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「手紙」は世界へ!

苦心して創り上げた英文手紙を、最低3通、ゴールデンウィークの間に書いて
くるというhomeworkをすべての子どもたちはこなしてきました。細かくチェック
すれば、スペルミスが見つかったり、アルファベットの書き方に怪しいところが
あったりしましたが、致命的なものではありませんでした。むしろ、英語初学者
の子どもが熱心に書いたことがうかがわれて、かえって読み手の心を揺さぶる
かな……という印象を受けました。そう感じさせるのは、ペン書きの前に鉛筆で
しっかり下書きした後が見えたり、行がまっすぐになるように薄く線を引いてから
書いたことがわかったり、体裁を整え、丁寧に書いたことがわかるからです。

富士山や日の丸の絵が書いてあったり、桜の花びらの絵を散りばめた手製の
便箋に書かれていたり、また、日本のお守りを同封したり、というように、各自が
読み手の心に訴えるような独自の工夫を施してきました。なんとか返事をもらい
たいという子どもたちの意気込みを感じました。

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さて、次なる課題は、送り先です。以前、外国の子どもからの手紙に関心を
持ってもらえる可能性が高そうなのは小学校ではないかというところまで話し
合っていましたが、どこの国に出すかは決めていませんでした。3通あるので
3つの別々の国へ出すことができます。そこで、子どもたちに地図帳を出して
もらい、3つの国をどんな基準で選んでほしいか伝えました。

「英語の手紙を出すのだから、1通は英語を使っている国がいいよね」

1つ目の基準には、子どもたちはみな当然……という様子でした。

「ここを見ればいいよ」

ある子が早くも、地図帳をめくって、各国の国勢情報が載っているページを
開き、そこに「公用語」が書かれていることを発見しました。

「へえー、この国、英語なんだ……」

アメリカやイギリス、オーストラリアだけが英語を使っているわけではなく、
世界に英語を公用語とする国々が散らばっていることを知ります。

続いて、残る2つの基準を明らかにします。1つは、よく耳にする国で、関心が
あるけれど、英語を公用語としない国。そして、もう1つは、あまり聞いたことが
ないし、返事が来るかとても不安だけど、気になった国です。

「韓国にしよう。すごく近いけど知ってるような知らないような感じなんだよね」

「タイかな。ニュースでデモしてるの見たけど、手紙届くか試してみたい」

「マラウィ?それどこ?」

他の子が「つながりにくい」とした国のことが気になって、別の子が地図帳で
探し始めました。子どもたちは「なんとなく」「理由は言えないんだよね」とつぶ
やきながら、独特の感性で国を選んでゆきました。

子どもたちが送り先として選んだ国々は以下の通りです。

英語公用語国……ジャマイカ、カナダ、アイルランド、南アフリカ、アメリカ、
イギリス、シンガポール、インド、オーストラリア

非英語有名国……ロシア、フランス、韓国、ベネズエラ、スウェーデン、中国、
タイ、スイス、ドミニカ

つながり難……セント・ルシア、フィリピン、リベリア、アンティグア・バーブーダ、
マラウィ、パプアニューギニア、エチオピア、バハマ

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オーストラリアは、姉妹校のフィッツロイ・コミュニティスクール、イギリスは、
ネイティヴの英語の先生の母校、というように、知り合いがいる学校にも出す
ことにしましたが、ほとんどの国につてはありません。そこで、“インターネット”
を駆使します。「国名」「小学校」「住所」をキーワードとして入れ、検索エンジン
でサーチ!すぐにいくつかの学校が挙がってくる国は、やはり英語圏で先進国。
途上国の場合、アメリカンスクールやインターナショナルスクールでないとホーム
ページを持っていないので、どうしても現地の子どもたちが通っている学校は
検索にひっかかってきません。とはいえ、たまたま見つけたブログの中でユニーク
な学校が紹介されていたり、ホームページを読むとまるでTCSにそっくりな学校
だったり、面白そうな学校が続々見つかりました。後は、「ぜひ読んでね!返事
送ってね!」と祈りを込めて、郵送。「手紙」は世界へとはばたき始めました。

しかし、当然ながら、これで一件落着というわけにはまいりません。ネットで学校
を見つけられない国があるのです。このような国はあきらめるしかないのか……
さあ、いよいよ「時空因縁」という探究領域にふさわしい、本質的な課題に直面。
次なる追究へと進みます。

RI

TCS2010年度探究テーマ一覧は、こちらよりご覧ください。



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