今週撮影したシーンの中にはメッセージを伝えるための“決め”となる
シーンがいくつか含まれていました。
“決め”となるシーンで見ている人にその場面が何を表しているかが分からなければ
作品全体が、ただブロックが動くだけの動画になってしまい、作り手の意図が伝われば
メッセージを伝えるためのまさに人の心を動かすストーリーとなるのです。
それだけにそのシーンをどう表現するかを最後の最後まで悩みました。
駅で切符を買うシーンでは、レゴのセットだけでここが駅だと表現するには限界がありました。
「○○駅」とどこかに書いてしまえば、簡単に分かってもらえますが、
それでは映像のプロである石井さんに教わった「言葉に頼らない映像の可能性」を
自ら潰すことになってしまいます。
そこで考えたのが、効果音を入れることです。
ホームに電車が入ってくる効果音を入れることで、駅っぽく見せることにしました。
次は切符を買ってお釣りが出てくるところをどう表現するか。
駅のセットのまま小さな人形がちょこちょこ動いて、全ての動作をセリフでカバーするのでは
見ている人を飽きさせてしまいます。
小さなレゴ人形の手元をアップで写す。
券売機の効果音を入れる。
思いつくアイデアを色々と試してみましたがどれもピンときません。
アイデアに詰まって撮影が進まず、時間だけが過ぎていきます。
思い切って本物の券売機を撮影したらとスタッフが提案をしましたが、
「映画が始まって間もないこの場面で、いきなり実写のものが出たら
見ている人は混乱するからダメでしょ。」
と、あっさり却下。
それでも見る側の立場で考えた彼の意見に頼もしさを感じました。
悩みに悩んで最終的にとった方法は大胆にアングルを変えて
券売機そのものをレゴで表現することです。
小銭は穴あけパンチにたまった小さな丸い紙に色をつけて使うことに。
人形の手をブロックで大きく作って、切符を買う動きを分かりやすくあらわします。
そして極めつけは、券売機のパネル。
200円を入れると、「160円」「190円」と書かれた箇所の
色が変わる芸の細かさ。
ほんの数秒のシーンですが、作り手のこだわりと、何とか伝えたいという思いが
ふんだんに盛り込まれたシーンになりました。
試行錯誤を繰り返して、ようやく迎えたクランクアップ。
お披露目はテーマ発表会の予定でしたが、今週は見学者の方がいらっしゃったので
完成披露試写会をして感想を聞くことになりました。
「面白い。メッセージを伝える作品になっていると思う。」
「音が少ないから、音楽を入れるともっと良くなるかも。」
「6年生でそのこと(伝えたいメッセージ)に気付くのはすごい。
私は大学のときに気付いた。」
といったフィードバックをもらい、メッセージを伝える作品が
できたという手応えが得られました。
編集はなしと予め決まっていたので、映像に音楽を追加することはできません。
そこで上映のときに映像に合わせて音楽を流すことにしました。
曲が決まるとどのシーンから音楽を流すのか、映像に入っている効果音の邪魔にならないために
どのタイミングで音量を上げ下げするのか。入念にチェックを繰り返します。
映画が完成し音楽のタイミングも決まった後は、総仕上げとして
どうしてこの作品を作ったのか、このメッセージを選んだ理由を改めて見直しました。
やるべきことはやった!
充実感と、TCSの仲間に作品がどう受け止められのかという
期待と不安とともに本番を待ちます!!
AU
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