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受け継いで生きるということ

受け継いで生きるということ_01   受け継いで生きるということ_02

「染色体体操!」「始まるよ!」

子どもたちを含めた観客に、学んだ内容をどうしたらわかりやすく
おもしろく伝えられるか……みんなで知恵を出し合ってできたのが
「染色体体操」でした。遺伝のことに強い関心を持ち、よく理解して
いる男の子が体細胞分裂と生殖細胞の分裂の違いをまず図示し
それをもとに振り付けを考えました。そして、身体の動きに合わせて
セリフをつけてゆきました。

「わたしたちの命のみなもとの生殖細胞は」
「お父さんからもらった細胞と」
「お母さんからもらった細胞が2倍になり……」

と言うと、2人の子どもの後ろに隠れていた子どもたちが飛び出して
4人が整列し、2倍になった様子を表します。
「でもその後、お父さんどうし、お母さんどうしで分かれ」
「からみあい、まじりあって……」

と言うと、真ん中の二人がズボンを脱ぎ、その下にはいていた上着
とは異なった色のズボンが現れます。セリフに合わせて、必死に脱
ごうとする姿がコミカルで、内容はシリアスなのに場内は大受け。
4本の異なった染色体を持つ細胞が4つ生まれ

「だからひとりひとり違って生まれるんだよ!」
「染色体体操!」「終わり!」

という閉めの言葉の後、場内は大きな拍手に包まれました。年下の
子どもたちから

「面白くて、ちゃんと勉強したのに、勉強じゃないみたい」

という感想をもらい、わかりやすく、面白く伝えるという目標をクリア
できた!という達成感を子どもたちは得ました。

ビデオ撮影したものを見て、足の開き方や手の挙げ方まで何度も
練り直し、体の動きとセリフは合っているか、セリフを聴き取りやす
いスピードで伝えているか、セリフの言葉は適切か、みんなで議論
を繰り返し、洗練させ続けた「過程」があったからこそ得られた成果
だと子どもたちは実感したのではないでしょうか。

受け継いで生きるということ_03  受け継いで生きるということ_04

「発表」のチャンスは、「新たな学び」のチャンス。子どもたちは、遺伝
について単に調べて、知っただけでなく、自分なりに考え続けてきた
ことも見せたいと思ったのです。しかし、どうしたらそれをうまく表現
できるか前日まで悩みに悩みました。

遺伝で病気になったり、顔や性格など受け継ぎたくないものを受け
継いでしまった場合、どう生きてゆけばよいのか?

という悩みの相談を受けたと仮定して、その悩みにみんなで答える
というところまではすぐに決まったのですが、どう発表するか?という
フォーマットが見えてきませんでした。

「ぼくらが議論している様子を見せればいいんじゃないの?」
「でも、見ている人には何やってるか全然伝わらないかも?」
「アドリブでやるわけ?」
「答えをそれぞれ決めておいて、順番に答えた方がいいよ」
「でもそれじゃあ議論ぽくないよ」
「質問に対する答えを言ったら終わりになっちゃうんじゃないかな」

やがて沈黙……そこで、こちらからパネルディスカッションというやり方
を提示しました。

「自分の意見を明確にして、なぜそう思ったのかをどれだけしっかり
説明できるかがポイントだよ」

来場している聴衆が自分の意見に共感してくれれば成功!
「???…」と思わせてしまったら失敗!
子どもたちは新たな発表フォーマットにチャレンジすることにしました。

発表後、聴衆が書いてくれたふりかえりシートをもとに、自分たちの
主張がどう受け取られたか検証します。

「遺伝は自然の営みであり、自然のものに手を加えるのは良くない
という感覚を持っていることがよくわかりました。」

「“生まれてくるだけでも素晴らしい”という発言に心打たれました。」

子どもたちそれぞれの「主張」は伝わったようです。と同時に「課題」
も明らかになりました。

「なぜそう思うかと考えるときは自分の意見と『対立』する人がどう
考えるかを想定するといいよ。」

遺伝をネガティヴに受けとめている人にアドバイスするとなると
先祖から子孫へ受け継いでゆくことが大事だから
自然の営みにはなんらかの意味があるはずだから
というように「自分の立場」からの発想に終始してしまう。でも、相手の
見方を崩すには、そもそも遺伝だけで決まらない部分も大きく、生まれ
た後の努力や環境要因も大きく影響するのだから、遺伝だけに
こだわらなくてもいい!というアドバイスも考えられる……「意見」を
支える「根拠」をいかに組み立ててゆくかということを次回はさらに
意識してみたいという思いを子どもたちにわきたたせる素晴らしい
フィードバックをもらいました。

受け継いで生きるということ_05  受け継いで生きるということ_06

聴衆からは、遺伝子組み換え植物についてどう思うか?という質問
が出ましたが、ヒトの病気や食料増産、品質向上のために遺伝子
を組み換えることは別にかまわないというふうに子どもたち全員が
一致して答えました。これに対して、ヒトの姿形や性格については
自然のままの素晴らしさを強く主張しているのに植物の場合はよい
のか、特定の種だけになってしまうと、その種が弱い病気や環境変化
が起きた場合、全滅してしまうのではないか、という「異論」が相次ぎ
ました。確率的に「多様性」を生み出すのは、急激な環境変化が生じ
ても、生存し続けられる種や個体があるように仕組むための巧妙な
戦略とも言えるという「視点」は、まだ子どもたちは持ち得ていない
ことが明らかになりました。

発表の最後は、DNAについて学んだことや感じたことを、「千の風に
乗って」の替え歌にした「遺伝と進化 DNAに乗って」を歌って、締め
くくりました。

ヒトのDNA配列だれでもほぼ同じ
なのにみんな顔、性格違う
似ているけど 似ているけれど違う
先祖から子孫へDNAを受け渡す
先祖から子孫へDNAを受け渡す

他の学年の子どもたちも保護者も参加者全員の大喝采!!
「歌詞に涙が出そうになった」という感想まで頂戴しました。

「受け継いで生きるということ」を「自分」のことはもとより、「他者」の
思い、さらには「自然界全体」を視野に入れて考えてゆくことのできる
感性を持った大人へと育っていってほしい。そう願わずにはいられませ
んでした。

RI




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