのです。
セリフの次は、撮影場所です。
「屋上がいいよ」
「そうだよ、都庁とかのビルを背景にしてとれば東京って感じがでるよ」
いつもながら素晴らしいアイデアが飛び出します。驚異的な晴れ男・晴れ女
集団のTCSキッズ。撮影当日は、絶好の日和です。しかし、カメラを据えて
みると……フェンスが邪魔してビルが写りません。これでは、子どもたちが
思い描いていた「画像」にはなりません。
「何かに乗って撮れば?」
「そうだ、机とイスだ!」
こういうときに、あきらめずに工夫することこそ“探究する力”です。一瞬に
して状況を把握し、ぱっと飛び散って協力して行動する子どもたち。危なく
ない位置に机を置き、いくつかイスを組み合わせてカメラを載せる台を作り、
モデルとなる子が机の上に立ち、ファインダーをのぞいてみると……
バッチリ!新宿の高層ビル群だけでなく、美しい青空に、ぽっかり浮かぶ
雲。理想的な背景になっています。
「素晴らしい……」
舞台は整いました。いざ、撮影開始!
「3、2、1、アクション!」
「TCS NEEDSs YOUR HELP!」
子どもの声が響き渡ります。
いつになく緊張する子どもたち。他の子が読んでいる最中も自分の番に
備えてカンペを凝視し、口を動かしている子。終わってほっとした子は、
板にはったカンペが風で倒れないように押さえたり、読み方を忘れ、つまった
子に、ささやいて教えたりしています。それなりの長さがあり、決して単語
も簡単ではない英文手紙を、すらすら読める一部の子だけでなく、つっかえ
ながらも自力で全員が読み通したことは快挙です。90分の授業時間内に
9名すべての撮影を完了しました。
ここまで苦心しながら、なんとか直筆の手紙とビデオメッセージを作成しま
したが、次週は、もう一度、活動の目的に立ち帰って、相手の心を動かし、
協力してみようという気持ちを起こさせるメッセージを提供できたか、人々
を巻き込むためにどんな工夫が必要か、何が足りないのか、再検討します。
RI
※TCS2010年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。
課題は、ネットで住所を調べられたり、ホームページを持っていたりする
学校は、恵まれた国であるということでした。アフリカのリベリアという国
の小学校に手紙を送りたいと考えた子がいて、早速、ネットを使って調べ
たところ、まったくヒットしません。しかし、ネットサーフィンを続けていると、
ピースウィンズジャパンというNPOが、小学校建設支援に関わっていたこと
がわかりました。早速、問い合わせてみたところ、すぐに返事を下さいま
した。その内容は、
「実は、リベリアでは郵便制度がなく、郵便配達人がいない状況にござい
ます。住所はお伝えできますが、郵便制度が機能していません。」
というものでした。
「郵便がなければ手紙送れないよね……」
ある子がつぶやきます。ネットで住所を調べられないどころか、郵便自体
がない国。そこにつながるには、やはり、現地と関わりのある人と出会わ
なければなりません。テクノロジーによってボーダレスワールドになったと
いえども、それは“つながりやすさ”が格段に向上したということであって、
最終的には、人と人とのつながりがカギを握ることは変わりません。
人と人とのつながりを創り出すには、相手の心を動かす「説明」が必要
です。そこで、「直筆の手紙」とは異なった形で相手の心を動かす手法と
して、ビデオレターの作成に取り組みました。ビデオレターは、「画像」と
「音声」によってリアルな感覚を相手に届ける効果があります。
どんなところに住んでいる、どんな人が、どんなことをイメージしてメッセ
ージを伝えようとしているのか
明確になります。「使用済み切手でオリジナルワールドマップを作る!」
という活動に参加してみたいと思わせるビデオメッセージ作りの開始です。
セリフは、英文手紙の文章をそのまま使えます。まずはそれを「なるべく」
暗記する(いざとなったらカメラのそばに置かれたカンペを読めばよいので)。
とはいえ、子どもたちは、カンペばっかり見ていたらカメラ目線にならず訴え
かける力が落ちることをよく自覚していますし、そもそも読み方、発音をしっ
かり覚えておかなければカンペがあっても役立ちません。
「ウィ、ウィ、ウィ……ワ、ワ、ワーン?」
「ちがう、それはワーントじゃなくてウーッド」
「somethingってどう読むの?これ覚えられな~い!」
ペアになってお互いの読み方を聴きあったり、授業終了後も自発的に居残
りして読みの特訓をする子が現れたり、みな手紙の文章を淀みなく読み上げ
られるように必死に取り組みます。単なる英語学習時のような「やらされ感」
が皆無なのは、探究のための必要感があって英語を覚えなければならない
からです。自分がきちんとメッセージを伝えられないと切手集めの活動がうま
くいかないから困る、それはいやだ……という強い動機に突き動かされて
いるのです。
セリフの次は、撮影場所です。
「屋上がいいよ」
「そうだよ、都庁とかのビルを背景にしてとれば東京って感じがでるよ」
いつもながら素晴らしいアイデアが飛び出します。驚異的な晴れ男・晴れ女
集団のTCSキッズ。撮影当日は、絶好の日和です。しかし、カメラを据えて
みると……フェンスが邪魔してビルが写りません。これでは、子どもたちが
思い描いていた「画像」にはなりません。
「何かに乗って撮れば?」
「そうだ、机とイスだ!」
こういうときに、あきらめずに工夫することこそ“探究する力”です。一瞬に
して状況を把握し、ぱっと飛び散って協力して行動する子どもたち。危なく
ない位置に机を置き、いくつかイスを組み合わせてカメラを載せる台を作り、
モデルとなる子が机の上に立ち、ファインダーをのぞいてみると……
バッチリ!新宿の高層ビル群だけでなく、美しい青空に、ぽっかり浮かぶ
雲。理想的な背景になっています。
「素晴らしい……」
舞台は整いました。いざ、撮影開始!
「3、2、1、アクション!」
「TCS NEEDSs YOUR HELP!」
子どもの声が響き渡ります。
いつになく緊張する子どもたち。他の子が読んでいる最中も自分の番に
備えてカンペを凝視し、口を動かしている子。終わってほっとした子は、
板にはったカンペが風で倒れないように押さえたり、読み方を忘れ、つまった
子に、ささやいて教えたりしています。それなりの長さがあり、決して単語
も簡単ではない英文手紙を、すらすら読める一部の子だけでなく、つっかえ
ながらも自力で全員が読み通したことは快挙です。90分の授業時間内に
9名すべての撮影を完了しました。
ここまで苦心しながら、なんとか直筆の手紙とビデオメッセージを作成しま
したが、次週は、もう一度、活動の目的に立ち帰って、相手の心を動かし、
協力してみようという気持ちを起こさせるメッセージを提供できたか、人々
を巻き込むためにどんな工夫が必要か、何が足りないのか、再検討します。
RI
※TCS2010年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。