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班長で、六年生で、男の子

今週も『半パンデイズ』をじっくり読み込んで、登場人物が行っている
「意思決定」を分析してゆきました。今回取り上げる章では、主人公の
ヒロシが、最上級生としてなんとか下級生をまとめようと悪戦苦闘する
姿が描かれています。

足が不自由な3年生の女の子がヒロシの班に入ってきましたが、その
女の子は、きわめて性格が悪く、そのうえ乱暴で、ヒロシの班の子ども
たちをことごとくいじめます。しかし、ヒロシは、その子を注意できません。
次第に、班のメンバーからの信頼を失ってゆき、あげくの果てに、いじめ
られた子の一人が、お母さんにいじめのことを訴えてしまいました。その
お母さんは、いじめた子本人ではなく、いじめを止められなかったヒロシ
の「まとめる力」の無さを責めました。すっかり自信喪失したヒロシは、
「自分は一人っ子だからわがままで甘えん坊で頼りない」のだと思い、
班長をやめたいと考え始めます。反面、「班長で、六年生で、男の子」
なのだから、途中で投げ出すわけにはいかないという「意地」もあり、
くじけそうになりながら、なんとか前進しようともがくのでした……。

班長で、六年生で、男の子_01  班長で、六年生で、男の子_02

「なんで男の子だから頑張らなければいけないの?」

ある男の子が不服そうに言います。

「わたし男の子に守ってもらわなくてもいい!だって男の子の方が
頼りないもん!」

ある女の子が口をとがらせます。

ヒロシの判断基準、行動規範は、文中に何度も現れます。それは……

「班長はみんなをまとめ、六年生は下級生の面倒を見て、オトコの子
はオンナの子を守らなければならない」

という「価値観」。

子どもたちは、「オトコ」という言葉の表面的な意味に引っ張られて、
この「価値観」がヒロシの判断や行動にどういう影響を与えているか
考えようとはしません。そこで、ヒロシの思いをより深く理解せざるを
得ない「課題」を出しました。

「ヒロシにインタビューしたら、ヒロシはどう答えるか考えてみよう!」

どうして「班長を投げ出さない」という意思決定をしたのか、そのときに
どんなことを考えたのか、なぜ「オトコ」という考えを大事にしているのか、
ヒロシはどんな「オトコ」になりたいと思っているのか、というような「質問」
をヒロシに投げかけたら、ヒロシはどう答えるか、ヒロシになったつもりで
答える……

大事なことはヒロシに“なりきる”こと。本文を根拠として使いつつも、それ
だけにしばられず想像力を大いに働かせて、ヒロシの心の内を詳しく語る
という「ホームワーク」を出しました。

班長で、六年生で、男の子_03  班長で、六年生で、男の子_04

実は、先週の「万引き」をしてしまった少年と、ヒロシとを比較してみると
「価値観」を持っていることの大事さがよくわかるのですが、子どもたちは
まだそのことには気づいていません。「班長で、6年生で、オトコ」という
ちっとも表現としては洗練されていない言葉でも、「こうありたい」という
ヒロシの「価値観」を反映した言葉だからこそ、ヒロシの責任感が喚起され
くじけそうになってもふみとどまれたと言えましょう。自分を奮い立たせる
言葉で「価値観」を表現することが、「どうせ…」という発想や“欲望”&
“快楽”の誘惑をはねのけて、確かな判断や行動をするうえで大事だと
ヒロシのエピソードは教えてくれます。偉人でもなく、優等生でもないヒロシ
の「苦闘」に共感できれば、それを自分の生き方に活かしたいという気持ち
がわくでしょう。

「ヒロシにはあって、みんなにはないものは何?」

というなぞなぞのような問いかけが、次週の「本質に迫る問い」です。


RI


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